上海漢院顧問のつぶやきNo.345

皆様、お元気にご活躍のことと思います。
上海は今日は久しぶりの小雨で、租界地区のポプラ並木が戸惑っている感じです。
気持ちよく寝られる日々が続いていますが、ヒタヒタと秋が深まっている感じですね。 

目次 

1.特集   

【中国関連】 

【日本関連】 

【アジア関連】 

【米国・北米関連】 

【欧州・その他地域関連】 

【世界経済・政治・文化・社会展望】 

2.トレンド 

3.イノベーション・モチベーション 

4.社会・文化・教育・スポーツ・その他  

5.経済・政治・軍事 

6.マーケティング 

7.メッセージ 

  【上海凱阿の呟き】 

記事 

1.今週の特集 

【CHINA関連】 

<どうなる中国経済>サービス産業化と都市化が進展し、景気は当

面底堅い=日中経済界が連携すれば相互に発展―樋口清之CIGS

研究主幹Record China 9月10日(木) 

キャノングローバル戦略研究所の樋口清之研究主幹は講演し、中国経済について、「サービス産業化

と都市化が進展し、景気は当面底堅い動きを示す」と指摘した。さらに「日中経済界が連携を深めれば発展に

つながる」との見通しを明らかにした。  

2015年9月8日、中国経済に詳しい樋口清之キャノングローバル戦略研究所研究主幹は東京都内で講演し、

中国経済について、「サービス産業化と都市化が進展し、景気は当面底堅い動きを示す」との見通しを明らかに

した。その上で、中国政府は「不健全な経済構造の筋肉質化」を目指し安定成長への転換を図っている」と指摘

した。 

 

また「日中関係は改善の方向にあり、両国経済界が連携を深めればさらなる発展につながる」との見通しを明

らかにした。樋口氏は日本銀行入行後、駐中国大使館経済部書記官、日銀北京事務所長などを務め、日中企

業の実証的分析に定評がある。近著に『日本人が中国を嫌いになれないこれだけの理由』(日経BP社刊)が

ある。発言要旨は次の通り。 

 

◆メディア報道は悲観論に傾き過ぎ 

株価暴落、人民元安等の問題を材料に、各種メディア報道において中国経済の減速が強調されているが、悲

観論に傾き過ぎているように見える。中国政府は「速すぎた成長速度の適正化」「不健全な経済構造の筋肉質

化」を目指し安定成長への転換を図る「新常態(ニューノーマル)」方針を掲げ、金融自由化や構造改革を推

進。一方、対外政策面で、新シルクロード構想、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、シルクロード基金、BRICS銀

行などに力を入れ、貿易・投資先の確保を狙っている。 

 

GDPのうち消費の占める割合が50%弱に急拡大、重厚長大型工業からサービス産業へのシフトが進んでい

る。都市化も進展し、成長を下支えしている。 

 

金融自由化は遅くとも2020年までには完成する。既に預金・貸出金利の自由化はほぼ完成し、目下、為替の

自由化に取り組んでいる。今年8月11日に、毎朝為替市場の取引開始時に発表される人民元レートの基準

値の算定方式の変更を発表した。中国経済の減速と関連させ「輸出拡大を狙った」との報道があったが、IMF

(国際通貨基金)から求められていた自由化の一環である。 

 

最新の現地情報を基に冷静に中国経済を分析すれば、株価下落や各種経済指標の悪化にもかかわらず、当

面底堅い動きを示すのではないか。それを支える好材料は、地方財政支出の回復、不動産投資の回復および

第13次5カ年計画のスタート―の3点。雇用と物価が安定し、消費は堅調。財政収支も健全で、たとえ予想

外の下押し圧力が働いても、財政金融政策両面で景気刺激策の発動余地が大きいことから、景気下振れリス

クは小さい。 

 

昨秋以降、改善に向かいつつある日中関係にとって、最大の懸案は終戦70年の総理談話だった。中国政府

関係者はこれを無事に乗り越えることができれば、尖閣問題発生以来止まっていた様々な日中協力プロジェク

トを本格的に動かせるようになると考えていた。日本企業のビジネスパーソンも新たな摩擦が生じないことを願

っていた。 

 

4つのキーワードのすべてが談話に盛り込まれたこともあって、中韓両国から厳しい批判を受けることなく無事

にハードルをクリアし、中国市場の最前線にいる日本企業関係者は今後の事業展開に力を入れている。2012

年9月の尖閣問題発生により最悪の状況が続いていた日中関係は日本企業の中国ビジネスにとって足かせと

なっていたが、これでようやく長いトンネルから抜け出すことができそうである。 

 

◆日本企業誘致相談件数が急増 

中国政府にとっても1980年代以降ずっと中国経済の支えとなっていた日本企業の対中投資の回復は、今後

の経済運営の安定基盤確保にとって極めて重要な条件である。加えて、南シナ海の人工島問題をめぐって最

近の米中関係が悪化していることを考慮すれば、アジア太平洋地域における日米同盟を軸とした中国包囲網と

の対立を緩和するため、日本との関係改善を進めるインセンティブは強い。事実、中国の地方政府から日中経

済協議会に対し、日本企業に対し、日本企業誘致相談件数が最近急増している。 

 

中国の所得水準向上に伴って、豊かな生活を楽しむ中間層が拡大し、目の肥えた消費者が増え、品質重視の

日本企業に対する評価が高まっている。多くの中国人旅行者が日本で爆買いを楽しむ様子が中国国内でも大

きく報道され、中国の一般庶民に対して日本製品の品質の良さを改めて印象付けた効果も大きい。市場が急

速に拡大していた時には市場の激変についていけず後塵を拝していた日本企業が、最近の中高速成長下の

中国市場にはうまく対処しているようだ。 

 

アジアのGDPは北米地域を既に凌駕している。日中の企業の相互協力が欠かせない。両国経済界が連携を

深めればさらなる発展につながる(八牧浩行) 

大閲兵の国家主席よりも市民の壁画がデカい中国 

習近平氏の個人崇拝は始まったのか山田 泰司2015年9月10日(木)NBO 

山田 泰司著述業/EMSOne編集長1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、

中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」

編集長も務める。 

上海市内の住宅地には、抗日戦争勝利70周年を記念して黒板にチョークで描いたポスター

が随所に掲示されている 

  いまからちょうど20年前の秋、ある日系企業の駐在員で香港現法の社長を務めていた男性のガイド役で北

京に行ったときのこと。「中国にも、名所旧跡の観光にも興味がないんや」と言って、オフの時間にホテルから出

ようとしない彼を、北京に来て万里の長城も天安門広場も見ないで帰ったら土産話もできないからと無理やり引

っ張り出した。ちなみに当時、中国の大気汚染は今のような深刻な状態ではなく、北京で秋の空の色と言えば、

目に染みるような真っ青が当たり前だった。 

  その日も見事な晴天で、青い空に、天安門の鮮やかな朱色がよく映えていた。しかし彼は特に感慨もないよう

で、「もうホンマ、故宮博物院の秘宝とかに興味ないし。外からこうして広場と天安門と毛沢東の肖像画を見た

だけで十分なんや」と現地に着いてすぐに帰ろうとする。広場を歩くか天安門に登るかしないとここの広大なス

ケールを実感できない、歩くよりも登る方が距離が短いから登りましょうと彼を説得し、チケットを買って引きずる

ようにして天安門に登らせた。 

  城壁を上り切って楼閣に立ち、広場を一望できる場所に近づくにつれ、あれだけ渋っていた彼の表情が見る

見る変わって行くのが分かった。 

  「ほぉ、こら凄いもんやなぁ」「いや、このスケール感は凄いわ。確かにここに登ってみないとこの広大なスケー

ルは分からん」とひとりごつ彼。いまはフェンスで囲まれてしまったけれども、昔はこの広場に100万人が集まっ

て集会ができたそうですよと伝えると、「ふーむ。ここに立って、100万人の群衆を見下ろしたりしたら、『オレの

天下や』『この国はワシのものや』とか思ってしまっても無理ないかもしれんなあ」とため息交じりにつぶやいた。 

しばらくは恍惚とした表情でいた彼だったが、「アカン、オレも、何でもできてしまうような錯覚に陥ってきたわ。帰

ろ」と急に醒めた顔になって言った。それでもその夜、会食で同席した日本人に彼が、「天安門ちゅーところは、

人に全能感を抱かせる何かがありますな。名所旧跡と毛嫌いせず、あそこだけは一度は行かんとアカンわ」と

力説していたのがおかしかった。 

個人崇拝に対する懸念 

  この彼が全能感を抱いた天安門の檀上で9月3日、中国の習近平国家主席が、抗日戦争と反ファシズム戦

争の勝利70周年を記念した演説を行い、その後、軍事パレードを閲兵した。日本のニュースでも盛んに取り上

げていたそうなので、「人民服」「中山服」と呼ばれるグレーの立折襟の服装に身を包んだ習氏が檀上で演説す

る姿や、オープンカーから半身を出し、居並ぶ兵士達に向かって「同志們好!」(同志諸君、こんにちは)、「同

志們、辛苦了!」(同志諸君、お疲れさん)と声をかける様子などを観た人も多いことだろう。 

  その習氏が、先の彼のように、天安門の檀上で軍事パレードを見ながら全能感に浸っていたかどうかは知る

由もない。ただ昨年末あたりから、習氏に対する個人崇拝を進める動きが出始めているとの報道を、海外のメ

ディアでちらほら見かけるようになった。習氏を称える看板が地方都市に出現したとか、習氏を称賛する替え歌

がネットにアップされ、再生回数がものすごい数になっているというものだ。 

  さらに、『ウォール・ストリート・ジャーナル』が2015年3月11日付で、「習近平主席、静かに進む個人崇拝―

周到に練り上げられたつましい過去」と題する記事を掲載したことで、この問題はよりクローズアップされること

になる。同紙は、「中国のテレビが習氏の個人生活に焦点を当てた番組を放映するようになっており、これは近

年の中国指導部の傾向、すなわち集団指導体制から逸脱するものだ」「中華民族再生を意味する習氏のキャッ

チフレーズ『中国の夢』という言葉が、地下鉄の駅やバスの停留所などに掲げられている」と指摘。「中国ウオッ

チャーの多くが、これが毛沢東スタイルの個人崇拝の始まりなのではないかと懸念している」とした。 

  「虎も蝿も一網打尽」のスローガンのもと、中国共産党の序列9位という最高幹部や軍の長老を逮捕するなど

凄まじい勢いで反腐敗闘争を主導する習氏のイメージも、習氏個人に権力が集中しているという印象を強くす

ることにつながっているのだろう。 

  上海の様子を見る限り、習氏の存在を印象づける現象がまったくないわけではない。ただ、それが習氏を個

人崇拝する機運の盛り上がりとするのは大げさなのではないかというのが私の印象だ。政治の中枢・北京から

は離れた上海からの観察ではあるが、いくつかのエピソードを紹介することで説明してみたい。 

抗日戦争勝利・反ファシズム戦争勝利70周年を記念し、それまでの臨江公園から上海

淞滬抗戦記念公園に改称された公園。園内にある抗戦記念館前には見学者の長い行列ができていた(2015

年9月4日)  

演説に兆しはあったのか 

  習氏による戦勝70周年記念の演説では、人民解放軍の30万人削減や、中国の抗日戦争勝利が日本の軍

国主義のたくらみを徹底的に粉砕したなどとする発言が注目された。一方で、「集団指導・個人崇拝」を考える

上でも、興味深い点があった。それは演説の締めくくりで習氏が中国の人民に対し、中国共産党の指導のもと、

「マルクス・レーニン主義」、「毛沢東思想」、「鄧小平理論」、「『3つの代表』の重要思想」、「科学的発展観」の指

導方針を堅持し、中国の特色ある社会主義の道に沿って、「4つの全面」の戦略に従って、などと呼びかけた部

分だ。 

  「3つの代表」は江沢民氏、「科学的発展観」は胡錦涛氏、そして「4つの全面」は習氏と、元・前・現の国家主

席がそれぞれに打ち出したスローガンだ。中国が集団指導体制に移行した江氏以降のスローガンについては、

「毛沢東思想」「鄧小平理論」のように個人名がつけられて紹介されることはない。今回の習氏の演説も同様で

あり、その意味では個人を全面に押し出してはいない。 

  ウォール・ストリート・ジャーナルが指摘するように、習氏のキャッチフレーズの1つである「中国の夢」は、上

海でも町の至るところに掲げられている。ただ、江氏が2000年に打ち出した「3つの代表」も、当時は町のあち

こちに貼り出されていたものだ。 

土産物のグッズはオバマ大統領が圧倒 

  話は少しそれるが、この「3つの代表」は、江沢民時代の1990年代、市場経済化を進める中で、「中国共産党

が資本家・企業家と敵対する階級である」という矛盾の解消、いわば現実に合わせるために考えられたスロー

ガンだ。当時、「最近、職場で毎週、『3つの代表』の学習会が増えて忙しい」と嘆く公務員の知人に向かって私

は、「でもさ、『3つの代表』が出てきた時に思ったけど、中国は、矛盾したものを何とか整合化しようと日々頭を

ひねるためだけのエリートを相当数抱えているってことでしょう?  中国ってとても余裕があるってことだよね」と

言った。すると彼は、「嫌味なこと言うなあ」としかめ面をした。ただ、嫌味や冗談ではなく、この世知辛い世の中

にあって、理論のための理論を日々考えるような人たちを常に抱えておけるところが中国の懐の深さだと私は

思っている。 

上海の浅草こと豫園の土産物屋。毛沢東、孫文に挟まれて習近平氏のマグネットも。ただグッズの数

ではオバマ大統領の方が圧倒的に多い 

  さて、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事には、天安門近くの土産物屋で毛沢東元主席の肖像画を貼り付

けた皿と並べて習氏の皿が売られている様子の写真を掲載し、個人崇拝の萌芽として紹介していた。そこで、

「上海の浅草」と呼ばれ、浅草の仲店さながら土産物屋が軒を連ねる豫園はどうなのだろうと様子を見に行っ

た。 

  当日は、抗日戦争勝利70周年記念の3連休の最終日だったこともあり、愛国意識の高まりで、習氏のグッズ

を扱う店も多いのかなと見当をつけて行ったのだが、結果はようやく1軒で、習氏の肖像画をプリントしたマグ

ネットを売る店を見つけたのみ。オバマ米大統領に人民帽をかぶせた肖像画をプリントしたTシャツやカバン

が、数の上では習氏のグッズを圧倒していたというのが現実だった。 

この3連休中に上海を歩き回った中で少し驚いたのは、上海市内のある路地裏に、軍に関するスローガンを添

えた習氏の壁画を見つけたことだ。 

気になる変化 

上海の路地裏に突如出現した習近平国家主席の壁画 

  上海の町中には軍の施設が点在していて、住宅地を歩いていると突如、軍の施設が現れて驚かされることが

ある。あくまで私の知る限りではあるが、これまで上海では、習氏の壁画はみな、こうした軍の敷地の中に掲げ

られていた。散歩の途中、軍の施設にいきなり出くわし、堅牢な鉄の門越しに習氏の肖像画が見える、というよ

うなことが何度かあった。今回出くわした壁画は、初めて軍の敷地外に出て来たモノ、ということになる。先に、

個人崇拝を巡って、習氏の存在を印象づける現象がまったくないわけではない、と書いたのは、このことであ

る。 

  ただ、この壁画のある路地は、やはり軍の施設に面している。これを掲げた方としては、この路地は軍の範囲

内、という意識があったのかもしれないが、いささか気になる変化ではある。 

習近平氏の壁画があった路地の前には軍の施設が(茶色の建物)。ここはかつて日本海軍特別

陸戦隊本部が入っていた 

ただし、である。上海には、習氏の壁画を何倍も上回る大きさの個人の肖像画が、中国共産党の手によって掲

げられている場所がある。それも、習氏の壁画が路地裏にひっそりと隠れるように掲示されていたのに対し、幹

線道路に堂々と。そして、描かれている人物は、党や政府の幹部ではなく、まったくの一般市民だ。 

肖像画のサイズに見る中国の健全性 

上海郊外の幹線道路沿いに設置されていた高潮村の村民、謝鳳清さんの壁画。党や政府の幹部

ではない一般庶民だ。背景の鉄塔と比較するとその巨大さが分かる。路地裏にあった習近平氏のものより何倍

も大きい 

  この壁画、ではなく党の宣伝をする巨大看板に描かれていたのは、上海の江橋鎮に住む68歳の女性。「文

明江橋人」、かみ砕いて言えば、行いの良い文明的な江橋の住民、と書かれた看板にあった彼女の名前で検

索すると、ガンで倒れた夫のほか、家族全員が病気などの困難を抱えている近所に住む夫の家族の面倒をこ

の女性が献身的に見ているのだという。 

  この看板では、この地区に住む「文明人」を連続で紹介しているようで、今週訪れた際には、この地区の古い

風景を描き続けてきたという男性のアマチュア画家の肖像画に掛け替えられていた。ただ看板のサイズは前の

女性と同じで、習氏のものより何倍も大きい。 

  この江橋鎮ほど巨大なモノはまれだが、「親孝行だ」「ボランティアで道路清掃をし続けて何十年」「真面目に

働いた」「親切な看護婦さんで評判だった」等々として、共産党が一般市民の肖像画を団地のフェンスなどに掲

げる地区は上海市内に他にもある。これらも個人崇拝の1つではある。ただ、政治指導者が本気で自分の個

人崇拝を進めようとするならば、自分のモノよりもデカイ庶民の肖像画の存在を許したりはしないだろう。市民の

肖像画を道路に貼り出すというメンタリティーに私は馴染めはしない。ただ、国家主席よりも大きな庶民の肖像

画があるというところに、ある種の健全性を感じもするのである。  

中国の大閲兵式は米国への挑発か秋波か、「力こそ正義」で共通

する米中。日本の立ち位置は?福島 香織2015年9月9日(水)NBO 

福島 香織ジャーナリスト大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て

2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後

フリーに。 

  今、ちょうど北京に来ているのだが、中国に来るとインターネットなどで、海外の中国関連の報道に触れるこ

とがぐっと少なくなるので、また景色が変わって見える。 

  例えば、日米中関係などは、日本で報じられているものと、ずいぶん印象が変わってくる。 

示威の対象は米国だが、訪米も控え… 

  9月3日の大閲兵式は、国内外の注目を浴びながら、無事に終わった。見どころは、見る人の専門性によっ

て違うのだろうが、軍事・外交の専門家たちは、そのお披露目された武器の数々を見て、これは「抗日戦勝記

念」と銘打ってはいるが、むしろ意識は米国に向いている示威行動だと解釈した人が多かったようだ。 

  日本の報道だけでなく、英軍事専門誌ジェーンズ・ディフェンスウィークリーや米ディフェンスニュースなどは、

グアムが射程距離に入る核弾頭も搭載できる中距離弾ミサイルDF-26や空母破壊を想定した対艦弾道ミサイ

ルDF-21といった海軍兵器を披露したことを強調し、中国の軍事戦略が米国に照準を置いていることを改めて

意識させていた。中国側の報道も、「米国に冷や汗をかかせてやった!」といったというニュアンスが散見され、

この閲兵式および軍事パレードにおける示威行動の対象が日本ではなくて、米国であるという見方は正しいの

だろう。  だが、こうした状況から「米中関係が極めて緊張している」あるいは「対立が先鋭化している」、つまり

米中関係は悪い、と単純に考えられるかというと、そういうわけでもないようだ。少なくとも、中国側の米国に対

する秋波も見過ごすことができない。 

  大閲兵式を終え、習近平訪米を控えて、米中関係に関する論評も増えているので、それらをさらっと見てみよ

う。 

「米中は第二次大戦の盟友として」 

  「…閲兵式では、いくつかの細かい点が、中米関係ウォッチャーの猜疑心を呼び起こした。オバマ大統領ほか

西側の盟友は閲兵式に出席せず、習主席の重要講話でも、ソ連の戦争中の死傷者数に触れたにも関わらず、

米国側の死傷者数には触れなかった。前日、オバマ大統領は第二次大戦終結70周年の声明において、戦後

の米日関係の発展を高く評価し、"戦後の和解のモデル"とまで言った。一方で、対日作戦においてかつて肩を

並べて協力した中国については一言も触れなかった。これは中米関係が今後、冷えていくことを暗示している

のだろうか? 

  筆者が思うには、中米の間には始終ある種の"戦略的暗黙の了解"が存在する。北京とワシントンはともに、

中米関係の安定を維持し両国関係の発展を促進する努力を保っている。両国の指導者は互いに、別のルート

でもって誠意を示している。 

  8月28日から29日まで中国を訪問していた米国のライス国家安全顧問が、中国の世界人民反ファシスト戦

争における重大貢献について非常に高く賞賛し、中米が戦争時期に厚い友誼を育んでいたことを評価した。こ

れはオバマ大統領の閲兵式欠席の遺憾を補うものだった。…習近平主席は米国の元フライングタイガース部

隊(宋美齢の依頼で設立された米国人飛行部隊)メンバーに抗戦勝利70周年記念章を授与し、彼らの中国人

民のための貢献と犠牲に感謝した。第二次大戦の盟友として、中米はかつてともに血を浴び奮戦し、巨大な犠

牲を払って戦後秩序をともに再建したのである。 

  …近年、中国の国力が増強し続け、米国にとっては、世界の指導者の地位に実質的に挑戦する国だと見える

だろう。同時に、西側の盟友、英国やドイツやフランス、オーストラリアがAIIBに加盟したことなどが、一層の"

脅威"と感じているだろう。このため、ワシントンは他の盟友国に、中国の閲兵式に参加しないよう圧力をかけ、

これの例外となったのは韓国だけであった。 

  中米両国は過去30年あまり、すでに複雑な利益・運命共同体にある。中国が国際政治の舞台上で大国とし

ての影響力を発揮するには米国との協力が必要であり、ワシントンは中国なしで国際事務をやってはいけな

い。例えば国際市場や為替の問題は中国の協力なしには安定させることができないのである。 

  …習主席は閲兵式での講話で、こう言っている。『平和のために、我々は人類の運命共同体意識を堅固にし

なくてはならない』。まさに、中米この両国の共同作業によって、信頼を高め、疑いを薄め、危機を管理し、地域

の緊張情勢の緩和と地域の経済協力を促進し、ウィンウィンの関係を実現したいと願っている。中米は再び手

を取り合って、国際秩序と国際体系の核心である国連憲章の宗旨と原則を維持し、新しい国際関係の核心をと

もに積極的に構築して、世界平和と発展という崇高な事業を共同で推進しなければならない」(フェニックスニュ

ース・外交学院国際関係研究所研究生・劉暢) 

「オバマ大統領の招待によって、習近平主席は今月にも米国を公式訪問する。これは中米関係史上の重要な

マイルストーンであり、国際社会の注目点である。 

  …中米新型大国関係を構築することは、前人未到であり、これからの事業であり、そのプロセスは順風満帆と

はいかないだろう。戦略的に高度で長期的な視点から出発し、具体的な協調、協力のプロジェクトによって我慢

強く力を定めて、ひとつずつ積み上げていかねばならない」(新浪ニュースネット) 

「日本が米中を離反させようと挑発」 

  「…6日付の日経新聞が報じたところによれば、米国が中国の南シナ海の人工島の付近に軍艦と軍用機を派

遣するかどうかを考えているという。ワシントンはまた中国のサイバー攻撃に対して、制裁を実行するかどうか

を検討中という。"習近平主席の訪米前に、ワシントンと北京の緊張は高まっている"という。しかし、報道には

米国政府関係者の名前も出てこず、匿名の情報筋すら示されていない。 

  …外交学院の国際関係学者である周永生は6日、環球時報に対しこうコメントしている。"安倍内閣は、中国

に対して全面対抗しようとしているようである。米国軍艦が南シナ海で挑発するように盛り上げて、戦火をG20

財相会議にまで延焼させようとしている。" 

  …日本のある政治外交研究者は環球時報に対してこう言っている。"米国が軍艦を南シナ海の人工島周辺に

派遣する可能性は大きくない。中米首脳会談が今月行われる予定で、しかも閲兵式で中国は30万人の軍縮を

発表し、平和の意志を世界に示した。こういう時に南シナ海で米国が中国を挑発することは国際世論の支持を

得られない。" 

  …中国の軍事専門家はこう分析する。"日本メディアは中米関係を離反させようと挑発している。過去一週

間、日本メディアは、中国の閲兵式が、中国の武器が『米国本土大陸を攻撃できる能力』があることを示すもの

だということを強調している。" 

  …香港・サウスチャイナモーニングポスト紙の5日の論評はこう指摘する。"中国閲兵式は武器をひけらかし

たのではない。…国家の軍隊は高度な戦略能力を備えていて、初めて平和の安定を保証できるのである。"」

(環球時報) 

閲兵式前後の米中関係に関する論評をざっと見て受け取れることは、米国と肩を並べて世界秩序を仕切ろうと

いう新大国関係構築への呼びかけである。そして、それを邪魔しようとしているのが日本だということになる。日

本は、米中離反を促す報道をあえて根拠もなくやっている、というわけだ。中国としては、強大な武器の展示や

示威行動は、米国への挑発というより、中国がすでに米国のパートナーとなるに足る大国であることをアピール

している秋波だということになる。30万の兵士削減も、表向き軍縮と報じられているが、実際のところ陸軍の兵

員削減は、軍の近代化・増強のための改革に必要なことであり、むしろ軍縮とは反対の方向性だ。 

米中の共通点は「力こそ正義」 

  私はこういう中国的なものの見方は比較的理解できる。一般に日米が自由や民主、法治といった価値観を共

有していて、中国が西側的普遍的価値観と大きく違う中華的価値観に拘っていると思われるが、実は米中に共

通にあり、日本にはあまり馴染まない価値感がある。それは力こそ正義である、という考え方である。 

  中国も米国も実力主義の国であり、軍事力にしろ経済力にしろ、力に対する信望が強い。侮られるよりは恐れ

られるほうが、人同士も国同士も対等に付き合え、信頼関係も醸造できるという考え方だ。小人に大人の考え

が分からないのと同様、小国に大国の理想はわからない。国家の力は主に軍事力と経済力である。経済につ

いては、すでに世界第二位のGDPを誇る中国にとって、大国・米国を直接攻撃できる軍事力があって、初めて

米国と対等のパートナーシップを結べる資格を持てると考えても不思議はない。世界平和を維持するのは、軍

事力であるという考えも米中の共通だろう。 

  習近平の閲兵式での重要講話で、印象深い言葉があった。「中国人民抗日戦争と世界反ファシスト戦争は正

義と邪悪、光明と暗黒、進歩と反動の大決戦であった」。 

戦争の歴史を正義と悪に単純に区別して論じられるのは、やはり中国的であり、同時に米国的でもある。日本

の歴史観も戦争観も正義と悪をきれいに分けられない。これは、日本が第二次大戦で敗戦を喫したから、という

わけでもなく、喧嘩両成敗的な発想がもともとあったり、判官贔屓といった敗者、弱きものへの同情心が強かっ

たりすることと関係があるのだろう。 

  敗者には敗者に至るプロセスがあり、悪人には悪人となる理由がある。日本にあるのは盛者必衰の理であっ

て、勝者が敗者になり敗者が勝者になり物事は流転するという考え方だ。弱者や敗者に対して比較的同情的で

あるのは、自分が弱者や敗者になることを想像できるからであり、そういう想像ができるのは、弱者や敗者でも

救済される余地があるからだ。厳しい国情の国では、弱者や敗者は徹底的に殲滅させられるので、自分が敗者

であったならば、という仮定は、あり得ないのである。自分が弱者であったならば、敗者であったならば、と想像

できる国は平和で幸せな国なのである。 

日本こそ特異な国家であることの自覚を 

  そう考えると、日本は第二次大戦の戦勝国によって秩序形成された国際社会において、かなり特異な国であ

り、米国にしてみれば日本より中国の方が理解しやすい部分もあるだろう。戦勝70周年記念で、中国は盛ん

に、米国とともに世界平和を導いたのが中国であり、いまこそ、かつてともに国際秩序を築いた両国が再び世

界平和を導くのだと喧伝している。次世代の世界地図を考えながら、単純に力を信望する大国を敵に回すのが

得か、味方にするのが得かを考えた米国が、中国と急接近するシナリオが無いとは言えまい。私は、次のリム

パックに中国が参加することになっても一向に驚かない。 

  力を信望する大国外交の間で、米国のパートナーという地位で、国家の二大パワーの一つである軍事力を公

式には持たない日本がなんとか渡り合ってこられたのは、戦後の奇跡と言っていい。この奇跡がこれからもずっ

と続くと信じるのか、あるいは変化を余儀なくされるのか。これらを見定めるには、やはり米中関係の行方を、予

断を持たずに見ていくことが重要なのは言うまでもない。そして、特異な国家は、彼らではなく自分たちであると

いう自覚もまた必要かもしれない。  

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【JAPAN関連】 

もはや無謀と言うしかない消費税率10%の公約、それでも安

倍首相は消費税を引き上げるのか?2015.9.10(木)    鷲尾  香一  JBPress

2017年4月から消費税率を10%に引き上げるという安倍首相の公約は守られるのだろうか。(写真は

イメージ) 

  安倍晋三総理にとって、それはショッキングだったし、先行きが不安で仕方がないに違いない。8

月17日に発表された2015年4~6月期GDP(国民総生産)速報値が、前期比年率-1.6%とマ

イナス成長に沈んだのだ。  

  前年比でもわずか0.1%増という状況で、胸を張って「アベノミクスの成果が表れ、景気は回復し、

デフレ脱却に向かって進んでいる」などとは言えたものではない。 

  何よりも問題なのは、GDPの約6割を占める民間最終消費(個人消費)の伸び率が実質・前期

比年率で-3.0%とGDPの大きな押下げ要因となっていること。これは、近年では2011年の東日

本大震災直後、2014年4月の消費税8%への引き上げ後に次いで悪い数字だ。 

  果たして、これで2017年4月から消費税率を10%に引き上げることができるのだろうか。 

8%への引き上げから1年、再び沈む個人消費 

  GDPは消費税率の引き上げに向けて、景気を判断する重要な経済指標だ。2013年10月1

日、安倍総理は2014年4月からの消費税率8%に引き上げ決定にあたり、その理由として、アベ

ノミクスの3本の矢により経済は回復の兆しを見せており「実質GDPが2四半期連続で年率3%

以上プラスとなったこと」などを挙げた。  

一方で、当初予定されていた2015年10月からの消費税率10%への引き上げについて、安倍総

理は2014年11月18日、次のように述べ、2017年4月まで1年半延期することを決断した。  

「消費税率8%への引き上げ以降、実質GDP成長率は2四半期連続でマイナスとなり、その大き

な要因として個人消費が4~6月期および7~9月期に前年同期比で2%以上減少した。2015年

10月の消費税率10%への引き上げは、個人消費を再び押下げ、デフレ脱却も危うくなると判断し

た」 

  消費税率8%への引き上げから1年経過してもなお、今年4~6月のGDPで個人消費は再び実

質・前期比年率-3.0%と大きく沈んだ。なぜなのか。 

  総務省の家計調査からその原因を紐解いてみよう。6月の実質家計消費は前年比-2.0%、前

月比-3.0%と落ち込んだ。4~6月期でも前期比-3.1%と消費税率を8%に引き上げた2014年

4月と同様に悪化している。 

  支出品目を見ると、生活必需品である基礎的支出は持ち直している一方で、旅行、教養娯楽、

外食などのサービスと家電製品、乗用車、衣料品などの商品に対する選択的支出が減少してい

る。 

アベノミクスの“夢の時間”は通り過ぎた 

  8月26日、ニューヨークでの講演で黒田東彦・日銀総裁は、デフレ脱却への動きが着実に進行

している理由として、「第1に日本企業は過去最高の収益をあげており、設備投資に積極的になっ

ている。第2に労働需給が逼迫し、完全雇用が実現するとともに、賃金が約20年ぶりにはっきりと

上昇している」と2つの事実を指摘し、胸を張った。 

  確かに賃金は上昇してきている。それでも消費が減少しているのはなぜか。 

  それは、選択的支出を減らし、その分で増加する基礎的支出(物価上昇分)を賄い、賃金上昇の

分は使っていないからだろう。つまり、生活防衛に動いているのだ。 

こうした消費行動の背景に何があるのかは現時点では明らかではない。日経平均株価の上昇が止

まり、下落していることが要因なのか、中国経済の先行き不安を反映した世界・日本の景気悪化を

懸念しているのか、今のところは分からない。  

  しかし、ただ1つ明らかなのは、アベノミクスのスタート時のような“夢の時間”は通り過ぎたというこ

とだろう。何かはっきりはしないが、安倍総理なら景気を回復させてくれ、賃金が上昇し、暮らしぶり

が良くなる、という夢は覚めたのだ。 

  安倍総理が2014年11月18日に消費税率10%への引き上げ延期を判断した際に法的根拠と

なったのは、いわゆる税制抜本改革法の附則18条にある景気判断条項である。税率引き上げを

延期した際、安倍首相は「再び延期することはない。景気判断条項を付すことなく、2017年4月に

消費税率10%のへの引き上げを確実に行う」と“退路を断ち、背水の陣を敷いた”。 

  しかし、ここに来て消費は急速に力を失っている。消費税率を8%に引き上げた影響を見れば、

2017年4月に消費税率を10%に引き上げることの“無謀さ”は明らかだろう。 

  消費増税による急激な物価の上昇は、家計を直撃し、なお一層生活防衛意識は高まり、消費が

減速するだろう。消費の減速は需給ギャップの拡大につながり、デフレ経済へ逆戻りする可能性は

大きい。 

  もし、このまま消費の低迷が続けば、消費税率10%への引き上げに対して再度延期を叫ぶ声が

高まるだろう。 

安倍総理に“神風”は吹くのか 

  だが、景気判断条項を廃し、背水の陣を敷いた安倍総理に再延長を行う正当な理由はない。  

  実は、消費税率10%への引き上げを延長したあとの予算委員会で、安倍総理は「リーマン・ショッ

クのような事情の変更があった場合には、消費税の税率の引き上げを行わない」旨の答弁をしてい

る。しからば、中国経済がリーマン・ショック並みに崩壊するという“神風が吹く”ことを安倍総理は願

わずにはいられないのではないか。 

  いずれにしても、消費税率10%への引き上げの再延長は相当に高いハードルだと言わざるを得

ない。 

  2014年4月に消費税を引き上げた時、安倍内閣の支持率は50%を超えていた。それが今や

40%付近にまで低下している。9月20日の自民党総裁選での安倍総理の勝利は揺るがないとし

ても、消費税率10%への引き上げを判断する来年秋口に向けて、7月には参議院選挙が控えて

おり、消費税率引き上げは選挙の争点となるだろう。 

  背水の陣を敷いて打ち出した消費税率10%への引き上げという公約を守るのか、それとも公約

を破棄して再延長をするのか。今後のGDP、特に個人消費動向に、安倍総理は一喜一憂すること

に違いない。  

消費税還付の議論の前に、消費再増税を撤回せよ 

高橋洋一 [嘉悦大学教授] 【第128回】 2015年9月10日 DOL 

まずは消費税還付の論点を整理する.還付はいいがナンバーカード利用はやり過ぎ 

 

  消費税還付について、自民、公明両党は財務省案をベースに議論している。その財務省案とは、消費税率を

10%に引き上げる際、食品などに軽減税率(複数税率)を適用する代わりに、事後的に還付するというものだ。

ただし、還付額には上限があり、年間で4000円とされている。政府は今のところ、この財務省案をベースにした

与党内の議論を見守るという。 

  財務省案では、マイナンバーの個人番号カードを、還付金を受け取るために必須としている。軽減税率対象

品目を購入する際、マイナンバーカードの個人認証が必要となるわけで、言ってみれば、すべての食料品購入

をクレジットカード決済と同じ仕組みにするようなものだ。 

  これには、様々な反応が出ている。そうした仕組みをすべての小売店に導入できるのか、還付金の上限が低

い、などである。 

  もちろん、そうした問題点もあるが、これではまんまと財務省の意図に乗ってしまう。財務省は、マスコミが目

の前の論点整理に追われて、もっと大きな問題点を見逃すことをよく知っている。そのために、技術的な論点を

提示すると、本質的な論点がぼやけるわけだ。 

  財務省案は、マスコミ報道を見る限り、次の通りだ。 

(1)2017年4月から10%へ消費再増税を行う。 

(2)その際、「酒類を除く飲食料品」の消費増税分に相当する給付金を事後的に払う。 

(3)給付金の事後支払いの際には、購入の際にマイナンバーカードを提示されたものだけを還付対象として、そ

の上限を設ける。 

まず、経済セオリーとしては、軽減税率はそもそも豊かな者へも恩恵があり、弱者対策に特化できない。その

上、実務上は軽減税率の対象と非対象の区分けが難しいし、税務官僚に裁量の余地が大きすぎるので、弱者

への負担軽減策としては、還付金のほうが望ましい。これから、(2)はいい。 

 (3)はちょっとやり過ぎだ。還付金については、実務上、(a)簡素な給付金、(b)領収書(インボイス)、(c)ナン

バーカード管理があり、(a)から(c)へなるにつれて、実務コストが高まり、実施が困難になる。世界の多くは(b)

であるが、それを飛び越して(c)までやるとは、驚いてしまう。これでは、ナンバーカード管理端末をすべての小

売店に強制するようで、IT業者の回し者かと思う。ある新聞では、還付のための「軽減ポイント蓄積センター(仮

称)」の設立まで解説されており、この「(仮称)」でわかるように、役人がよくやる「天下り機関」の新設まで用意

されているようだ。 

本質的な問題は消費再増税そのもの,「中国ショック」と重なると絶望的な成長率に 

  ちょっと前振りが大きすぎたが、最も本質的な問題は、(1)2017年4月から10%へ消費再増税を行う、であ

る。 

  8月27日の前回本コラムで、「中国ショック」はリーマンショック級になる恐れがあると書いた。 

  中国の統計は、かつての社会主義国と同じように信用できない。いまだに経済活動の多くに政府が関与して

おり、統計数字が悪いと政府自らの責任になるので、統計改ざんが行われやすい。統計の多くは地方役人によ

って元データが作成されるが、数字が悪いと彼らの出世に関わるのだ。 

  ただし、輸出入は、相手国があるので、そう簡単にはごまかせない統計である。8月の中国の輸入は対前年

同月比で14%も減少した。もっとも、これは今年7月までの傾向そのままである。輸入の伸び率とGDPの伸び

率との間には、かなり安定的な正の関係(GDPが伸びているときには、輸入が伸びている)があるので、この輸

入動向から、GDP成長率を推計すると、マイナス成長になっていると、筆者は思っている。 

  中国の成長減速がなくても、2017年4月の10%への消費再増税を行えば、日本の2017年度の経済成長率

はマイナスになるだろうと、前回コラムで書いた。 

  政府の試算では、2017年度の実質GDP成長率は0.6%と見込んでいる。筆者の試算は、2014年度における

消費増税の影響を機械的に2017年度に当てはめるだけであるが、▲0.2%である(図表1)。 

 

  これに、「中国ショック」が来ると考えると、ちょっと絶望的な経済成長率になる。前回コラムに書いたように、今

回の「中国ショック」は実物経済の成長鈍化なので、じわじわと悪影響が波及してくる。これがリーマンショックの

ような金融危機を契機とするものとの違いである。 

1997年以降の経済落ち込みは本当にアジア金融危機が主因か 

  2017年の消費再増税は、1997年からのアジア金融危機による経済混乱を思い出す。1997年4月に3%か

ら5%への消費増税があり、アジア金融危機でダブルパンチとなった。 

  1998年の経済成長率は、日本を含めたアジア各国でマイナスであった。このマイナス成長について、現時点

での日本の学界での通説はアジア危機の影響である。もっともこれは、ほとんど当時の大蔵省見解を学者がな

ぞっただけだ。 

  実はその当時、筆者は大蔵省官僚として検討作業に少し参加した、当時の役所内の雰囲気は、消費増税の

影響ではなく「アジア危機の影響にしよう」というものだった。筆者は、その雰囲気に違和感を覚えた。そして、そ

の時に着目したのは、アジア諸国の経済変動だった。 

  もし、アジア危機のために経済苦境になるのであれば、震源地のタイや韓国と関係の深い国のほうが影響は

大きいはずだ。しかし、日本の影響は、他のアジア諸国より大きかった。ちなみに、1998年の経済落ち込みは、

日本も含めてアジア諸国で起こったが、翌1999年も日本だけはマイナス成長であった。一方で、他のアジア諸

国は回復している(図表2)。 

 

  しかも、この図を見ればわかるが、アメリカ、中国、台湾は、タイや韓国との関係において日本と同じような状

況でありながら、経済落ち込みになっていない。 

  さらに言えば、1998年の経済落ち込みを経験した国で、1999年の回復度合いについて、(1998→1999の経

済成長率アップ)/(1997→1998の経済成長率ダウン)という指標で見ると、香港76%、インドネシア78%、韓

国147%、マレーシア92%、フィリピン64%、タイ164%なのに対して、日本はわずか50%で最低である。 

  これは日本にアジア危機という外的要因以外に固有なものが存在することを示しているが、1997年4月から

の消費増税以外にはなかった。 

法律で決まっていても再増税を回避する方法はある 

  以上のような問題意識があるので、(1)2017年4月から10%へ消費再増税を行う、には反対せざるをえな

い。 

  こう言うと、必ず、2017年の再増税は法律で決まっている、という声がある。確かに法律で決まっているが、実

は、今年10月からの10%への消費再増税も法律で決まっていた。ところが、昨年11・12月の解散・総選挙で

吹っ飛んだのだ。 

  この教訓は、もっと強調してもいい。何より、昨年総選挙をやらなかったなら、今頃は10月からの10%への消

費再増税ということになり、中国ショックなどを控えて大変な目に遭っていただろう。総選挙は、安倍首相の英断

であったが、日本経済を救ったとも言える。 

マスコミは、消費再増税を支持していたので、総選挙に批判的だったが、今こそ感謝すべきであろう。何より、法

律で決まっていても、政治でひっくり返せるのだ。総選挙の威力は大きい。消費再増税を強硬に主張していた野

田毅・自民党税制調査会長も、解散したときに、自民党の公認が欲しいがために、あっさりと消費再増税の主

張を引っ込めたくらいだ。安倍首相が、伝家の宝刀をうまく使った。 

  こう考えると、2017年4月の消費増税を回避するために、一つの有力な政治手法は、来年7月の参院選に

合わせて衆院解散総選挙というダブル選挙である。もっとも、それをちらつかせながら、別の政治手法もありう

る。いずれにしても、2017年4月の10%への消費再増税は決まっているという意見は、官僚レベルの話であ

り、政治的にはまったく白紙といっていい。 

  なお、今回は景気条項がないので、消費再増税は決定的という意見もある。これもまったく官僚答弁そのもの

で、昨年の消費再増税のスキップも景気条項を使ったものではない。そもそもスキップは法案を出さなければ意

味ないので、景気条項は政治的には何の意味もない。 

新聞は軽減税率の対象外,それでもマスコミは再増税を支持するか 

  これまで、消費再増税を支持してきたマスコミはどうするのだろうか。財務省案には、新聞への軽減税率はま

ったくない。消費増税によって、景気が落ち込んだことも手伝い、新聞各紙の発行部数は激減している。公表さ

れている発行部数には、配達されずに古紙として回収される「押し紙」も含まれている。一説によれば、公表数

字の3割減が真の数字であるともいう。ネットを探すと、まったく読まれていない新聞紙が、「ペットのおしっこシ

ート」として安く売られているので、よほど配達されない新聞紙は大量にあるのだろう。 

  マスコミが消費再増税を支持するのは、新聞が軽減税率の対象になって、価格上有利になるからだ。しかし、

新聞が軽減税率の対象にならずに、消費再増税であれば、発効部数の減少に歯止めはかからないだろう。 

  もしマスコミが正論を述べたいのであれば、消費再増税そのものに反対すべきである。本コラムでは、2012年

6月14日付けコラム「6・13 国会公聴会  私が述べた消費税増税反対の10大理由」など、消費税に関わる論

点をかなり書いてきた。それらを参考にしたらいいだろう。 

  マスコミは、昨年の解散総選挙を批判し、消費再増税を主張していたが、豹変してもいい。 

石破氏、閣僚退任の意向  派閥立ち上げ正式表明  

2015/9/10日本経済新聞  電子版 

国家戦略特別区域諮問会議を終え、記者の質問に答える石破地方創生相(9日、首相官邸) 

  石破茂地方創生相が10月に想定される内閣改造で、閣僚を退任する意向を周囲に伝えていたことが分かっ

た。石破氏は9日、自ら主宰する派閥を立ち上げる考えを正式に表明。入閣しないことで、安倍晋三首相と距離

を置く議員の取り込みをねらう。 

  側近議員によると、石破氏は8月下旬、3年後の総裁選に向けて派閥を立ち上げる考えを示すとともに、10月

の内閣改造では「閣内にはとどまらない」と話した。 

  石破氏は9日、記者団に「総裁の任期は党則で2期6年と定められている」として、次期総裁選には首相は出

ないことを指摘。「党として国政に停滞がないよう常に考え続けていかねばならない。政権構想をつくるのに時

間や労力はいくらかけても足りない」と述べ、「ポスト安倍」へ準備する考えを表明した。 

  自身に近い議員で作るグループ「無派閥連絡会」を8日付で解散、ほかの派閥と同様、政治団体として総務

省に届け出て、事務所を永田町周辺に構える。事務総長には古川禎久元財務副大臣が就く見通しだ。 

MRJ、初飛行は「まっすぐ飛ぶか」,国は機体開発後もサポートを 

吉川 忠行2015年9月10日(木)NBO 

吉川 忠行Aviation Wire編集長ライブドアで同業初の独自取材部門「ニュースセンター」立ち上げに

参画。ライブドア事件も内側から報じる。退職後はAFP通信社等で取材を続け、2012年2月Aviation Wire

創刊。 

  およそ半世紀ぶりの国産旅客機となる三菱航空機の「MRJ」。2014年10月のロールアウト(完成披露)で

姿を現わしたMRJに、居合わせた関係者たちはみな驚きの声を挙げ、機体の美しさを讃えた。 

昨年10月の完成披露で姿を見せたMRJ(撮影:吉川 忠行、ほかも同じ) 

  ところが今年4月になると、初飛行の時期を当初予定の4~6月期から、9~10月期に延期すると発表した。

開発スケジュールの変更はこれで4度目。そのため今まで以上に、初飛行の実現性そのものを問う声が高ま

っていった。 

  こうした不安をかき消すように、ようやくMRJの初飛行の時期が発表された。 

  機体を製造する愛知県の小牧南工場に隣接する県営名古屋空港(小牧空港)周辺で、10月後半に1時間程

度の初飛行を実施するという。4度目の正直とでも言うのだろうか、どうにか9~10月期の初飛行は実現しそう

だ。関係者によると、10月18~20日に初飛行することを視野に、試験を進めているという。 

  小牧を離陸後の飛行空域は、静岡県御前崎から愛知県伊良湖岬にかけての遠州灘沖の太平洋上と、石川

県能登半島沖の日本海上の2つを検討。天候によってこのどちらかを選択するという。 

  初飛行後のスケジュール同様、航空会社への納期も昨秋に発表した内容から変更はないとしており、全日本

空輸(ANA)への量産初号機の引渡しは、2017年4~6月期を予定している。 

  三菱航空機の親会社であり、MRJを製造する三菱重工業は、機体サイズや用途は異なるものの、これまでに

も自衛隊機やビジネスジェットなどの飛行機を製造している。つまり航空機を製造すること自体は決してこれが

初めてではない。だがMRJで課題となるのは、飛ばすことよりも、旅客機として、国土交通省やFAA(米国連邦

航空局)の型式証明を取得することにある。 

MRJと尾翼に描かれた機体は、果たして10月後半に空を舞うのか 

  果たして本当に2年後の夏までに、MRJの量産初号機を納入することができるのだろうか。また運航を続け

るための体制を整えることができるのだろうか。改めて、MRJを取り巻く今後の課題について分析してみた。 

「製造中止はまっぴらごめん」とANA 

9月2日、小牧で地上試験中のMRJ 

  「二度あることは三度あると言う。だから三度目はあった。だが“四”ということわざはないので、4回目はない

だろう」。今年4月の初飛行延期の直後、ANAを傘下に持つANAホールディングスの片野坂真哉社長は、こ

れ以上の納入遅延があっては困るという思いを込めてこう語った。 

  MRJの受領が大幅に遅れたANAは、機材計画を見直さざるを得なくなった。だがこうした事態に陥るのは、

ANAにとって初めてのことではない。ANAが最初に機体を発注する「ローンチカスタマー」となったボーイング

787の経験がある。787はMRJ以上に遅れに遅れ、7回も納入計画が延期された。「7回、8回というのは論外

だ」(片野坂社長)とクギを刺す。 

  ANAは、戦後初の国産旅客機YS-11も機材として使っていた。だが同機は1974年2月に最終号機が海上

自衛隊に引き渡され、182機で製造中止となった。こうした過去の経緯があるため、片野坂社長は「製造中止は

まっぴらごめん。ちゃんと世界的にも売れてほしい」とMRJに注文を付ける。運航する航空会社としては、これ

が本音だろう。 

  旅客機は、航空会社が購入した場合は20年程度、リース会社から借り受ける場合は8年程度飛ばすのが

一般的。いずれにせよ、一度導入すれば長期間運航しなければならない。 

  MRJは当初月産1機で製造を開始し、2020年下期には月産10機に達する計画を立てている。現在の合計

受注数は、確定受注が223機、オプションは160機、購入権は24機で計407機。このうち国内では、ANAが

25機(確定15機、オプション10機)を発注したほか、日本航空(JAL)が32機を確定発注している。 

  計画通りの生産体制を整え、仮に受注が今後大きく増えなかったとすると、単純計算しても確定受注分は

2021年ごろに、合計受注分は2022年ごろに作り終えてしまう。実際には、受領する航空会社側の都合もある

ので、これほど早く製造が終わることはないが、受注残の規模としては少々心許ない。 

  MRJのライバル、ブラジルのエンブラエルによるEシリーズは、後継のE2シリーズと合わせると、6月30日

段階の受注残が531機もあり、前年同期よりも91機積み増している。 

  三菱航空機の森本浩通社長は、「飛んで初めて真剣に考える人もいる」と、計画通り初飛行を成功させること

で、受注に弾みをつけたい考えだ。 

まずはまっすぐ飛ぶか 

  10月後半の初飛行では、まっすぐ飛ぶか、旋回できるか、上昇や下降ができるかなど、基本的な特性の確認

が主な目的だ。このため、前脚や主脚は離陸時の状態で固定し、そのままにして飛行し、着陸する。離陸時の

状態のまま飛ぶことで、不測の事態が起きても着陸できるようにするというわけだ。 

  今後の大きなハードルは初飛行後に本格化する米国での飛行試験や、これに基づく型式証明の取得だろう。

三菱航空機の川井昭陽前社長は、「飛ぶ飛行機を作ることは、それほど大変ではない。規定に合致させながら

作るのが大変」と旅客機を作る難しさを説明している。 

  チーフエンジニアの岸信夫副社長は、これまで開発遅延が生じた理由を、「パートナーとの合意に時間がかか

った」と説明する。岸副社長がパートナーと呼ぶエンジンメーカーや部品メーカーは、ボーイングやエアバスとの

仕事が長く、これまでの開発では経験豊富な彼らが主導権を握りがちだった。このことは、過去に当連載でも指

摘した(「『MRJ』計画遅延の本当の理由」)。 

  しかし三菱航空機のスキルが向上し、パートナー側の理解も進んだことで、足並みがそろってきたという。た

だ、三菱航空機の体制を整えるだけでMRJが型式証明を取得できるわけではない。今後は型式証明を発行す

る国交省サイドの体制強化も不可欠だ。このため、2016年度予算の概算要求では、MRJの安全性審査などを

含めて、233億円(2015年度は194億円)を要求。製造国の政府としての安全性審査の手法充実、飛行試験

に対応した研修強化などを進めたいという。 

  大手航空会社の幹部はかつて、「航空局で、旅客機の構造を本当に分かっている人はいない。何かトラブル

が起きてもFAAの伝聞を鵜呑みにするだけ」と批判していた。こうした意見を受け、国交省は実務経験者を採

用したりして体制を固めている。 

9月2日、オールジャパンで取り組む覚悟を打ち明けた三菱航空機の岸副社長 

  岸副社長は、「MRJについては、会社という枠を超えて色々な取り組みを進めている」と言い、航空機産業に

携わる同業他社の協力を仰ぎながらオールジャパンで挑んでいると説明した。 

  だがその先にもまだまだ課題はある。というのも、航空機ビジネスの本番は、機体を航空会社に引き渡し、そ

れが飛び始めた後にあるからだ。例えばトラブルが発生した場合、定時運航に極力支障を出さないよう、永続

的に整備する体制を整える必要がある。作ったら終わり、というわけではないのだ。 

三菱航空機の森本社長は、MRJ納入後のサポート体制にも今後注力すると発言 

  森本社長は今後の課題として、カスタマーサービスのネットワーク作りを挙げ、「全世界でしっかりと整備でき

るようにしたい」と語った。航空会社をしっかり支援するには、整備面だけではなく、これを支える部品などの物

流網を整えることも重要になる。 

  初飛行は確かに大きな一歩だ。だがそれは、「はじめの一歩」に過ぎない。航空会社が安心して運航できる体

制をいかに維持できるか。国が本気で航空機関連の産業を育成するつもりならば、中小企業支援も含めて、

MRJ開発後の継続的な支援が不可欠だ。  

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【ASIA関連】 

北朝鮮の核施設で動き=プルトニウム抽出準備か―米研究所 

時事通信 9月9日(水) 

  【ワシントン時事】米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は8日、北朝鮮・寧辺に

ある核施設の最新の衛星画像を公表し、車両の移動など新たな動きが確認されたと発表した。 

  目的は特定されていないものの、核兵器の製造に必要なプルトニウム抽出の準備に入った可能性も指摘して

いる。 

  8月22日付の画像は、プルトニウム確保に必要な5000キロワットの黒鉛減速炉の周辺施設や再処理施設

で、以前は見られなかった大型トラックなど複数の車両の動きを示している。寧辺をめぐっては、北朝鮮がウラ

ン濃縮施設の建設工事などを急ピッチで進めていることが分かっている。   

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【USA・北米関連】 

クリントン、トランプ氏が舌戦=イラン核合意めぐり―米大統領選 

時事通信 9月10日(木) 

  【ワシントン時事】2016年米大統領選の民主党最有力候補と目されるヒラリー・クリントン前国務長官(67)と、

共和党指名争いの首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が9日、ワシントンでそれぞれ演説し、イラン

核合意をめぐって舌戦を戦わせた。 

   

  クリントン氏はシンクタンクの会合で「完璧ではないが、強力な合意だ」と述べ、核合意を支持する立場を重ね

て表明。米政権が代われば「どの程度ルールを曲げられるか、イランは次期大統領を試すだろう」としながら

も、「私なら軍事行動もためらわない」と述べ、武力行使も辞さない強い姿勢でイランに合意履行を迫る考えを

示した。 

  クリントン氏は「共和党候補は合意を破棄すると豪語しているが、それは指導力ではなく無謀さの証しだ」と批

判した。 

  一方、トランプ氏は議会議事堂の前庭で開かれた保守強硬派「ティーパーティー(茶会)」の集会で演説。「イラ

ン核交渉ほど無能な交渉を見たことがない。われわれはイランに金をだまし取られている」と指摘した上で、「わ

れわれの指導者は頭が悪い」とオバマ政権の対応を酷評した。   

訪米中国人観光客が爆発的に増加、米当局は個人旅行市場に着目

―中国メディアFOCUS-ASIA.COM 9月10日(木) 

 

米国を訪れる中国人観光客が爆発的に増えていることを受け、米国の在上海領事館商務処と米国旅行促進委

員会(VisitUSA-China)は9日、ザ・ポートマン・リッツ・カールトン上海で米国旅行に関する合同の説明会を

開催した。9日付で中国網が伝えた。 

 

商務処領事は「米国を訪れる中国人観光客は特にこの10年で爆発的に増えた。今後5年~10年はこ

の勢いが続くとみられる。だが、ドライブ旅行のような自由なスタイルはまだ十分に広まっていない。

優れた旅行資源の多くが一般旅行客に知られていない」と語った。 

 

同領事によると、03年に米国を訪れた中国人観光客は11万5000人だったのが、06年には倍増

し、08年~10年になると毎年100万人を超えるようになった。11年~13年は年間200万人

を超えた。10年間有効のマルチビザの発給に伴い、昨年の訪米中国人客は218万人に達した。 

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【EUROPE・その他地域関連】 

「長生きすれば多くの節目」=在位記録更新のエリザベス英女王 

時事通信 9月9日(水) 

  【ロンドン時事】エリザベス英女王(89)は9日、ビクトリア女王(在位1837~1901年)を抜いて英君主として史

上最長在位記録をこの日更新することについて、「長生きすれば多くの節目を迎える。私も例外ではない」と述

べ、内外からの祝賀に感謝した。 

   

  北部スコットランドでの鉄道開通式に出席し、その祝辞の中で語った。 

  一方、キャメロン首相は議会で、「女王をこの上なく誇りに思う。的確な優雅さ、尊厳と品位をもって国に献身し

てきた」と称賛した。ロンドンでは大規模な祝賀式典は催されないが、テムズ川で伝統的な船行列が行われた。   

難民の子供蹴る=テレビ女性カメラマン解雇―ハンガリー 

時事通信 9月9日(水) 

  【ブダペストAFP=時事】ハンガリー南部の村ロスケで、セルビアとの国境を越えて押し寄せる難民を撮影して

いたテレビ局の女性カメラマンが、難民の子供を蹴るなどする場面が放映された。 

  テレビ局は8日、このカメラマンの解雇を発表した。 

  問題のカメラマンが所属していたのは、インターネット番組を放映するN1TVで、ハンガリーの極右政党に近

いとされる。映像でカメラマンは、警官から逃れ子供を抱いて走る難民の男性に足を引っ掛けて転倒させたほ

か、難民の子供を2回にわたり蹴った。   

ギリシャ世論調査、チプラス氏の急進左派が僅差でリード 

ロイター 9月9日(水) 

  9月9日、総選挙を控えるギリシャで8日発表された世論調査結果によると、チプラス前首相

(写真)が率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)が支持率で主要野党・新民主主義党(ND)をわずかにリードし

ている。6日撮影(2015年  ロイター/Alexandros Avramidis)  

[アテネ  9日  ロイター] - 9月20日に総選挙を控えるギリシャで8日発表された世論調査結果によると、与

党・急進左派連合(SYRIZA)が支持率で主要野党・新民主主義党(ND)をわずかにリードしている。 

 

TV局の委託を受け調査会社パルスが実施した世論調査では、チプラス前首相が率いるSYRIZAの支持率は

26.5%で、NDの26.0%を0.5%ポイント上回った。 

 

序盤はSYRIZAが優勢だったが、最近の調査ではNDと僅差になっており、接戦が予想されている。 

 

3位には6.5%で極右政党の「黄金の夜明け」が続いた。 

 

チプラス政権の連立パートナーだった「独立ギリシャ人党」は2.0%と、議席を獲得できる最低得票率の3.0%

を下回った。 

チプラス氏の支持率は41%で、NDのメイマラキス党首の44%を下回る結果となった。 

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【WORLD経済・政治・文化・社会展望】 

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2.Trend 

アップル新製品触ってみた  抜きんでた「心地よさ」  

2015/9/10 日経Net 

  【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アップルが米サンフランシスコのイベント会場で現地時間9日、新製品発表

会を開催した。そこで披露されたスマートフォン(スマホ)「iPhone」、タブレット「iPad」の新モデル、テレビ向けコ

ンテンツ配信端末「アップルTV」にいち早く触ってみた。 

「iPhone6s」はカメラ機能が大きく向上。弱点だった暗所でも焦点がすぐに調整され鮮やかな写真

が撮れる 

■どこかで見た機能だが段違いの完成度 

  今回アップルが発表した新製品群を一見すると「既視感」が漂う。 

  「iPhone6s」の外観は前モデルとほとんど変わっていない。法人向けに投入する大画面版「iPadプロ」の売り

であるペン入力は韓国サムスン電子が2011年から導入済みだ。 

  ティム・クック最高経営責任者(CEO)が「テレビの未来」とたたえる新型「アップルTV」も、音声入力やコンテン

ツの推薦、ゲームといった機能は、米アマゾン・ドット・コムが昨年に「ファイアTV」で導入済み。加速度や傾きを

感知するセンサーがついたアップルTVのリモコンは06年に発売された任天堂の据え置き型ゲーム機「Wii」の

リモコンをほうふつとさせる。 

  これらを単に「後追い」と切って捨てるのは簡単だ。だが、アップルの競争力は細部のつくり込みにある。頭で

は他社の後追いの機能だと分かっていても、実際に触ってみると他社との細部の完成度の違いに驚く。 

  今回、最も触って驚きがあったのが「iPhone6s」の感圧入力「3Dタッチ」だ。アップルウオッチで採用していた

技術だが、ボタンを強く押し込むと、操作できるととともに振動で反応が返ってくる。そのちょっとした「心地よさ」

がクセになる。外観は同じでも操作性は前モデルとは全く別の商品のように感じる。 

  アップルウオッチでもそうだが、こうした振動や音などに細心の注意を払うことで、アップルは他社端末との間

に大きな違いを生み出している。機能向上だけに偏らず、端末に対して感覚的な愛着がわくように工夫している

のだ。成熟し、機能に大きな違いが出にくくなっているスマホ市場でこうした一見無駄にもみえる部分への執拗

なこだわりが違いを生み出している。 

  もちろん機能面でも無駄な操作が減らせる大きな効果がある。電子メールの受信トレーやメッセージのリスト、

リンクの上を強く押し込むと次の画面に進まずに中身の主な情報を「のぞき見」して確認できる。さらに押し込む

と再び振動が返ってくると同時に新しい画面で全体を確認できる。「決定」ボタンを押す回数を減らし、不必要に

別の画面に飛ばなくても済むようにしている。 

  電話ボタンを強く押せば、よく使う連絡先3つが現れすぐに発信できる。ブラウザボタンを押し込むと保存して

いたサイトにそのまますぐに飛べる。フェイスブックのアイコンを強く押すと検索、位置情報の投稿、写真撮影な

ど、よく使う操作の選択肢が画面上に浮かび上がってくる。 

  アップルの端末には、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」搭載端末のような一つ前に「戻る」ための

物理ボタンがない。このために使いにくいと感じることがある。だが、こののぞき見機能によって、画面の移動が

減り、元のページに直感的に戻れない欠点を十分に補ってくれるだろう。 

大型化した「iPadプロ」はペン入力が可能。筆圧まで精緻に遅延なく反映される。直線が引ける

機能もある 

  1200万画素になった背面カメラの性能も目に見えて改善したように感じる。前モデルまでは暗所での撮影は

焦点が合うのに時間がかかり、ピントもぼけやすいことが弱点とされてきた。「6s」ではまだ改善の余地はある

が、焦点が合うまでの時間が大幅に短縮され、精度も高まったように感じた。 

  アップルの発表会には創業者のスティーブ・ジョブズ氏以来の伝統で発表の順番に大きな意味がある。最も

革新的と考える製品やサービスを最後に持ってくるのが基本だ。今回はそれがiPhoneだった。 

  アップルも出来に自信を持っているのだろう。猛烈な追い上げを見せる中国・小米などに対抗するため開発サ

イクルを前倒ししており、年初には製品の規格がほぼ固まっていた。万全の準備をして投入した商品で完成度

も高い。 

■快適なペン入力 

  昨年から商品の位置づけが難航していた新しいカテゴリーのiPadも法人向けで小型ノートパソコンのマーケッ

トを狙う形で落ち着いた。 

  従来より3割大きくなった12.9インチの大画面新型タブレット「iPadプロ」はiPadミニの画面がちょうど2つ入る

サイズにしてある。動画再生とネット検索、「ワード」と「エクセル」など、2つの作業を同時にやるのに全く不便さ

を感じさせない大きさではある。 

  ただ、重量は700グラム超で、男性でも片手で持つには重すぎる。通常は机などに置いて操作することになり

そうで、アップルがあえてスタンドになる純正キーボードを自社開発したのもこのあたりが背景にありそうだ。 

  キーボードは折り畳める本体カバーの中に埋め込まれている。軽さを追求し、繊維を細かく織り込んだ素材で

できている。見た目に高級感は全くないが、キーを打ち込む感覚は快適。画面が大きくなった恩恵で、付属キー

ボードのキーの間隔にも十分な余裕があるのが大きい。ノートパソコンと十分競合する製品に仕上がっている。 

  既存モデルとの最大の違いはペン入力の採用だ。書き心地はアクリル板の上をプラスチックのペンでなぞる

ような感覚だ。非常に滑らかで心地よい。筆圧、濃淡も精緻に再現される。不快さを感じる感覚のズレは全くな

い。定規のボタンを使って真っすぐな線をペンで引くこともできる。先行していたサムスンのペン入力も反応はい

いが、ここまで細かいタッチの差は反映されない。遊びに使うだけなら過剰な性能だろう。 

  サムスンはペンを収納する仕組みをつくったが、アップルは完全に別に持ち歩く形で、この点は少し不便かも

しれない。 

■TVはまだ本気じゃない 

  逆に「心地よさ」という観点でやや完成度の低さを感じたのが新「アップルTV」だ。 

  リモコンについたタッチパネルの反応はゲームに使うにはいまひとつだった。多人数での遊びをアピールして

いるのに純正のコントローラーは1個しか接続できない。このため、実際に多人数で遊ぶときは他社製のゲー

ムコントローラーを買う必要がある。利用者の体験を管理したがるアップルにしては珍しい対応だ。ゲームに関

してはまだ本気ではないと感じる。 

発表会後の体験コーナーではアップルは暗い部屋で画面を浮き上がらせる形で「アップルTV」

を演出 

  現段階では任天堂の「Wii」を使わなくなったゲーム初心者層の一部でも取り込めればいいという程度なのか

もしれない。トレーニングアプリを開発する豪ゾーバをテレビ向けのソフト開発に取り込んだのはその象徴だろ

う。ゾーバはトレーナーに合わせてテレビの前で室内トレーニングする「Wiiフィット」風のライフスタイルを提案し

ている。アップルウオッチの発売で、米では健康管理への意識が一部で高まっている。「Wiiフィット」をやらなく

なった層を狙っているようにみえる。 

  毎日運動のデータを自動的に記録し、成果を「見える化」できるアップルウオッチによって、任天堂が直面した

急速な飽きの問題を少しは緩和できるかもしれない。 

  ソフト市場を厳しく管理し、機能よりもライフスタイルや新しい利用シーンを提案するアップルの経営戦略はも

ともと任天堂に近い。工業デザイナーが経営幹部として大きな影響力を駆使する経営体制も似ている。両社は

テレビ向けソフト市場を狙うにあたって「リビングでだんらんする家族」という同じ客層を狙う。アップルが今後、

経営資源をさらにテレビやテレビゲームの分野に投入するならば最も大きな影響を受けるのはおそらく任天堂

になるだろう。 

  有料テレビが定着している米国では、据え置き型ゲーム機の位置づけが日本とは異なる。米マイクロソフトの

「Xボックス」やソニーの「プレイステーション」などは映画などテレビ向けコンテンツを受信する「セットトップボック

ス」としても使えるお得感からゲームマニア以外にも売れている側面がある。 

  ゲームという入り口を使ってテレビ向けソフト市場を取りにいくアップルの戦略は正攻法といえる。アマゾンと

全く同じ戦略を採っている。ゲームの品ぞろえが充実してくればソニーやマイクロソフトから一部の顧客を奪う可

能性はありそうだ。 

  毎年秋恒例となったアップルの新製品発表会。もはや驚きがないことが当たり前になった。発表前に製品スペ

ック情報が大量流出し、大半は正確なものだ。正式な発表はもはや「答え合わせ」に近い。新製品に盛り込む

機能も大半は最先端とはいえない。ジョブズ氏とともに驚きやわくわく感は失われた。だが、クック体制でも心地

よい直感的な操作を極限まで追究する価値観だけは少なくとも主力製品にきっちりと埋め込まれている。 

病気予防から高度医療まで、ペットビジネス最前線 

小泉秀喜 2015年9月10日 DOL 

少子高齢化とともに様々なビジネスのパイが縮小していくことが懸念される中でも、ペット関連ビジネスは拡大

が続いている。ペットは今や多くの人にとって大切な家族。ペットに費やすお金もどんどん増えている。場合によ

っては家族の中で肩身の狭い思いをしているお父さんより大事にされていることもあるだろう。「ペットの家族

化」に伴って伸びているのが「ペット向け高度医療」と「ペット保険」ビジネスだ。今後も成長が期待できるこの市

場ではどんな企業が伸びているのか。 

「家族化」と「高齢化」で高額化するペットビジネス 

「わが子」と同じ 

  犬と猫を合わせたペット頭数は1990年代から2008年にかけて小型犬ブームがけん引して大きく伸びて

2000万頭を大きく超えた。2009年以降ペット頭数自体は頭打ちになっているものの約2100万頭という水準に

なっている。これは、なんと、15歳未満の人口1600万人を大きく上回っている。そして、ペット関連ビジネスの

市場規模は1.4兆円を超えてなお堅調に成長し続けている

(※1)

。 

  日本のペットビジネスのトレンドは「家族化」と「高齢化」という2つのキーワードで示される。 

  ペットは今や完全に家族の一員であり、大切な子どもたちなので、家の中で大事に育て、洋服もトリミングもフ

ードも人間並みにお金をかけることをいとわない。そうした飼い主の心情にこたえるように、ペット用のグッズや

サービスはどんどん上質化して高額化している。 

  そうして大切に育てられることでペットの寿命は延び、高齢化も進んでいる。犬や猫の寿命はかつて10年程

度といわれていたが、今やどちらも15年程度だ。犬も猫も7歳以上は高齢犬、高齢猫となるが、今はその割合

が4~5割となっている

(※2)

。 

  高齢化が進むと、人間と同じようにガンなどの病気が増える。飼い主としては当然、自分の“家族”がガンなど

の病気で死ぬことは耐えられないから、そうした疑いが出れば動物病院で精密検査をし、深刻な病気なら高い

お金を払ってでも手術をして助けようとする。こうしたペット向けの高度医療は最近では人間並みになっており、

全額自費負担なら何十万円もかかることも珍しくない。 

  また、ペットは家族であるから、もしもに備えて人間の医療保険にあたるペット保険にも加入する――。 

  こうした中で特に拡大著しいのが「高度医療」と「ペット保険」なのだ。今や保険も医療も人間並みになりつつあ

る。 

人間並みの専門診療科が揃っている日本動物高度医療センター 

  今年3月26日、株式市場でユニークな企業の新規上場が話題をさらった。日本動物高度医療センターだ。

動物病院として日本で初めての上場企業となった。同社は2007年に川崎に本院をオープンして以来業績は右

肩上がりを続け、15年3月期は売上18.9億円、経常利益1.4億円まで拡大している。動物病院としては、全国

に16ある獣医科大学付属病院も含めて最大規模だ。 

  オープンしてわずか8年の動物病院がなぜ日本最大級の規模になったのか。それは、潜在的に大きなニー

ズがありながら存在しなかった「二次診療に特化した、専門の診療科がそろった総合的な動物病院」だからだ。

二次診療とは飼い主のかかりつけ医(一次診療施設)から紹介を受けて行う診察のこと。 

  同社川崎本院は放射線治療装置、PET-CT、MRIなどの最先端の検査機器を完備し、循環器・呼吸科、脳

神経・整形科、眼科、腫瘍科、など11の専門の診療科がそろっている。人間の総合病院と変わらないほどの診

療科が揃っており、ここで行われる手術の設備などは全て人間用のものが使われる。 

  先ほども述べた通り現在ペットも高齢化が進み、肥満や運動不足も増えて人間並みに生活習慣病が増加して

いるし、飼い主は家族同然のペットが重大な病気にかかったら、いくらお金を出しても救いたいと思うようになっ

た。 

  しかし、このように動物の高度医療への需要が拡大しているのにその需要を満たす動物病院は圧倒的に不

足している。主に獣医科大学付属病院がその受け入れ先となるが、それが関東では5病院しかない。それでも

全国的にはかなり恵まれている方で、地方ではそうした獣医科大学付属病院が1つもないケースも多い。しか

も、獣医科大学付属病院では少ない人数で教育、研究も行っているため、高度医療のためのマンパワーが慢

性的に不足している。そのため、全国には高度医療を受けられれば助かるのになかなか受けられないというペ

ットたちが多く存在するという。 

  こうした状況に対して、ペットの飼い主だけでなく、街の動物病院の獣医師たちの多くも、とてももどかしい思い

をしている。実は、同社創業者の一人である金重辰雄会長も街の動物病院を30年以上経営して、そんな思い

を抱いていた一人だという。 

  同じ思いの獣医師たちが全国に沢山いたのだろう。同社がオープンしてからわずか8年で連携病院数は

3000を超えた(2015年6月末現在で3032)。街の獣医師としても、「もし自分の手に負えない症例が出てきた

ら、連携先の日本動物高度医療センターですぐに高度な診察が受けられますよ」ということを、連携証を提示す

るなどでアピールすることで飼い主たちに安心感を与えられる。 

  同社の川崎本院では62名もの獣医師が勤務し、しかも、獣医師の3分の2以上は社員としてフルタイムで

診療や手術になどに当たっているし、365日オープンしている。こうした体制のため、高度治療が必要なペットを

すぐに引き受けられ、高度な検査・治療・手術などをすぐに行うことができる。 

  しかし、全国的に見れば動物向け高度医療へのニーズはまだとても満たされているとは言えない。同社の取

締役管理本部長の石川隆行さんは「具体的な数字や計画は今のところ示せませんが、将来的には全国の主要

都市に病院を開設して、救える命は救いたい」と話す。そうした考えから、現在の川崎本院、名古屋分院(2011

年)に加え、2017年には西日本地域の拠点となる大阪分院(仮称)を開設する計画だ。 

  同社以外にもペット保険トップのアニコムが2014年1月に「日本どうぶつ先進医療研究所」を設立して、ペッ

ト向け高度医療の分野に進出してきている。ペット向け高度医療の市場はこれら先駆者たちによっていよいよ

本格的に立ち上がってきた。 

ペット保険の潜在的市場規模は10倍か? 

  ペット向け高度医療よりも一足早く成長軌道に乗り始めているのがペット保険だ。 

  ペット保険の市場規模は2009年から2014年にかけて113億円→340億円と3倍近い成長となった模様

(※

3)

。その一方で、ペット保険への加入率はペット全体の5.2%程度にすぎない。これに対してペット保険先進国で

あるイギリスの加入率は23~25%程度。こうしたデータを根拠に、日本ではまだまだ加入率が高まる可能性が

高いとして、業界トップのアニコム損害保険ではペット保険の潜在的な市場規模を現状の約5倍の1600億円

程度と試算している。しかし、イギリスの場合、犬と猫だけに限定すると現在、ペット保険加入率は45%。この

加入率を日本に当てはめて考えることで、「潜在的市場規模は3300億円になり得る可能性がある」というのが

業界2位のアイペット損害保険の見方だ。 

  では、日本のペット保険加入率は、現状の10倍近いイギリス並の40%台という水準に本当になるのだろう

か。 

  アニコム損害保険、アイペット損害保険のペット保険上位2社は、現在、契約獲得の主戦略としてペットショッ

プ経由のルートに力を入れている。ここ数年、ペットショップでペットを購入すると、ペット保険も勧められること

が多くなったが、その多くはこの上位2社のものだ。そして、この2社によると「店によって異なるもののだいた

い5割~8割くらいの契約率」(アニコム損害保険)、「だいたい8割近い契約率の店が多い」(アイペット損害保

険)という。このようにペット購入時のペット保険加入率が相当に高くなっており、「ペットを飼い始めたらペット保

険に入る」ということが常識として急速に定着しつつある。 

  また、ペットの犬や猫の寿命は15年程度なので、あと10年ほどすると、日本のペットは完全に「ペット保険加

入世代」に入れ替わる。その時には、ペット保険の加入率がイギリス並み、つまり現状の10倍近い市場規模に

なる可能性は十分にありそうだ。 

  ペット保険業界の現在の勢力地図は、契約件数ベースのシェアでアニコム損害保険が58.1%と圧倒的1位

のポジションを維持し、続いてアイペット損害保険が2位で19.4%となっている。 

  圧倒的なトップシェアを握るアニコム損害保険は東証一部上場のアニコムホールディングスの100%子会社

であり、2000年創業という若い会社だ(以下、両社とも「アニコム」)。 

未開拓市場に挑み、顧客囲い込みに成功したアニコム 

  ペット保険は何十年も前から存在していたが、ペット保険の市場がこれだけ急速に立ち上がってきたのはアニ

コムが営業を始めてからであり、現在のペット保険の市場は事実上アニコムによって切り拓かれたといってもい

いだろう。 

  ペット保険自体は2015年現在14社が参入していて、最も一般的な商品は「総合補償型」と呼ばれるプラン

だ。これは、通院、手術、入院などいずれも総合的に補償するもので、費用の50%を補償するタイプと、70%補

償するタイプのものが多い。アニコムのペット保険『どうぶつ健保ふぁみりぃ』も、総合補償型の50%タイプと

70%タイプの2種類だ。 

  同社の総合補償型ペット保険と類似した保険は今や数多く出ている。補償内容自体はそれほど大きく変わる

わけではない。しかも、そうした中で同社の保険料は決して安いわけではない。同業他社の何社かは似たよう

な総合補償型ペット保険でもっと安い価格設定をしている。しかし、実際にはアニコムが圧倒的な高シェアで契

約数の伸びも著しい。なぜか?  それは他社にない強みを持っているからだ。同社の経営企画部課長塩澤みき

さんは、「提携病院数の多さ、保険データの多さ、獣医師資格保有者の社員の多さなどが当社の強みです」とい

う。 

  強みの根源ともいえるものは、全国の5773もの動物病院と提携し、保険金の計算や請求を行うシステムを導

入してもらう形でネットワーク化していること(2015年3月現在)。保険契約しているペットがアニコムの提携病

院で受診すると、窓口精算時に自動的に保険金が計算されてそれが差し引かれた自己負担分だけが請求され

る。保険金はその動物病院から保険会社に請求される仕組みだ。この保険金の「窓口精算システム」が同社の

大きな魅力になっている。ペット保険の保険金請求は1回あたり数千円程度のことが多く、従来の保険ではそ

れをいちいち請求手続きするのは面倒と感じる契約者が多かったという。 

  それなら他社もこのシステムを導入すればいいはずだが、これがかなり難しい。まず、全国の動物病院一軒

一軒と提携する作業が大変だ。病院側には新しい保険会社と提携してそのシステムを導入することにメリットを

感じさせる必要もある。その点、すでに契約者数が多い保険会社となら動物病院側も提携するメリットは大き

い。 

  アニコムは創業当時からそのような仕組みを考え出し、早い段階で動物病院の多くを囲い込んだ。このよう

に、アニコムの成功は契約者にも動物病院にも圧倒的に手軽で便利なしくみを作り上げたこと大きな要因として

挙げられる。 

「予防型保険」というイノベーション 

  アニコムは全国の6000近い動物病院とシステムでつながっていることで、毎月莫大な保険金請求データが

送られてくる。そのデータを解析することで動物の種類や年齢ごとの病気やけがの傾向などを探ることができ

る。そうした分析作業をするときに威力を発揮するのが100名を超える獣医師資格者の社員だ。 

  同社は莫大なデータをこの獣医師を中心に分析し、毎年『アニコム家庭どうぶつ白書』を発行している。この白

書では犬や猫の病気やけがの傾向が詳細に分析されており、全国の獣医や製薬メーカーなどの必読書になっ

ている。それは全国の獣医との関係を強化することに役立つことはもちろん、商品力強化や新規事業の展開に

も生かされている。 

  具体的には、莫大なデータと獣医師を中心に「予防型保険」という全く新しい形の保険を作り上げようとしてい

る。予防型保険というのは、健康に関する情報を提供することで病気やけがの確率を下げて、「アニコムに入っ

たおかげで病気やケガを予防できた」というメリットを契約者に与えることを目指すビジネスモデルだ。 

  その施策の一つが「アニコム予防通信」の発行。これは犬や猫の種類や年齢ごとにその時期に必要な情報ま

とめ、毎月契約者に発信している。 

  たとえば、今年2月には、新しく犬を飼い始めた契約者向けに骨折予防の情報を送付。0~1歳の小型犬の

骨折の発生率は他の年齢と比較して高いことから原因を分析したところ、その7割は飼い主の不注意による落

下が原因だった。また、ソファからの飛び降りやフローリングで滑って転ぶことなども多いという。 

  こうした情報を受け取った契約者は、赤ちゃん犬を抱っこしている時に注意するようになるだろうし、ソファから

の飛び降りやフローリングでの転倒にも注意するようになるだろう。そうすることによって、契約者の0歳の小型

犬の骨折は今後減少していくことが予想される。このように、アニコムでは病気やけがを徹底的に予防してゼロ

に近づけること、人間同様の「予防型保険」を本気で目指している。 

  また、同社は本社のワンフロアをコールセンターにして、獣医師を含めた自社スタッフが全て電話応対し、病

気、けが、しつけ、その他ペットにまつわるあらゆる相談を受け付けている。豊富なデータを持つ獣医師たちに

よる健康相談というサービスは契約者には魅力の一つになっているようだ。このように手厚い付加サービスが

アニコムの魅力になっている。 

手術特化型保険とネット戦略でトップを追いかけるアイペット 

  アニコムを猛烈に追いかけているのがアイペット損害保険(以下、アイペット)だ。アイペットも提携動物病院の

数と、販売代理店となっている店舗数の多さが強み。提携動物病院数はアニコムの6割程度、販売代理店とな

っている店舗数は4割程度とやや水をあけられての2位の座だが、どちらも業界屈指のネットワークを築いて

いる。他社が今からこのビジネスモデルを築くのはかなり困難といえそうだ。 

  それでもアイペットはアニコムと保険契約数で3倍近い差をつけられてしまっている。この差をどう縮めていく

のか。同社の執行役員・萩野研介さんは、「アニコムさんと同じことをしていても追いつけませんから、補償内

容、商品ラインナップ、販売戦略などで差別化を図っています」という。 

  主力商品である総合補償型保険の50%タイプの補償内容は、通院の場合の支払い上限はアニコムが1万

円なのに対してアイペットは1万2000円、年間の支払日数はアニコムが20日までなのに対してアイペットは

22日までとやや手厚い。 

  商品ラインナップとしては、総合補償型の保険の他に手術特化型の保険(商品名『うちの子ライト』)が主力商

品の一つに育ちつつある。このプランは手術をした場合に限りその手術に関連した入院費用なども含めた費用

の9割(上限50万円、年2回まで)が補償されるというものだ。そして、この保険は50%補償タイプの総合補

償型保険に比べて保険料が半分程度から3分の2程度と手ごろだ(注:ただし保険料や保険料の比率は犬や

猫の種類や年齢などによって異なるため、詳細はHPなどで確認を)。 

  最近は犬や猫も人間並みに高齢化してガンなどの大きな病気にかかるケースが増え、そうした場合に手術代

を含めた治療費はこれも人間並みに数十万円に及ぶケースが多い。このような高額な手術代がかかる場合だ

け保障してほしいという場合には、この手術特化型保険は最適な保険商品といえる。 

  アイペットの差別化戦略のもう一つはインターネットによる広告宣伝・販売活動を強化であり、価格比較サイト

のカカクコム経由での契約件数は2014年1月以降18ヵ月連続1位になるなどその成果が出始めている。 

  数年前までに飼われ始めたペットの保険加入率はかなり低い。しかし、そうしたペットほど年齢が高く、今後保

険のニーズは高まってくる。その需要を取り込むにはインターネットによる販売促進が効果を発揮しそうだ。ま

た、ペット保険に新規加入できる年齢制限は、アニコムが7歳11ヵ月なのに対して、アイペットは12歳11ヵ月

とかなり高く、ペット保険未加入の犬や猫が入りやすくなっている。こうした差別化戦略でアニコムの牙城をどこ

まで崩せるか。 

  ペット保険にはその他にも11社がしのぎを削っており、今後新しいプランやビジネスモデルが登場するだろ

う。上位2社は販売ルートの多さとデータの豊富さという強みを生かしてビジネスをどう展開させていくのか注

目される。 

  以上のように立ち上がったばかりのペットビジネス。市場拡大余地が大きい分、今後まだまだ新規のビジネス

モデルが生まれてくるだろう。(取材・文/ライター  小泉秀希) 

※1、3  矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧2015年度版」 

※2  一般社団法人ペットフード協会「平成26年  全国犬猫飼育実態調査」 

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3.Innovation/Motivation 

欧州メディア・グーグル10年戦争  IT企業と連携、不可欠に  

藤村  厚夫(スマートニュース執行役員) 2015/9/7日経Net 

  ニュースを知りたいと思った際に消費者は何を選択するだろう?  今、その選択肢は「テレビ」から「インターネ

ット」へと移ろうとしている。 

欧州では検索の影響力が大きい(米カリフォルニア州のグーグル本社) 

  毎年、ロイターが世界12カ国で行っているニュースに関する消費者調査によると、テレビが上位の国は6カ

国。ネットも同じく6カ国。ネット経由がかろうじて次点の国もあり、世の趨勢はネット経由へと傾いている。「印

刷」を選択する比率は、どの国でもごくわずかだ。 

  では、ネット経由にはどのような要素が含まれているのだろうか。同調査では12カ国でばらつきがあるもの

の、「特定メディア」を指名したアクセスは、押しなべて小さい。日本ではわずか15%。一方で「検索」経由は5割

を超える。「ヤフー」や「スマートニュース」などの「アグリゲータ」(情報収集者)経由は3割弱。欧州でも、検索は

イタリアの7割弱を筆頭に大きな存在感を見せている。 

  検索の影響力が大きい欧州では、グーグルと新聞社らメディア陣営との間で、10年近い争いが繰り広げられ

ている。 

  グーグルが検索技術を用いて最新ニュースの概要と元記事へのリンクを表示する「グーグルニュース」を公開

したのが2006年。同年にはベルギーの出版団体がグーグルに対して、記事へのリンクの不法利用について訴

えた。これは、12年に和解が成立した。同じくフランスでも13年に和解が成立している。 

  13年にはドイツで検索結果に使用料を課す法案が成立した。だが、この法律では手ぬるいとばかりに、翌年

に大手新聞社らがニュース記事抜粋の利用料支払いを求めて独自の法的手続きをとった。同じ年、ポルトガル

でも業界団体がグーグルに対し補償金の支払いを求めた。 

  さらに、14年にスペインで検索結果の表示に対し「請求を義務づける」という厳しい法律が成立した。この法

律では、グーグルと争う気のないメディアも、同社にコンテンツ使用料を請求しなければならない。いわゆる“グ

ーグル税”だ。 

  このように、欧州ではメディア業界がタッグを組み、ロビー活動を繰り広げるなどしてグーグルが稼ぐ広告収入

からの分配や記事の抜粋・引用によってメディアが失ったと算定する収入の補償を求める動きが続いた。 

  グーグルはこうした強硬姿勢にどう対処しているだろうか。ドイツではニュース記事の要約表示を止め、シンプ

ルな検索結果のみとした。スペインではグーグルニュース自体を閉鎖した。 

ふじむら・あつお  法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティ

ング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東

京都出身、60歳。 

  この結果、ドイツでは新聞社らサイトへのアクセスが激減した。これに音を上げたメディア企業との間で、和解

の動きが進んだ。スペインでも同様にメディアへのアクセスが下落し、メディアと消費者に大きな不利益をもたら

しているとする業界団体の報告書が最近になり提出され、深刻な混乱が起きている。 

  一方、ベルギーやフランスではグーグルは和解を選択した。さらに4月には、従来のやり方を反省するコメント

とともに、1億5000万ユーロを投じて遅れているメディアのデジタル化支援の施策を講じる計画を発表した。 

  分かってきたことは、グーグルに厳しい欧州メディア陣営でさえも、グーグルのようなテクノロジー企業なくして

は、デジタル時代の成功はままならないという事実だ。一方的な勝者はありえない時代がやってきている。 

[日経MJ2015年9月7日付] 

【コミュニケーション】 

【リーダーシップ・フォローシップ】 

【ブランディング】 

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4.SOCIETY.CULTURE・EDU.・SPORTS・OTHERS 

日本とアメリカの教科書では、太平洋戦争を 

どう教えているか?【1】プレジデント 9月12日(土) 

全米で高い採択率をもつ『アメリカン・ページェント』(左)。アメリカの教科書には、日本の資料

集にあるようなカラー図版も掲載されている(右『アメリカン・オデッセイ』)。  

東洋哲学研究所研究員  大島京子 

青山学院高等部、東洋英和女学院中高部、創価大学の非常勤講師等を経て現職。論文・著書に「日米比較─

─歴史教科書の中の原爆投下」(『平和研究』)、『世界の歴史教科書──11カ国の比較研究』(明石書店) 

 

  戦後70年目の夏を迎え、太平洋戦争についての関心が例年以上に高まっている。かつての交戦国・日本と

アメリカでは「あの戦争」をどのように語り継いでいるのか?   両国の高校歴史教科書を手がかりに検証してみ

たい。 

 

  多くの人が学問としての「歴史」に初めて出合うのは、どこの国においても学校の教科書だろう。歴史について

の「常識」は、教科書によって形づくられていると言ってもいい。 

 

  しかし、学校教育における自国の「歴史」はナショナル・アイデンティティ(国民意識)形成にかかわっており、各

国の歴史教科書はそれぞれの「歴史観」に沿って記述されている。グローバルなビジネスや社交の場で役立つ

「教養」は、この点を自覚しない限り身につかないだろう。 

 

  そのきっかけとして、かつての交戦国であり、現在は政治・経済・文化などで深いかかわりをもつアメリカで

は、太平洋戦争についてどのように教えているかを見ていきたい。 

 

  「事実を羅列した日本の教科書と異なり、アメリカの教科書では政治家の言葉を引用するなどして、臨場感あ

ふれる書き方をした文学的な記述のものも多く見られます」と話すのは、全米で広く使われている高校アメリカ

史の教科書(20種類以上)を調査した大島京子氏だ。 

 

  アメリカの教科書はA4判ほどの大きさで1000ページ前後の大部であり、その大半が植民地時代以降の約

400年間にあてられている。一方、日本の標準的な高校日本史の教科書『詳説日本史』(山川出版社)はB5判

で約440ページ。この分量のなかで、原始から現代まで万遍なく取り上げている。その記述の厚みに差が出て

くるのは致し方ない。 

 

  アメリカには日本のような全国共通の指導要領や教科書検定制度がなく、各教科書出版社が自由に編集で

きることも表現の幅を広げている。もっとも、「より多くの州や学区で採択してもらえるように、教科書会社は最大

公約数的な記述を心がけているため、大きく内容が異なることはありません」(大島氏)。 

 

  また、日米で大きく違うのは、アメリカの教科書では論争的なテーマについて幅広い意見を提示している点

だ。これは、歴史の授業が生徒に批判・評価能力をつけるため、討論を中心に組み立てられているからだとい

う。 

 

  「例えば原爆投下について、本文では『戦争の早期終結を図るため』という政府の公式見解に沿って記述され

ていますが、討論の素材として原爆投下に対する批判的な意見を列挙したコラムなどを設けている教科書もあ

ります」(大島氏) 

 

  日本では、アメリカ人の多くが原爆投下を肯定しているというイメージが強いが、教科書によってはその是非

や非人道性について考えるきっかけを与えているのである。 

 

  「国際的な相互理解を深めるためには、歴史認識の違いよりも共通する部分、例えば人権や平和など普遍的

な価値の捉え方にフォーカスしていくことが重要だと思います」と話す大島氏。グローバル時代の歴史教育にお

いて重要な視点だろう。 

 

  こうした相違点もふまえて、全米で採択率の高い『アメリカン・ページェント』『アメリカン・オデッセイ』の2冊と、

『詳説日本史』を比較しながら、日米の教科書が描く太平洋戦争の姿を探ってみたい。 

■比較1:真珠湾攻撃 

 

  アメリカ人をかつてないほど団結させた「ハラキリ・ギャンブル」 

 

  ……中国と4年以上も苦しい戦争を繰り広げた日本の帝国主義者は、アメリカの強い要請で撤退することで

面子を失うことを望まなかった。降伏か征服の継続かに直面し、彼らは戦いを選んだ。……日本政府がワシント

ンでの交渉を意図的に延長している間に、致命的な一撃が真珠湾を襲った。1941年12月7日「暗黒の日曜

日」の午前中、空母から飛来した日本の爆撃機が警告なしに襲いかかった。ルーズベルトが議会で述べたよう

に、その日は「恥辱の日として記憶される」こととなった。……ハワイにおける日本の「ハラキリ・ギャンブル」は

短期的には成功した。……しかし奇襲攻撃は、かつてないほどアメリカを奮起させ、団結させた。(『アメリカン・

ページェント』) 

 

  日本の首脳部は、アメリカの膝元を攻撃することを勧める山本五十六提督の計画を承認した。……しかし、山

本自身は対米戦争の長期的見通しについて少しも楽観していなかった。山本は予言的に語った。「対米英戦争

の初めの半年や1年は暴れ回り連戦連勝してみせます。しかし、2年、3年と長引いたら、最終的な勝利は確

信できません」。 

 

  ……警告も無く、日本の急降下爆撃機と雷撃機がハワイの透き通った青空を急襲し、……死と破壊の雨を降

らせた。……日本軍は5隻の戦艦を含む19隻と188機の飛行機を破壊し、2300人以上のアメリカ人が殺され

た。これはアメリカ軍史上、外国軍に喫した最悪の敗北だった。(『アメリカン・オデッセイ』) 

 

  ●日本の教科書では?   

アメリカ側の提案(ハル=ノート)は……満州事変以前の状態への復帰を要求する最後通告に等しいものだった

ので、交渉は絶望的になった。12月1日の御前会議は対米交渉を不成功と判断し、米・英に対する開戦を最

終的に決定した。12月8日、日本陸軍が英領マレー半島に奇襲上陸し、日本海軍がハワイ真珠湾を奇襲攻撃

した。日本はアメリカ・イギリスに宣戦を布告し、第二次世界大戦の重要な一環をなす太平洋戦争が開始され

た。(『詳説日本史』) 

 

どこが違う?  なぜ違う?   

「真珠湾攻撃については、はっきり『不意打ち』『裏切り行為』と表現しています。日本の攻撃は予期していたも

のの、ハワイではなく英領マラヤやアメリカ領フィリピンを想定していたというのがアメリカの見解です」(大島

氏)。山本五十六の「名言」まで引用した『アメリカン・オデッセイ』の臨場感あふれる描写は、日本の教科書には

ない特徴だ。 

日本とアメリカの教科書では、太平洋戦争を 

どう教えているか?【2】プレジデント 9月12日(土)  

 

1942年3月30日、ワシントン州ベインブリッジ島の自宅から連行される日系アメリカ人抑留者。規制に

従って、手で運べる荷物だけを持っている。武装した護送者はこの移住の性質について何を示唆しているので

しょうか?」(『アメリカン・オデッセイ』)(写真=AFLO)  

  戦後70年目の夏を迎え、太平洋戦争についての関心が例年以上に高まっている。かつての交戦国・日本と

アメリカでは「あの戦争」をどのように語り継いでいるのか?   両国の高校歴史教科書を手がかりに検証してみ

たい。 

 

■比較2:日系人強制収容 

  アメリカ人から良識と正義感を奪った。真珠湾攻撃後の「ヒステリー」 

 

  ……第2次世界大戦は、多くのエスニック集団のアメリカ社会への同化を加速させた。……痛ましい例外が、

太平洋岸に集住していた約11万人の日系アメリカ人の苦難だった。その約2/3はアメリカ生まれの米国市民

であったにもかかわらず、日本の侵攻があった場合に工作員として働く可能性を恐れるワシントンの最高司令

部は、力尽くで彼らを強制収容所に駆り集めた。……この厳しい予防措置は不要であり不公平でもあった。しか

し、西海岸における反日偏見の長い歴史に裏打ちされた真珠湾攻撃後のヒステリーの波は、多くのアメリカ人

から一時的に良識と正義感を奪った。 

 

  抑留キャンプはこれらの家を追われたアメリカ人から尊厳と基本的人権を奪い、抑留者はまた数百万ドルの

財産と得るべき利益を失った。戦時中の最高裁は1944年の「コレマツ対米国裁判」で日本人の強制退去の合

憲性を支持した。しかし、40年以上後の1988年、アメリカ政府は公式にその政策について謝罪し、収容所の生

存者に2万ドルの賠償金の支払いを認めた。(『アメリカン・ページェント』) 

 

  ●日本の教科書では?   

……アメリカの世論は「リメンバー=パールハーバー」(真珠湾を忘れるな)との標語のもとに一致し、日本に対す

る激しい敵愾心に火がついた形となった。カリフォルニア州をはじめ、西海岸諸州に住む12万313人の日系ア

メリカ人が各地の強制収容所に収容されたが、ドイツ系、イタリア系のアメリカ人に対しては、こうした措置はと

られなかった。アメリカ政府は、1988年になって、収容者に対する謝罪と補償をおこなった。(『詳説日本史』) 

 

どこが違う?  なぜ違う?   

「1988年にアメリカ政府が公式に謝罪して以降、戦時下の人権抑圧の問題として、日系人部隊の献身とあわせ

て、ほとんどの教科書で掲載するようになっています。日本の教科書でも脚注で触れていますが、日本史の観

点からはあくまで外国の出来事。自由と民主主義の国を任ずるアメリカにとって、日系人強制収容は国内史の

汚点として意識されています」(大島氏) 

■比較3:原爆投下・終戦 

  原子爆弾のきのこ雲のなかで歴史上最も悲惨な戦争は終わった 

 

  1945年7月、……(ポツダム)会議の出席者たちは、日本に対して「降伏か、さもなくば破滅か」という、断固と

した最後通告を出すべく話し合った。……アメリカは途方もない奥の手を持っていた。……1945年7月16日、

ニューメキシコ州アラモゴード近くの砂漠で、専門家たちは最初の恐るべき原子装置を爆発させた。日本はまだ

降伏を拒否しており、……1945年8月6日、アメリカの爆撃機は、日本の都市・広島に原子爆弾を投下した。

目のくらむような死の閃光のなか、煙突状の雲が現れ、約18万の人びとが死亡、負傷し、行方不明となった。

……原爆による破壊に直面しているにもかかわらず、狂信的に抵抗する日本人はまだ降伏しなかった。8月9

日、アメリカは長崎に第2の原子爆弾を投下した。この爆弾は、8万人もの人が亡くなるか、行方不明になると

いう酷い犠牲をもたらした。 

 

  日本は、もはやこれ以上、もちこたえることはできなかった。8月10日、日本政府は講和を求めた。その条件

は、眼鏡をかけた神の子ヒロヒトが、名だけの天皇として世襲皇位にとどまることが認められるというものだっ

た。8月14日、連合国は「無条件降伏」の方針だったにもかかわらず、この条件を受け入れた。日本は、面子

は失ったものの、地位の高い支配者と自分たちの国土を残すことはできた。1945年9月2日、劇的な力によっ

て戦争は正式に終結した。……原子爆弾のきのこ雲のなかで、歴史上最も悲惨な戦争は終わり、同時にアメリ

カ国民は、異常な興奮のなか、ビクトリー・ジャパン・デーを祝った。(『アメリカン・ページェント』) 

 

  ●日本の教科書では?   

……ポツダム宣言に対して、「黙殺する」と評した日本政府の対応を拒絶と理解したアメリカは、人類史上はじ

めて製造した2発の原子爆弾を8月6日広島に、8月9日長崎に投下した。……陸軍はなおも本土決戦を主

張したが、昭和天皇のいわゆる「聖断」によりポツダム宣言受諾が決定され、……8月15日正午、天皇のラジ

オ放送で戦争終結が全国民に発表された。9月2日、東京湾内のアメリカ戦艦ミズーリ号上で日本政府および

軍代表が降伏文書に署名して、4年にわたった太平洋戦争は終了した。(『詳説日本史』) 

どこが違う?  なぜ違う?   

「ほとんどの教科書でマンハッタン計画(原爆開発計画)の詳細が書かれています。犠牲者数が不正確で少なめ

に記載される傾向がありますが、投下直後の広島・長崎の状況も書かれています。1977年の被爆問題国際シ

ンポジウムで確定され、その後国連等で採用している1945年までの推定死没者数は、広島で約14万人、長

崎で約7万人(ともに誤差約1万人)です」(大島氏)---------- 

 

アメリカの教科書は原爆投下について大きくページを割いている。写真の『アメリカン・オデッセ

イ』では本文のほかに「Case Study」として4頁をあてて、原爆投下の背景や賛否両論の意見を紹介し、生徒に

考えるきっかけを与えている。  

■原爆投下は「正義」か?   それとも「人種差別」?  「ホロコースト」?   

  アメリカはかつて戦争で核兵器を使った唯一の国であり、原爆が有色人種の人びとに落とされたという事実に

人種差別の要素が見いだせると主張する批評家もいる。……一部の研究者は、広島と長崎における核のホロ

コーストは第2次世界大戦の最後の一撃ではなく、冷戦の最初の一撃だったと言及し……日本は1945年の夏

にはすでに敗退の色濃く条件付きの降伏を準備しようとしていたが、トルーマン大統領は、これを無視して、彼

の新しい残酷な兵器への使用をついに決断したと述べ、それは日本を降伏させるだけでなく、ソ連を脅すため

でもあったと述べている。 

 

  「原子爆弾の使用は避けられなかったのか?  」。……アメリカの指導者はできる限り早く戦争を終わらせた

かった。ソ連を威圧することは、日本に対する原爆投下の「ボーナス」であったかもしれないが、ソ連の行動に影

響を与えることは決して破滅的な意思決定の主たる理由ではなかった。アメリカの軍事戦略家は、常に原爆が

使用可能になったらすぐに投下することを想定していた。その瞬間は、1945年8月6日にやってきた。第2次

世界大戦の原爆投下の決定についての疑念と自責の念は、アメリカ人の良心を悩ませ続けている。(『アメリカ

ン・ページェント』本文枠外コラム) 

どこが違う?  なぜ違う?   

「本文以外の枠で、『戦争を終わらせるために、原爆投下は必要だったかどうか考えなさい?  』『日本に原爆を

使用すべきだったか、否か?  』など、ほとんどの教科書で、生徒に考えさせるための問題提起や討論のため

の素材を掲載しています。『人種差別』『核のホロコースト』など教科書に載せられた政府見解とは異なる多様な

見解からは、決してアメリカ人のすべてが原爆投下を肯定しているわけではないことが伝わってきます」(大島

氏) 

  出典:『詳説日本史』山川出版社.David M. Kennedy, Lizabeth Cohen, Thomas A. Bailey.The American 

Pageant. Houghton Miffl in Company. Gary B. Nash. American Odyssey.Glencoe Division of 

Macmillan/McGraw-Hill Publishing Company. 

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5.ECONOMY・POLITICS・MILITARY AFFAIRES 

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6.MARKETING 

  なぜ今「福岡移住」がこんなに盛り上がるのか、移住者が語る、東

京にない「余白」の魅力<上>田中 純子 :ライター 2015年09月09日  TK 

 

福岡市内にはステキなシェアオフィスやコワーキングスペースがどんどん増えています! 

九州経済の中心都市として、またアジアへのゲートウェイとしても注目を集める福岡市。震災後は移住先として

の人気も高く、2011年から4年連続で、市外からの転入者数が転出者数を1万人以上上回っている。 

ビジネスにおいて、また生活の場として、福岡のどんなところに魅力があるのか。実際に福岡に移住し、現在は

移住希望者へのサポートを行う『福岡移住計画』の代表としても活動する須賀大介さんに話を伺った。 

博多駅から電車で約30分、中心地である天神からは20分ほどの場所にあるJR今宿駅。駅から5分ほど歩

くと、そこには青い海が広がっている。案内されたシェアオフィス「SALT」は、海を臨む絶好のロケーション。周辺

は静かな住宅地で、波の音が心地よく響く。同団体ではもう一つ、福岡西部の糸島市にも「RISE UP KEYA」とい

うコワーキングスペースを構えている。 

問い続けた「何のための会社か」 

須賀さんは26歳で独立後、ウェブマーケティングやデザインを中心とした事業を展開し、会社は10年で35名

の従業員を抱えるまでに成長、東京で経営者として多忙な日々を送っていた。そんな須賀さんが移住を考える

きっかけとなったのは、やはり東日本大震災だった。 

「ちょうどその頃、何のために仕事をするのか、自分のスキルをどういうことに活かしていくべきなのかということ

を考えていました。利益追求のために東京に拠点を置いておくことや、東京に依存したビジネスを続けていくこ

とに疑問を感じていたんです。 

そこに震災が起きました。私の子どもが2歳、スタッフも子どもを持ち始めた頃。何のための会社なのか、という

問いへの答えは『家族を守るため』だと確信し、それから2拠点ということを考え始めました」  

自身の移住後、『福岡移住計画』の代表としても活躍する須賀大介さん 

最初は長野や山梨など、東京に車で通える範囲を検討していたものの、それでは単なる田舎暮らしになると思

い、範囲を広げて探していた。そんな時に家族で訪れた福岡で、いろいろな可能性を感じたという。 

「自然環境のよさと、街に近いという利便性が両立するところですよね。こんなに自然に恵まれた場所でも、空

港まで約30分。そこから東京まで飛行機で1時間ちょっとですから、2拠点への可能性を感じました。アジアに

近いという点でも、今後のビジネスを考える上で魅力的でしたね」 

しかし、そこには経営者として乗り切らなければならない大きな問題があった。「いちばんのハードルは、スタッ

フに伝えることでした。これまでトップ営業で仕事を作ってきたので、私が東京を離れることによる売り上げ・利

益のダウンは避けられない。正直なところ、全員辞めてしまうかもしれないと思いました」。 

それでも、須賀さんは決断する。「このタイミングでなければ、この先10年、20年と会社を続けていくことは難し

いだろうと考えました。スタッフとは半年間話し合い、半数は辞めることになりましたが、現在それぞれが活躍し

ていますし、残ったスタッフも成長して東京の仕事を任せられているので、結果としていい形が生まれたと思っ

ています」。 

ぶち当たった「2つの壁」 

こうして須賀さんは東京の仕事をスタッフに引き継ぎ、福岡へ発った。経営者が地方に移住する、というと、遠隔

地でマネジメントだけを行うような印象を受けるが、須賀さんはスタッフに「九州で新しい事業軸を作る」という約

束をしていた。 

コワーキングスペース「RISE UP KEYA」の概観 

「リスクを分散させるために、事業の幅を広げることはずっと考えていたんです。東京は運営コストも高いので、

九州で新しい事業を生み出せたらメリットは大きい。新しい可能性を作る、ということで、九州経済の中心である

福岡のマーケットを開拓しようと思っていました。中長期的にはアジアへの展開も考えつつ、です」 

ところが、ここには誤算があった。「東京である程度の実績もあったのでそれなりに自信があったのですが、移

住当初は街から遠い場所に住んだこともあり、まず周囲にマーケットがなかったのです」。 

福岡市内のコミュニティに入るにも距離があったため、その後1年ほどはなかなか仕事が作れない日々が続い

たという。「また、代表が離れたことによって東京の売り上げも激減し、会社としてやっていけるのか、というとこ

ろまで落ち込んでしまった」。 

 

こちらの立地なら、仕事の合間に家族と海や公園に出かけることも出来ます 

こんな厳しい状況から、何が生まれたのだろうか。須賀さんは「まず東京のスタッフのマインドに変化が起こりま

した」と話す。 

「これまではトップダウンで仕事をやってきたのですが、自分たちで仕事を生み出すというスタンスに変わってい

ったんです。1年後くらいには売り上げも持ち直し、今ではしっかり会社を支えてくれています。その頃には私も

福岡で、地元の人に支えられながら、仕事らしいものを少しずつ創りだせるようになっていました。その経験か

ら、ビジネスで地元に貢献したいという思いが強くなりました」 

福岡は俗にいう「支店文化」の街で、東京に比べてチャンスが少ないというイメージがある。しかし須賀さんは、

ここには東京にはない「余白」と「可能性」があると感じたという。それはどんなものだったのか。 

「シビックプライド」を醸成する環境がある 

「たとえば、このオフィスもその一つ。福岡は都市の機能と美しい自然が両立している、ということはよく言われ

ていますが、その価値を活用できている事例はまだ少ない。そこに『余白』があると思いました。 

地元に住んでいる人にとっては当たり前かもしれませんが、東京からの移住者には、この環境が宝に見えるの

です。地域に隠された資源が、外から入ってくる人間の視点によって発掘される。どんな地域でも同じことが言

えると思います」 

福岡に住んでみて、そこでビジネスを展開してみて、実際に感じた東京との違いは何だろう。 

「福岡は民間と行政の距離が近く、ビジネスの面でも行政が協力的ですね。企業側にもビジネスをしながら地元

に貢献する『シビックプライド』を醸成する環境がある。企業が単体で利益を上げて会社がよくなればいい、とい

うことではなく、福岡の経営者は、福岡のためになることは何か、ということを、つねに頭の片隅に置いているよ

うに感じます。 

また、人と人とのつながりが深く、人を紹介するという文化が根付いている。何か事を起こしたい時に、誰かに

『こんなことをやりたい』と伝えると、『じゃあ、こういう人がいるから紹介するよ』という具合です。 

移住計画についても知人に構想を話したところ、その人の知人を介して市の企業誘致の中心的な部署につな

がり、プレゼンテーションさせてもらえたんです。2ステップで行政の中枢につながるなんて、東京では考えられ

ないことです」 

※後編では「福岡移住計画」が現地でどんな活動をしているのか、余すところなくご紹介します。お楽しみに! 

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7.MESSAGE 

マイナンバーは自虐の番号小田嶋 隆2015年9月11日(金)  NBO 

小田嶋 隆コラムニスト1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。

1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

 

  財務省がまとめた「軽減税率」案の内容が明らかになった。 

  新聞の記事を読んで、ちょっと茫然としている。 

  あまりにもバカげて見えるからだ。 

  もし財務省が、本気でこのプランを実行するつもりでいるのだとしたら、彼らの現実感覚は、かなり致命的にズ

レていると申し上げなければならない。 

  あるいは、一連の記事は、いわゆる「観測気球」であるのかもしれない。というよりも、今回の「案」は、消費税

率についての実際の運用を、財務省が想定している最終的な落としどころに落着させるための、とりあえずのブ

ラフなのかもしれない。つまりこれは「見せ金」なのだ。いくらなんでも、まさかこのまま実行するつもりのガチな

計画ではないはずだ、と、そういうふうに解釈しないとこちらの理解が追いつかない。 

  念の為に、「財務省案」の概要を説明しておく。 

  軽減税率の対象となる品目は、基本的に、外食サービスを含む「酒類を除くすべての飲料と食料品」というこ

とになっている。ここまでは良い。問題は、税率を軽減する方法だ。 

  財務省によれば、消費者はいったん10%の消費税をそのまま支払い、その後、対象品目について個々の消費

者が1年分の還付分を申告することで、増税分の2%の還付を受け取る設定だ。 

  あらかじめ特定の品目について税率をカットした値段をつける方法はとらないわけだ。 

  還付金額のカウントには、2016年の1月から運用が始まるマイナンバー制度で交付される「個人番号カード」

を利用する。 

  具体的には、「マイナンバーカード」(仮称)を、店舗のレジに置かれた読み取り機にかざすことで、対象品目に

ついての「軽減ポイント」が蓄積される。 

  還付の金額は、富裕層に過大な恩恵が及ばないようにするため、年間4000円程度におさえる。 

  どこから突っ込んだら良いのやら見当がつかない。 

  とりあえず、消費者が負担する労力と、そのことから得られる利得について考えてみよう。 

  われわれはまず、「マイナンバーカードj(仮)」を常に持ち歩かねばならない。で、飲食や買い物で会計をする

度に、そのマイナンバーカードの提示を求められる。これは、面倒を嫌うタイプの客にとって、大きなストレスに

なるはずだ。 

  私自身の話をすれば、私は、飲食店やコンビニで使えるポイントカードを持っていない。やむを得ないなりゆき

で、ポイント対象となるカードを何枚か(もしかしたら10枚ほど)作ったことはあるが、持ち歩くことはしていな

い。どこに保管してあるのかも、もはや把握していない。 

  なので、たとえばレジの人間が 

「××ポイントカードはお持ちですか?」 

  という質問を浴びせてくる度に微妙にイライラする。で、相手が 

「ティ……」 

  の音を発音したタイミングで、最後まで言わせずに 

「持ってません!」 

  と、返事をカブせることにしている。 

  おとなげない対応である旨は自覚している。 

  でも、仕方がないのだ。 

外出にあたって、私は、ウォークマンのイヤホンを装着していることが多くて、だから、レジの人間に話しかけら

れることは大変な負担なのだ。 

  もちろん、レジ係にしてみれば、耳にイヤホンを突っ込んだおっさんの相手をすることは、わりあいに大きな負

担なのかもしれないし、その客が、こっちの質問をろくに聞こうともせずに 

「持ってません!」 

  と切り口上で言い放つのを聞かねばならない経験は、神経のすり減る試練なのだとも思う。 

  が、悪いのは私ではない。 

  レジ係のおばさんが間違っているのでもない。 

  すべての責任は、すべての顧客に対して同じ質問を繰り返すことを、レジ係に強要しているコンビニチェーン

のフランチャイジーの強欲に帰されなければならない。 

  日本の小売業の現場には、ずいぶん前から 

「スマイル0円」 

  という呪いがかかっている。 

  これは、ちょっと聞くと、世界に冠たる我が国のホスピタリティーを象徴する、うるわしい覚悟であるかのように

聞こえる。 

  が、実際のところ、この決まり文句は、レジに立つ人間に、甲子園球児の全力疾走義務に似た無限のサービ

ス競争を強いる、呪いを帯びた呪文なのだ。 

  「スマイル0円」は、接客を担当する労働者の主たる業務である顧客へのホスピタリティあふれるサービスが、

無償労働である旨をあらかじめ宣言している。ということは、このスローガンは、接客業の人間にとっては、労働

強化ワード以外のナニモノでもないのである。 

  しかも、当然といえば当然であり、意外といえば意外でもあるのだが、売り手が苦しんでいるからといって、そ

の分だけ客が楽になるわけではない。 

  実際、レジ業務の煩雑化は、売り手と買い手の双方を疲弊させている。 

  レジが扱うプリペイドカードやポイントカードの種類と枚数が増えれば増えるだけ、レジ周りの装備は複雑化

し、業務は煩雑になる。客の側も、複数のカードを持ち歩き、場面ごとに使い分ける手間とともに、それらについ

ての紛失や盗難のリスクを負わねばならない。 

  このうえ、駄菓子屋の店先や屋台の狭いレジに新しいカード読み取り機と、新しいカード所持問答と、新たなカ

ード提示ミッションとカード紛失リスクが追加されることで、いったい誰が得をするというのだろうか。 

  少なくとも、客は得をしない。 

  売り手も、忙しくなるだけだ。 

  このシステムから利得を得るのは、おそらく、マイナンバーカード読み取り機の製造メーカーならびにその販売

業者と、データの蓄積ならびに管理センターに天下るであろう財務省の役人だけだ。それ以外の人間には何の

メリットもない。 

読売新聞が報じているところによれば、財務省は、今回の事業の発足に先立って『買い物記録を集約するデー

タセンターの新設などインフラ(社会基盤)整備に約3000億円を投じる』ことを想定している(ソースはこちら)。 

  単純に考えれば、約1億2000万人の日本人に1人あたり最大4000円を還付するために、3000億円を投資

するわけだが、還付を申請しない(オレはしないよ)国民が少なからずいるであろうことを考えれば、還付金の総

額は、たぶん3000億円を下回る。 

  ということは、この財務相のプランは、うまくいっても3000億円を還付するために3000億円の予算を費消す

るお話、ということになる。 

  なんというバカな寓話だろうか。 

  記事を読むと、読み取り機の設置以外に、「軽減ポイント蓄積センター」(仮称)なる役所だか施設だかが新設

される運びになっている。実際に制度が動き出せば、これ以外にも様々な経費がかかる。と、当然のことなが

ら、このシステムが動き出した後、継続して使われる予算は到底3000億円では済まないことだろう。 

  こんなことなら、はじめから、制度構築のためにかかる予算を、そのまま国民に分配した方が話が早いじゃな

いか、と、そう思うのは私だけではなかろう。 

  システムとしてペイしていないだけではない。 

  個々の消費者の立場からしても、この軽減税率はまるでペイしない。 

  1年間食料品を買う度に毎回レジでマイナンバーカードを提示し続けて、おまけに期末には自力で書類を書い

て還付申告にでかける手間をかけて、それで支給される金額の上限が4000円なのだとすると、そのアルバイト

は、時給に換算して、いくらになるのだろう。とてもではないが、私は従事する気持ちにはなれない。 

  この件について、麻生太郎財務大臣は 

「カードを持ちたくなければ持って行かないでいい。その代わり、その分の減税はないだけだ」 

  と説明している。 

  なるほど。麻生さんらしい言葉だ。 

  この発言に対して 

「不遜だ」 

「ばかにしている」 

「国民を物乞い扱いにするのか」 

  という声が上がっているようだが、私は、麻生さんの解説は的確だと思っている。 

  事実として、われわれは、地面にばら撒かれた米粒を拾い集めるみたいにして還付金をかき集めなければな

らない。この点は誰の目にもはっきりしている。四つん這いになるのがイヤなら、還付金なんか期待するな、と、

これは、はじめからそういう話なのだ。麻生さんの説明は、粗雑ではあるかもしれないが、制度の要約として的

確だ。私は評価する。悪いのは麻生さんではない。制度そのものだ。 

  麻生大臣がこの発言に先立って漏らした 

「軽減税率はめんどうくさい」 

  というコメントも、まったく正しい。私は、この発言も支持する。 

  なぜなら、軽減税率は、麻生さんのおっしゃるとおり、実にめんどうくさい措置だからだ。というよりも、消費税

の利点である徴税のシンプルさと課税の公平さを台無しにしている意味で、軽減税率は、そもそも筋が悪いの

だ。 

  2017年の4月に、消費税の税率が10%に引き上げられることについては、かねてから賛否がある。 

  景気回復を重要視する人々は、税率の引き上げそのものに反対している。 

  昨年(2014年)の4月に、税率が5%から8%に引き上げられて以来、回復基調にあった景気が、停滞に転じ

ていることを軽視するべきではない。もしこのまま、既定方針にこだわってさらに税率を引き上げたら、日本の経

済は不況に逆戻りしてしまう。そうなれば、経済のあらゆる面に悪影響が出ることはもちろん、税収そのものも

大幅に目減りすることになる。そうなってしまっては本末転倒ではないか、というのが、彼らの主張の骨子だ。 

  一方、財政の健全化を重視する人々は、17年4月の税率アップを、ずっとそのつもりで織り込まれている決し

て譲ることのできない一線であると考えており、ここで安易な妥協をすると、日本の財政は後戻りのできない借

金体質に陥ってしまう旨を繰り返し主張している。 

  いずれの主張が正しいのかは、私には判断がつかない。 

  ただ、双方の顔を立てているかのように見える軽減税率という解決策の方向が、最悪の一手であることだけ

は、なんとなくわかる。 

  なんとなれば、軽減税率は、景気の悪化を止められないばかりでなく、財政の悪化を防ぐこともできないはず

だからだ。 

  おまけに、それは、不要な会計業務を増やし、不要な税務書類を増やし、不必要な役所を新設させ、不要なカ

ード読み取り機の生産と不要なカード犯罪誘発機会をもたらし、国民の生活をいたずらに煩雑化する 

  ひとつも良い点がない。 

  景気への悪影響が心配なら、税率アップの時期を延期すれば良いし、財政が心配なら果然と税率を上げれば

良い。いずれの道を取る決断もつけられずに、現金を泥道にぶちまけてそれを国民に拾わせるみたいな挙に出

ることは、どっちにしても最悪だと思う。 

  財務省案での還付方法は、たぶん、マイナンバーカードのスタートを邪魔することにもなるだろう。 

  ここで、マイナンバー制度そのものについて、立ち入った議論をするつもりはない。 

  賛否両論が渦巻きすぎていて、短い残り行数では、とても整理がつかないからだ。 

  ただ、彼の制度がもたらすであろうとされている「メリット」が、「事務の簡略化」である点は、はっきりしている。 

  この点については、ほとんど異論はないはずだ。 

  その事務の簡略化という、マイナンバー制度のメリットを、財務省が持ちだした還付制度は台無しにしかねな

い。私はそう思っている。 

  というのも、マイナンバー提示による税還付ポイントのカウントは、レジ業務に余計な手間と手順を持ちこみ、

税務処理に新しい項目を増やし、マイナンバーの尻尾に余計なデータをまとわりつかせることになるわけで、マ

イナンバー制度の目的である、各種業務の簡略化にモロな形で逆行しているからだ。 

  のみならず、軽減税率ポイントのレジ配布設定は、マイナンバーカードの所持を一般化させることを通じて、カ

ードの紛失リスクと、データ漏えいリスクと、詐欺被害リスクを野放図に拡大することになるはずだ。 

  カードというのは、どんなものであれ、紛失するように設計されているものだ。 

  持って歩いて邪魔にならないということは、置き忘れても思い出しにくいということであり、掏られて気付きにく

く、落として音がしにくく、投げてよく飛ぶということでもある。そんなものが紛失しない道理はないのである。 

財務省は、還付金をエサに、マイナンバーカードの普及を促進しようとしているのだと思う。あるいは、高速道路

のETC割引料金でドライバーを誘引することで、ETCカード&車載器の普及を果たした成功体験が、こういうプ

ランの案出につながっているということなのかもしれない。 

  ETC割引料金は、たしかに魅力的な誘引材料だった。 

  私自身、国交省に足元を見られている不快さは感じたものの、ETCカード&車載器のもたらす利便性と経済

的メリットに抵抗しきれず、結局、車載器を搭載することになった。 

  ただ、ETCカードのケースと、このたびのマイナンバーカードのケースは、似ているようでいて、微妙に違って

いる。 

  ETCカードは、若干の初期投資を要したとはいえ、結果として、高速道路の料金所渋滞を大幅に軽減する意

味でメリットの方が大きい改革だった。ドライバーにとっても小銭を出す手間や、料金所でいちいち停止する面

倒くささを解消してくれた意味は大きい。 

  その点、マイナンバーカードは、少なくとも軽減税率を蓄積するポイントカードとして使う用途について言うな

ら、明らかに手間を増やしている。 

  さいごに、以下は私の邪推にすぎないとも思うのだが、せっかくなので書いておく。 

  思うに、財務省の上の方の人たちの本当の狙いは、マイナンバーカードに個人の買い物のデータを記録させ

るところにあるのかもしれない。そうでなくても、彼らは、納税や預金の基礎データのみならず、交友関係や宗教

思想に関連するあらゆるエビデンスをマイナンバーにヒモ付けることを目論んでいるわけで、最終的に、お国の

上の方の人たちは、全国民のビッグデータを一元管理する夢を見ているのかもしれないということだ。 

  だとすると、これは、一大事だ。 

  ここで重要なのは、現金が匿名性を持っているということだ。 

  現金は、「誰が」「どこで」「何を」「いくらで」買ったのかを、取り引きが終わった瞬間に消し去ってしまう。だから

こそ、われわれは、現金の匿名性に乗っかって経済活動の自由を謳歌している。これはとても大切なことだ。 

  経済の自由は、必ずしも犯罪や後ろ暗い使途を意味するわけではない。 

  が、自由は、すべての活動を含んでいる。 

  説明しにくいのだが、とにかく、カード決済なりクリック決済なりで、追跡可能な形の買い物をした瞬間に、われ

われの経済活動の自由は、半分ぐらい「敵」の手に渡っている。 

  たとえば、amazonで何かを買うと、後々、かなりの期間、 

「あなたにおすすめの◯◯」 

  という、こっちの足元を見たメールやポップアップ広告やアフィリエイトに悩まされることになる。amazonの中に

棲んでいる人工知能は、私が何を買ったのかをすべて記憶している。何を買おうとしてあきらめたのかも、もち

ろん記憶している。で、彼らは、そうしたデータを通じて、私がどんなものを欲しがる男で、どういう種類の持ちか

け方にヨワくて、どの程度のブツに手が出る経済力を持っているのかについても、驚くほど正確な予断を抱いて

いる。 

  これらのことを通じて私たちが学ぶべきなのは、ものを買うということが、同時に誰かに弱みを握られることを

意味しているということだ。つまり、現金以外の方法で何かを買うことは、誰かに自分の心臓をわしづかみにさ

れることに近い出来事なのである。 

  しかも、資本主義社会の中でわれわれが生きることは、「お金を使う」ということとほぼ同義だ。ということは、

経済活動の自由が失われた瞬間に、われわれの自由のうちのかなりの部分は死ぬ。 

  人に言えない何かを買う時、誰にも言えない店で他人に明かせない関係の誰かと会う時、決済は必ず現金で

処理されなければならない。なぜなら、カードであれ小切手であれ名前にヒモ付けられたカネを使うことは、その

カネを使った状況についてのあらゆる周辺情報を追跡可能な形で、全世界に向けて公開する準備を整えてしま

ったことを意味しているからだ。 

  4000円のために何を売り渡すことになるのかを考えれば、答えは、すでに出ている。 

  私は、軽減税率の還付を辞退する所存だ。 

  事態をはっきりさせるために、財務省宛てに 

「要らねえよばか」 

  というメールを送ることにしよう。 

  麻生さんが返事を書いてくれると良いのだが。 

(文・イラスト/小田嶋 隆) 

[310]もっと切ない恋をしてほしい  島地 勝彦2015年9月10日(木)NBO 

島地 勝彦コラムニスト「週刊プレイボーイ」の編集長として同誌を100万部雑誌に。各誌編集長を

歴任後、2008年11月集英社インターナショナル社長を退き、現在はコラムニスト。シガーとシングルモルトと

ゴルフをこよなく愛する。 

 

勉強と男、どちらを優先すべきでしょうか 

Q島地さんのコラム連載19回目の吉日(2009年9月24日)に来日、九州にあるユニークな大学で日本語を

ゼロから覚え、昨年春に上京してきたが、定時に退社する日々に飽き、思い切りナレーター(発音を直すた

め)と中小企業診断士の学習に挑戦しました。しかし最近は30、40代の男性(既婚&独身、日、中、韓国人)

からの誘いが絶えず、「来るもの拒まず、去るもの追わず」というポリシーで縦横無尽に色々な男性を知りた

いが、資格もストレートに合格したいです。体のために睡眠時間は確保したいので、もしそのうち両立ができ

なくなったら、私はどちらを優先すべきでしょうか?(24歳・女性) 

ミツハシ:シマジさん、お帰りなさいませ。スコットランドはいかがでしたか? 

シマジ:今回もいい旅だった。だが、スコットランド滞在3日間で5つも蒸留所を回らされたから、クタクタだよ。

「Pen」のサトウは若いからいいが、こっちは74歳の老人だ。さすがに疲れたね。 

ミツハシ:今回は5カ所も蒸留所を訪ねたんですね。いい樽に巡り合えましたか? 

シマジ:そこに抜かりはない。どうもスコットランドのウイスキー業界では、サロン・ド・シマジのラベルを貼るとシ

ングルモルトが飛ぶように売れるという噂がまことしやかに広がっているようでね。どこも歓迎してくれた。いろい

ろとテイスティングさせてもらった中から、「それを持っていってしまうのか!」と蒸留所の連中が悔しがる樽ばか

りを選んできたから、読者諸君は愉しみにしていてくれ。秋が深まる頃にはリリースするからな。 

ミツハシ:愉しみにしております。さて、今週は恐らく本コラム初の外国人からの相談です。現在は化学メーカー

にお勤めとのことですが、なかなか立派な日本語ですね。来日6年、ゼロから日本語を学んでこれだけ書ける

というのは驚きです。 

シマジ:語学のセンスがあるんだろうな。日本人以外に中国人や韓国人の男性から誘いが絶えないとのことだ

から、たぶん中国系か韓国系の女性だろう。 

ミツハシ:「来るもの拒まず、去るもの追わず」と書くくらいですから、サバサバとした性格なんでしょう。ただ、こ

のままだと勉強との両立が難しくなるかもしれないと感じるほど男性の誘いが多いようで、どちらを優先すべき

かという相談です。 

シマジ:これは言うまでもない。勉強に決まっている。勉強というのは、いつ始めても遅いということはない。50

歳だろうが60歳だろうが、意欲さえあれば新しい知識を身に付けられる。70代の俺だって、実体験や知人との

会話、あるいは1冊の本から興味を持った事柄を、深く探求するなんてことは今でもよくある。80代、90代にな

っても知的好奇心を持ち、学び続けている人は多いはずだ。 

  何歳になっても人は学べる。これは間違いなく真実だ。だが、もう一面の真実というのがある。早く学び始めれ

ばそれだけ遠くに行ける。俺はこの年齢になっても英語を学び続けている。着実に前進してはいるが、その歩

みはやはりカタツムリのように遅い。残念ながら、人間の脳みそが新しい知識や技術を吸収できるスピードとい

うのは年齢とともに低下していく。 

ミツハシ:特に言葉は、いつ学び始めるかが重要でしょうね。 

シマジ:相談者がこれだけちゃんとした日本語を書けるというのがいい証拠だろう。10代のときに日本にやって

きて、その柔らかい頭に日本語のシャワーを浴びせた。そしていま、発音をより自然なものにするためにナレー

ションの勉強をしている。恐らく専門の学校に通っているのだろう。20代前半の高性能な脳みそと耳があれば、

努力次第で相談者は日本人以上に美しい日本語の発音を手に入れられるかもしれない。いまさらどうしたって

ジャパニーズイングリッシュの発音を変えようがない74歳からしたらうらやましい限りだ。 

ミツハシ:相談者はそのうえに中小企業診断士の勉強もしているようです。 

シマジ:俺は中小企業診断士というのがどんな勉強をするものなのかよく知らないが、たぶん会計だとか税務な

んかの数字がからむ難しいことも学ばなければいかんのだろう。 

ミツハシ:経済学や経営学、経営法務などの勉強も必要ですね。 

男を断ってでも勉強に打ち込むべし 

シマジ:そうするとやはり暗記しなければならないことも多いわけだな。これも若いうちの方が絶対に有利だ。 

  相談者の24歳という年齢は学ぶという点でとても適した時期にある。そのありがたさを噛みしめてほしい。逆

に言えば、いま集中して学ばなければ、相談者もあっと言う間に20代後半に足を踏み入れ、30代を迎える。そ

うなると20代の頃よりは物覚えは悪くなるだろう。資格試験なんていうのは、それを使って稼いだり、給料を高く

したりするためのものだから、いつまでも趣味のようにグズグズ学ぶものじゃない。一発で合格してすぐに資格

を生かせるようになれば、それだけキャリアの選択肢も多くなる。男なんていつだってどうにでもなるのだから、

これから1年は男を断ってでも勉強に打ち込むべきだよ。 

ミツハシ:でも、もしかしたら、24歳の相談者は若いいまだからこそ、男からの誘いが絶えないと思っているんじ

ゃないですか。男からチヤホヤされるいまという時間も謳歌したいと。 

シマジ:男からの誘いが絶えないとのことだが、これは相談者が女である以上当たり前のことでね。女が男と寝

るというのは歯を磨くくらい簡単なことなんだよ。女が「あなたに好意を抱いていますよ」という態度を分かりやす

く示しさえすれば、たいていの男はベッドに引きずりこめる。 

  恋愛の主導権も、性愛のマスターキーも女が握っているんだ。やりたい動物である男がその欲求を満たすた

めには、女に鍵を開けてもらわなければならない。そのために男は四苦八苦しているわけだ。24歳が28歳に

なろうが、33歳になろうが、42歳になろうが、55歳になろうが、男をその気にさせる色気と愛嬌があれば、男の

誘いは絶えやしないよ。 

  それよりも俺が気になるのは「来るもの拒まず、去るもの追わず」という相談者のポリシーとやらだ。いろんな

男と寝たところで、人生の糧になったりはしない。「縦横無尽に色々な男性を知りたい」という言葉にも反論した

いね。四方八方地の果てまで、老いも若きも問わず、男という男をことごとく狩猟したいのかのような言い草だ

が、「無尽」に男を知るなんてそりゃあ無謀だ。 

ミツハシ:確かに、この相談文を読んだときに「縦横無人」には少し笑ってしまいました。もしかしたらこの相談者

は中国系で、日本語と中国語で「縦横無尽」のニュアンスが少し違っているのかもしれませんね。「自由奔放」く

らいの意味でしょうかね。 

シマジ:なるほど、そうかもしれないな。中国語に詳しい読者がいたら、コメント欄で教えてくれ。いずれにせよ、

相談者がいろんな男を知りたいと思っているのは確かだろう。だが、せっかく性愛のマスターキーを握っている

んだから、男はしっかり選んでほしいね。男にも一流と二流と三流がある。二流、三流の男たちと肌をどれだけ

合わせても、それは性欲の処理にしかならない。 

  そうか、もしかしたら、相談者は定期的にセックスをしていないと悶々として勉強に身が入らない体質なのかも

しれないな。 

ミツハシ:体質って……。男子高校生じゃないんだから。 

シマジ:女もいろいろだ。そういう女も現にいる。もしそうなら、男断ちは勉強の効率を下げてしまうから、2週間

に1度くらいはスッキリしてもいいだろう。いずれにせよ、それは受験生のオナニーのようなもので、性愛の深淵

に近づく行為でも、男と女の真実を覗き込む行為でもない。だから、いまはできるだけ勉強に集中して、資格を

取ってから縦横無尽に遊べばいい。 

ミツハシ:何だか真っ当すぎる回答ですね。 

明るい肉食女子には日本で成功を掴み取ってほしい 

シマジ:読者を面白がらせるために、相談者の身にならない回答をするのでは本末転倒だろう。若くして日本に

やってきて、努力して学び続ける相談者はきっと野心家のはずだ。男性に対する好奇心も旺盛な肉食女子だ

な。こういうガッツのある明るい肉食女子にはぜひ日本で成功を掴み取ってほしい。だからこそ、自分を安売り

するような軽いセックスからは距離を取ってほしいんだよ。 

  もっと真剣な、そして切ない恋をしてほしい。自分の中の弱さや人恋しさと正面から向き合う恋愛をしてほし

い。その男と合うときには2、3日前からドキドキワクワクするような恋をし、抱かれるときには頭の中が真っ白

になって背中が汗でぐっしょりと濡れるような性愛を体験してほしい。そういう恋愛なら、人間としての成長に結

びつくと思うんだ。 

  それに睡眠不足はお肌の大敵だ。若いうちは無理が利くかもしれないが、若い頃の不摂生は後で肌に出る

ぞ。これからもっともっといい男と素敵な恋をするためにも、睡眠はちゃんと取った方がいい。 

ミツハシ:「乗り移り」に舞い込む女性の相談は、エネルギッシュな肉食系のものが多い傾向にありましたが、外

国から日本にやってきたこの相談者も相当なものですね。 

シマジ:全くだ。女が強くなっているのは日本だけじゃないんだな。完璧な日本語を操り、中小企業診断士の資

格を持つ24歳の外国人女性ということになれば、いろんな仕事のチャンスが広がるだろう。仮に中国出身だと

したら、日本の企業と中国の企業を結ぶような仕事で活躍できるんじゃないか。何なら、さらに会計士や弁理士

の資格まで取得したら、もっと仕事が広がるだろう。簡単な道のりではないだろうが、人生一度きりだ。自分の才

能と可能性を思い切り広げてほしいね。 

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