上海漢院顧問のつぶやきNo.348

目次 

1.特集   

【中国関連】 

【日本関連】 

【アジア関連】 

【米国・北米関連】 

【欧州・その他地域関連】 

【世界経済・政治・文化・社会展望】 

2.トレンド 

3.イノベーション・モチベーション 

4.社会・文化・教育・スポーツ・その他  

5.経済・政治・軍事 

6.マーケティング 

7.メッセージ 

  【上海凱阿の呟き】 

記事 

1.今週の特集 

【CHINA関連】 

「スパイ」容疑、2邦人拘束=5月から浙江省などで―中国 

時事通信 9月30日(水) 

  【北京時事】中国東部の浙江省で5月ごろから、日本人がスパイ行為に関わった疑いで拘束されていることが

30日、分かった。 

  このほかに東北部の遼寧省でも同様の容疑で邦人が拘束されているという。具体的な容疑の内容は明らか

でないが、中国は昨年11月、スパイ行為の定義などを定めた「反スパイ法」を制定するなど、取り締まりを強化

している。 

  関係者によると、拘束されたのはいずれも民間人。うち浙江省の日本人男性は日本から渡航し、軍事施設の

近くで拘束されたという。遼寧省の日本人は「ビジネスで中国に来た」と話していたとされる。 

  拘束は長期に及んでおり、当局が目的や背景などを含め、慎重に調べている可能性がある。 

  中国では広東省の珠海で3月に、米国人企業家の女性が拘束された。国家機密を盗んだ疑いが持たれてい

るという。反スパイ法は「海外の機関・組織・個人などが中国の国家安全に危害を加える活動」などとスパイ行

為の類型を定めており、習近平指導部は軍事情報の流出や敵対行為を強く警戒している。 

  日本の外務省海外邦人安全課は「個別の事案については答えを差し控えたい」と話している。 

遅れて会場入りした安倍首相、プーチン露大統領のもとへ小走りで駆け寄る

姿がかわいいと話題=中国ネット「日本人らしい礼儀正しさ」「まるで秋田犬」 

Record China 9月30日(水) 

29日、中国メディア・新浪は、国連総会出席のため米ニューヨークを訪問中の安倍晋三

首相が、プーチン露大統領との会談で、遅れて会場入りしたため小走りで駆け寄って握手したと報じた。その様

子を伝えた日本メディアの映像が、中国のネット上で話題だ。  

2015年9月29日、中国メディア・新浪は、国連総会出席のため米ニューヨークを訪問中の安倍晋三首相が、

プーチン露大統領との会談で、遅れて会場入りしたため小走りで駆け寄って握手したと報じた。 

 

笑顔で小走りする安倍首相の様子を伝えた日本メディアの映像が、中国のネット上でも転載され、話題となって

いる。 

 

「日本人らしい礼儀正しさ」 

「安倍氏のうれしそうな表情がかわいい。萌(も)えた」 

「安倍氏のことが好きになった」 

 

「こういう姿勢は中国の指導者も学ぶべき」 

「プーチン氏の笑顔もいいね」 

「熊にまたがるほどのプーチン氏も、顔がほころんでいたな」 

 

「これじゃまるで飼いならされた秋田犬だ」 

「遅刻魔のプーチン氏を待たせるとは、安倍氏もいい度胸をしている」 

「日本メディアはこういう映像をよく放送できるよ。中国なら…」 

中国銀聯カード、海外での出金に年間上限額設定=約190万円まで 

マカオ新聞 9月30日(水) 

マカオのATM(資料)  

  中国の為替管理当局が、中国本土発行の人民元建て銀聯カードについて、香港やマカオを含む海外におけ

る年間の出金額上限を設定することが明らかになった。実施目的は海外における反マネーロンダリングや金融

リスク予防のためとのこと。 

 

  マカオの日刊紙澳門日報が10月1日付紙面で報じた記事によると、従来の海外における1日あたり出金上

限額の1万人民元(日本円換算:約19万円)に加え、今年(2015年)10月1日から年末までは累計5万人民

元(日本円換算:約95万円)、来年は年間累計190万円の出金上限が設定されるという。 

 

  なお、1日あたり、年間の上限額は、いずれもATMを使った出金に限られ、ホテル、レストラン、ショップなど

における通常のカード決済については、それぞれのカードの利用限度額に準ずるという。同紙では、今回の措

置に伴う中国本土旅客の購買行為へのマイナス影響はほとんどないとしている。 

 

  中国本土からの現金の持ち出しについては、1回あたり2万元(約38万円)が上限となっており、海外におけ

る銀聯カードを使った出金には一定の需要が存在するとみられる。 

中国家庭の不動産所有率83%  金融情報サイト調査 

FOCUS-ASIA.COM 9月30日(水) 

 

金融商品情報プラットフォーム「銀率網」が公表した「中国市民金融能力報告」によると、家庭の収入のうち最も

重要なものは給料で、資産収入の比率は低かった。9月28日、中国証券網が伝えた。 

 

この2年、インターネット金融の発展で貯蓄意欲はやや低下し、83.81%の回答者が投資商品がさらに増えた

ら、家庭の預金を減らして投資に振り向けてもいいと回答している。 

 

また、賃借の相手を見ると、多くは友人を頼り、小規模金貸し業、民間賃借業、インターネット個人間金融を使う

割合はそれぞれ7.78%、7.02%、6.76%だった。 

 

中国家庭の不動産所有率は83.43%に達し、二軒以上の不動産を所有している家庭も40.07%あった。ま

た、そのうちの52.07%は、不動産資産額が家庭総資産の半分以上を占めた。31.99%が不動産を投資手

段の一つと見ており、不動産資産が家庭総資産の8割以上を占める家庭は北京、広州、上海、江蘇、福建省に

集中した。 

 

ただ、資産ポートフォリオの面から考えると、家庭の資産の大部分が不動産に集中し、健全とは言えずリスクは

高い。不動産は流動性に劣り、家庭で多額のお金が必要になったときに、すぐに現金化できないからだ。また、

経済危機が発生した際は不動産資産価値の下落が家庭資産に大きく影響する。 

 

定年後の生活については、半数以上の市民が定年後は現役時代の生活水準の80%を維持したいと回答した

が、回答者の7割以上は老後の準備を始めるのは40歳以降と答えた。 

 

調査結果をみると、中国市民の金融知識はやや少なく、収入、消費、投資に対する考え方は保守的といえる。 

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【JAPAN関連】 

安倍内閣“新3本の矢”は経済政策失敗の目くらましだ 

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 【第31回】 2015年10月1日 DOL 

  安倍晋三総理大臣は、新しい3本の矢を放つとした。これは、「金融緩和政策から足を洗う」という政府の政

策転換の表明だ。2%のインフレ目標は、政府にとって重荷になっている。 

金融緩和政策からの撤退が明白に表明された 

  安倍晋三総理大臣は、9月24日、総裁選出後初めての記者会見を行なった。その中で、「本日からアベノミ

クスは第2ステージに入る」とし、(1)国内総生産(GDP)600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロという新

しい3本の矢を放つとした。 

  この中に、金融緩和政策や2%のインフレ目標は入っていない。これまでアベノミクスの金看板だった金融政

策は、第2ステージでは消えたことになる。 

  マクロ政策(金融緩和政策や財政拡大政策)からの撤退は、すでに6月の成長戦略(「日本再興戦略」)の中

で、「デフレ脱却を目指して専ら需要不足の解消に重きを置いてきたステージから、人口減少下における供給

制約の軛を乗り越えるための腰を据えた対策を講ずる新たな『第二ステージ』に入った」という形で示されてい

たが、それがより明確な形で表明されたことになる。 

転換の理由は、経済政策失敗から国民の目をそらすこと 

  マクロ政策から撤退する理由として、それが失敗したからだとは、もちろん言っていない。安倍総理は、これま

での経済政策の成果に言及し、「(経済情勢は)もはやデフレではないという状態まで来た。デフレ脱却はもう目

の前だ」と述べた。 

  しかし、次項で述べるように、消費者物価上昇率はマイナスになっている。多分、今年いっぱい程度はこの状

態が続くだろう。そして、さまざまな指標が経済の停滞を示している。今回の政策転換の本当の理由は、これま

での経済政策の失敗から国民の目をそらすことだ。 

  安倍内閣が政権を取って以来、円安が進行して企業の利益が増加し、それによって株価が上昇した。アベノミ

クスの支持者は、これが成果だと言うだろう。しかし、円安による企業の利益は、健全なものとは言えない。しか

も、円安によって本来期待される輸出増大効果は実現していない。 

  したがって、私は株高がアベノミクスの成果を表すことにはならないと思う。株価の上昇は所得分配の悪化を

もたらすだけであり、日本経済を回復させるものでも、回復の結果でもない。 

  ただ、それにもかかわらず、投機家や経済界が株高を支持してきたことは間違いない。株価こそが安倍内閣

の経済政策に対する信頼をつなぎとめてきた。 

  ところが、その最後の砦が崩れつつある。8月末以降の株価下落は、アベノミクスにとって深刻な事態である。

しかも、次項で見るように、インフレ目標は実現に程遠い。したがって経済政策論議をマクロ経済の問題から引

き離すことが必要と考えられているのである。 

間違いが明白になった2%目標、日銀はハシゴを外された 

  政府がいま最も触れたくないのは、「2%インフレ目標」だろう。 

  原油安を背景に、日本銀行が目安とする生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比上昇率は、2015

年8月にはマイナスに落ち込んだ(図表1参照)。 

  消費者物価は、輸入物価の動向で大きく影響を受ける。その半面で、国内の需給関係にはほとんど影響され

ない。だから、簡単に予測できる。 

  図表2に示すように、輸入物価の変化がほぼ半年程度の時間遅れを伴って、対前年比で10分の1程度の

規模で、消費者物価指数の変化となって現れる。最近の状況を見ると、円安による物価上昇効果が薄れ、その

かわりに原油の影響が明確になっている。このために消費者物価の伸びがマイナスになったのだ。 

  15年秋の消費者物価上昇率がマイナスになるだろうことは、拙著『2040年問題』(第2章、ダイヤモンド社、

15年)ですでに予測したところだ。 

  輸入物価指数の最近の対前年比はマイナスなので、消費者物価指数前年比も、少なくとも今年いっぱい程度

は、マイナスの状態が続くだろう。したがって、日銀の目標は達成できない。 

 

 

  ただし、これは、日本経済にとっては望ましいことだ。とくに原油価格下落は、明らかに望ましい事態だ。国民

にとって望ましい事態が日銀の目標に反するという事態は、なんとも説明に窮する。 

  一方、円安の影響で食料品価格が上昇するという傾向が明確に表れている。食品については確かにデフレ

脱却が実現しつつある。しかし、その結果、何が起こっているかといえば、買い控えだ。そして、これが消費全体

の伸びを抑制する。 

  問題は、2%目標を実現できるかどうかではない。「物価が上がれば経済が活性化する」という基本的な考え

が誤っていることである。 

GDP600兆円の実現には物価の安定・消費増加が不可欠 

  GDP600兆円は実現できるだろうか?  もちろん、想定する数字を操作すれば、どのような結果を示すことも

できる。実際、内閣府による「中長期の経済財政に関する試算」(2015年7月)によると、「経済再生」ケースで

は、21年度におけるGDPは、616.8兆円となる。ただしこれは、18年度からの実質成長率が継続的に2%を超

えるとか、17年度の消費者物価指数が3%になるなど、かなり非現実的な想定を置いた上での結果である。こ

の数字は、GDP600兆円が実現できそうであることを示すものではなく、逆に、それがいかに難しいかを示すも

のだ。 

  実際、より現実的な見通しである「ベースラインケースケース」では、試算の限界である23年度までにGDPが

600兆円を超えることはない。20年度では552.1兆円だ。 

  過去の実績を参照すれば、GDP600兆円の実現はかなり困難と考えざるをえない。 

  日本の名目GDPは、1990年以降(2007年を除いては)510兆円未満だ。リーマンショック後は、14年まで

500兆円未満の状態が続いた(図表3を参照)。 

  IMFの予測では、日本のGDPは今後成長すると予測されているものの、20年においても534兆円である。 

 

  成長のパタンも重要だ。公共投資を増やすことによって政策的に成長率を押し上げるのも、原理的には可能

である。ただし、現実に重要なのは、GDPの約6割を占める個人消費を増やすことだ。 

  現実の経済では、消費税率引き上げに伴う反動減の影響一巡後も、個人消費は低迷を続けている。最近で

は、先に述べたように、食料品などの物価上昇が原因だ。 

  だから、個人消費を増やすには、物価を安定させることが必要であり、そのためには、金融緩和を停止する必

要がある。 

  政府部内にも、円安・物価高は望ましくないので、2%のインフレ目標は望ましくないとの意見が出てきている

ようだ。 

金融緩和の巨大なコスト、いま必要なのは追加緩和ではなく出口戦略 

  2013年に金融緩和を導入したときの論理から言えば、いまインフレ率が低下し株価も下落しているのだから、

追加緩和が必要ということになるだろう。実際、10月末の追加緩和を予測する声もある。しかし、そうしたことを

しても、成果は得られないだろう。 

  中国で株価対策をとったにもかかわらず、株価の下落を阻止できなかったのと同じことが起きる。だから、追

加緩和をしても政策に対する信頼が低下するだけのことである。 

  多くの人は、追加緩和がないと金融政策の効果がないような錯覚に陥っている。しかし、金融緩和政策は現

に継続中なのであり、追加緩和が行なわれなくても、大量の国債購入が実行されていることに注意しなければ

ならない。 

  これによって、市中に存在する国債が品薄になる。また、国債発行に対する制約がなくなる。そして、財政規

律が弛緩する。実際、来年度予算に対する要求は膨れ上がっている。 

  また、日銀に巨額の国債残高が積み上がる。仮に金融が正常化して金利が上昇すれば、巨額の損失が発生

する。 

  金融緩和のこうしたコストを考えると、いま必要なのは、追加緩和でなく、緩和政策の出口を探ることである。 

生産性向上のための構造改革はどこに消えた? 

  今年の6月に発表された「日本再興戦略」では、生産性の向上が必要であるとした。この認識は正しい。しか

し、今回の安倍総理大臣の会見では、それはどこかに姿を消してしまった。 

  新しい技術によって新しい可能性が開けている。それを現実化するためには、参入規制を緩和する必要があ

る。これができるかどうかが、日本の将来にとって大きな意味を持つのだが、そうした議論はなくなってしまっ

た。 

  いまひとつ興味深いのは、「日本再興戦略」では、人工知能やビッグデータなどかなり高度な技術について言

及されていたのだが、それが今回は消えてしまったことだ。年金機構の情報漏出問題が明るみに出て、日本の

サイバーセキュリティは人工知能やビッグデータを使うにはあまりにお粗末であることが露見したことの影響だ

ろうか? 

  一昨年の成長戦略では、コーポレイトガバナンスが重要だと強調されていた。しかし、ガバナンスの最先端の

仕組みを備えていると言われた東芝で、不正経理事件が発覚したため、コーポレイトガバナンスという言葉は、

どこかに吹き飛んでしまった。 

  生産性の向上こそ構造政策の柱である。それを実現する具体的な手立てが、流行語を追いかけるだけで、こ

のようにコロコロ変わるのでは困る。 

見えない社会保障制度の方向性、出生率引き上げより移民を検討すべき 

 「需要政策から構造政策へ」ということの実態は、マクロ政策の効果が怪しくなったので、社会保障や出生率の

問題にすり替えようということだ。 

  社会保障制度への取り組みが必要なことは、誰でも認める。ただし、それは、「介護離職ゼロ」というような狭

い範囲の問題ではない。 

  問題は、社会保障制度全体としていかなる方向を目指すかだ。とりわけ、需要を所与として負担増加を求める

のか、それとも負担を抑えて需要をそれに合わせるのかについての基本戦略が必要である。この2つは財政

収支という点からいえば同じだが、政策の内容はまったく異なる方向のものだ。負担増加を求めるとすれば、ど

こまで求めるかが問題だ。 

  安倍総理大臣は、出生率を引き上げるという。出生率が上昇するのは、望ましいことである。しかし、それによ

って経済問題が解決されるわけではない。これが何らかの政策を行なっているという免罪符に使われては困

る。 

  雇用情勢が好転していると言うが、その実態は、若年者労働力の減少による人手不足の顕在化だ。労働力

不足が問題であるのであれば、まず何よりも、移民を検討すべきだ。 

消費税率を10%に引き上げても財政再建目標は達成できない 

  もうひとつの重要な課題は、消費税率の引き上げである。2017年4月からの消費税率10%への引き上げに

ついて、前記の会見で安倍総理大臣は、「リーマンショックのようなことが起こらない限り、予定どおり実施する」

と述べた。ここには、つぎの2つの問題がある。 

  第1は、予定どおりの引き上げが行なわれるかどうかに、まだ不確実性があることだ。税率の引き上げが行

なわれなくても、直ちに財政赤字が拡大するわけではない。しかし、財政再建に対する政府の基本的な姿勢を

示すという意味で、これは重要なのである。 

  第2は、消費税率を10%にしたところで、財政再建目標は実現できないことだ。しかも、政府は財政再建目標

としてプライマリーバランスを用いているが、財政再建の問題は、プライマリーバランスの問題だけではない。 

  すでに日本国債の格付けは引き下げられている。それが進んで日本経済に対する信頼が失われ、日本売り

的な資本流出が生じれば、日本は破たんするだろう。 

これまでの経済政策に関する「中立的第三者評価委員会」が必要だ 

  いま必要とされるのは、思いつき的キーワードを乱発することではない。まず、これまでの経済政策について

の客観的な評価が必要だ。 

  金融緩和は、本当は何を目的にして行なわれたのか?  そして実際にはどのような効果を発揮したか?  こ

れらが不明なまま、2年間半が過ぎてしまった。 

  税制面では、法人税減税を行った。その効果の検証も必要である。また春闘に介入して賃金を引き上げようと

したが、実質所得ははかばかしく増加せず、消費も増加しない。設備投資も増加しない。輸出も増加しない。結

局のところ、これまでのGDP成長は、消費税増税前の駆け込み需要と財政拡大によって実現しただけのことな

のである。 

  経済財政白書は、本来は以上のような問題に関して客観的な評価を示すべきだ。しかし、実際には、政権に

気を使って、その役割を果たしていない。 

  最近では、「中立的第三者評価委員会」がはやりだが、そうした評価が最も必要とされるのは、政府の経済政

策ではないだろうか?  もっとも、本来なら、国会の委員会がその役割を果たすべきなのであるが。 

「辺野古が唯一」盛り込まず=国防権限法の最終案―米議会 

時事通信 9月30日(水) 

  【ワシントン時事】米上下両院の軍事委員会は29日、2016会計年度(15年10月~16年9月)の国防予算

の大枠を定める国防権限法の最終案を発表した。 

  米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先について「名護市辺野古が唯一の選択肢だ」と指摘した下院

案の条文は、法案本体に盛り込まれなかった。 

  同じく下院案にあった「集団的自衛権の行使容認を含め、日本の防衛政策の変更を支持する」とうたった表現

も、本体への明記は見送られた。日米関係に関する文言は、本体ではなく最終案を作成した上下両院協議会

の法案説明の部分に移されている。 

  協議会はこの中で、普天間移設に関し、現行計画を引き続き推進するよう促すと表明。日本の安全保障政策

全般をめぐっては「世界と地域の平和に、より積極的に貢献する日本の決意を歓迎する」と述べるにとどめた。   

「積極的平和主義」で戦死者を出し、安倍首相が窮地に立たされ

る日田岡俊次 [軍事ジャーナリスト] 【第56回】 2015年10月1日 DOL 

  新安全保障関連法案は9月19日に強行採決により参議院で可決、成立し同月30日に公布され、来年3月

末までに施行されることとなったが、現実の問題が発生するのはその後だ。 

  他国の部隊などが襲撃された際の救援に出動する「駆け付け警護」で自衛隊員に死傷者が出たり、危険の大

きい「治安維持」や「補給・輸送」の任務を引き受けざるをえなくなり、安倍政権と自民・公明党が窮地に陥る可

能性は低くない。無理な減量をしてなんとかリングに上がったボクサーが試合開始のゴングを待つのに似た格

好だ。 

停戦合意が崩れた南スーダンで自衛隊に犠牲者が出る可能性大 

昨年の陸自と米陸軍の合同訓練より  Photo:JGSDF 

  まず危険に直面するのは南スーダンに派遣されているPKO部隊だ。2013年1月から施設部隊(工兵)を中

心に約330人(のち410人に増加)が派遣され、道路などのインフラ整備を行う予定だったが、同国でクーデタ

ー未遂事件が起こるなど、治安情勢は悪化して工事どころではなくなり、避難民の救護に力を入れざるをえなく

なった。 

  エジプトの南、ナイル川上流にあるスーダンは1899年からイギリス・エジプトの共同統治下に置かれ、1956

年に独立したが、北部はアラブ系のイスラム教徒が圧倒的に多く国の主導権を握り、南部は黒人地域でキリス

ト教徒になった者も少なくなかったため内乱が頻発した。 

  特に1983年からは激しい内戦となり200万人以上が死亡した。2011年7月にスーダン政府は南部10州

(人口約1000万人)の独立を承認し「南スーダン共和国」が成立した。だが、今度はその内部で最多のディンカ

族と、それに次ぐヌエル族との対立が起こり、2013年7月にディンカ族のキール大統領がヌエル族のマシャー

ル副大統領を解任すると、軍の一部が反乱を起こして激しい内戦となり、50万人が国外難民、150万人が国内

避難民になったとされる。 

  避難民は戦闘を逃れて国連施設の駐屯地に逃げ込むことがあり、2013年12月には韓国の工兵部隊が避難

民を守るため、日本の部隊から小銃弾1万発を一時借用する事態にもなった。兵士が避難民と共に駐屯地に

逃げ込み、それを追う側の兵士と戦闘になったこともあり、「PKO部隊が反徒をかくまっている」と南スーダン政

府から非難されることすら起こる状況だ。 

  PKO協力法での参加条件「紛争当事者間の停戦合意」は南スーダン内で別の内戦が始まった時点で崩れ、

日本はPKO部隊を撤収させるべきだったろうが、政府は「現在の事態は武力紛争ではない」として派遣期限を

延長した。 

  今年8月26日、国連などの圧力を受けていたキール大統領はマシャール前副大統領が率いる反乱軍との

停戦協定に署名したが、それにある「首都ジュバの非武装化」などに異を唱えており、部族間の紛争が収まる

可能性は低いだろう。 

  この状況下では日本の部隊の駐屯地に救いを求めて逃げ込んだ避難民を、その相手側の襲撃から守るため

戦闘をせざるをえないとか、他国の部隊に救援を求められ「駆け付け警護」に出動して戦闘する事態は十分考

えられ、それで死傷者を出さずにすめば奇跡的だ。 

  南スーダンだけでなく、自称「イスラム国」との地上戦に米国の次の政権が乗り出せば、輸送、補給、治安維

持に自衛隊の参加を求められ、一層の危険を負う可能性もある。 

  もし棺桶が戻ってくれば、政府は「英霊」の無言の帰国をできる限り荘重に迎えるだろうが、新安保法制には、

産経・フジ系列の世論調査ですら合憲論は21.7%、違憲論はその2.7倍の57.7%だから、死傷者が出れば国

民の間では「だから言わんことではない」との政府批判が高まるだろう。「戦死者を鞭打つような言論は許せな

い」と首相が叫んでみても、かえって不信感を浸透させる結果になる。「靖国神社に祀るべきだ」という右翼の主

張も出て、政府を一層苦しめかねない。 

自衛隊が築き上げてきた信頼は「違憲論」再燃で破壊された 

  憲法9条を起草したマッカーサー大将自身が1950年に朝鮮戦争が始まるとすぐに警察予備隊の設立を命じ

た自己矛盾による正当性への疑問に自衛隊員は長く引け目を感じ、実態以上に「継子扱いをされている」との

不満を抱いてきた。だが、東日本大震災など多くの災害派遣での献身的活動と、戦後70年が経過し旧軍の横

暴と惨敗、戦禍の記憶が薄れたことも手伝って、国民の自衛隊に対する支持は高まり、今年1月の内閣府によ

る世論調査では自衛隊に「良い印象」を持つ人が41.4%、「どちらかと言えば良い印象」が50.8%で、支持率は

計92.2%に達した。 

  これほどの支持率は日本のどの官庁も組織も期待できず、自衛隊はついに念願の「国民的合意」を得た感が

ある。今回の新安保法制に反対する人々も大部分は「自国の防衛のために個別的自衛権を行使するのはやむ

をえないが、他国の戦争の手伝いをするのはいかがか」と言っており、自衛隊の存在を違憲とする人は、純粋

な法理論は別として、現実問題としてはごく少なくなったと見られる。 

  ところが安倍首相らは新安全保障法制で「違憲論」を再燃させてしまった。今後集団的自衛権行使や武力行

使を伴うPKOに部隊が派遣される際、「違憲、反対」を唱える人々は世論調査を見れば少なくないだろうし、積

極的行動はしなくても内心そう思う人は国民の半数を超えるだろう。その中で危地に赴く隊員の士気は疑問だ。

安倍政権はやっと自衛隊が築き上げた「国民的合意」を一撃で破壊した結果になりそうだ。 

日本の戦争参加を防いできた安保条約第5条の存在 

  日本が戦後70年間の平和を保ち、自衛隊が1人の戦死者も出さなかったのは「日米同盟があったため」と

の説を信じる人は少なくないが、これは変な説だ。米国自身が第2次世界大戦後、約20回もの戦争・武力行

使を行い、戦争をしていない年は稀なほどだ。現在も「イスラム国」の航空攻撃を行っている。 

  このため、米国の同盟国もしばしば戦争に引き込まれた。例えばベトナム戦争では米国のアジア・太平洋地

域の同盟国である韓国、オーストラリア、タイ、フィリピン、ニュージーランドが米国の要請に応じて参戦した。韓

国は5万人もの兵力を送り5700人の死者を出したが、負け戦の中で米国では「韓国軍の残虐行為でベトナム

人の民心を失った」など責任を転嫁する説も出て、酷い目にあった。 

  朝鮮戦争、湾岸戦争のように国連安全保障理事会の承認があって参戦するのは是としても、承認なしに始め

たイラク戦争でも、イギリス、オーストラリア、NATOに入ったばかりのポーランドが当初から参戦し、治安維持

の過程ではアメリカ以外に39ヵ国(日本を含む)が参加し、うち27ヵ国は約310名の死者を出した。アフガニス

タン戦争ではアメリカ以外の参戦国49ヵ国(同盟国でない国を含む)は約1140名の死者を出している。 

  これから考えれば、日本が70年間戦争に加わらず、戦死者を出さなかったのは米国の同盟国だったから、で

はなかろう。それよりは日米安保条約5条で「日本国の施政の下にある領域における」武力攻撃に対してのみ

共同行動を取る、となっているため、米国は日本にベトナム戦争などへの参戦を求められなかったことが主な

要素、と考えられる。 

  1951年9月8日、サンフランシスコ講和条約と同時に結ばれたいわゆる第1次安保条約は、朝鮮戦争中だ

ったため米軍が占領中と同様に基地を使い、日本国内の騒乱の鎮圧もできる内容だった。1960年1月19日

に改定された安保条約は米国が他の諸国と結んでいた同盟条約に近いものとなったが、それにもかかわらず

共同防衛は日本防衛に限るとした第5条を入れることにしたのは当時の岸信介首相の隠れた功績で、少なくと

も日本がベトナム戦争に巻き込まれることを防いだ。 

  これは実に貴重なカードで、日本は基地を無償で提供する代わりに、米国の戦争への参加を避けることがで

きた。他方米国にとっても日本の基地を使えることは冷戦時代のソ連との対抗上大きな価値があった。 

  米国が財政事情から今後海外への駐兵を削減するとしても、絶対的に優位な海軍力による世界的制海権は

確保し、自国の防衛と発言権確保に役立てたいだろう。艦艇の修理能力が高い横須賀、佐世保の軍港と岩国

の海軍航空基地を失えば、西太平洋での制海権は保てない。米海軍が管理権を持つ海外の港は日本の2港

だけだから、他国なみに海上自衛隊が管理し、米軍艦の使用を許せば、それだけでも日米同盟は維持できる

だろう。 

米国の武力行使への協力を断る口実がなくなった 

  アメリカ人の中には日本の基地を借り、維持費まで日本に出して貰っていることを忘れて「米国は日本防衛の

義務を負うが、日本は米国防衛の義務を負わないのは不公平、片務的だ」と言う人もいるが、私が「では横須

賀、佐世保から去るのか」と反論すると驚いて引き退った経験は何度もあった。 

  冷戦時代に潜水艦120隻余(うち50隻余は原潜)を持つソ連太平洋艦隊と向き合うなど今日よりはるかに安

全保障環境が厳しかった時期でも、安保条約5条を含む日米同盟は保たれたし、今日でも米国側からそれを

改定しようとする提案は全くない。 

  国会は1960年6月19日に、共同防衛は日本領域への攻撃に対処する場合だけ、との条件で新安保条約

を承認し、批准されたのだから、あえてそれと異なるような行動を取ろうというのなら安保条約を改定して国会

の承認を受けるのが筋ではないか、と考える。 

  安倍政権は、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を改定して「グローバルな協力」「積極的平和主義」を強調

し、それに合わせた国内法を作った以上、米国などから協力を求められた場合、従来のように「集団的自衛権

行使は憲法上許されていないのであしからず」と角を立てずに断る口実は使えない。「危険が大だから」と言え

ば「他国に危険を負わせ、自分は安全な任務を選ぼうとする」と卑怯者扱いされる。 

  より率直に「安全保障理事会の決議がなく、自衛でもない武力行使は国連憲章違反だから協力できません」と

か「シリアの反政府勢力への支援は間接侵略の疑いがあるからやりません」などと言えば正面衝突になってし

まう。 

  さりとて安易に協力して死傷者が出て、作戦全体も失敗に終われば、イラク戦争の開戦責任の追及がアメリ

カ、イギリス、オーストラリアなどで起きたように、日本でも関係者の責任追及が行われることになり、外務官僚

も余計な危険を負うことになる。 

  安倍首相は祖父が残した遺産とも言うべき安保条約5条を事実上放棄する決断をしたも同然だ。武田信玄

が育てた歴戦の武将達の諫言を嘲笑して、長篠城外の設楽原で丘の上の織田、徳川軍の陣地に突進した武

田勝頼や、パパ・ブッシュの注意を振り切ってイラク攻撃を行った2代目ブッシュ大統領の例を思わざるをえな

い。 

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【ASIA関連】 

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【USA・北米関連】 

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【EUROPE・その他地域関連】 

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【WORLD経済・政治・文化・社会展望】 

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2.Trend 

記録的台風が多い年は、なぜ、大地震が多いのか?―担当編

集による著者インタビュー【前篇】 

2015年10月3日 広瀬  隆 [ノンフィクション作家] DOL 

『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。 

壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の

運命』が増刷を重ね、第5刷となった。 

本連載シリーズ記事も、累計216万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。 

このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者に、担当編集者がインタビュ

ー。 

8月11日の川内原発再稼働後、豪雨による鬼怒川決壊、東京で震度5弱、阿蘇山噴火、南米チリ沖マグニチ

ュード8.3地震による津波余波など、日本列島を襲う自然災害が続出している。 

はたして『東京が壊滅する日』は、本当にくるのか? 

担当編集者が著者を直撃した。 

「阿蘇山噴火」は何を意味するのか? 

広瀬  隆(Takashi Hirose)1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書

館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学

書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッ

ツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカ

の経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本

主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。 

編集  熊本県の阿蘇山が、9月14日(月)午前9時43分に噴火。噴煙は2000メートルまで達し、火口からは

るかに離れた60キロ地点でも、降灰が確認されました。 

  私にとって阿蘇山と言えば、新婚旅行のランチで食べた草千里レストハウスの「阿蘇の活火山カレー」を思い

出します。 

  活火山カレーの説明によれば、「ドーナツ状に盛ったライスは阿蘇の外輪山、カツは阿蘇五岳を表しており、

中央部分のくぼみ(カルデラ)から自家製のルゥ(マグマ)が溢れ出す姿は、阿蘇山をイメージした」とあります

が、あの「活火山」がついに大規模の噴火を起こしました。 

  映像を見るだけでも、すさまじい黒煙が出ていましたが、広瀬さんは、この噴火をどう見ていますか? 

広瀬  阿蘇山では、1979年9月の噴火で3人が死亡しました。今回は幸いにも被害者は出なかったといって

も、相当大きな噴火であることに間違いありません。 

  気象庁のサイトでもわかるとおり、歴史的に阿蘇山は非常に多くの噴火を繰り返してきました。今回の噴火

で、噴火警戒レベル2の「火口周辺規制」からレベル3の「入山規制」へ引き上げられ、10月3日現在もレベ

ル3のままです。 

  ただ私は、阿蘇山よりも、川内原発がある鹿児島県の霧島や桜島のほうが心配ですし、活火山は1ヵ所の問

題ではないという視点が必要です。 

編集  どういうことでしょうか? 

広瀬  『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』の「あとがき」や、ダイヤモンド書籍オンラインの連載に

も書きましたが、2009年に始まった桜島の大噴火だけでなく、2011年1月26日の鹿児島・霧島山の新燃岳

(しんもえだけ)で大噴火が起こりました。 

  その直後の2011年3月11日に東日本大震災が起こったのです。 

  震災後の日本列島の火山活動は活発で、2013年11月に小笠原諸島の西之島新島で大噴火がスタートし、

今も止まる気配がありません。 

  翌2014年9月27日には、長野・岐阜県境の御嶽山(おんたけさん)が大噴火して、戦後最大の火山災害に

なり、同年11月25日には阿蘇山が噴火して噴煙が1500メートルに達しました。箱根も、蔵王も動いていま

す。 

  今回の阿蘇山の噴火は、この一連の流れにあるのは間違いないわけで、九州だけがアブナイと言っているの

ではありません。日本列島全体が火山の大活動期の渦中にある、と断言できます。 

編集  日本列島の火山活動が、完全な「大活動期」に入ったということですね。 

広瀬  そうです。しかし、その火山を噴火させる地底の動きは、地球規模の「大地震」と一体になっています。日

本列島全域がアブナイのですが、もっとコワイことに、日本だけの問題ではないのです。 

 

  プレートは一つが動くと、玉突きで次々動きだします。 

  世界地図を見ると、台湾、中国、インド、イラン、トルコまで、この海底の構造図に示されるように、太平洋プレ

ート、フィリピン海プレート、オーストラリア・プレート、インド・プレート、ユーラシア・プレート、アラビア・プレートな

どが順々に隣接していますから、一つのプレートが動くと、すべてがその力を受ける構造になっています。 

  日本では、太平洋プレートが動いて東日本大震災を起こしましたが、次に首都圏を動かす関東大震災がくる

か、東海大地震~南海大地震が起こるかわかりません。しかし、「次の大地震は近々必ずくる」と言っていいで

しょう。 

「地震」と「台風」は連動している!? 

編集  断言されますか!? 

広瀬  はい。去る8月28日(金)に東京駅前の八重洲ブックセンター本店での『東京が壊滅する日』出版記念

講演会(→くわしくは、本連載第20回、21回、22回)では、時間がなくて話せなかったのですが、最近頻発して

いる台風と大地震が連動しているのです。 

編集  台風と大地震が連動!? 

広瀬  大地震を起こすプレートの動きを知るには、海底から噴出するマグマを測定しなければなりませんが、陸

上と違って、海底ですから困難です。 

  では、どうやってそれを予見できるかというと、日本に台風をもたらすのはフィリピン海ですから、そこに注目し

てみましょう。 

  この南方の海底で、地震を起こすプレートが動いてマグマが噴出すると、当然、海水温が上がって、台風が起

こりやすくなります。 

  つまり、「地震が起こる前兆として、台風が増加する」という可能性が高いわけです。 

編集  「海水温が上がって台風が増えると、地震が起きやすくなる」ということですか? 

 

広瀬  はい。左の図を見てください。これは、1950年以降の「日本の台風上陸回数」を示したグラフですが、今

から11年前の2004年に突然、トテツモナイ数の「史上最多の台風上陸数」を記録しました。 

  その時、フィリピン海の海水温は、異常に高くなっていました。そこで私は、これは、太平洋プレートの激しい動

きによって、海底マグマが噴出し、フィリピン海の海水温が異常に上昇したことが原因だと推測しました。その年

に何が起こりましたか? 

  台風シーズンの直後、2004年10月23日に、内陸直下型のマグニチュード6.8の新潟県中越地震が発生し

て、営業運転中の新幹線が初めて脱線し、高架の橋脚も崩壊するという激震でした。 

  新潟県川口町では、2515ガルと観測史上最大の揺れを記録したのです。 

  そこで、フィリピン海の海水温の異常が、日本を動かしたとすれば、さらに玉突きによって南のオーストラリア・

プレートを動かすのではないかと、私は予感したのです。 

  そして直感した通り年末に、2004年12月26日、インドネシアのスマトラ島で、マグニチュード9.3の大地震

が起こり、巨大津波が発生して、死者・行方不明者20万人以上という大惨事をもらしたのです。 

編集  そうだったのですか! 

広瀬  この新潟県中越地震が起こった2004年には、新潟県や福島県~福井県にかけて7.13水害と呼ばれる

豪雨による大洪水もありました。 

  このように、2004年6~9月に、フィリピン海で発生して日本に上陸した台風が過去最多を記録し、2004年12

月26日のスマトラ島での大地震・大津波につながったと考えてみましょう。 

  

  もう一枚の図の「大地震と台風」を見てください。 

  誰も覚えていないでしょうが、2008年5月2~3日に、サイクロン(大型台風)がミャンマーを直撃して、10万

人以上の死者が出ました。 

  遠いミャンマーなので日本人には関係ないと思っているでしょうが、10万人の死者は東日本大震災よりはる

かに大きな災害ですよ。このサイクロンを起こした源は、今度はインド洋の海底マグマの噴出によるものです。 

  そして、そのわずか10日後の2008年5月12日に、マグニチュード8.0の大地震が中国四川省を直撃し

て、死者・行方不明者が数万人規模で出ました。 

  このサイクロンと大地震の関連を説明すると、インドは、太平洋から動いてきてユーラシア大陸に衝突して生

まれた亜大陸ですから、その激突によってヒマラヤ山脈~エヴェレストができ、その一帯が激突による大きな歪

みを持った四川あたりの大地震帯なのです。 

  この立体地形図でわかるように、しわだらけの一帯です。今年4月にも、ネパール・チベット・中国地震が起こ

って、エヴェレストで雪崩が発生し、多数の死者が出ましたね。つまり2015年現在は、世界規模でプレートが動

いている。 

編集  大型台風(サイクロン)が起こると、大地震が起こるという構図が、アジア各地でも見られるわけですね。 

広瀬  日本で東日本大震災が起こった2011年には、タイで大洪水が起こりましたね。インドシナ半島に接近す

る前に勢力が弱まるはずの台風がいくつも上陸して、10月に猛威を振るったのです。 

編集  今年は、2015年9月10日に起きた東日本大水害(北関東・東北豪雨)で、茨城県常総市の鬼怒川が決

壊しました。50年に一度という大水害です。猛烈な台風から爆弾低気圧になって、鬼怒川に寄り添う形で関東・

東北を縦断しためずらしいケースでしたが、この原因は何ですか? 

広瀬  そう、現在がどうなのかを、海水温との関係で見てみましょう。 

  ここに、日本にかなりの台風が襲いかかった去年2014年10月(左側)と、今年2015年9月(右側)の日本を

とりまく海水温の分布図があります。 

 

  台風の渦を描いてある位置が、台風を生み出すフィリピン海の北部です。 

  この図では、ピンク色のほうが赤色より海水温が高温であることに注意してください。 

  海水温の高温域(ピンク色)の位置が、今年は日本の横腹あたりにあったので、例年のように沖縄から台風が

来るのではなく、異様な形で、関東地方と東北地方にいきなり大雨洪水の大災害が襲いかかったことがわかり

ます。 

  このような台風時の海水温を、テレビと新聞が解説する時には、必ず気象庁の予報官や、専門家と自称する

大学教授などが出てきて、“温暖化の影響”も考えられる、と言いますね。テレビのキャスターもそれを受け売り

して、“温暖化”と騒ぎますが、冗談ではありません。 

  今の図のように、日本の北部の海域は、この海水温の図の通り、相変らず冷たいのですよ。地球の温暖化の

影響であるなら、北海も高温になるはずですから、そういう意見はまったく科学的な根拠のないデマです。 

  気象庁も、テレビと新聞も、国際的な詐欺師である「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の手先にすぎ

ません。それをもって、CO2を出さない原発が必要だという意見を、あなたたちの頭にすりこんでいるのです。 

  では原因は何かといえば、海底マグマの噴出による「大地震の予兆」だとしか考えられません。「50年に一

度」という言葉に、あなたも惑わされてはいけません。 

  気象庁の若い予報官たちが、一昨年から「経験したことのない大雨」という言葉を使いはじめましたが、あれ

はみんな大噓です。たまたま「自分に体験のない」災害に遭遇したというだけで、われわれの世代の人間から

見れば、一昨年よりはるかに大規模な大雨や洪水の記録が、戦後に何度もあります。1000年単位で見れば、

日本に過去何度もありました。 

  彼らは、IPCCの「温暖化説」を煽動したいので、大げさに言っているだけです。地震や火山噴火や、台風・サ

イクロン・ハリケーンなどは、常に1000年単位で考え、比較しなければならない現象です。 

編集  そうでしたか。それとは別に、雑誌「FRIDAY 10月2日・9日号」によると、鬼怒川沿いの私有地に民間太

陽光発電事業者のソーラーパネル群が建設された際、自然堤防の役目をはたしていた丘陵部が大きく削られ、

「今回の災害は100%人災」だと、越水の危険が豪雨以前から叫ばれていたようですね。 

広瀬  自治体サイドの対応はひどかったようですね。私は現場を歩いていないので断言はできませんが、この

ようなメガソーラーのパネル設置のために砂丘を掘削したことは、明らかに自然破壊であり、洪水が広がったの

は人災でしょうね。 

編集  広瀬さん、今年の異常気象は例年と比べて、明らかにおかしくありませんか?  2004年、2008年のよう

な豪雨→大地震、という経路をたどらないことを祈ります。 

広瀬  その危険性は日増しに高まっている、というのが、火山の鳴動が教えることです。学者の意見より、私の

直感のほうが、ほとんど正しかった、というのがこれまでの大災害を解析した結論です。 

なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ 

  このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。 

  現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。 

  2011年3~6月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨ

ウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文部科学省2011年11月25日公表値)という驚くべき

数値になっている。 

  東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。 

  映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事

故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日―

―フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。 

  1951~57年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・

ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜

石と同じ距離だ。 

  核実験と原発事故は違うのでは?  と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原

発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに

危険度が高い。 

  3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。 

  不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。 

  子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。 

  最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つ

が、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10

都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる

今、オリンピックは本当に開けるのか? 

  同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエ

ル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。 

  51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。 

 「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真

実! 

  よろしければご一読いただけると幸いです。 

<著者プロフィール> 

広瀬  隆(Takashi Hirose) 

1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈

を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家

に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを

殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍

需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩

壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。 

  

<編集者プロフィール> 

寺田  庸二(Yoji Terada) 

ダイヤモンド社書籍編集局第二編集部副編集長。慶應義塾大学経済学部卒。これまでノンフィクション、ビジネ

ス、自己啓発、翻訳、理工、語学、育児、日めくりカレンダーなど、計120冊の書籍を担当。ベストセラー作家か

ら新人作家まで、20代~90代のバラエティあふれる著者の「未開拓分野」を引き出そうと日々奮闘中。業界平

均重版率が3割台の中、担当書籍の生涯重版率は8割超。全国を歩き、精力的に処女作著者を発掘。処女

作18連続重版記録を12年越しで更新中(2003年12月~)。 

  

【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】 

『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』 

『東京が壊滅する日』 

広瀬  隆:著  

価格(本体):¥1600  

発行年月: 2015年7月  

判型/造本:46並製  

ISBN:978-4-478-06676-8 

発売直後から完売店続出! 第5刷決定! 

8月24日(月)の「日本経済新聞」&「毎日新聞」掲載で大反響! 

9月18日(金)の「東京新聞」にも大きく掲載! 

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壮大な史実とデータで暴かれる 

戦後70年の不都合な真実! 

51の【系図・図表と写真のリスト】と 

科学的データで迫る身の毛もよだつ真実! 

2011年3~6月のセシウム総量は「新宿が盛岡の6倍」!  甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素は「新宿が盛岡

の100倍超」!  今、東京が危ない! 

タイムリミットはあと1年! 

おそるべきことが体内で音もなく進行している! 

次の被害者はあなただ! 

金・銀・ウランを独占する闇の支配者たちの衝撃の系図!5兆円をドブに捨ててもなお、いつまで日本人は“モ

ルモット”にされるのか?はじめて明かされる原爆&原発【双子の悪魔】の正体!そうだったのか!「戦後70年

の謎」が今、明らかになる。 

◆はじめに 

冷静に予測しておかなければならないことがある 

◆第1章 

日本人の体内でおそるべきことが進行している! 

◆第2章 

なぜ、本当の事実が、次々闇に葬り去られるのか? 

◆第3章 

自然界の地形がどのように被害をもたらすか 

◆第4章 

世界的なウラン産業の誕生 

◆第5章 

原爆で巨大な富を独占した地下人脈 

◆第6章 

産業界のおぞましい人体実験 

◆第7章 

国連がソ連を取りこみはじめた 

◆第8章 

巨悪の本丸「IAEA」の正体 

◆第9章 

日本の原発からどうやって全世界へ原爆材料が流れ出ているのか? 

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3.Innovation/Motivation 

【コミュニケーション】 

【リーダーシップ・フォローシップ】 

10年連続Bクラスで監督も辞任、ベイスターズファンの憂鬱 

降旗 学 [ノンフィクションライター] 【第131回】 2015年10月3日 DOL 

  ようやく秋らしくなってきた。となれば、さんまの季節でもある。 

  さんまはやっぱり塩焼きだ。日本では、焼き魚は頭を左に向けて置くのが伝統でありマナーでもあるのだが、

さんまの塩焼きを右向きに置いて意気揚々としていたギインさんがいたから大笑い。このギインさんは「右」がお

嫌いのはずなのに。右じゃダメなんですか、と言ったかどうかは定かではない。 

 

  さんまに脂がのるころ、プロ野球もいよいよヤマ場を迎えるが、我らが……、もとい、ここは客観的に書かなけ

ればならないから大好きとか熱烈とか今年でファン歴四十二年とか一九九八年の日本シリーズは原稿も〆切も

全部放り出して観戦に行ったよ翌朝のスポーツ新聞は全紙買いそろえたものさ、といったことは書かないが、横

浜DeNAベイスターズが、シルバーウィーク最終日の中日戦で敗れ、他球団に先駆け、早々とクライマックスシ

リーズ進出の可能性を消滅させた。 

  野球をご存じない方に説明すると――、クライマックスシリーズというのは、セ・リーグとパ・リーグともに上位

三チームが日本選手権シリーズ出場をかけ、トーナメント方式で戦うプレーオフ制度を言うのですが、Jリーグの

2リーグ制と同じくらいヘンテコなルールなんです。 

  なぜヘンテコかというと、まず三位と二位のチームが戦い、その勝者が一位のチームに挑み、勝ったほうが日

本シリーズに出場できるのですが、過去(二〇一〇年)には、シーズン三位だった千葉ロッテマリーンズがクライ

マックスシリーズで勝ち上がり、さらに日本シリーズをも制して日本一になったことがあるからです。 

  敗者復活の論理と言えばいいのか、みんなにチャンスなゆとり的発想と言えばいいのかはさておき、クライマ

ックスシリーズは日本野球機構のお偉いさんたちが考え抜いた消化試合を減らすための苦肉の策でもありまし

た(消化試合=すでに他チームの優勝が決まるか優勝争いを演じられない下位チームがダラダラと試合日程を

こなすこと)。 

  早い話が、メジャーリーグのプレーオフ(ワイルドカードゲーム)の真似です。メジャーリーグが「MLB」と略され

るので、日本野球機構も最近では「NPB」と略すようになりました。猿真似がとてもお上手です。 

  でも不思議です。三位にまで優勝の可能性があるなんて。二位じゃダメなんですか?  いいえ、三位でもいー

んです。く~ッ。 

  という敗者復活制度が日本のプロ野球にはあるのだが、ロッテが前例をつくったこともあり、プロ野球各チー

ムは、優勝を目指すのは無論のこととはいえ、悪くても「クライマックス出場」を目標にするのである。何故か? 

この敗者復活戦に出られれば、ロッテのようなどんでん返しがあるかもしれないからだ。上位三チーム(Aクラ

ス)に入ればリーグ優勝さらには日本シリーズ優勝が狙えるが、クライマックスシリーズ進出は、球団にもオイシ

イ話であることに変わりはない。 

  二位と三位の対戦(ファーストステージ:たぶんJリーグの真似:三戦二勝制)は、二位のホームグラウンドで行

なわれ、一位との優勝決定戦(ファイナルステージ:六戦四勝制)は一位チームのホームグラウンドで行なわれ

る。 

  その場合、チケット販売などの収益は全て「主催者チーム」に入ることになっている(三位はアウェイになるた

め、収益はなし。二位チームに勝ち、優勝決定戦に勝ち上がってもやっぱりアウェイなので収益はなし)。三位じ

ゃダメなんです。 

  そしてリーグ優勝を果たし日本シリーズに臨んだ場合、主催はNPBだが、出場両チームには「分配金(入場

料などの収益から経費を引いた額)」が支払われる。これがけっこう大きくて、額面で言うと、日本シリーズを戦

った両球団に数億、両チームの監督・コーチ・選手らに総額でやはり数億(優勝チームのほうが多い)といった

感じだ。 

  勝てば数億――、日本シリーズの終わりは寒い冬の始まりでもあるが、日本一になった球団の懐は逆に温か

いのだ。 

  二〇〇七年にクライマックスシリーズが導入され、以来、十一球団がシリーズに臨んできた。ということは、プ

ロ野球十二球団中、ある球団だけがクライマックスシリーズに出場していないということになる。改めて言うまで

もないが、横浜DeNAベイスターズである。 

  この球団は、信じられないことに十年連続で三位以内に入ったことがないのだ。過去十年間の順位だけを記

すと、二〇〇六年から――、 

  6位→4位→6位→6位→6位→6位→6位→5位→5位→6位(10月1日現在) 

  十シーズン中、実に七回も最下位に甘んじるという体たらくだ。なにしろ、過去十年間の最高順位が四位なの

だから。中畑清監督(二〇一一年末に就任)になって以降も、五位と最下位を繰り返しているだけだ。 

  にもかかわらず、親会社のDeNAは十年連続Bクラス(=クライマックスシリーズ出場が消滅)が確定したと

き、監督責任を問うどころか早々と中畑監督の続投を決める発言に終始した。 

「(中畑監督の続投要請に)変わりないです」(池田純球団社長) 

  池田社長はこうも続けた。 

 「成績が数字に出る世界なので、こういう状況であれば、当然、周囲からいろいろな声も出てくるかもしれない。

でも、球団としてのスタンスは変わらない。腹はくくっている」 

  私にはDeNAの「球団としてのスタンス」が何を意味するのかわからないが、就任以来、五位と最下位しか結

果を残していない中畑監督の続投を本気で考えていたのだとすれば、DeNAという会社の本質には大きなクエ

スチョンマークがつく。 

  違う角度から言えば、中畑監督になって、横浜スタジアムの入場者数は激増した。そのあたりのことは相沢光

一さんのコラムに詳しいが、客が入ってグッズが売れてビールや弁当の売り上げが伸び収益が出れば球団は

下位でも構わないのが「球団としてのスタンス」なのだろうか。 

  不思議なのは、横浜DeNAベイスターズは、一試合平均で約九〇〇〇人もの入場者数を増やしているにもか

かわらず、球団別年棒総額は十二球団中最下位(二二億六六一〇万円)なのだ。 

  ちなみに、一位がソフトバンク(四七億一九四〇万円)、二位が巨人(四六億五四三〇万円)。現場介入大好

きオーナー三木谷浩史氏の楽天は驚きの十位(二三億六八九〇万円)だ。口は出すけどカネは出さない主義

みたいです。 

  連日スタジアムは満員になるのにそれが選手の年棒に反映されないのはDeNAが吝(しわ)い会社だから

か?  それとも、増収ぶんはストックしておき、チームが好成績を残したときに大盤振る舞いをしてみせるつもり

なのか? 

  ファンとしては是が非にも訊いておきたいところだ。チームが強くなることと収益増とでは、どちらが大事なの

かをだ。両方大事だと応えるだろうし収益は大事とも言うだろうけど。 

今年の横浜は、前半戦をまさかの「首位」で折り返した。交流戦では十連敗を含むダントツの最下位で、そのあ

とさらに二敗して十二連敗を喫したにもかかわらず、優勝した一九九八年以来、十七年ぶりに首位で後半戦を

迎えた。ファンに夢を見させてくれたのだから、ここまでは上出来だ。 

  で、終盤戦。思い描いていた優勝争いはうたかたの夢と消え、気がつけば、ここ数年来は指定席になったとも

言うべき最下位争いを演じている。 

  お洒落な港町ヨコハマに本拠地を置くプロ野球チームは、とても悲しいことに、とても弱いのだ。この弱さは、

ベイファンには悪夢としか言いようのないあの暗黒時代の、「横浜大洋銀行」が復活したような錯覚さえ覚える

ほどだ(註:横浜大洋銀行/前身の横浜大洋ホエールズ時代があまりに弱く、他球団が横浜と対戦すると勝ち

星の貯金ができる、という皮肉。ベイファンは地元「横浜銀行」に申し訳ない気持ちでいっぱい)。 

  このままでは、セ・リーグの「お荷物球団」と呼ばれかねない。 

  お荷物と揶揄されてもまだ歯を食いしばれるが、セ・リーグの「寄生虫球団」なんて言われた日にゃあ、ファン

は恥ずかしくて表を歩けないぞ。 

  プレミアムテラス席やリビングボックスシート等の新設で集客努力をしているのは認めるが、ファンは贔屓チー

ムの無様な敗戦や出口の見えない連敗を見るためにスタジアムに足を運んでいるわけではないことを、DeNA

にはわかってほしい。集客増を達成したなら、次にやることがあるはずだ。 

  それとも、DeNAって会社は、結果を出さなくてもいいぬるい会社なのか? 

  横浜DeNAベイスターズの初代監督・中畑清氏は、十月二日、辞意を表明した。球団は来期も指揮をと強く要

請していたとのことだが、この際だからはっきり言わせてもらおう。ファンは、勝てない監督の続投なんか望んじ

ゃいない。 

  後任の監督には誰が就任するかまだわからないが、誰が監督になっても、ファンと球団は新監督に言わなけ

ればならない。もう最下位は嫌だ。だから結果を出してくれと。 

  今日も変わりばえのない冴えない一日だったけど、ベイスターズが勝ったから明日は頑張れそうな気がする

――、ベイファンにかぎらず、野球ファンの全てが好きなチームに思いを馳せ、勝利の余韻に浸りながら一日を

終えたいと願っているのだ。 

  昨日も負けて、今日も負けた。でも明日は移動日で試合がないから負けないぞ。この半年あまり、ベイスター

ズファンはこんなことばっかり言ってました。 

    十七年前、大好きなチームのシリーズ制覇がこれほどに感動的で嬉しいことなのかを多くのベイファンが知

った。だが、日本一に酔い、勝利の美酒に酔ったあの美味しさを、ベイファンたちはもう忘れかけている。 

参考記事:日刊スポーツ9月24日付他 

横浜DeNA中畑監督の驚くべき観客動員力 

相沢光一 [スポーツライター] 【第357回】 2015年7月28日 DOL 

  プロ野球は後半戦に入ったというのに、セ・リーグは大混戦状態が続いている。 

  7月27日現在は東京ヤクルトが7連勝と好調のため、1位=ヤクルト、2位=阪神、3位=巨人、4位=

DeNA、5位=広島、6位=中日という順位になっているが、1週間前は1位=DeNA、2位=巨人、3位=阪

神、4位=ヤクルト、5位=広島、6位=中日だった。たった1週間で1位から4位までの順位が一変したの

だ。いかに差のない戦いをしているかが分かる。 

  セ・パ交流戦でセ・リーグ各球団の成績が悪かったこともあって、一時期は6球団すべてが借金(負け越し)を

抱えるという史上初の珍事もあった。勝率5割を超えれば首位争いができるという状態。5位の広島だって首

位ヤクルトとは4ゲーム差、6位の中日も7ゲーム差だ。好調の波をつかみ連勝すれば、この2チームも優勝

争いに加わる可能性もある。セ・リーグ各チームのファンにとっては一喜一憂の日々が続く展開なのだ。 

1試合平均で9000人以上も増加!横浜DeNA中畑清監督の動員力 

  この大混戦を招いた主役が中畑清監督率いる横浜DeNAベイスターズだろう。今季開幕直後のDeNAは昨

シーズンまで9年間Bクラス続きだったとは思えない強さを見せ、勝ち星を重ねていった。5月16日には11も

の貯金があり、首位を快走。このまま行けば1998年以来、17年ぶりの優勝も夢ではないとファンに思わせた。 

  ところがDeNAは交流戦に入ると大失速。3勝14敗1分という惨憺たる成績で貯金を一気に使い果たしてし

まう。交流戦前、DeNAに次いで2位だった巨人をはじめ他のセ・リーグ球団も交流戦では振るわず、その結

果、5割ラインをめぐる大混戦になったというわけだ。 

  しかし、大失速を見せてしまったにもかかわらずDeNAファンの盛り上がりは続き、その多くが熱心に球場に

足を運んでいる。まだ、優勝が狙える位置にいることもあるだろう。だが、それ以上に中畑監督が率いるチーム

の魅力に惹かれるものがあるからではないだろうか。 

  中畑監督がチームの指揮をとるようになってからの主催試合(多くは横浜スタジアム)の観客動員増加には目

を見張るものがある。 

  監督に就任したのはDeNAが球団を買収した2012年から。その前年、尾花高夫監督に率いられたチーム(6

位)のホームゲーム平均観客動員数は1万5308人だった。中畑監督の1年目は前年より勝利数が減ったうえ

で最下位だったが、平均観客動員は増え1万6194人に。それが2年目(5位)は1万9802人に、3年目(5

位)は2万1730人と2万の大台に乗せ、そして今年(7月27日時点)は2万4625人にもなった。監督就任前

と比べると、1試合平均で9000人以上も観客を増やしているのだ。Jリーグでは1試合の観客数が1万人に満

たないことも少なくなく、それを考えると、平均で9000人増やすことがいかにすごいことかが分かる。 

ところで中畑監督の他に監督就任後、前年より観客動員数を増やした人はいるのだろうか。今季は4人の新監

督が生まれた(埼玉西武・田辺徳雄監督も新監督ではあるが、昨季も監督代行を務めたので除外)。その主催

試合の平均観客動員数を昨年と比較してみた。 

◆福岡ソフトバンク 

    昨年:秋山幸二(1位)3万4284人 

  →今年:工藤公康(1位)3万4594人 

◆東北楽天 

    昨年:星野仙一(6位)2万0142人 

  →今年:大久保博元(5位)2万2839人 

◆広島 

    昨年:野村謙二郎(3位)2万6455人 

  →今年:緒方孝市(5位)2万8867人 

◆東京ヤクルト 

    昨年:小川淳司(6位)1万9983人 

  →今年:真中満(1位)2万0985人 

    ※今年の順位は7月27日時点 

  4人の新監督はすべて前年より観客動員数を伸ばしていることが分かる。とくに楽天は大久保監督になって、

広島は緒方監督になって2000人以上も増やしている。もちろん観客動員は監督の手腕や魅力だけでなく、球

団の営業努力、ファンサービスに負う部分も多い。だが、新監督に対する期待感もファンの足を球場に運ばせ

る要因になるはずだ。 

  ただし球団によっては、この比較が意味を成さないケースもある。ホームゲームは満員になるのが当たり前の

球団は新監督がどんなに魅力あろうと球場のキャパシティから見て増えようがないからだ。ソフトバンクの工藤

監督が微増なのもそのせいだ。巨人や阪神の監督のケースも同様。今年10年目の長期政権の巨人・原辰徳

監督は2006年に堀内恒夫氏から監督を引き継いだが、1年目は1試合の観客動員を400人ほど減らしてし

まった。こうした人気球団の監督は現状の観客動員を維持するのが命題。成績が悪ければ減らす可能性があ

るわけで、その意味では辛いともいえる。 

  ともあれ中畑監督は、チームが弱くて観客も少ないところからスタートしたという点で条件は揃っていたわけ

だ。それにしても毎年、着実に増やし続けているのはすごい。これにはDeNAの新たなファン獲得の努力もある

だろうが、やはり中畑監督の若手を積極的に起用する采配と前向きなチームづくりがファンの目に新鮮に映る

からではないだろうか。 

  また、試合に勝った時の中畑監督は本当に嬉しそうな表情でファンにあいさつするし、声援にも笑顔で答え

る。そうした部分が熱心なファンを増やすことにつながっているはずだ。 

  本拠地・横浜スタジアムのキャパシティは3万人。今後も優勝争いに加わるようであれば、平均観客動員数も

3万人に近づいていくに違いない。 

【ブランディング】 

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4.SOCIETY.CULTURE・EDU.・SPORTS・OTHERS 

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5.ECONOMY・POLITICS・MILITARY AFFAIRES 

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6.MARKETING 

  軽減税率を議論する前に検討すべき事がある 

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO] 【第141回】 2015年10月1日 DOL 

 

  わが国の消費税率は2017年4月に8%から10%に引き上げることが決まっているが、その際に生活必需品

の税率を低く抑えるかどうか(軽減税率)が、大きな政治問題になっている。財務省は税率を一律に10%とした

上で、マイナンバーカードを使って食料品などの増税分を後から給付する試案を公表したが、どうやら混乱に輪

をかける結果となってしまったようだ。この問題は一体どのように考えればいいのか、そもそもの原点に立ち戻

って検討の視点をチェックしてみたい。 

政府とは何か、税とは何かを理解することが全てのスタート 

  人間社会では、ゴミの収集のように誰もがやりたがらないが、やらなければ健全な社会が維持できなくなる仕

事がある。それを、「公共財や公共サービスの提供」と呼んでいる。そして人間は「公共財や公共サービスの提

供」をやってもらうために政府をつくったのである。ところで、公共財や公共サービスの提供(=一般に「給付」と

呼んでいる)を行うためには財源が必要となる。そこで人間は、「給付」に当てる財源として政府に徴税権を与え

たのである。 

  以上のことから、次の2つの公式(原則)が導かれる。 

  1.負担が即ち給付であること(給付を手厚くしようとすれば、負担を上げるしかない、あるいは負担と給付は

バランスしなければならない) 

  2.負担(徴収)も給付(分配)もシンプルに設計しないと、管理コストがかさんでムダが多くなること(これが、市

民が本能的に「大きな政府」を嫌う根本的な理由である。要は、100円寄付をしても、現地に届くのが10円や

20円では困るということである) 

  それでは、なぜ消費税率を上げる必要があるのか、という問題から検討してみよう。 

  社会保険料は目的税の一種と考えていいので、租税負担率と社会保険料負担率を合計した国民負担率(対

GDP比)をみると日本は39.8%(2011年)で、OECD諸国(トルコを除いた33ヵ国)の中では下から7番目であ

る(もちろん平均よりかなり低い)。G7の中では、日本より低いのはアメリカだけである。つまり、日本は小負担

(低負担)の国である。 

  次に給付の代表格である社会保障支出をみると日本は23.7%(対GDP比、2011年)でOECD諸国(34ヵ国)

の中では上から14番目となる。もちろん、平均より高く、日本より上位にいるのはG7ではフランス、イタリア、ド

イツの3ヵ国しかない。つまり、日本は中福祉の国なのだ。 

  小負担・中福祉ではサスティナブルなはずがない。以上のデータを見れば、公式1により、負担を上げ給付を

効率化して両者をバランスさせなければならないことは一目瞭然である。つまり社会保障と税の一体改革を行

わなければならないということだ。 

なぜ他の税ではなく消費税なのか? 

  次になぜ消費税か。それは高齢化が主因である。日本が若い国であれば(=生産年齢人口が多いのであれ

ば)所得税で対応することもできるが、生産年齢人口が細り、高齢者が増えつつある現状では年齢フリーで(年

齢に関わらず)市民全員に負担をしてもらう消費税の方がはるかに公平にかなう。IMFなどがその代表である

が「早く消費税を上げて、両者をバランスさせるように」というアドバイスがグローバルに寄せられるのは、全くも

ってそのことが理の当然に適っているからである。グローバルに見れば、他に解はないということであろう。 

  次に、軽減税率の問題を考えてみよう。公式2からすれば、軽減税率があまりいいアイデアではないことが直

ちに了解されるだろう。もちろん低所得者に配慮して生活必需品の価格を抑えるという考え方自体は、決してま

ちがってはいない。しかし、軽減税率を導入すれば、各団体が「これは生活必需品です」と必死でロビー活動を

展開し、政治家の口ききが増えるだけであることは、誰しも容易に想像がつくだろう。要するに軽減税率は「対

象品目の線引き」が極めて難しいのだ。 

  次に、線引きが立派に政治決断されたと仮定しよう。その場合、税率は複数になるため、すべての事業者は

経理方式を改めなければならない。現在わが国の取引で使われている請求書は、品名も大雑把な区分で良く、

金額も税込み価格だけで足りる(税率や税額を書く義務はない)。しかし複数税率になると、おそらく品名を明記

し(生活必需品かどうかが分かるように)、商品ごとに税率や税額を記載するインボイス(税額票)方式に改めざ

るを得ないだろう。 

  これは特に中小の事業者にとっては大変な負担となる。以上の2点を考えるだけでも、軽減税率の導入が一

筋縄ではいかないことが了解されよう。要するに軽減税率はシンプルではないのだ。管理コストがかさんで、大

きな政府になってしまうのである。軽減税率に賛成する識者はヨーロッパの例をよく持ち出すが、これはむしろ

歴史的な個別の経緯によるものであって、低所得者の生活必需品の負担を軽くしようと考えて政策的に導入し

たものではないことに注意する必要がある。 

生活必需品の負担を軽くする方法には他にどんなものがあるか? 

  次に視点を変えて、低所得者の生活必需品の負担を軽くする方法にはどんなものがあるかという問題を考え

てみよう。ところで、そもそもこのような議論が生じるのは「消費税には逆進性がある」という思い込みによるもの

だが、実は必ずしもそうではないのだ。ただしその点は以前にも指摘したので、ここではひとまずその問題は措

いて話を進めよう。 

  まず第1には、以前にこのコラムでも述べたことがあるが、わが国の農業保護(関税をテコにした価格支持政

策)の隠れた負担がとてつもなく重いことである。農産物の内外価格差は消費者物価指数を1.1%押し上げて

おり、逆進性が消費税よりも大きく、消費税率に換算すれば3.4%の引き上げに相当するという(いずれも日本

経済研究センターの試算)。そうであれば、関税を撤廃して農家への所得補償を農業政策の基軸とすれば、食

料品への軽減税率適用より、低所得者の負担感ははるかに軽くなるのではないか。 

  次に、低所得者へシンプルに給付を行ううまい方策がないかどうかを考えることである。財務省案はこの中の

1つと位置付けられるが、大切なことは、 

  1.農業保護の見直し 

  2.シンプルな給付(マイナンバーカードを使う・使わないを含めて、いくつかの方法が考えられよう) 

  3.軽減税率 

  以上の3つの方法を同じ土俵にのせて、数字・ファクト・ロジックでそれぞれの得失を丁寧に検証していくこと

が大切であろう。どの方法が低所得者の生活必需品の負担を軽くするために最も合理的で望ましいか、という

ことである。 

  私見では、まず農業保護を見直し(消費税率換算3.4%と効果が大きい)、それでも足りないと政治家が判断

するのであれば、シンプルな給付を考えるべきだと思料するかどうか。どうしても議論がまとまらない場合は、

2014年4月に消費税率を8%に引き上げた時から、低所得者を対象に配っている臨時福祉給付金を(議論が

まとまるまで)継続させればいいと考える。 

  なお、食料品を離れて新聞などにも軽減税率を適用すべきだ、との意見もある。新聞好きな僕としては、民主

主義の重要なツールである新聞を大切にすることには異論はないが、仮にそうだと政治が判断したとしても、例

えば新聞事業への法人税率を軽減して、その分新聞代を安くする等、他の方法と軽減税率とどちらが社会の将

来にとって望ましいのか、冷静に比較考量する必要があるだろう。 

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7.MESSAGE 

0~89歳まで「47人が暮らす家」に行ってみた,東京・日暮里にある

「コレクティブハウス」星野 雄 :アサツー ディ・ケイ ストラテジック・プランニング本部  

2015年10月03日 TK 

東京23区内でこれほど広いリビングを使えるのも、共同で生活するメリットのひと

つだ 

日本の世帯は、確実に縮小に向かっている。高度経済成長期に台頭した「核家族世帯」と、近年増加している

「単身世帯」の2つがその代表である。 

「単身世帯」はもちろんのこと、「核家族世帯」も、家族の規模として適切なのだろうか。安心して子供を育て、次

世代の労働力を再生産するには、これらの世帯は細かく分かれすぎてしまっているのではないだろうか。「核家

族世帯」と「単独世帯」以外に広がる多様な選択肢の向こうに、孤立することの不安から逃れ、多様な縁を紡ぐ

ヒントがあるのではないだろうか。 

本連載では、多様な暮らし方の事例から「無縁社会」への対抗策を探る書籍『多縁社会』の筆者たちに、このよ

うな疑問に答えうる事例を紹介してもらう。いずれも現代では常識とは言えないが、豊かで幸せで、「縁」にあふ

れた暮らし方である。 

コレクティブハウスって、何? 

血縁・地縁・社縁が急速に失われつつある日本。「無縁社会」という現実をよそに、さまざま

な新しい暮らし方が実践されつつある。綿密な取材を通して、日本社会の「縁」のあり方に迫るルポルタージュ。 

「コレクティブハウス」という言葉を聞いたことはあるだろうか。コレクティブハウスとは、もともとは1960年代にス

ウェーデンで生まれた、働く女性たちが共同生活を送る住居形式である。働きながら子育てをすることの不安

を、食事の準備や子育てを居住者同士でシェアすることで軽減する。そんな意義の下に生まれた。 

近年、増加傾向にあるシェアハウスと混同されることもあるが、建築的に言うと、各戸にリビングやキッチンがあ

って暮らしは成り立つが、さらに共用の広々としたリビングとキッチンがあるのがコレクティブハウスである。一

方、共用のリビングやキッチンはあるが、各戸にはそれらがないのがシェアハウスだ。 

日本初の本格的な居住者自主運営型のコレクティブハウスが、東京都荒川区にある「コレクティブハウスかん

かん森」だ。最寄り駅を降りて東京スカイツリーを横目に、静かな商店街と住宅街が入り混じった道をしばらく歩

くと、12階建ての中規模な建物が現れる。その2階と3階が「かんかん森」である。ここでは、0歳から89歳ま

での47人(大人34人・子供13人)が生活をしている(取材当時)。 

「かんかん森」で暮らす47人は、共同体としてどんな生活を送っているのだろうか?  彼らは何を求めてここに

やってきたのだろうか?  

そんな疑問を解き明かすため、実際の居住者にお話を伺った。インタビューにご登場いただくのは、子育てママ

の伊藤さん。旦那さんと、小学校5年生・1年生・0歳(取材当時)の3人の男の子と、家族5人で「かんかん

森」に暮らしている。伊藤さんのご家族は2年前まで京都で暮らしていたが、突然の旦那さんの東京への転勤

の話が持ち上がり、家族みんなでの引っ越しを決意した。 

伊藤さんのご家族は、なぜここ「かんかん森」を選んだのか?  共有のリビングにあるソファに腰掛け、生まれた

ばかりの男の子をあやしながら、和やかな雰囲気でインタビューは始まった。 

人間関係を一気につくる 

インタビューに答えてくれた伊藤さん 

「京都での暮らしが長かったため、東京では知り合いはおらず、土地勘もありませんでした。夫は仕事が忙しく、

帰りが遅くなることがわかっていたので、知らない土地で自分と子供だけで家の中に長時間缶詰めになってしま

うのは、避けたかったのです。東京への転勤期間は2~3年で、また京都に戻る予定だったので、じっくり時間

をかけて人間関係をつくることは難しいと思っていました。そんなときに、ここを知りました。こういうところなら、

短期間で一気に人間関係をつくることができると感じました」 

地縁という言葉がある。住む土地に基づく縁故関係のことで、地域共同体・町内会・向こう三軒両隣のような地

域コミュニティを表している。こういったコミュニティは、ある程度の長い歴史を経て形成されたものであるため、

独自の慣習・作法・しきたりや、ある種の硬直した人間関係が内在していることが多い。だから、新規住民が加

わったとしても、なかなか短期間で溶け込めるものではなかったりする。 

そういう状況を察知し、伊藤さんは確かな戦略性を持って「地縁の代替」としてコレクティブハウスを選択したと

いう。人間関係を一気につくることができる環境は、子育てママにとって非常に心強かったであろう。それは、子

供にとっても同じだったようだ。 

「京都の友達と離れてしまうので、思春期の長男は東京への引っ越しを本当に嫌がっていました。でも、家族み

んなで見学をしたときに、広々としたリビングやテラスが気に入ったのと、実際に何人かの居住者と話せたこと

で、嫌がることもなくなってきました」 

見学後、通勤時間が長くなる旦那さんとも話し合い、了解のうえで「かんかん森」に住むことが決まった。実際に

住み始めるまでの不安はなかったのだろうか?  

「不安はなくて、むしろワクワクしていました。住む前から、居住者のメーリングリストで周辺の小学校や保育園

の評判を丁寧に教えてくれましたし」 

そんな大きな期待を胸に、伊藤さん一家の「かんかん森」での生活は始まった。 

コレクティブハウスの多彩な魅力 

伊藤さんは、「地縁の代替」としてコレクティブハウスを選択したが、具体的には、ここでの生活の何に魅力を感

じているのだろうか? 

「人によって、コレクティブハウスの魅力は、全然、違うと思います。たとえば、みんなで集まって食事をとるコモ

ンミールという共同の食事があります。料理好きの独り暮らしの居住者がいるのですが、大勢の人に料理を食

べてもらえるから、自分の腕を十分に発揮できてうれしいと言っていました。また、親が食事をしている間、子供

がいなかったり手がかからなくなった居住者の方が、子供の面倒をみてくれることが多いので、とても助かって

います。子供からエネルギーをもらえると言ってくれる人もいて、本当にありがたいです」 

「みんなご飯を食べるのも忘れるくらい、子供と遊ぶのを楽しんじゃってて、どっちが遊んでもらってるのかわか

らないわね」 

インタビュー中、伊藤さんの子供をあやしてくれた坂元さんは、ここに12年間暮らしている 

伊藤さんへのインタビューの横で、泣きだした伊藤さんの男の子をあやしながら、同じくかんかん森で暮らす坂

元さんは言った。かんかん森に12年間暮らしている坂元さんは、今までこうやって何人もの子供と遊んで、そ

のたびにエネルギーをもらってきたのだろう。多様な世代の人たちと触れ合えるのは、コレクティブハウスの大

きな魅力である。伊藤さんにとって、居住者のみなさん(特に同じママさんたち)はどんな存在なのだろうか? 

「ママ友ではあるんですけど、みんな仕事もしているので、よく仕事の話をします。本当に尊敬できる人たちで

す。きっと、ここでしか出会うことはできなかった人たちですね」 

コレクティブハウスに住む理由も、魅力も、当然、人それぞれである。でも、それぞれがそれぞれの楽しみやメリ

ットを見いだして暮らしている様子がうかがわれた。 

家族構成や年代もバラバラな47人の生活。47人、というのはかなりの人数である。運営への関与度レベルや

意志の統一をするのは、なかなか難しそうだ。伊藤さんご本人は子育てを通して、居住者と関係を持ちやすく関

与度も高そうだが、旦那さんはどうなのだろうか? 

「平日は仕事で帰宅が遅いので、家に長くいるのは休日だけです。だから、あまり時間もなく、自分から積極的

に参加するというわけでは決してありません」  

運営にはあまり深く入り込んでいない旦那さんであるが、お酒飲みグループに誘われたら参加しているという。

ここでの生活は、もちろん苦ではなく、それなりに楽しんでいるようだ。男性は女性に比べて、人の輪に加わる

のが少し苦手なところがある。雑談というのが苦手で、お酒というきっかけがあると集まりやすいのだろう。 

必ず「一人ひとり」が役割を担当 

共同のキッチン。ここで「コモンミール」のための調理が行われる 

「ここでは、一人ひとりが必ず係を担当しなければいけません。みんなそれぞれ特技を持っていて、たとえば夫

はIT 系に強いので、IT 係を担当しています」 

「世帯を代表してひとり」ではなく、必ず「一人ひとり」が担当する義務があるというのが、ここでの特徴だ。世帯

単位ではなく、独立した個人として居住者を扱うのである。係への所属をはじめとして、月1回の定例会への参

加など、ここではさまざまな義務がある。 

「義務があることで、コミュニティを維持できていると感じています。あまり話すことのない人でも、係や定例会が

あることで、定期的に必ず会うようになって、会話をします」 

旦那さんの東京での転勤が終わると、京都に戻る予定の伊藤さん家族。京都でも、コレクティブハウスに住み

たいかと聞いてみた。 

「私が住んでいた京都のあるエリアは、昔からの街並みが広がっていて、もともと根強いコミュニティがありま

す。私は鍵も閉めないですし、おかずや子供の服の分け合いが今でもあります。だから、コレクティブハウスが

なくても、特に不便に感じないのではないでしょうか?  地方から出てきて、親が周りにいない人たちが集まる東

京だからこそ、『かんかん森』のような場所が必要とされるのだと思います」 

他者と共に暮らすという根源的なスタイル 

住まいのシェアは若者の文化と考えられがちであるが、実は、「人としての根源的な暮らし」なのではないだろう

か。シェア生活は、お互いを個人として尊重し合いながら、時には共に食事をして、時には共に遊ぶというもの

だ。でも、それは、昔は自然に実践されていたものである。 

「コレクティブハウスかんかん森」の伊藤さんが地縁の代替としてコレクティブハウスを選んだように、他者と共

に暮らすという根源的な暮らしが、ひとつ屋根の下で疑似的に再現されているのが、住まいのシェアなのかもし

れない。 

個として閉じこもって暮らすのではなく、他者と互いに依存し合ってウェットに暮らすのでもない。適度な距離感

を持って共に営む、古くてどこか新しい暮らし。それが、住まいのシェアなのである。  

【上海凱阿の呟き】 

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