上海漢院顧問のつぶやきNo.351

皆様、お元気にご活躍のことと思います。
あと少しで立冬ということで、上海もこの一週間はかなり冷え込んでいます。
私も風邪気味に陥りましたが何とかリカバリーできました。
 
今年もあと2ヶ月を切り、かなり色々と忙しい時期です。
政治屋さんも少しは仕事をしなければと思いだしたのでしょうか、極東アジアは、日中韓の首脳会談やビジネスミッション会合など、なにやらそれぞれの思惑を秘めて表面で動き出した感があります。
 
さて、今日11月3日は日本は「文化の日」の祝日ですが、何故この日が文化の日なのか以前から不思議に思っていました。やっとちょっと調べる気になりましたが、自分の無知ぶりをさらけ出す結果になりました。
なんと「1946年11月3日に日本国憲法が発布された日」だったのですね。日本国憲法の精神が「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことにあり、「憲法発布日(1946年11月3日)を文化の日に、「憲法施行日(1947年5月3日)を憲法の日」に制定したようですね。
 
語源としての欧米語の文化(英Culuture)のもともとの意味は「耕す・培養する・洗練したものにする・教化する」といったことですが、さらに「文化=人間の精神面での向上=教養」という意味もあり、先述の日本国憲法の精神としての「文化をすすめる」は、「日本人の精神面での向上をすすめる」ことだということですね。
当時のGHQ(連合国による占領1945~1951年)マッカーサ―総司令官が言った「日本人の精神年齢は12歳相当」の言葉を我々は既にのりこえる事ができたのでしょうか?
私自身も謙虚に反省する「文化の日」でした。
 
中国情報をご査収ください。


目次 

1.特集   

【中国関連】 

【日本関連】 

【アジア関連】 

【米国・北米関連】 

【欧州・その他地域関連】 

【世界経済・政治・文化・社会展望】 

2.トレンド 

3.イノベーション・モチベーション 

4.社会・文化・教育・スポーツ・その他  

5.経済・政治・軍事 

6.マーケティング 

7.メッセージ 

  【上海凱阿の呟き】 

記事 

1.今週の特集 

【CHINA関連】 

中国主席「年6.5%以上の成長必要」  新5カ年計画で明言  

定年退職年齢を引き上げへ2015/11/3 日経Net 

【北京=大越匡洋】中国共産党は3日、2016~20年の第13次5カ年計画の草案を公表した。習近平国家主席

は同日、計画で目標とする「中高速成長の維持」について「年平均6.5%以上の成長が必要だ」と明言した。高

齢化の進展や働き手の減少に伴う経済成長の鈍化への危機感を鮮明にし、計画では定年退職年齢を段階的

に引き上げる方針を打ち出した。 

  今回公表された中国の5カ年計画の草案は10月29日に閉幕した党中央委員会第5回全体会議(5中全会)

で採択したもので、国営新華社を通じて公表した。新華社は併せて、習氏自身による「計画の解説」も配信し

た。 

  中国では15~59歳の就業年齢人口が減り始めている半面、60歳以上は総人口の15%強に当たる2億人

超に達している。働き手の減少が潜在成長率の低下を招いており、習氏は「高齢化の圧力を和らげ、労働力の

供給を増やす」と強調した。 

  16年からの計画を巡っては、すでに5中全会閉幕時のコミュニケで、30年余り続く「一人っ子政策」を撤廃し、

すべての夫婦に第2子出産を認める方針を表明していた。加えて、現在は原則、男性60歳、女性50歳として

いる定年退職年齢を「段階的に引き上げる政策を公布する」と明記した。 

  習氏は、次期計画で目標とする「中高速成長の維持」の具体像にも初めて言及した。経済成長がいくぶん鈍

る「新常態(ニューノーマル)に入った」との認識を示しつつ、20年までに10年比で国内総生産(GDP)と所得

水準を倍増する目標の実現を重視し、向こう5年で必要となる「年平均6.5%以上の成長が最低ラインだ」とし

た。 

  今年までの現行計画では年平均7%の成長を前提としていた。 

  計画には通貨・人民元の改革をさらに進める方針も盛る。国際通貨基金(IMF)の準備通貨である特別引き出

し権(SDR)への人民元の採用をめざし「交換が可能で、自由に使える通貨とする」との目標を掲げた。 

  数値目標などを盛った詳細な計画は、来年3月に開く全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に決

定する。 

中国の預金金利自由化、金融政策「未知の世界」へ  

編集委員  吉田忠則 2015/10/29 日本経済新聞  電子版 

  中国の金融制度改革が大きく前進しようとしている。中国人民銀行(中央銀行)が24日に預金金利の上限を

撤廃したことで、制度のうえでは銀行は今後、預貸金の金利を自由に決めることができるようになる。その先に

は、金利で市場をコントロールするという中国の金融政策にとって未知の世界が待つ。 

■IMFの準備通貨に 

中国人民銀行が預金金利の上限を撤廃したことで、制度上は銀行が預貸金金利を自由に決めら

れるようになる=ロイター 

  マネーの配分を市場が決める役割を十分に発揮させるには、金利の市場化を加速する必要がある――。人

民銀行の担当者は23日、預金金利の上限を撤廃したわけをこう説明した。その前提として、様々な金融商品

が登場したことで預金金利を規制する意味が弱まったことや、銀行が金利を自ら決める能力が高まったことを

挙げた。 

  預金金利の上限撤廃と同時に、預貸金の基準金利を引き下げたので、一見すると中国も金利を使って金融

政策を実施しているように見える。だが基準金利の上げ下げは、「金融を引き締める」「緩和する」という当局の

意図を伝えるのが主な狙い。実際に効果を発揮しているのは、資金量のコントロールだ。 

  それを可能にしているのが、銀行への窓口指導だ。中国の主要行は資本も人事も共産党・政府が握ってお

り、リーマン・ショックのときや今回のような景気減速局面では融資を増やして景気対策の一翼を担う。政府が

強い権限を持つ中国ではいかにもやりやすい量のコントロールを改め、金利による金融政策を模索するのはな

ぜか。 

  最大の狙いは、人民元を国際通貨基金(IMF)の準備通貨に組み入れさせることにある。そのためには金利

の自由化などを進め、金融改革への積極姿勢をアピールする必要があった。これを受け、IMFは11月中にも

人民元を準備通貨に採用することを決める方針を固めている。 

■マネーの激流にあらがえず 

  そもそも、いずれ金利で金融政策を実施せざるをえなくなるという事情もある。準備通貨入りをにらみ、資本移

動の自由化も進めてきたが、国境をはさんで資金が自由に移動するようになると、量によるコントロールが難し

くなるからだ。 

中国が資本移動の自由化を進めると、人民元相場の自由化も現実味を帯びる(香港の両替所で)

=ロイター 

  すると今度は、人民元相場の自由化が視野に入ってくる。もし硬直的な元レートのままで金利を変更すると、

例えば米中の金利差をついて大量の投機資金がノーリスクで中国に入ってきたり、逆に中国から出て行ったり

するようなことが起きかねないからだ。為替相場が柔軟に動けば、こうした事態を防ぎやすくなる。 

  もちろん金利を使った金融政策にすぐに変われるわけではない。預金と融資の金利を自由にしても、基準金

利を残したことは、引き続きこの金利を参考にするようにというメッセージでもある。当面は金利が需給に応じて

柔軟に動くように市場を整備することが課題になる。ただし、量から金利への金融政策の見直しはもとに戻るこ

とのできないプロセスだ。 

  ドミノ倒しのような課題の連鎖は、中国が経済を開放して国際化したことの必然的な結果でもある。いくら共産

党が国内で強大な権力をふるっても、世界をおおうマネーの激流にはあらがえない。市場化を加速させる一連

の改革は、政府の役割の見直しを通じ、いつか中国に政治体制の変容を迫るかもしれない。 

韓国財閥総帥、中国首相の昼食会に全員集合、日中韓首脳

会談開催~~韓国財閥の関心は圧倒的に中国 

2015.11.3(火)    玉置  直司    DOL   

11月1日、韓国ソウルの大統領府で、日中韓首脳会談前に握手する(左から)安倍晋三首

相、韓国の朴槿恵大統領、中国の李克強首相〔AFPBB News〕 

  2015年11月1日、日中韓首脳会談がソウルで3年半ぶりに開かれた。いろいろな立場の差は

あっても首脳同士が顔を合わせて話し合うことは重要だ。韓国の産業界でも首脳会談実現を歓迎

する声が強い。その韓国産業界の関心は、圧倒的に中国であることを改めて示すことにもなった。  

  3カ国首脳会談が開かれていた11月1日の午後。ソウル中心部のロッテホテルでは、「日中韓

ビジネスサミット」も開催された。 

「日中韓ビジネスサミット」開催 

  日本の経団連、韓国の全国経済人連合会(全経連)、中国の国際貿易促進委員会の共催で、

ビジネス界でも関係を緊密にしようという趣旨で、首脳会談に合わせて開かれていた。 

  日本からは榊原定征経団連会長(東レ会長)、内山田竹志同副会長(トヨタ自動車会長)、飯島

彰己同副会長(三井物産会長)などが参加した。 

  「サミット」は午後2時半にロッテホテルで最大の宴会場で始まった。30分ほど前に会場に行って

みたが、空席を見つけるのに苦労するほどの盛況だった。首脳会談を終えた3カ国首脳が午後5

時半ごろに登場するとあってか、定員いっぱいの400人を超える参加者があったという。 

  目立ったのは、李克強首相に同行して来た中国のビジネス関係者。さらに韓国在住の日本企業

の幹部たちだった。 

  サミットは3団体トップの開会の挨拶にあと、「交易、投資拡大のための覚書」「電子商取引促進

のための業務協力」などに調印するセレモニーがあった。 

  その後、1部、2部のセッションがそれぞれ1時間ずつ続いた。 

日中は経済人なのに、韓国はエコノミスト? 

セッション1:  低成長時代―新しい挑戦と機会 

セッション2:アジア地域のインフラ開発 

  よくある形式だったが、壇上の発言者の顔ぶれに「あれ?」と思わされた。 

  司会者は、韓国の元首相と元財務相が交代で務めた。ともにエコノミストとしても著名だ。ほかに、

日韓中から1人ずつが各セッションにパネリストとして登場した。  

「あれ?」と思ったのは、3カ国から1人ずつ出たパネリストの顔ぶれを見た時だった。それぞれのセ

ッションに、日本側からは、内山田会長と飯島会長、中国側は王府井百貨店と安邦保険のトップ

が参加した。 

  「ビジネスサミット」と言うからには、ビジネス界の首脳が参加するのが普通だろうが、韓国側は違

った。 

  2つのセッションとも、なぜか、政府系研究所の所長だったのだ。 

  もちろん、政府系研究所のトップ2人は韓国ではそれなりに知られた存在で見識あるエコノミスト

だ。だが、日本と中国の参加者がビジネス界代表なのに、韓国からの参加者は政府系研究所の所

長というのは相当に違和感があった。 

  経団連と全経連、国際貿易促進委員会の共催で、中国からも「経営者」が出ているのに、なぜ

か、韓国からはエコにミストなのだ。司会者も、どちらかと言えば、エコノミストに近い人物で、どうして

もダブってしまう印象も与えた。 

セッション中に失笑買う場面も 

  エコノミストだからか、やり取りで会場の失笑を買う場面もあった。 

  1人の政府系研究所の所長が、日中韓の協力を語る際には北朝鮮のことを考えることも重要だ

と指摘した。この所長は「最近、北朝鮮は過去にないほどの変化の兆しがある。国民が『消費』の味

に目覚めつつある」などと語った。 

  統一に向けて北朝鮮の経済を支援するためにも日韓中のビジネス界が協力すべきだという、政府

系研究所の所長らしい主張だった。 

  特に、珍しい発言でもなく、そのまま反応もなく次の発言に進むかと思ったら、ちょっと違う展開に

なった。こんなやり取りになった。 

日中韓ビジネスサミットが開かれたロッテホテル  

安邦保険のトップ:「大変面白い話だが、具体的に何をお考えですか?」 

政府系研究所長:「いや・・・具体的には・・・」 

  この瞬間、会場の中国人からどっと失笑が漏れた。日本人や韓国人は、黙って聞いていたのに、

中国人が一斉に笑ったのだ。北朝鮮に対する見方の違いか。理屈だけで具体論がない話に対する

嘲笑か。セッションで最も興味深い場面だった。  

いまひとつの盛り上がりだったが・・・ 

  さて、では、韓国のビジネス界の首脳たちはどうして出てこなかったのか。  

  「サミット」の会場には、全経連の許昌秀(ホ・チャンス)会長(GSグループ会長)や重光昭夫ロッテ

グループ会長などは顔を見せてはいた。 

  だが、ビジネス界の代表人物や、韓国を代表する大企業のトップはほとんど姿を見せなかった。 

  午後5時半。予定通り、3カ国首脳が顔を見せ、経済協力の重要性について簡単なスピーチをし

た。それなりの盛り上がりになり、「サミット」の意義もあったのだろう。 

  でも、何か、盛り上がりに欠けるな。そう思って、同じテーブルにいた中国の企業幹部に印象を聞

いたら、こんな答えが返ってきた。 

  「昼食会が盛り上がったから・・・」 

李克強首相の昼食会に財閥総帥全員集合 

  「?」。何のことかと思ったら、この日、「サミット」の前に、すごい昼食会があったのだ。 

  場所は、ソウル市内の「新羅ホテル」。サムスングループの旗艦ホテルだ。 

  大韓商工会議所が、李克強首相を招いての韓国ビジネス界代表との昼食会を開いたのだ。 

  300人が参加した昼食会も圧巻だったようだが、直前に開かれた小規模の「懇談会」がもっとすご

かったようだ。 

  まさに韓国の財閥総帥の「全員集合」だったのだ。  

主催者である大韓商工会議所の朴容晩(パク・ヨンマン)会長(斗山グループ会長)のほか、李在

鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長、鄭夢九(チョン・モング)現代自動車グループ会長、崔泰源

(チェ・テウォン)SKグループ会長、具本茂(ク・ボンモ)LGグループ会長、重光昭夫ロッテグループ

会長、権五俊(クウォン・オジュン)ポスコ会長――など、ほぼすべての財閥総帥が参加した。  

  中国側も李克強首相のほか、外相、国会発展改革委員会主任、科学技術相、環境保護相、商

務相、人民銀行総裁、財政相など外交、経済閣僚が顔をそろえた。 

  財閥トップが、中国事業の現況や要望などを話したという。 

AIIBにも言及 

  朴容晩会長は、挨拶の中でアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通した中韓協力にも言及したとい

う。 

  韓国でも、財閥総帥がこうして一堂に会すことなどほとんどない。大統領が時々青瓦台(大統領

府)で会合を開く時くらいだろう。 

  李克強首相が公式訪問で大勢の閣僚を引き連れていたことなど勘案しても、韓国の財閥総帥を

これだけ集めるというのは、圧倒的な存在感だった。 

  もちろん、日中韓ビジネスサミットと李克強首相の昼食会を単純に比較することなどできない。 

  ビジネスをしている立場から見れば、中国の首相と小規模グループで会える機会を逃したくないと

考えるのも十分理解できる。 

  それにしても、同じ日にあった会合だけに、その差が目立ってしまった。 

  韓国の大統領も出席する「サミット」にはほとんど姿を見せなかった財閥首脳が、中国首相の昼食

会にはずらりと顔をそろえたのだから・・・。  

ちょうどこの日、韓国の産業通商資源部が、「10月の輸出入動向(速報値)」を発表した。韓国経

済が頼みとする輸出が10月には前年同月比15.8%減少してしまった。  

突出した「中国依存度」 

  それでもその中身を見ると、「中国依存」は相変わらずだ。 

  1~10月の輸出額4403億ドルのうち、中国向けは1146億ドル。26%を占めた。一方の日本向

けは、215億ドル。率にして4.8%と、5%を割り込んでしまった。 

  「韓国の財閥がどこを向いてビジネスをしているのか」――実によく分かる11月1日の2つの行

事だった。  

中国富裕層の資産、2020年にアジアの過半数を占める―香港紙 

Record China 11月3日(火) 

30日、中国富裕層の総資産は順調に増加しており、2020年には8兆2500億元(約158兆円)

に達するとみられる。  

2015年10月30日、参考消息網によると、2020年には中国富裕層の総資産がアジアの過半数を占めるとみ

られている。 

 

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、スイスのプライベートバンク「ジュリアス・ベア」の報告書を取

り上げた。中国富裕層の総資産は順調に増加しており、2020年には8兆2500億元(約158兆円)に達すると

みられる。アジアの富裕層資産の7割が中国に集中する計算だ。 

 

中国経済減速がささやかれているが、今後も中国が資産成長の中心地であり続けると分析している。報告書で

定義されている富裕層とは不動産以外に100万ドル(約1億2000万円)以上の流動資産を持つ人を指す。 

勃興する中国のサービス業にベンチャーキャピタルも殺到 

陳言 [在北京ジャーナリスト] 2015年10月30日 DOL 

  中国は現在、産業構造を大きく転換する最中にある。製造業、とくに沿海部の製造業は、労働力不足、労賃

の高騰、電力水道費用の上昇などによって、多くの企業が困難に直面している。 

  一方、淘宝(タオバオ)などのeコマース、宅配便などの物流は、中国の津々浦々までネットワークを張り、サ

ービス業は新しい形で速く、大きく成長している。 

配車アプリ、微信が普及、eコマースへの投資が急増 

  日本と違ってJRや地下鉄などの公共交通機関がまだ十分普及していない中国では、タクシーがよく使われ

ている。ここ一、二年で海外のアプリを含めて、配車アプリは、都会で会社勤めのほぼすべての人が使うように

なっている。 

  中国既存のタクシーサービスはけっして褒められるものではない。搭乗拒否、タクシードライバーが自分の好

きなラジオ番組を聞き、無線でほかのドライバーと談笑することは、ごく当たり前のことである。しかし、新規に参

入してきた配車アプリによって提供されたサービスは、少なくとも既存のタクシーサービスとは違い、少しは近代

都市のサービスとなってきた。 

  このほど、中国消費者報など消費者権利擁護を掲げている31団体が共同で「配車アプリのサービスと消費

者権利の保護」に関するアンケート調査を実施した。その結果、配車アプリは消費者に歓迎されており、65.5%

以上の回答者が利用経験を持ち、8割近い回答者が利用したいと答えた。7割を超える回答者が配車アプリサ

ービスに「満足」、「非常に満足」と答えた。 

  配車アプリのほかにも、騰訊(テンセント)傘下の「微信」(WeChat、日本のLineに相当)は、中国で大流行し

ている。昨年年末の公式統計ではユーザーはすでに7億人を超え、そこからいろいろなサービスも生まれてい

る。配信アプリはもちろん、友人へのお金の振り込み、公共料金の支払いなども微信を使って行える。 

  微信も非常に収益が高い。市場研究公司Activateがこのほど発表したデータによると、微信はユーザー1人

から7ドル(約845円)の収入を得ており、これは世界のSNSの中で前例のない高水準だ。韓国のカカオトー

クは4.24ドル(約512円)、日本のLineは3.16ドル(約381円)だという。 

今の中国ではこうした新しいサービスが投資を引き付けている。10月20日には、中国最大の検索エンジンで

ある百度(バイドゥ)が2億ドルで「波羅蜜グローバルショッピング」という名のベンチャー企業を買収した。 

  波羅蜜は2015年3月に設立され、主に日本や韓国にバイヤーを派遣・駐在させて、製品を直接買い付け中

国国内でアプリを通じて通販する。商品の種類は中国人が海外でよく買う美容・スキンケア品、乳幼児用品、ス

ナック類で、販売価格は買付時の「店頭価格」であると称している。中国の消費者を安心させるために、海外に

駐在するバイヤーが買い付ける過程の実況中継動画を加えることまでしている。 

  百度はそこから新しい収益を獲得しようとしている。もちろん、波羅蜜のほかに同様のネット通販は、淘宝や天

猫(TMALL)、そして京東などがあり、波羅蜜以上に、先行するそれらのeコマースは成功している。 

「蜂の巣式変革」で驚きの販売成績、ベンチャーキャピタルの寵児に 

  微信、eコマースの発展は、小売業界に巨大な変化をもたらしている。最近注目される事例としては、30年の

歴史をもつ家電小売り企業である国美集団が内部コード「蜂の巣式変革」と呼ばれる改革を始めたことである。 

  蜂の巣式変革の最も典型的なモデルは、国美「ミクロ店」計画で、国美の従業員が微信で店を開き、微信の

「友達グループ」の顧客群の需要を正確に把握し、そうした需要情報を国美集団のIT プラットフォームからビッ

グデータ分析部門に伝え、分析結果はサプライチェーンのプラットフォームで共有され、「(1日の勤務時間であ

る)8時間外の小売ネットワーク」を構築するものである。 

  今年の9月17日、国美はかつての大量の広告宣伝という手法を捨て、ファン顧客をひきつける手法をとり、

10万の「働き蜂(ミクロ店)」を立ち上げ、さらに30万の全従業員を動員し、「9・17ファン感謝デー」イベントを行

った。この9月17日には、国美の全国の1714のオフライン小売店の販売総額が42億元という史上最高額を

記録し、オンラインの販売額も前年同期比468%増となり、モバイル端末での販売も前年同期比680%増で、モ

バイル端末のオンライン売上全体に対する割合はすでに52%になっている。 

  サービスの可能性は投資家の注目を集めている。一財ネットの10月20日の報道によると、10月19日に

KPMGコンサルティング株式会社が発表した世界ベンチャーキャピタルファンド投資報告書によれば、中国の牽

引で2015年1月から9月にかけて、ベンチャーキャピタルの出資を獲得した会社の総額は984億ドルとなり、

史上最高を更新したことが明らかになった。 

このKPMGインターナショナルと、ベンチャーキャピタルデータベースのCB Insightsが共同発表した世界ベン

チャーキャピタルファンド情勢の四半期報告によれば、第3四半期だけで、世界中の投融資額は前年同期を

82%上回り、376億ドルに達している。なかでもアジア、特に中国が増加を推進する主な原動力となっている。

今年の7月から9月の間、中国の会社はベンチャーキャピタルから96億ドルの投資を得ており、これは前年

同期比315%増加となる。 

  その中で、中国版ウーバーの「滴滴快的」、中国のフードデリバリー最大手Ele.me(餓了麼)などを代表とする

インターネット企業が今年獲得した融資額は、次々に記録を更新している。「滴滴快的」は7月に20億ドルの

融資達成を発表し、インターネット企業の32年来の最大の単独融資を記録した。続いて、9月初めには、その

「滴滴快的」が、新たに約30億ドルの融資を獲得したと発表した。旅行・観光予約サイトの「同程」も7月末に、

万達グループからの融資した60億元を獲得した。 

消費嗜好の大きな変化で浮かぶ産業、沈む産業 

  10月に入ってから、中国のネット上では『想像をはるかに超える中国の10年後』という記事が人気を博してい

る。 

  10年後の中国の消費は「収入と引き換えに休暇を手に入れる」段階に入ると予想されている。2015年から

2025年までに45歳から49歳の消費人口がピークを迎える。すでに民衆の消費支出において医療や金融サ

ービス、保険が占める割合は絶えず高まってきているが、休暇に関連したサービス、レジャー、体験型の消費

は今始まったばかりだ。 

  今後10年間で、もし中国で平均約7%のインフレ率が続くとするならば、2015年の100元は2025年には48

元ほどの価値しかないことになる。それゆえ、今多額の現金を所有することはとても危険だ。今後10年間で不

動産企業全体の90%がなくなると見られ、収入対比の価格で言えば、10年後の中国で最も安い物は住宅にな

るかもしれない。 

  鋼鉄や石炭もみな過剰生産能力の解消という過酷な問題に直面し、鋼鉄を扱う企業は新たな閉鎖と操業停

止の波に飲まれることだろう。そして、スマート化された機器やその他のハイテク製品が、より広い分野およびよ

り高いレベルで人力による労働に取って代わられるにつれて、人材の評価基準はいっそう厳しくなり、人材過多

となる業界や分野が現れる一方で、人材不足は減少していくと思われる。 

  イノベーションによって、中国のサービス業は今後も大きく変化し、産業自体も変貌していくであろう。 

男性・体験・実利  中国、消費も「新常態」に2015/11/3 日本経済新聞  電子版 

上海の伊勢丹は「メンズ館」で男性の消費を取り込む 

  中国で消費もかつての勢いを失う中、新たな流れをつかもうと企業が動き出した。三越伊勢丹ホールディング

スはおしゃれにお金を使う男性を想定し上海の伊勢丹に専用フロアを再開。商業不動産大手の大連万達集団

は遊戯施設など買い物以外の体験を重視した商業施設を増やす。いわば消費の現場も変革で安定成長をめ

ざす「新常態(ニューノーマル)」を模索しており、そのキーワードとして「男性・体験・実利」が浮かんできた。 

  「ファッション誌『GQ』や韓国、日本のドラマでかっこいい男性の服装をいつもチェックしている」。上海市の男

性会社員、張志光さん(32)は多いときは月4~5回、洋服や靴を買う。月1万5千元(30万円弱)の収入は「好

きなものなら、いくらでも(ファッションに)使う」と話す。 

  上海市の百貨店、上海梅龍鎮伊勢丹は9月末こうした需要を狙い男性専用フロアを設けた。通常はブランド

ごとに売り場を仕切るが、スーツや靴、雑貨をセレクトショップのように並べ洗練された雰囲気だ。 

  同店は6年前に一度、「中国の男性はあまりおしゃれにお金を使わない」と、男性フロアを閉鎖した経緯があ

る。だが伊勢丹新宿本店(東京・新宿)で訪日客の消費額を調べると、「最も多いのがメンズ館だった」(上海伊

勢丹の美川龍二総経理)。 

 

  中国のファッション消費で先行した女性向けが一巡する中、男性の動きが活発だ。同フロアの衣料ブランド「イ

ニシャル」では10月中旬の1週間で10数万元が売れた。 

  家電量販店大手、国美控股集団が1~6月にインターネット通販での男性の購入商品を調べるとデジタル機

器と並び洋服や靴、帽子が上位に入った。調査会社、凱度によると今年1~3月の男性洗顔料市場は約15億

元と2年前比17%増。別の調査では20~49歳の中国男性1500人のうち約70%が自分の肌に「満足していな

い」と回答。男性のおしゃれ消費はさらなる拡大が見込まれる。 

  万達が9月末に雲南省で開業したショッピングセンター(SC)。その一角に、ひときわ子供の歓声が飛び交う

場所がある。幼児向けの遊戯施設「万達宝貝王」だ。ボールを敷き詰めた「ボールプール」や滑り台などの遊具

をそろえ、ゲームや工作も楽しめる。 

  「安全だし、子供も本当に楽しそう」。ある母親(30)は2歳の男児を預けてレストラン街へと向かった。施設の

入場に30~60元、ゲームなどをするにはさらに費用がかかる。近くでは遊戯施設と同じ玩具を売り、祖父母が

孫に買い与える姿も。遊戯施設の楽しさが消費を刺激しており、万達は現在30店の宝貝王を20年に200店

に増やす計画だ。 

  中国では急速な経済成長に伴い各地で百貨店やSCが続々開業した。だが出店するブランドや商品など中身

は似通い、消費者が飽き始めたほか便利なネット通販の普及で閉鎖が相次ぐ。そこで万達などが力を入れる

のが体験を売る商業施設だ。日本の消費者が商品を買う「モノ消費」から体験重視の「コト消費」にシフトしたの

と同じことが中国でも起きつつある。 

  「この現金で買えるだけ売ってくれないか」。上海市のハウス食品グループ本社の事務所。ある中国人男性が

5月発売の健康飲料「ウコンの力」を求め突然やってきた。 

  試供品を入手した男性が酒席の前に飲んでみると翌朝の目覚めが良かった。友人も賛同しまとめ買いを依頼

したという。1本25元(約475円)と安くはないが、口コミで認知度が高まっているとハウスはみている。 

  健康意識の高まりと習近平政権の倹約令で宴席でも「健康に気をつけている」などと酒量を控える中国人が

増えている。華潤雪花ビールや青島ビールなどビール大手はアルコール度数ゼロの「ノンアルビール」に注力

する。従来は「酒が飲めないのは恥ずかしい」と不人気だったが、最近は北京など大都市で支持され「新しい消

費の潮流になる」(北京青年報)。 

  高額の時計や車など「立派に見せたい」見えっ張り型の消費が目立っていたが健康など実利に合う消費が広

がってきた。 

来て、見て感じた  中国人訪日客の本音、再出発の日中韓  

2015/11/3日本経済新聞  電子版 

  「ユニクロも日本で買った方がなんだか良い物のような感じがする」。10月末の東京・銀座。湖北省武漢から

来たという劉征さん(26)は、中央通りに面したユニクロ銀座店で薄手のダウンジャケットやTシャツなど計5万円

分を購入した。今回が初来日の劉さん。日本の印象は「とにかく街が清潔で歩いていて楽しい」だそうだ。 

■反日デモに参加したが…… 

 

  実は劉さんは、まだ大学生だった2010年に地元の武漢で、沖縄県の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に

反発する反日デモに参加していた。「反日デモなんて何の意味もないことが来てみてよく分かった。知らないと

いうことは怖いことだ」と話した。 

  その日はちょうど、米軍艦船が南シナ海で中国が造成した人工島に接近して緊張が高まった日だったが「軍

は一体、誰のために島を造ったのか。一般国民は誰も摩擦を望んでいない」と不愉快そうに語った。 

  ユニクロ銀座店の近くにある、スーツケースを5400円均一で販売するかばん屋では、中国人観光客が連日

行列をつくる。山東省から来た汪瓔さん(29)が百貨店で化粧品を買いすぎたと、新たにスーツケースを購入。

「日本は物が豊富で選ぶ楽しさがある」と興奮気味に語った。 

  中国が不景気になると中国人観光客も減るのじゃないかとたずねると「私たちにあまり影響はないわ。中国人

は13億人。たとえ不景気になっても景気の良い人はたくさんいるはずよ」と笑った。 

  観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、14年の訪日中国人のうち2回以上日本に来たことがあるリピー

ターは44.2%だった。15年はこの割合がさらに増えるとみられている。 

  中国人観光客の「爆買い」ばかりが注目されるが、リピーター中国人の増加に伴い、買い物だけでなく日本文

化自体への関心も広がりつつある。 

■「共産党が言っているだけ」 

  「胸の辺りが苦しいし歩きづらいけど、日本人になったみたい」。浅草の雷門前。近くのレンタル衣装屋で浴衣

を借りた江蘇省出身の袁小燕さん(19)と王路さん(19)は上海の大学の同級生。来日は今回が2度目だ。 

記念撮影に興じる浴衣姿の中国人女性たち(東京・浅草の雷門前) 

  もともとアニメのセーラームーンが好きで日本に関心を持ち始めたという袁さん。昨年の来日時は買い物と観

光地を巡ることで必死だった。今回は浴衣を着たり、茶道を体験したり、時間をゆっくり過ごす予定だという。 

  近年の日中関係の悪化について聞いてみると、驚いたような顔で「それは(中国)共産党が言ってるだけ」と大

笑いした。来年も2人で日本に来て、縁結びで知られる島根県の出雲大社に行きたいという。 

  中国では長年の一人っ子政策の影響で男女比が不均衡となっており、女性を中心に若者の結婚難が続く。王

さんは日中関係よりも自分が結婚できるかどうかが心配だと話す。「共産党が良い男性を紹介してくれるわけじ

ゃないから、まずは出雲大社にお願いするわ」 

  歴史や領土の問題が火種になり、関係改善のペースが遅い日中。警戒し合う政治とは対照的に、草の根で

進む交流が、改善を促す力を秘めている。 

中国が初の国産ジェット機を完成、来年にテスト飛行予定=米国ネッ

トの反応は?Record China 11月3日(火) 

2日、米公共ラジオ局NPRは、中国が初の国産ジェット機を完成したと報じた。この報道に、米国

のネットユーザーがコメントを寄せている。資料写真。  

2015年11月2日、米公共ラジオ局NPRは、中国が初の国産ジェット機を完成したと報じた。 

 

中国国有企業「中国商用飛行機」が開発した初の国産中近距離ジェット旅客機「C919」が2日、上海の工場で

公開された。テスト飛行は来年の予定で、早ければ2018年にも納入される予定だという。米紙ウォール・ストリ

ート・ジャーナルによると、米エアバス社の広報担当者は、中国にとって画期的な出来事だと祝辞を述べ、競合

となることを歓迎すると語った。 

 

この報道に、米国のネットユーザーがコメントを寄せている。 

「うーん、中国製の旅客機に乗るのは待っていようかなと思うよ。永遠にね」 

「もう飛行機には乗らない」 

「そして、ボーイングは中国に組み立て工場を建設するんだよね!」 

「この開発に関わった技術のいくつかは、盗まれたものではないだろうか?」 

「エスカレーターより安全であることを祈るよ」 

「その旅客機はウォルマートで販売されるのだろうか?」 

「ウォルマートの家庭用品、ガーデン用品売り場で販売されるだろう」 

「驚いたな。ボーイングに似ているし、エアバスにも少し似ている」 

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【JAPAN関連】 

中国で拘束された日本人スパイ、狙いは何だったのか? 

2015年10月28日(Wed)   桐生知憲 (ジャーナリスト) Wedge 

日本人をスパイ容疑で拘束したと中国が発表してから間もなく1カ月となる。この衝撃が走った先月30

日、発表前に一部で報道されていたが、なぜこのタイミングだったのか?  また、このふたりは日本の

情報機関・公安調査庁の協力者であるとされているが、日本の公安当局は中国で何を探っていたの

か。情報は断片的で詳細は明らかになっていないが、筆者がこれまで得た情報をもとにたどってみた

い。 

Getty Images 

  拘束が明らかになったのは9月30日だった。朝日新聞朝刊一面には「中国で日本人2人拘束」の

見出しが躍った。拘束は「5月から」でその容疑は「スパイ行為」だという。その日のうちに中国当局は

拘束が事実であることと、その容疑がスパイであることを認め、公表した。その後、新聞やテレビは拘

束されたうちの1人が北朝鮮から脱出した「脱北者」で、中国と北朝鮮のいわゆる中朝国境で情報収

集をしていたと報道。 

  もう1人については浙江省の軍事施設周辺で拘束され、軍事施設の写真を行っていた可能性があ

るとの報道だった。その後、もう1人の日本人男性が拘束されていたことがわかったほか、今月の中

旬には日本語学校関係者の女性も拘束されていることが明らかになっている。これらの4人はいずれ

も民間人で、女性を除いた3人の男性は公安調査庁の依頼に応じた「協力者」の可能性が指摘され

ている。 

一部のジャーナリストには公然の事実だった 

  一方の日本側は、菅官房長官が9月30日の記者会見で、「日本政府が中国にスパイ行為に関与

する民間人を送り込んだという事実があるのか」という質問に対し、「我が国はそうしたことは絶対にし

ないということを、これは全ての国に対して同じことを申し上げておきたい」と日本のスパイであることを

強く否定した。また、公安調査庁は、3人の男性が協力者であるかどうかについて、「コメントは差し控

える。民間人を送り込んで、いわゆるスパイ活動することはしていない」とコメントしている。 

  負け惜しみに聞こえるかもしれないが、筆者は複数の日本人が拘束されていることを少なくとも朝日

が報道する前に知っていた。どのくらい前からかは種明かしにもつながるので控えるが、この情報をつ

かんだ際、すぐに報じることはためらわれた。こう思った公安・外事の界隈にいるジャーナリストは筆者

だけではないはずだ。   

  公安調査庁のような情報機関が民間の協力者を使って情報収集をするのは公然の秘密であり、情

報戦の世界では当然のことだからだ。公安調査庁という日本の機関が使っている人物が中国でスパ

イとして拘束されたら、日本が批判されることになり、中国に付け入る隙を与えられかねないからだ。今

回拘束された容疑は中国が去年作った法律にそったものかもしれないが、こうした行為はどこの国でも

やっていることだ。日本国内ではそれを取り締まる法律がないから、日本は「スパイ天国」と揶揄されて

いるぐらいだ。 

前置きが長くなったが、9月30日は不思議な1日だった。これはさる中国関係者によると、朝日が一

面で報じると、中国当局はすぐに拘束の事実を公表し、中国国内メディアが一斉に日本がスパイ行為

を行ったという内容で報道が相次いだという。スパイ容疑で拘束されているのは事実だが、中国当局

は何カ月にもわたって拘束しており、このタイミングで親中国とされる朝日が報道し、即座に反応する

中国当局というのもいろいろ勘ぐってしまう。 

  その後の展開はご承知の通りで、日本のメディアは男性3人の人となりを書きまくる毎日。スパイとは

書かないまでも、それを疑わせるに十分の内容だった。共同通信は、「2人は公安調査庁の依頼に応

じて」と配信。その後、ある安倍政権応援新聞は浙江省で拘束された男性は「公安調査庁の元職員

だった」と書く始末。筆者はこの記事は誤報だと思っているが、日ごろ国益優先を説く安倍政権応援新

聞が明らかに中国を利するようなことを書くのはいかがなものか。 

  外事を中心に情報部門に長年携わる人物は、「拘束された奴らはたいしたことをやっているわけでも

ないのに、中国の戦略にはまってしまっている。来るべき日中首脳会談で中国側のカードに使われる

だけだ」と日本の騒ぎ方を危惧していた。 

経済の低迷で「反日」の喚起が目的か? 

  ある中国専門家は今回の拘束について次のように語っていた。「日本をこらしめるためというよりも、

今回の拘束は中国国内の問題だとささやかれている。中国経済が翳りを見せ始める中、国内世論を

まとめるために最も手っ取り早いのが『反日』。経済の翳りに加えて格差の拡大やウイグル問題で習

近平政権に対して向けられる不満を反日で逸らすことが目的だった」と見る。仮に来月1日に予定され

ている日中首脳会談でこの件を中国側がカードとして切りだした場合、中国国民は政府が日本に対し

て強く出たと評価する可能性が高い。こうしたことを見計らった上での今回の発表だったのかもしれな

い。 

  協力者であることを認めていない公安調査庁だが、その意図は何だったのか。公安調査庁は、オウ

ム真理教の後継とされる教団や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)といった国内の団体のほか、中

国やロシアなど諸外国の動向について情報収集を目的とする情報機関で、日本版NSCの国家安全

保障会議にも情報の提供が求められるなど、政府の情報収集・分析機能を担っている1組織である。 

  今回の件について、公安調査庁と犬猿の仲であるとされる警察サイドからは、当然のことながら公安

調査庁の悪口しか聞こえてこない。ある警察関係者などは、「去年から今年にかけて公安調査庁が中

国に行ける民間人で協力してもらえる人を多数募集していた。誰でもいいというような感じだったが、こ

ういうことをやってもらうには、きっちりした人物であるか見極める必要があるはずだ」とあきれていた。 

  表向き公安調査庁は拘束された人物たちが協力者であることを認めていないが、仮にこうした組織

に運用された人たちによって、日本批判されるのは極めて残念である。ある公安関係者は公安調査

庁の情報収集の実態について、「公安調査庁は常に組織存続の危機にさらされている。不要だとされ

ながら地下鉄サリン事件を受けてオウム真理教を監視する『仕事』を得て廃止の危機を免れた。最近

ではIS などの中東といった外国情報に関して関係されると見られる人物に片っ端から声をかけている

と聞く。公安調査庁が目の敵としている警察や内閣情報調査室と外国情報で差をつけたいと無理をし

たのが今回の拘束だろう」と分析していた。 

  なお、筆者は国益を優先すべきだという論者でもなく、ましてや日本にスパイ防止法を求める意見の

持ち主ではないことをお断りしておく。 

景気変調示す「BMW・マンション・中古品」 

上野 泰也  2015年10月27日(火)NBO 

上野 泰也みずほ証券チーフMエコノミスト会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経

て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測

で、市場のプロから高い評価を得ている。 

爆買いは続いているように見えるが…(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ) 

  今年に入ってからの日経平均株価のザラ場安値は1万6592.57円(1月16日)、ザラ場高値は2万0952.71

円(6月24日)であり、足元の水準はその中間点の近辺にとどまっている。年度内に2万3000円や2万5000

円に到達するだろうといった強気の株価予想は、ほとんど聞かれなくなった。株価上昇による資産効果を背景と

する高額品購入には陰りが出てきてもおかしくない。 

  また、中国で株価の「官製バブル」が崩壊し、さらに同国の景気急減速リスクが大きく注目される中で、中国か

ら訪日する観光客による「爆買い」が変調し始めたことを示す情報が、散発的に出てきている。 

  ここでは、筆者がウォッチしている指標の中から、それらに関係するものをいくつかご紹介したい。 

(1)車名別輸入車新規登録台数「BMW」が前年割れ 

  日本自動車輸入組合が10月6日に発表した9月の輸入車新規登録台数(速報)は、外国メーカー車と日本

メーカー車の合計で3万6258台(前年同月比マイナス1.8%)になった。 

  車名別の内訳のうち、高額品の消費動向を示すインディケーターとして筆者が以前からウォッチしている

「BMW」は5317台(前年同月比マイナス2.5%)で、3月以来の前年割れになった。消費税率引き上げの影響が

一巡した4月からプラスに転じていたが、6月から8月までプラス幅は縮小を続け、9月はついにマイナス圏に

転落した<図1>。 

■図1:車名別輸入車新規登録台数 「BMW」 

(出所)日本自動車輸入組合 

(2)初めて8月を下回った9月の首都圏マンション発売戸数 

  不動産経済研究所が10月15日に発表した9月の首都圏マンション発売戸数は、2430戸。前年同月比マイ

ナス27.2%で、4か月ぶりに減少した。前月(2610戸)比はマイナス6.9%である。 

月間契約率は66.0%(前年同月比マイナス5.6%ポイント)で、好不調の目安である70%を下回った。70%割れ

は昨年後半に3回あったが、今年に入ってからは初めてである<図2>。 

■図2:首都圏と近畿圏で発売されたマンションの月間契約率 

(出所)不動産経済研究所 

  また、9月の近畿圏マンション発売戸数は1798戸(前年同月比マイナス1.7%)で、月間契約率は67.9%。こ

ちらも70%を下回った。 

9月は統計開始以来初の低水準 

  今回の首都圏マンション発売戸数の大きな特徴として、日経QUICKニュース(NQN)が報じていたのは、夏季

休業などで販売が減りやすい8月の水準を9月の水準が下回ったのは1973年にこの統計が開始されてから

初めてだということである。そして、その原因としてこの記事が焦点をあてたのは、販売価格の上昇である。 

  1戸当たりの平均価格は、9月は5393万円になった。1平方メートル当たり単価は76.1万円。ともに4か月

連続の上昇であり、前年同月比はそれぞれプラス13.2%、プラス14.4%である。 

  前年同月比で年収や将来の年収見込みが13~14%も上昇した日本のサラリーマンは、ほとんどいないだろ

う。また、海外投資家による日本の不動産購入の動きも、中国をはじめとするアジア経済全体の減速感がぬぐ

えなくなってきた現状、勢いを弱めざるを得ないとみられる(筆者の身近なところでは、「台湾の資産家が都内で

利便性の高い複数のマンションなどを総予算5億円で探している」といった内容のダイレクトメールが自宅に届

くことが、最近減少した)。 

  NQNの上記の記事によると、不動産経済研究所は9月中旬時点では、同月の首都圏の発売戸数について

3000戸台後半~4000戸を見込んでいた。だが、「価格上昇により需要が鈍っており、7~8月に新規発売され

た物件の期分け売り出しが先送りされている」という。 

  なお、9月のデータは言うまでもなく、横浜市の大型マンションにおけるデータ偽装が発覚して社会問題になる

よりも前のものである。マンション販売には今後、この問題が悪影響を及ぼすとみられている。  

(3)中古ブランド品販売で有名な「コメ兵」の売上高が9月に急減 

  10月6日、東証・名証の2部に上場しているブランド品の取り扱いで有名な中古品販売会社「コメ兵」が、9

月の売上高を35億9700万円と発表した。前年同月比はマイナス7.8%で、3月(同マイナス0.8%)以来の前

年割れ。会社の発表資料には、売上高が9月に急減した原因の一つとして、訪日外国人向けのインバウンド

売上高が低調に推移したことが明記された。 

  ここまで大きなマイナス幅は、2014年5月(同マイナス14.0%)までさかのぼらないと見出されない。2015年5

月は前年同月比+18.7%だったが、6月から8月までプラス幅は縮小を続け、9月はマイナス圏に沈んだ。

「BMW」の販売台数の動きと似た動き方でもある。 

  中国はブランド品の偽物の多さで知られている。そこで、中国の人は日本に旅行に来た際に「爆買い」の一環

として、欧州製などのブランド品を日本で買う傾向がある。百貨店のみならず中古品販売会社でも、そうした売

上高が業績の向上に大きく貢献している。 

ブランド品需要に陰り? 

  その数字が変調したことが株式市場で注目され、10月7日の取引では上記の会社を含むインバウンド消費

関連銘柄に売り注文が集まった。 

  こうした細かい数字も含めて日々さまざまな統計を追っていると、国内経済が変調をきたしていることを、改め

て確認することができる。 

  10月の日銀「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で予想される経済シナリオの下方修正は、原油価格の

推移が4月時点の日銀の想定を下振れたというテクニカルな要因に起因するものにとどまらないだろう。内外

で経済が変調をきたしており、予想物価上昇率の数字も軒並み下がっている。日銀が金融政策決定会合終了

後の対外公表文で公約してきたことに沿って言えば、「必要な調整」をしなければならないほど、内容に重みが

あるシナリオの下方修正になりそうな情勢である。  

電気購入先「変える」 東京が最高  自由化で野村総研調査  

2015/11/1 日本経済新聞  電子版 

  2016年4月の電力の全面自由化を機に電気の購入先を変えて料金を抑えたいと考える消費者の割合は、都

道府県別で東京都が最も高い――。野村総合研究所は、そんな調査結果をまとめた。割合が最低だったのは

岩手県。産業構造や年齢構成の違いが背景にあると分析している。 

  11万件のアンケート調査や統計をもとに分析した。電気料金が今より5%安い新規参入の電力業者と契約す

るか聞いたところ東京都では3.8%が契約すると回答。首都圏や京阪神の各都府県は全て3%台だった。 

  一方、岩手県は2.6%。青森県や秋田県、島根県、佐賀県も2.7%と低かった。 

  都市部に集まる金融、通信、不動産などの職業に就く人は前向きで、農林水産業や建設業に従事する人は

既存の電力会社を好むと分析した。高齢者も切り替えをためらう傾向があるという。 

  16年4月からは一般家庭も含めた全ての消費者が、大手電力会社以外からも電気を買うことが可能になる。

新規参入するガス会社や通信会社などは、電力大手より割安な料金をアピールして、顧客の開拓を進める。 

栄養失調による死者数は殺人被害者の4倍!統計から読み解

く「日本人の死に方」和泉虎太郎 [ノンフィクションライター] DOL2015年11月3日  

水戸市と同規模の人口が消える一方、50歳以上の初産が41人いた2014年の日本。溺死はなぜ冬に集中発

生し、首都圏では病院で死ぬ人の割合がなぜ少ないのか。2014年の人口動態統計から、驚きの「日本人の死

に方」を考察してみよう。 

毎年、水戸市と同規模の人口が消え、25秒に1人が亡くなる日本 

  厚生労働省が発表する重要な統計の1つに人口動態統計がある。人口の動態、つまりは人口が増えたり減

ったりするその数値と、増減の原因を調べたものだ。 

納得の死もあれば、意外な死も。統計から透けて見える日本人の死に様とは 

  詳細な報告書は来年春に刊行されるが、9月初旬にホームページで調査の確報値が公開された。ここから、

人口が減る、すなわち日本人の死がいかなる現状なのかを読み取ってみよう。 

  昨年死亡した人は127万3004人。死因別では悪性新生物(がん)がトップ36万8103人だった。 

 

  一方、出生数は100万3539人で自然増減数は26万9465人の減。毎年、水戸市、徳島市、福井市と同じく

らいの人口が消えていることになる。 

  ご丁寧なことに25秒に1人が亡くなっているという試算も付けられている(ちなみに、出生は31秒、婚姻は

49秒、離婚は2分22秒に1件としている)。 

  死因の上位はトップの悪性新生物に次いで心疾患19万6926人、肺炎11万9650人、脳血管疾患11万

4207人と続く。 

 

  その悪性新生物の発生場所であるが、最も多いのは「気管、気管支及び肺」の7万3396人、次いで「胃」4

万7903人、「結腸」の3万3297人。 

  性に特有の新生物としては男性の「前立腺」が1万1507人、女性は「子宮」が6429人、「卵巣」が4840人で

ある。しかし「乳房」は男性の死亡者も83人いる(女性は1万3323人)ことが興味深い。 

  少ない死因にも目を向けていこう。目及び付属器の疾患による死者は3人、耳及び乳様突起の疾患が12

人。慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)22人。歯肉炎と歯周病6人でう蝕(いわゆる虫歯)1人。顔の器官で死ぬ

人はほとんどいないようだ。 

  感染症では、かつて世界中で多くの人を死に至らしめた腸チフス(1947年には936人)、赤痢はゼロ(同7765

人)、梅毒は18人(同5501人)。アルコール(による精神及び行動の障害、以下同)325人、アヘン、大麻、コカ

イン、タバコはゼロだが、揮発性溶剤は1人。ヘビ毒によるもの5人、ハチ14人、ムカデ1人、落雷2人。いろ

んな意味で、日本はずいぶんと安全になった。 

   

  こんな死因もある。栄養失調は1697人で、逆の肥満と過剰摂食64人。日射病熱射病が555人に対して低

体温症は826人。 

出産の母体の安全性は50倍以上に向上、50歳以上の初産は41人! 

  長期間でデータを概観すると、まず特徴的なのは、乳児の死亡数の変化である。医療技術の進歩、衛生の徹

底などで1歳未満の乳幼児死亡数はベビーブームのピークだった1947年の20万5360人(出生数は267万

8792人)から2080人(同100万3539人)まで減少した。出生数の減少に鑑みても40分の1近くまで減少して

いる計算だ。 

  これと同じくして出産および出産後(産褥期、いわゆる産後の肥立ち)の死亡者数は33人。1947年まで遡る

と、この数字は4601人である。出生数の減少を加味した安全性は50倍以上に高まっており、出産が大事業で

あることに変わりはないが、改善は著しいといえる。 

 

  この出生に関しては、もうひとつ、驚くべき数字がある。50歳以上で「超高齢」出産した女性の数だ。 

  出産数がピークの年となった1947年に450人いた50歳代出産者(さらに驚くことに、そのうち55歳以上が

79人いる)は、その後、減り続けて89年から93年の5年間で2人となっていた。ところが、この10年ほどで

回復を見せ、2014年は58人となった。そのうち第1子、つまり初産が41人ということにも驚きがある。 

  死に場所の統計もある。世に言う「畳の上で死にたい」、つまり自宅での死が多い都道府県はどこか。 

  人口動態統計に都道府県別の「死亡の場所」が集計されているが、全国平均では病院や介護施設などでの、

いわゆる「施設内」が85.1、特に病院では75.1%。「施設外」カテゴリーのなかの「自宅」での死亡は12.8%であ

る。 

関東の病院事情は最悪、「病院で死にたくても死ねない」 

  自宅での死亡がもっとも多い、言い換えれば「畳の上で死ねる」割合が高い都道府県は、住宅事情がもっとも

悪いはずの東京都で16.8%だ。千葉(15.5%)、神奈川(15.%)も全国的に見て高い方だ。一方で少ないのは九

州各県で、8.1~9.4%だ。 

  東京で特に自宅での看取りが盛んであるという事実は確認できず、自宅内での不慮の事故が飛び抜けて多

い数字もない。住宅事情と自宅での死亡数の数字は、「住宅事情が良い地域ほど自宅での死亡が少ない」とい

う意外な傾向が見いだせるが、ここに因果関係の存在は考えにくい。 

  首都圏の自宅での死亡の多さと九州での少なさ、これを示唆しているデータは、人口あたりの病床数に求め

られる。九州では病床数が多く(人口10万人当たり1700〜1950床)、関東の3都県は最低レベル(同900床

前後)。関東では病院で死にたくても死ねない、これが実情のようである。 

  20年前、世界中をパニックに陥れたHIV、ヒト免疫不全ウイルス病は45人。この数字は、この20年間、ほぼ

変わりなく推移している。SARSはゼロだ。 

   

  さて、交通事故はどうか。統計では「不慮の事故」のカテゴリーに入れられている交通事故による死者は、ピ

ークだった1970年の2万496人から数を減らし、2014年は5717人と4分の1近くにまで減少している。20年

前、1995年の1万5147人と比較しても3分の1近い。これは激減と評価していいだろう。 

  ただし、そのうち、飲酒が絡んでいる事故での死者は227人いる。2004年の712人よりは相当に減ってはい

るが、それでも年間に200人以上である。通常、これだけの数の死者を出す原因となっている物質であれば、

間違いなく毒物扱いされているはず。酒には、負の特別扱いされている側面があることは知っておくべきだ。 

 「不慮の事故」には他に「転倒・転落」(7946人)、「不慮の溺死及び溺水」(7508人)、「不慮の窒息」(9806人。

うち食物を気管に詰まらせたもの4874人、高齢者が圧倒的に多く、恐らくは餅が多いと推測される)がある。 

溺死は12月と1月になぜ集中発生するのか 

 「不慮の溺死及び溺水」は、季節の変動要因が大きいことが、他の不慮の事故と違うところである。溺死だから

夏に増えると考える向きも多いだろうが、じつは逆。12月と1月の死者数が、7月8月に比べて3倍近くになっ

ている。それは、溺死が海水浴や川遊びではなく、7割以上が浴槽内での溺死であり、さらにそのうち8割以上

が70歳以上の高齢者であるからだ。寒いから風呂に長湯、これが死を招くということだ。 

  さらに「不慮の事故」のなかでの、「航空機事故」での死者は6人で、うち3人はグライダー。航空機の乗降中

に死んだ人が1人いる。 

  雪や氷で滑って死んだ人は6人。犬による咬傷又は打撲は1人、「そのほかのほ乳類」によるものは6人

で、そのうち5人は農場が発生場所なので、恐らくは牛か馬である。ちなみに「ワニ」の項目も用意されている

が2014年は1人も死者は出ていない。水泳プールでの溺死は転落を含めて4人、これが自然水域(海や川な

ど)になると1612人と圧倒的に多い。 

  自殺は2万4417人、他殺は357人。自殺では圧倒的に縊首・絞首及び窒息、つまり首を吊る方法が多く、次

にガス自殺(その他のガス及び蒸気による中毒及び曝露)、そして飛び降りであり、多くの人に影響が出る列車

への飛び込み(移動中の物体の前への飛び込み又は横臥による故意の自傷及び自殺)は533人と、首吊りの

3%にも満たない。 

  他殺(統計上は「加害にもとづく傷害及び死亡」)では、もっとも多いのは鋭利な物体による加害で、120人。内

訳は男性66人、女性54人と性差は大きくない。一方で縊首、絞首及び窒息によるものが117人で、特に女性

が72人と男性の倍近い数になる。いわゆる殺しのほとんどは首を絞めるか、刺すかであり、拳銃、ライフルとも

に1人ずつ、刑事ドラマのような射殺は、じつはほとんど起きていない。 

  ちなみに法務省のまとめによると、未遂犯を含めた殺人事件の国際比較では、日本の人口あたり発生率は米

国の5分の1、フランス、ドイツ、英国の半分以下であり、検挙率はドイツと並んで95~97%(米国は65%前

後)。ここでも日本は安全な国なのだということが分かる。 

「もう日本から学ぶことはない」と考えるのは間違いだーニエン

ハ・シェ准教授に聞く佐藤智恵 [作家/コンサルタント] 【第13回】 2015年10月27日DOL 

ニエンハ・シェ准教授は、ハーバードの中でも数少ない「日本語を話せる教授」の1人だ。ハーバードではリーダ

ーシップと企業倫理を教えているが、かつて日本経済を研究したこともあり、日本に対する造詣も深い。 

日本経済の停滞で、日本企業に興味がなくなったという学者が多い中、シェ准教授は「今の日本からも、昔の

日本からも、学ぶ事はたくさんある」と断言する。日本人が世界に教えられることは何か。シェ准教授に聞いた。

(聞き手/佐藤智恵  インタビューは2015年6月23日、8月19日再取材) 

「もう日本から学ぶことはない」  そう考えるのは間違いだ 

ニエンハ・シェ  Nien-he Hsieh(謝念和)ハーバードビジネススクール准教授。専門はジェネラルマネ

ジメント。特にビジネス倫理の問題とグローバルリーダーの責務について研究。MBAプログラム及びエグゼクテ

ィブプログラム(リーダーシップ開発)で必修科目「リーダーシップと企業倫理」を教えている。同校の准教授に就

任する前は、ペンシルバニア大学ウォートンスクールにて教鞭をとる。学生からの人気を集め、優秀教育者賞を

受賞した。日本人の母親を持つこともあり、来日多数。2014年には慶應義塾大学にて特別講演を行った。近著

に“Corporations and Citizenship: Democracy, Citizenship, and Constitutionalism”(共著、University of 

Pennsylvania Press, 2014)。現在、ビジネスの使命についての新刊を執筆中。 

佐藤  シェ准教授はこれまで講演や研究などで何度も来日されているとのことですが、日本に興味をもったきっ

かけは何だったのでしょうか。 

シェ  私の母親は日本人なので、子どものころ、毎年夏休みになると家族とともに日本へ行って、祖父母の家で

過ごしていました。研究対象として興味を持つようになったのは大学に入学してからです。 

  1980年代、日本はアメリカに次ぐ経済大国に成長していました。私が入学したアメリカの大学でも日本企業、

特に製造企業の事例がイノベーションの成功モデルとして教えられていました。経済を専攻していた私にとっ

て、日本はマクロ経済と経営の両方の成功例を学べる重要な国でした。 

佐藤  ところが、今は、アメリカで日本に興味を持つ学生や教員が少なくなったと聞いています。 

シェ  私は今の日本からも、昔の日本からも、学ぶ事はたくさんあると思います。 

  1990年代に入り日本経済が停滞すると、日本について積極的に研究しようとする学者もずいぶん少なくなり

ました。でも私は、「経済が成長していないということは、日本のやり方がもはや通用しないということだ。だから

もう学ぶことはない」、と考えるのは間違いだと思います。 

  たとえば、1970年代、1980年代、日本経済を成長させていた原動力は何だったのか。あの強いイノベーショ

ン力はどこから来たのか。1990年代、なぜ同じやり方が通用しなくなったのか。日本は今でも世界の未来のた

めに様々な教訓を与えてくれる国だからです。 

さとう・ちえ1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽

番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院卒業

(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタント とし

て独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。近年はテレビ番組のコメンテーターも務めてい

る。主な著書に『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新

書)、『ハーバードはなぜ仕事術を教えないのか』(日経BP社)。  

佐藤智恵オフィシャルサイト 

佐藤  教授室の本棚には孔子や儒教の本が数多く並んでいますが、日本人の母親と中国人の父親のもとで育

ったことは、企業倫理の研究にどのような影響を与えましたか。 

シェ  それは面白い質問ですね。考えたことはなかったですが、聞きたいことはよく分かります。 

  まず、世の中には目に見えない規範がある、ということを両親から学んだと思います。つまり他人への気遣い

です。特に日本には、紙に書かれていない行動規範がたくさんありますね。法律で定められているわけではな

いけれども、他人と接するときに気をつけなければルールがあります。それが倫理への興味につながりました。 

  もう1つあります。日本人の母親と中国人の父親を持つということは、2つの国の歴史を背負っているというこ

とです。両親のもとで育ったことで、「文化の差異は克服できるもので、両者に共通する価値観もまた存在する」

ということを知りました。お互いに理解を深めあうために、どのように文化的な違いを乗り越えていけばいいか。

共通する価値観とは何か。こうした興味が常にあったから、ビジネス倫理を研究しようと思ったことは確かです。 

世界が日本から学ぶべき3つのこと 

佐藤  リーダーシップと倫理を教える教授として、学生には日本から何を学んでほしいですか。 

シェ  まず1つめは、ビジネスが果たすべき役割と、ビジネスがどのように社会に貢献すべきか、という点です。

日本企業の具体的な事例で学ぶのが効果的だと思います。日本企業は株主ではなく、顧客の視点から自らの

役割を定義しますね。それは学生が「何のためにビジネスが存在しているのか」「何のために会社は利益を上

げるのか」を理解するのに非常に役立つのです。 

  2つめは、日本人のものづくりの精神と細部への心配りです。日本人は結果だけではなく、結果に至るまでの

過程を大切にします。ビジネススクールの学生は、どうしても業績、成果物等、結果を重視しがちです。しかし

「過程」というのは、「結果」と同じぐらい重要なのです。日本企業は「過程」に注目するから、「改善」することが

得意なのです。トヨタ自動車が「ジャスト・イン・タイム」(必要なものを、必要なときに、必要なだけ)という生産方

式を採用しているのは、それが生産効率を上げることにつながるからですね。その他にも、「過程」が「結果」を

大きく左右する例はたくさんあります・ 

  3つめは、歴史を学ぶことの大切さです。ビジネススクールの授業では、未来ばかりを気にして、最新の技術

や経営に注目しがちですね。しかし未来を切り開くためには、歴史を振り返ることも大事だということを、日本か

ら学んでほしいと思います。 

佐藤  世界には長い歴史を持つ国はたくさんありますが、なぜ日本から歴史の大切さを学ぶことが必要なので

しょうか。 

シェ  もちろん世界には他にも長い歴史を持つ国はあります。でも考えてみてください。世界最古の会社はどの

国にありますか。日本です(筆者注:金剛組、西暦578年創業)。日本の企業史は世界で最も長いのです。これ

ほどビジネスの歴史を学ぶのに適した国はありません。 

  アメリカ式ビジネスが永遠に主流であるとは限りません。ビジネスには盛衰があります。歴史から学ばないと、

未来に対応できないのです。そのために日本の歴史が世界に教えられることはたくさんあると思います。 

「ものづくりの精神」が日本の強み 

佐藤  日本の強みはどのような点だと思いますか。 

シェ  繰り返しになりますが、改善の精神、ものづくりの精神、細部への心配りはすべて日本の強みでしょう。そ

れに加えて、日本人の社会に対する使命感、社会を繁栄させていこうとするマインドセット(思考様式)も長所だ

と思います。 

3Dプリンターなどの登場で「メイカームーブメント」が起き、日本のものづくり精神が再び注目され

る流れが生まれている 

佐藤  先進国ではIT 企業が急成長しており、製造業はもう古い、という印象が強いですが、なぜものづくりの精

神が世界の役に立つのですか。 

シェ  現在、世界では第三の産業革命とも言われる「メイカームーブメント」(デジタル技術と製造業の融合。最

先端のデジタル技術を駆使して1人または少人数でものづくりをすること)が起きていますね。その中で、日本

のものづくりの精神が再び注目されているのです。たとえばアメリカでも製造業を見直そうという流れが見られ

ます。先進国における製造業の再生は、大変面白い現象です。 

利益の追求と社会貢献は両立できる 

ニエンハ・シェ准教授の近著“Corporations and Citizenship: Democracy, Citizenship, and 

Constitutionalism” 

佐藤  日本人は社会に対して強い責任感を持っている国民だとおっしゃいました。日本企業の経営者の中に

は、利益の追求と社会責任を両立させたいのに両立できない、と悩んでいる方もいます。例えば、「このエコビ

ジネスは20年後に利益をもたらします」と言っても外国人投資家は納得しないでしょう。こうした社会意識の高

い経営者に対して、どのように助言しますか。 

シェ  同じように社会意識の高い投資家を見つけることが一番だと思います。アメリカで経営者や起業家にイン

タビューをしてみると、彼らがいかに「適切な投資家」を見つけるのに時間を割いているかがわかります。 

  投資家といっても考え方は様々です。短期的な利益を求めるアクティビスト投資家(もの言う投資家)がいる一

方で、長期的な視点や社会貢献を大切にしている投資家もいます。自分の企業の価値をともに高めてくれるよ

うな最適な投資家を見つけることです。 

佐藤  すべての投資家はアクティビストだと思っていました。社会貢献を優先する投資家もいるとは意外です。 

シェ  経営者には「利益の追求と社会貢献は両立できる」ということを信じていただきたいです。投資家にもそれ

を伝えるべきです。社会の役に立ちたいと思っている投資家もいますから、思いは伝わるはずです。 

「強み」を自覚していない日本人へ3つのアドバイス 

佐藤  改善の精神、ものづくりの精神、細部への心配り、社会に対する使命感、社会を繁栄させていこうとする

マインドセット(思考様式)。こうした強みを武器に、日本人はどのように今後世界に貢献していったらいいでしょ

うか。 

スタッフとミーテング中のニエンハ・シェ准教授 

シェ  問題は日本人が自らの強みを認識していないことではないでしょうか。日本人は自らの価値をあらためて

認識し、それをビジネスに生かしていけば、日本は大きく世界に貢献できると思います。私から3つアドバイス

があります。 

  まず1つめが改善の精神とものづくりの精神を世界に伝えることです。 

  2つめは、コミュニティに貢献する企業のお手本となることです。日本企業は従業員を家族のように大切にしま

すし、地元のコミュニティにも地元経済の成長にも大きく貢献しています。こうした日本企業とコミュニティの結び

つきは、これからの企業のあり方のモデルとなると思います。 

  3つめは、外国から良いものを取り入れて、日本流に改変することです。例えば、継続的な改善は、もともと外

国から取り入れた生産方式のコンセプトですね。それを日本企業がさらに発展させて、「カイゼン」となり、今度

は日本から世界へと広まっていきました。日本は外国から吸収し、日本流に変えて、さらに改良する、ことが得

意な国です。この強みをもっと生かすべきだと思います。 

佐藤  日本は変われると思いますか。 

シェ  昨年、日本を訪れたとき、日本の企業も社会も変わりつつあると確信しました。様々な企業を訪問し、日本

のビジネスパーソンと会う中で、日本人のレジリエンス(失敗から立ち直る力)とダイナミズムをあらためて感じ

ました。 

  日本は戦争と震災を経験してきた国です。そしてそれを乗り越え、復興してきた国です。日本人は逆境に強い

国民だと思います。確かに今、日本はかつてほど注目されていないかもしれません。でも日本の中には「何か

新しいことをしよう」とするエネルギーが渦巻いています。世界はもっと日本に注目するべきだと私は考えていま

す。 

FinTechが金融サービスの作り方を劇的に変える理由 

金融業の本質とIT の進化から読み解くFinTechの正体 

2015.11.2(月)    増島  雅和    JBPress  

 

  ここのところFinTechがバズワードとなって、政府や既存金融機関のFinTechに対する注目も高

まっています。  

  もともと金融はシステマチックな事務処理が日常業務の中心を占めるため、IT との相性は良く、

一世代前のベンチャーブームの際にも、IT 企業が次なる成長分野としてネット金融分野にこぞって

参入したのは、まだ記憶に新しいことかと思います。 

  今回到来しているFinTechの流れは、こうした過去の金融IT 分野の革新の動きとなにか違うも

のがあるのでしょうか。それともベンチャービジネスにはしばしば見られる過去のブームの焼き直しに

過ぎないのでしょうか。 

  この答えは、見ようによってはイエスとも言えノーとも言えるのですが、例えばEC分野に現在起こ

っている革新を一世代前の革新とは異なるものと見るのであれば、今回のFinTechの概念は間違

いなく一世代前の金融IT の分野で語られていたものとは異質のものと見るべきだと思います。 

  バズワード化した概念の本質を見抜く作業はいつも困難です。現在のFinTechの概念の特徴

は、FinTechをやられている当事者にも、既存の金融界隈の人たちにも、非常にとらえどころのない

ものに映っているように思います。 

  既存の金融業に携わる皆さんと仕事をさせていただきながら、最新のIT 系スタートアップ、

FinTechスタートアップの皆さんともお仕事をさせていただいている立場から、今起こりつつある

FinTech革命の本質と僕が考えていることを皆さんと共有したいと思います。 

IT の本質的な威力がついに金融ビジネスの世界に 

  一言で言うと、今回のFinTechの概念は、これまで音楽業界や出版業界に押し寄せ、これらの業

界を飲み込んでいったIT の本質的な威力がついに金融ビジネスに及んでくる現象を表現するもの

です。 

  これまで繰り返されてきたイノベーションの図式で言いますと、これまで金融機関は顧客に対して

最適なサービスを提供しようと尽くしてきたからこそ新たに出現するイノベーターの後塵を拝するとい

う図式が、金融のコア業務に生じつつあるということです。  

そして、FinTechベンチャーは、これまた過去にイノベーターが破壊的創造を成し遂げた他の業界と

同様、金融機関からすると取るに足りないようなサービスで、これまで金融機関が注力してきたマー

ケットとは異なるマーケットから攻め入るという戦略を採用しています。  

金融業の本質とは 

  今回のFinTechがこれまでの金融IT サービスと大きく異なるのは、まずIT に関する技術的背景

が挙げられます。このことを説明するために、まず金融業というビジネスの本質を押さえておきたいと

思います。 

  金融業というのは、リスクを移転ないし仲介するビジネスです。銀行、保険、証券の三大金融ビジ

ネスを例に具体的に見てみましょう。 

  まず銀行のビジネスは、資金の預かりと与信とを共に行うビジネスです。これは家計等から預かっ

たおカネを元手に、おカネの貸付先を見つけて、これに信用を供与するという業務です。信用を生

み出すために、貸付先の事業活動の状況を調査し、キャッシュフローを把握するなどし、これにマク

ロなトレンドや様々なデータを加えた分析の結果出てくる信用情報を生産する活動を行います。 

  銀行は、貸出先の信用情報を元に合理的な信用リスクをとることで、貸付利息と預金利息のさや

をとるという、信用リスクの仲介をコア業務にしています。 

  保険ビジネスは、事業リスクを中心としたイベントリスクを仲介するビジネスです。特定のイベント

(保険事故)の発生に関する期待値まわりのブレに対するリスクを管理したい保険契約者との間

で、保険会社は、固定的なキャッシュ・インフローと確率論的に決定されるキャッシュ・アウトフローを

交換します。この交換を実現するために、イベント(保険事故)に関するデータを集積し、集積したデ

ータを分析することで、交換価値の原価(純保険料)を測定します。これに様々な事業費を乗せて

営業保険料を算出し、契約者に課金します。 

  保険ビジネスは、特定のイベントに対する発生リスクに関するデータをもとに、その期待値まわりの

変動リスクをとることで(保険引受リスク)、そのプレミアムを収受するというリスク移転をコア業務と

しています。 

  証券と銀行の決済業務は、ともに決済に伴うカウンターパーティリスクを仲介するビジネスです。資

金や証券の移動を仲介し、利用者が安心してファイナリティを確保するサービスを提供します。  

FinTechを生み出した技術的背景 

  これらの金融業務を行うために、現在でももちろんIT が活躍しているのですが、近時の技術革新

によりIT の技術的前提が革命的に進歩しました。  

  具体的には、以下の技術が重要です。 

【モバイル・ウェブ・センサー技術】 

  まず、センサー技術により、これまでとは比較にならないほど大量のデータを生産することができる

ようになりました。このデータの大量生産の背景には、モバイル技術と通信技術が不可欠に結びつ

いています。データ生産のためのセンサーは、多くモバイル端末に組み込まれ、またはモバイル端末

を中継してサーバに集積されるためです。 

  また、データにはセンサーから生まれるもののほかに、ツイッターやフェイスブックといったSNSが生

む膨大なコミュニケーションデータがあります。これらのデータが統合されたこれまでとは次元が異な

る個人データやモノに関するデータを生産することができるようになったことが第1の技術革新で

す。 

  通信技術・モバイル・ウエアラブルデバイス  大量の端末から、センサー等により生み出した膨大な

データを送信することを可能とした通信技術の進展があります。これは、モバイル端末の革新と歩

調を合わせて、革新的なモバイル端末により生まれるユーザーの新たなニーズに応える形で整備さ

れてきたものといえます。 

【クラウド技術】 

  大量の端末から生産される大量のデータを統合的に集積する技術として、クラウド技術の重要性

は強調されて良いと考えます。クラウド技術により、これまでとは異なる次元のコストで大量のデータ

の集積が可能になりました。 

【ビッグデータ解析技術】 

  クラウド技術を用いて大量に集積されたサーバの情報を解析する技術が進展しました。これはハ

ードウエア自身の進展とも大きく関連し、大量のデータを短時間で処理することが可能となった点に

意味があります。 

【機械学習・人工知能】 

  深層学習(ディープラーニング)を中心とした人工知能関連技術のブレークスルーにより、データ分

析は、単に人間が立てた仮説の検証にとどまらず、コンピュータ自身が仮説を立てられるようになり

ました。そして今や、この仮説の精度は、人間が立てた仮説の精度を上回るものとなっています。 

【分散型決済技術】 

  ピアツーピア(peer to peer)技術を決済に応用することにより、ファイナリティの確保に要する様々

な事務コスト、認証コストを外部化することに成功しました。ブロックチェーン技術に代表される暗号

を用いた電子台帳技術がこれらを可能にしています。  

技術革新は何をもたらすのか 

  以上の技術を組み合わせることにより、金融業のコア業務を支えるリスク情報生産の機能を代替

することができます。  

  ここで重要なのは、単に代替できるということではなく、それが、既存の金融機関よりも圧倒的に

安価なコストで、しかも既存の金融機関よりも高い品質をもって実現することができるというところに

ポイントがあります。 

  金融サービスというのはリスク情報生産を元とした仲介サービスですから、金融機関のサービス

(金融商品)をどのように設計するかは、リスク情報生産とその仲介に必要な事務コストの制約を受

けます。 

  一世代前の金融IT サービスというのは、インターネットという新しいディストリビューションチャネル

によって、これまでの「仲介コスト」「販売コスト」を下げることを核とするものでした。つまり、ECビジ

ネスがオフライン店舗をインターネット店舗に変えたということにとどまります。かつての銀行行政が

店舗行政を重要な施策としており、また保険業のビジネスモデルはチャネルによって画されていると

いう現状からすると、チャネル革命というのは、これ自身すごいことではあります。 

  しかし、FinTechの概念は、単に新たなチャネルが生まれ流通コストが下がったということではな

く、コアとなる金融サービスの作り方自体を劇的に変えるものであるという点に、最大のポイントがあ

ります。 

  すなわち、金融サービスの元となるリスク情報生産コストが、上記の各技術の組み合わせにより

劇的に低下するということを意味するのです。 

金融機関が単独では提供できない事業モデル 

  ここで想定されている事業モデルは、例えば以下のようなものです。 

【例1:  スマート貸金業モデル】 

  個人で小規模EC事業を行うA氏は、企業務めをしているわけではなく、またECでの収入も不

安定であるため、銀行からは借入れを受けることができないが、商売人としては堅実な商売をしてお

り、あらぬ人たちとの付き合いもない。A氏のEC事業における業績は、A氏にECビジネスの場を

提供している事業者Pと、決済手段を提供しているQが把握しており、A氏の人間関係はA氏の

SNSのアカウントに記録されている。 

  一般から資金を融通し、貸付を行う貸付型クラウドファンディング事業を運営する事業者Sは、

P、Qと提携し、Pが開設するECマーケットのユーザーに対して、融資のソリューションを提供する。 

  融資を受けたいA氏は、事業者Sに対して、クラウドファンディングを用いた3000万円の融資を

申し込み、事業者PおよびQが保有するEC事業の履歴とSNSに蓄積された情報の提供を承諾

する。事業者SはAPI経由でP、QおよびSNSにおけるA氏の情報を吸い出し、これを分析、必

要に応じてウェブ上の公開情報やツイッター等にある関連する情報を収集して統合、分析すること

でA氏に対する貸付のリスクを割り出すシステムを構築している。  

このシステムは、これらの情報に適宜レーティングやその他必要な情報を追加して自動的にクラウド

ファンディングサイトに掲載する機能を実装している。掲載されると同時に、A氏のビジネスや履歴

に興味がありそう、またはA氏への貸付に対して適合的なリスク選好を持っているクラウドファンデ

ィングサイトのユーザーに対してプッシュ通知を送信し、新たな投資機会を提供する。これに興味を

持ったクラウドファンディングのユーザーがA氏への貸付のための資金を拠出し、A氏は必要額を

入手する。  

  A氏の返済についてはクラウドファンディングサイトがアカウントを通じてモニタリングし、返済が滞

る状態が発生すれば事業者Qを経由してA氏に対して支払われるECビジネスでの売掛金から

回収する。 

【例2:  スマート保険モデル】 

  ウエアラブルデバイスを提供するX社は、ユーザーの健康状態に関するデータを日々蓄積してい

る。薬局に対してiPad 用の無料会計端末ソフトを提供しているY社は、端末からネットワークを通

じて薬剤の処方に関するデータを日々蓄積している。 

  保険会社Z社は、X社とY社、さらにフィットネス事業を提供しているP社と提携して、P社の会

員に対して医療保険を提供する。医療保険は1年ごとの更新型の商品で、その保険料体系は、P

社の利用履歴に加えて、X社およびY社から入手したデータによって、年齢ごとに特定の疾病が発

病するリスクを分析して保険料を算出するシステムを開発している。 

  P社のフィットネスクラブの会員Bは、各個人データの提供を同意してZ社のウェブサイトから保

険を申し込む。Z社はB氏の情報をAPI経由でX社、Y社より提供を受け、これにフィットネスクラ

ブの利用履歴に関するデータを加えたデータ群から保険料を割り出す。  必要な情報提供がなさ

れ、B氏がその内容に満足すれば、保険を購入する。保険の履歴はZ社に開設されたアカウント

から随時見ることができ、次回の保険料を安くするために必要な運動量、必要な検診の受検などを

アドバイスする。 

【例3:  銀行APIモデル】 

  銀行のコア機能(銀行口座、口座決済、AML/CFTモニタリング等)に対し、ユーザーが第三者の

サービス(保険、少額決済、証券決済、資産運用、貸付等)に接続可能なAPIレイヤーが出現す

る。APIレイヤーを通じて、ユーザーは、サードパーティのサービスで蓄積した情報を様々に組み合

わせることで、自身に対するより高品質かつ個別的な信用・リスク情報を創出するためのデータを

金融サービス事業者に提供する。 

  金融サービス事業者は、ユーザーから提供された個別的で高品質な信用・リスク情報を元に、自

身が提供可能な金融ソリューションの内容とその価格を提示する。ユーザーは、複数の金融サービ

ス事業者から提供された金融ソリューションの中から、自らのニーズに最も適合するソリューションを

購入する。 

  上記例のいずれについても、おそらく既存の金融機関は単独で同等のサービスを提供することが

できないはずです。 

  なぜなら、そもそも金融機関はユーザーに関するこのようなデータを持っていません。現在持ってい

る貸付部門なり引受部門なりがこれらのデータを取りに行くことは不可能ではありません。しかしな

がら、既存の組織を動員してこれらの情報を入手するために要するコストは膨大であり、サービスと

しては提供することができないと考えられます。  

では、そのようなサービスを提供するために、既存の部門をすべて放棄してこうしたサービスを提供

することができるかというと、既存顧客の存在によってそうしたアクションをとる選択肢は実際のとこ

ろないと言ってよいでしょう。  

金融ソリューションはFinTechにより個別化される 

  金融サービスにおける情報生産コストの低下は、サービスの個別化を促すものと考えられます。 

  すなわち、従前の金融サービスにおける商品組成は、個別に収集して分析しなければならない顧

客に関するリスク情報の生成コストを考えると、一定のマス向けの商品を型決めして提供せざるを

得ないものと考えられます。ところが、FinTechにより実現されることが期待される世界では、こうし

た個人のデータ収集と分析がシステムを通じて自動的に行われるため、個人のリスク情報の1件

あたりの生成コストは極めて小さくなると考えられます。 

  そうすると、多様な商品を揃えることで、ユーザーに最も適したサービスを提供することができると

考えられますし、究極的にはオーダーメイドの金融サービスを提供することも可能になるように思い

ます。すなわち、既存の金融サービスよりも圧倒的に高品質(≒効率的)な金融サービスを作ること

ができるということです。 

  IT 関連サービスがユーザーごとの個別サービスとなるというのは、検索サービスでもECのレコメン

ドサービスでも同じで、個別化サービスを提供するための限界費用が極めて小さいというIT の特性

によるものですから、こうした動きというのはむしろ構造的なものとしてとらえる必要があるでしょう。 

金融ソリューションは「エコシステム」型のモデルとなる 

  もう1つ重要な点として、FinTechによる金融ソリューションは、これまでの金融ビジネスのように

単独の事業者によって完結するビジネスモデルではないということが挙げられます。 

  金融というのは、現実世界の合わせ鏡のようなもので、金融ソリューションそのもののニーズが現

実世界と無関係に存在するものでは本来ありません。なぜなら、金融はリスクを仲介するビジネスで

あり、リスクは現実世界にその淵源を持つものだからです(金融の高度化により金融の世界で生み

出されているリスクもありますが、リスクの本質からは外れるのでここでは割愛します)。 

  特に、リスクに関する情報生産に当たっては、現実世界のデータを収集する事業者と提携するこ

とが必要です。こうしたデータ収集事業を自らの中に抱え込めばよいではないかと思うかもしれませ

んが、こうしたデータはなにも金融ソリューションのためだけに収集されるものではありません。むし

ろ、コミュニケーションであるとか健康維持であるとか、金融とは関係がない動機によりユーザーが

事業者に提供するものです。また、こうしたサービスは、基本的にはネットワーク効果が働くことによ

ってユーザーの利便性が高まるものですので、解析するに値する程度の量を伴うデータは、一定規

模のプラットフォーム事業者が取り扱っています。  

  こうしたプラットフォーム事業者が収集するデータをいろいろと組み合わせて、ユーザーのリスクに

関する情報を生成するのが、効率的でありかつ質の高いデータが取れるポイントとなるはずですの

で、したがって、金融業者は自らこうしたデータを集めて抱え込むことはできないのです。  

  さらにいうと、FinTechによる金融ソリューションでは、いわゆる従前の金融業が担っていたコアサ

ービスは、サービスの中心には来ない可能性があると思われます。 

  なぜなら、金融業がコア業務として提供していた貸付やリスク移転といったソリューションは、ユー

ザーがそれ自身が欲しいというものではないからです。ユーザーが欲しいのは、お金でも保険でもあ

りません。ユーザーが真に欲しいのは、家であったり車であったり、健康で安心に生活できる日々で

あったりするなかで、それらを獲得する手段として借入れをしたり保険を購入したりするに過ぎませ

ん。 

  そうすると、貸付や保険や決済といったサービス・機能は、こうした現実世界におけるサービスに

付随するものとして、これらの現実世界のサービスと一体となって提供されるということであると思い

ます。 

  現在においても、自動車を購入する際に銀行や貸金業者から自動車ローンの提供を受けるという

形で、入り口ないしチャネルの部分では連携がなされていますが、こうしたものにとどまらず、与信面

や債権管理の面、さらには商品組成面においても、他の事業者と連携して初めて商品が組成され

るということになると考えられます。 

  こうした意味で、FinTechというのは、金融のコア業務である貸付や保険引受や決済といった機

能を提供する者だけが該当するというものではありません。 

  そうではなく、例えばアカウントアグリゲーションサービスであるとか、クラウド会計サービスであると

か、セキュリティサービスであるとか、金融ソリューションを提供するためのリスク情報の生成や、サ

ービスの安全性を高めるためのソリューションなどを提供する無数の企業が、新たな枠組みの金融

サービスを提供するエコシステムを構成するものととらえるべきだと思います。 

  なお、FinTechが、このように従前の金融業とは全く異なる姿で現れる可能性があるため、

FinTechスタートアップが提供するソリューションは、一見、既存の金融機関の脅威に値しない、取

るに足りないサービスであるように見える可能性があります。実際、現在のところFinTech企業が提

供できているサービスは、金融のコア業務を脅かすほどのものではなく、ソリューションとしてもそれ

ほど大したものではないと見えるものも多いかもしれません。少なくとも、金融機関が主力ビジネスと

している顧客層を奪うようなサービスには見えないでしょう。 

  スタートアップ企業が、ローエンドモデルから、その業界の主力顧客以外をターゲットとしてマーケッ

トに参入し、これが既存企業にとって競合に見えないことから、既存企業はこうした分野への投資を

行わない結果、顧客の強い支持を受けたスタートアップ企業がハイエンドサービスで既存企業の主

力ビジネスに切り込むという絵柄は、フロッピーディスクに限らず様々なイノベーションのシーンで経

験されたことがらです。  

日本だけが異質なルールのままでいてはいけない 

  もちろん、現行の金融規制との関係で、こうした破壊的創造が直ちに実現するわけではない可能

性はあります。例えば、日本における保険商品は認可制ですので、このような保険商品を金融庁が

認可するかどうか不明であるといった話があります。  

  しかしながら、このような保険商品の仕組みを金融庁が未来永劫認可しないことの保証はあるで

しょうか。むしろ、より柔軟な保険商品の組成を許容する各国からこのような保険商品が相次いで

発売され、そのユーザーにとっての利便性ゆえに広く普及することで、なぜ日本ではこのような商品

が提供できないのか、という論点が提起されるでしょう。利用者利便が向上する以上、このような商

品を認可しない仕組みとなっているのであれば、その仕組み自体がバージョンアップされるべきであ

るという議論になる可能性のほうが高いのではないでしょうか。 

  また、個別化という姿についても、既存の金融における公序からは受け入れられにくい要素があ

ることもまた事実です。 

  例えば、保険について個別化が進むことは保険難民を生むという議論が存在することは確かで

す。しかしこれは金融というよりはパブリックポリシーというべきもので、本来個別化された保険が得

られればより安い保険に加入できた契約者の犠牲のもとに、よりリスクが高い人に本来のリスクを

反映しない安い保険ソリューションを提供するという行為を強制することが、金融ビジネスにおいて

公正であると評価されるべきかどうか、という論点と考えられるでしょう。 

  これにはいろいろな考え方があるかと思いますが、もし保険が純粋なリスクマネジメント手段である

と考えるのであれば、このような公共政策は公的保険でやってくれということになるでしょう。 

  すなわち、規制や現状の社会通念を根拠として、そのようなことは起こらないと考え、その可能性

を想定しないことは、リスクであるということです。その想定を置かなかったことで、ビジネスモデルの

根幹で勝てなくなってしまうということになるとすると、事業継続を最優先するべき金融機関として

は、少なくともそのような事態が起こっても対応できるための対策は考えておかなければならないよ

うに思います。 

  ビジネスモデルの競争は、一国の中で閉じるものではありません。特に、金融が国民経済のなか

で担う役割の重要性を考えると、日本全体の金融ソリューションの力が、規制に守られ他国に大き

く劣るものとなるという事態を生じさせてはなりません。 

  金融の規制は、BCBS、IAIS、IOSCO 等を中心とする金融監督者のコミュニティーを通じてコンバ

ージェンスが図られており、グローバルなものです。同等性評価やピアレビュー制度によって、日本

だけが異質なルールのままでとどまるということを許容しません。 

  そうであるとすると、なるべく早くに将来を見据えた形で規制を改革し、または将来の事業モデル

の実験を許容するような規制と運用の枠組みを用意し、国内金融業者のFinTech事業者と手を

携えた事業モデル改革を支援することで、先んじて実験を行い、事業モデルを確立した海外の金

融業者に国内市場を席巻されるという事態が起こらないよう、政府、既存金融機関とFinTechスタ

ートアップが協働する枠組みを作らなければならないと思います。  

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【ASIA関連】 

豪、ナイト爵位廃止=「時代錯誤」と批判時事通信 11月2日(月) 

  【シドニー時事】オーストラリアのターンブル首相は2日、英国の制度に倣ったナイト爵位を廃止すると発表し

た。 

  アボット前首相が2014年に復活させ、「時代錯誤で権威主義的」(ショートン労働党党首)と批判が出ていた。

ターンブル氏は、現代の制度として「不適切」と判断した。 

  アボット氏は、英女王を元首とする立憲君主制の熱心な支持者。豪州の建国記念日の今年1月26日、復活

させた爵位をエリザベス英女王の夫フィリップ殿下に授与したため、国民からも「植民地時代に戻ったようだ」と

ひんしゅくを買った。 

  9月の与党党首選でアボット氏を破ったターンブル氏は立憲君主制に反対し、大統領を擁する共和制移行を

強く訴えてきた。   

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【USA・北米関連】 

米、デフォルト回避  2年間の予算大枠で法成立  政府機関閉鎖もな

し産経新聞 11月3日(火 

  【ワシントン=小雲規生】オバマ米大統領は2日、2017年3月までの連邦債務の上限引き上げと2年間の予

算の大枠について定める法案に署名した。法律が成立したことで、米国が新たな借り入れができずに債務不履

行(デフォルト)に陥ったり、予算切れで政府機関閉鎖となったりする事態は回避された。オバマ氏は署名式で

「ワシントンの政治がどのように機能すべきかを示す法律だ」として、法案をまとめた与野党幹部の努力を高く

評価した。 

 

  債務上限引き上げや予算の大枠をめぐっては、歳出の野放図な拡大を懸念する共和党の強硬派と、早期に

法律を成立させてデフォルトや予算切れを回避したい共和党指導部や民主党の間で対立が続いてきた。 

 

  しかし11月3日にもデフォルトが起きる恐れがあったことから、両党は10月27日、債務上限の引き上げで合

意。16~17会計年度(15年10月~17年9月)の歳出を800億ドル(約9兆6千億円)増やすことでも一致して

いた。 

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【EUROPE・その他地域関連】 

ミラノ万博が閉幕=来場者2100万人―伊時事通信 11月1日(日) 

  【パリ時事】イタリア北部ミラノで5月から開かれていた国際博覧会(万博)が31日、6カ月間の日程を終えて

幕を閉じた。 

  地元メディアによると、閉幕式にはマッタレラ大統領が出席し、「われわれは秩序ある万博を世界に示すことが

できた」とあいさつした。来場者数は目標の2000万人を上回る約2100万人に達した。 

  ミラノ博は初めて「食」をテーマに掲げ、参加した約150の国・地域・機関が地元の食文化をPRするさまざま

な催しを展開した。先端技術を駆使して和食の魅力を紹介した日本館には連日長蛇の列ができ、全体の約1

割に相当する220万人が来場。イタリア館と並んで最も人気の高いパビリオンとなった。   

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【WORLD経済・政治・文化・社会展望】 

宇宙から地球を「健康診断」  CO2や水分を衛星で観測  

2015/11/1 日経Net   

大気の二酸化炭素濃度マップ。2015年6月にNASAの軌道上炭素観測衛星

2(OCO-2)が作成した。地球全体の平均濃度400ppmを上回る地域を赤、下回る地域を緑で示している。森林

と海洋は、大気中に放出された二酸化炭素を吸収し、温暖化のスピードを遅らせてきた。OCO-2から得られる

情報は炭素の動きや、今後の温暖化の進行速度を予測するのに役立つ。(NGM STAFF/National Geographic 

出典: NASA/JPL) 

  地球の“健康状態”に目を光らせる観測衛星が増えている。 

  2014年から2015年前半にかけて、米航空宇宙局(NASA)は五つの大型ミッションを新たに開始した。これで

運用中のミッションは合計19にのぼる。日本や中国、ヨーロッパをはじめ、さまざまな国の宇宙機関も観測衛

星を運用している。「私たちは、上空から地球の状態を観測するリモートセンシングの黄金時代を迎えていま

す」とNASAの地球科学部門を率いるマイケル・フライリックは語る。 

■地表のうるおいを調べるSMAP 

  気温の上昇や海洋の酸性化、森林の減少、極端な気象現象など、地球の病の諸症状が顕在化してくると、

NASAはそういった症状がもたらす影響に取り組むミッションの優先度を高めた。2015年1月には土壌の水分

を観測する最新鋭の衛星が打ち上げられた。9億1600万ドル(約1100億円)がつぎ込まれたSMAP衛星だ。 

  SMAP衛星は搭載したレーダーが発したビームを地表面で反射させる「能動型計測」と、土壌自体が発する電

磁波を放射計で記録する「受動型計測」の両面で、土壌の水分量を観測できる。7月にレーダーが故障したが、

放射計は順調に機能している。今後、干ばつや洪水、作物の収穫量などの予測に力を発揮すると期待される。

SMAP衛星は、豪雨時の災害リスクを軽減するのにも役立つ。土壌の水分が飽和して土砂崩れや洪水の危険

性が高まった際に、関係当局に情報を提供できるからだ。 

  だが土壌の水分に関しては、多いよりも少ない方が、広範囲かつ長期的な脅威となる。水分不足は環境のバ

ランスを崩し、米国カリフォルニア州で起きているような猛暑や干ばつを招くのだ。NASAジェット推進研究所の

研究員ナレンドラ・N・ダスは、次のように説明した。「土壌の水分は人間でいえば汗のようなもので、蒸発すると

きに地表を冷やす効果があります。でも土壌に水分がなければ地表の温度は上がる一方です。私たちが熱中

症になるのと同じ理屈です」 

■地球の呼吸を観測する 

  地球の健康を脅かすあらゆる圧力に対し、この星はこれまで驚くほどの回復力を示してきた。人間の活動によ

って放出される年間約370億トンの二酸化炭素のうち、海洋や森林、草原はその約半分を吸収し続けている。

だがその許容量がいつ限界に達するか、誰にもわかっていない。なにしろごく最近まで、炭素収支を把握する

有効な方法さえわかっていなかったのだ。 

  そんな状況を変えたのが、2014年7月にNASAが打ち上げたOCO-2(軌道上炭素観測衛星2)だ。「地球の

呼吸を観測する」目的で開発された衛星で、地球上のあらゆる地域で、放出もしくは吸収されている二酸化炭

素の量を1ppm単位の精度で計測できる。OCO-2衛星の観測データを使って作られた世界初の全地球マップ

には、オーストラリア北部、南アフリカ、ブラジル東部から、大量の二酸化炭素が放出されていることが示され

た。焼畑農業が大規模に行われている地域だ。 

  航空機を使った調査では、着々と進化する最新のセンサーを駆使して、地球の状態を観察している。「1回の

航空調査で作成できるマップからは、研究者が一生かけて地上で行うフィールド調査よりも、生態系について詳

しく知ることができます」とカーネギー研究所で生態学を研究するグレッグ・アズナーは語る。 

  アズナー率いるチームは、ペルーで「炭素の行方」を調査、72万平方キロに及ぶ熱帯林をスキャンし、伐採や

農業、油田やガス田開発などの圧力に最も強くさらされている森林地区に、概算で60億トンにのぼる大量の炭

素が存在するという調査結果を示した。そして、その森林を保全することによって、炭素をその地域に閉じ込め

ておけることや、森林に生息する無数の生物種を保護できることを説明した。2014年の暮れには、ペルーの森

林伐採を防ぐため、ノルウェー政府が3億ドル(約360億円)にのぼる支援を約束した。 

グレッグ・アズナーらが調査したペルー東部タンボパタ川の画像。レーザー測距装置で測った標

高を示しており、高い部分(赤)と低い部分(青)の高低差は数メートル。この地域は実際には雨林に覆われてい

るが、森林を透過するレーザー成分を利用して細かな地形や水流の細部を明らかにした。(GREGORY ASNER, 

CARNEGIE INSTITUTION FOR SCIENCE/National Geographic) 

  10年もすれば、アズナーらが航空機で使っているようなセンサーが、人工衛星に搭載されるかもしれない。最

新鋭の機器から送られてくる画像はさぞ素晴らしいことだろう。宇宙から1本1本の木を識別し、その種類まで

わかるようになる日がやって来るのだ。そして私たちは1本の木から、森全体に思いを致すだろう。人類によっ

て病に陥った地球が立ち直るための頼みの綱は、私たち人類とその技術だけなのだ。(文=ピーター・ミラー、

日経ナショナル ジオグラフィック社)[ナショナル ジオグラフィック 2015年11月号の記事を再構成] 

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2.Trend 

風呂で答えが舞い降りる!「発想力」の鍛え方 

あなたもアルキメデスになれる?壁を打ち破る3つの「鍵」 

2015.11.2(月)    矢原  徹一    JBPress 

ベルリンのアルヒェンホルト天文台にあるアルキメデスのブロンズ像(Wikipediaより) 

  発想力は、イノベーションと創造性(クリエイティビティ)の源泉であり、そしてあらゆる問題解決の

現場で必要とされる能力である。このため、さまざまな問題解決に取り組む社会的リーダーには、豊

かな発想力が要求される。  

  では、どうすれば発想力を鍛えることができるだろうか。 

常識にとらわれずに発想する方法 

  まず、発想とはどんなプロセスか考えるために、クイズを出題しよう。 

  次の単語に続く3文字の単語は何か?  「おこし  ○○○」。この段階で正解できる人は少ない。

次の3文字が必要だろう。「おこし  につけ  ○○○」。この段階で正解できればかなり発想力が高

い。さらにヒントを出そう。「おこし  につけ  たきび  ○○○  ○○○  ○○○  ○○○  ○○○」。残る

3×5文字で完結する文章は何だろう? 

  このクイズは、発想プロセスの3つの特徴をよく表している。第1に、発想とは脳内データベースに

記憶されている言葉やアイデアなどの探索過程である(音楽なら音を、絵画なら色や形などの画像

要素を探索する)。第2に、手掛かりとなる情報が増えるほど探索は容易になる。第3に、ある探

索ルートの設定が、それ以外のルートによる探索を邪魔する。 

  上記のクイズの場合、「おこし」や「につけ(煮つけ)」という言葉の意味を考えて次の単語を探索す

る人が多いだろう。どちらも食べ物なので3番目も食べ物だろうと予想して探索すると、正解にはた

どり着けない。 

  「たきび」というヒントが与えられると、脳は食べ物を探索するのをやめて、別ルートで探索を始め

る。発想力が高い人は、探索ルートが豊富であり、常識にとらわれない探索ルートを選ぶことができ

るので、はじめから食べ物以外のルートでも探索しているのだ。 

  ちなみに、このクイズの正解は、童謡「桃太郎」の歌詞である。「おこし  につけ  たきび  だんご  ひ

とつ  わたし  にくだ  さいな」。 

紛失物を探すのも発想勝負? 

  次のクイズは、私自身の経験に基づくものである。  

妻が私のズボンを洗濯するとき、ポケットに入っていた教授室の鍵を一緒に洗濯してしまった(この

時、私は東京に出張中で鍵は必要なかった)。  

  妻はズボンを干すときに鍵に気が付き、私の部屋に鍵を移したが、その後どこに置いたのか忘れ

てしまった。出張から自宅に戻ると、妻が鍵を紛失したと言って途方にくれ、あちこちを探し回ってい

た。一緒に探してみたが、確かに目につく場所には鍵はなかった。 

  さて、この状態で鍵を見つける探索ルートを考えてほしい。私は、ある探索ルートを思いつき、1分

以内で鍵を発見できた。 

  この鍵の問題は、認知科学において「設定不良問題(ill-defined problem)」と呼ばれるものの典

型だ。つまり、解決可能な形に問題を設定しなおす必要がある。 

  このケースでは、ズボンの場所に何かのヒントがあるだろうと考え、「鍵を探す」という問題を、「ズボ

ンを探す」という問題に置き換えてみた。妻にズボンのありかを尋ねると、タンスに案内されたが、タ

ンスの中にはズボンはなかった。妻はズボンを置いた場所も忘れていた。 

  私がもっともよく使う寝室に行くと、枕元に衣類がありズボンはシャツの下に隠れていた。ズボンを

持ちあげると、鍵はあっさりと見つかった。妻は私が気付きやすい場所を無意識に選び、枕元に鍵

を置いた。その後やはり同じ場所を無意識に選んでたたんだシャツとズボンを置いたのだろう。その

結果、鍵は隠れてしまった。 

  世の中の多くの問題は設定不良問題であり、これらの問題を解決するには、問題を解く能力以前

に、解決可能な形で問題を設定する能力(いわゆる課題設定能力)が必要とされる。そして、この

課題設定を行うには、創造的な発想力が必要なのだ。 

発想力が豊かな人は迷わない 

  課題設定力と創造性の間には相関がある。この相関を最初に指摘したのは、創造性研究におい

て独創的な成果を残した心理学者、チクセントミハイだ。 

  1962年、彼は、合衆国でトップクラスのシカゴ美術館附属美術大学の学生を対象に次のような実

験を行った。実験スタジオには2つのテーブルが用意され、一方のテーブルには27個のオブジェ

(一房のぶどう、古い本、プリズムなど)が置かれた。学生にはこれらのオブジェの中からいくつかを

選び、何も置かれていない別のテーブルの上に配置をアレンジして、静物画を描くという課題が与え

られた。 

  一部の学生は、描く対象とするオブジェを即座に選び、たっぷり時間をかけて静物画を描いた。他

の学生は、対象選びに時間をかけ、試行錯誤の末に決めた対象をより短時間で描きあげた。 

  そして、チクセントミハイは美術大学の5人の教授に、それぞれの作品の創造性の採点を依頼し

た。さて、どちらのタイプの学生のほうが、創造性が高かっただろうか。  

  対象選びに時間をかけた学生のほうが、直観的に決めた学生よりも創造的だったのではないかと

考えた人は、おそらく課題設定が苦手ではないだろうか。実際には、さっさと対象を決めた学生のほ

うが、はるかに高い得点を得た。さらに、5年後に芸術家として成功をおさめた学生はみな、こちら

のタイプだった。  

  描く対象とするオブジェの組み合わせを決める作業は、課題設定に他ならない。あいまいな課題を

より具体的な、自分で取り組める課題に絞り込む作業が得意なほど、創造性が高いのだ。 

  この課題設定には「組み合わせ」というプロセスが必要とされる。組み合わせは膨大な数の可能

性を生み出す。例えば27個から5個を選び出す組み合わせの数は8万730通り。10個を選びだ

すとなれば、843万6285通りにもなる。 

  かくも多くの可能性の中から、意味のある新しい組み合わせを探りだす能力を人間は持っている。

科学的発見や芸術的創造のプロセスでは、このような探索に基づく発想が常に行われている。 

  この探索・発想能力は、いまだ人工知能が及ばない領域だ。将棋については、コンピュータがしば

しば名人に勝利できるようになってきたが、これはコンピュータに過去の膨大な棋譜を記憶させたか

らだ。過去の棋譜のデータベースなしで探索・発想の勝負をさせれば、コンピュータは到底人間にか

なわない。 

  コンピュータによって人間の知能を再現し、できればそれを超えることを目指す人工知能研究は、

人間の発想力についても有益な示唆を与えてくれる。将棋はその良い例だ。最近ではコンピュータ

が名人を困らせる妙手を指せるようになってきたわけだが、その理由はコンピュータが定石や過去

の棋譜をしっかり勉強したからだ。 

  この事実から考えて、これまでに蓄積された知識の体系を学ぶことは、創造性を身につけることと

相反する行為ではなく、むしろ創造性を身につける前提である。「基礎が大事だ」と言われる理由は

ここにある。 

発想力を鍛える3つの鍵「極める」「経験する」「問い続ける」 

  発想とは、脳内データベースに蓄積された知識、およびその組み合わせを探索し、選び出すプロセ

スである。したがって、脳内データベースにない知識は、探索しようがない。 

  発想力を鍛えるには、まず発想の基礎となる脳内データベースの知識を増やす必要がある。その

上で、課題設定能力や、知識を組み合わせる能力を鍛える必要がある。このような能力を鍛えるに

は、主に3つの方法がある。  

第1の方法は、1つのテーマを極めることだ。本を読むなどして、あるテーマについて徹底して学び、

より深い理解を持とう。そのテーマは、自分が最も興味を持てるもので良い。  

  ある作家が好きなら、その作家の作品を全部、繰り返し読み、その作家の背景についても徹底し

て調べる。ある場所が好きなら、その場所の自然から歴史まで、徹底して本を読む。もちろん、直面

している職務上の課題でも構わない。 

  要は徹底することだ。徹底して深く学べば、脳内データベースの知識が増えるだけでなく、さまざま

な知識の間に、あなたならではの「リンク」が生まれる。独自のリンクが独自の探索ルートを作り、独

自の発想を生む。 

  第2の方法は、多様な経験を積むことだ。経験から得た知識は、そのエピソードにリンクされた独

自の体系として記憶される(認知科学ではこれをエピソード記憶という)。本で読んだ知識が論理的

にリンクされるのに対して、エピソード記憶は経験した感情とリンクされ、非常に強い記憶として残

る。 

  言うまでもなく経験はその人独自のものであり、その独自のエピソード記憶が独自の探索ルートを

作り、独自の発想を生む。またエピソード記憶は好奇心の芽を育て、それまで興味がなかった分野

の知識を得るきっかけとなる。 

  第3の方法は、意識的に問い続けることだ。設定不良問題に対して課題を再設定する能力を高

めるには、「問う」という行為に日常的に意識して取り組む必要がある。 

  私は大学生のときに、研究者になるには疑問を100個あげる能力が必要だと本で読み、この課

題に挑戦してみたことがある。当時の私では、20~30個の疑問をノートに書くのが精いっぱいだっ

た。今では疑問を100個あげることは、それほど難しくない。 

  例えば、仕事上の課題においても疑問設定はできる。「期限に間に合わせるには?」「より簡潔に

伝えるには?」「顧客に関心を持ってもらうには?」「作業効率を高めるには?」「チーム連携を高め

るには?」「いつまでも英語が上達しないのはなぜ?」・・・このような疑問を、取り組んでいる課題ご

とにあげていけば、すぐに100個に届く。 

  なお、最初に書きとめた疑問は「設定不良問題」であることが多い。その場合は、「期限に間に合

わせるために自分に3つのルールを課すとしらた、その3つは何だろう?」というように問題を設定し

なおそう。「3つ」の意義については、『リーダー脳」は手抜きしない!科学的思考の鍛え方』を参照

されたい。 

寝ても覚めても考え続けたその先に・・・! 

  このような疑問を書きとめて、答えが出るまで考え続けよう。考え続けるには、疑問を書いたメモを

何度も見て、脳内の掲示板に疑問をしっかり書き込もう。しっかりインプットされれば、探索や発見を

担当する脳内のプログラムが、無意識の状態でも答えに関係する言葉やアイデアを探し続ける。 

  すると、電車の中やお風呂の中などで、突然答えが浮かぶようになる。  

アルキメデスは、王冠の金の純度を計る方法を考え続け、ついに風呂の中で「アルキメデスの原

理」として知られる方法を思いつき、風呂から飛び出して「ユーレカ!(分かった)」と叫んだと言われ

ている。これ以来、多くの科学者が風呂の中などリラックスしている状態で偉大な発見をしている。  

  集中して考えてもなかなか答えが浮かばないときは、リラックスして緊張を解くことが有効だ。このリ

ラックスするプロセスを認知科学では「インキュベーション」と呼び、その有効性については実験的な

証拠がある。 

「インキュベーション」の有効性を説明する仮説はいろいろあるが、私はリラックスすることで探索空

間や探索ルートが広がり、それまでの探索ルートで見つからなかった言葉やアイデアを探し出せる

のだと考えている。 

  画家の千住博さんは『千住博の美術の授業  絵を描く悦び』(光文社新書)の中で、以下のように

語っている。 

「画家として成功するには、ではどうしたらよいのでしょう。私は受験時代から今日に至るまで実に多

くの画家を志す人々、そして成功した画家たちに出会ってきました。上手い人ばかりではありませ

ん。むしろ少し考えてみると、成功した人にあまり上手さが目立つ人はいなかったような気もしてしま

う。何かをやって成功するタイプとはどんなタイプなのか・・・。それはとにかく一言で言えば、『とこと

ん好き』という連中です。朝早く起きて寝るまで絵のことで頭がいっぱい、そんなイメージです」 

  画家であれ科学者であれ、成功するための秘訣は同じである。それは技術や学力よりもむしろ、

課題を問い続ける追求力であり、絶え間ない追及こそが創造的発想を生み出すのだ。 

  さあ、あなたも疑問をノートに書き留めて、考え続けよう。きっとお風呂のなかで、分かった!  と思

える瞬間に巡り合えるはずだ。  

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3.Innovation/Motivation 

ヤマハ発のロボットライダー  時速100キロで疾走 

2015/11/2日本経済新聞  電子版 

  ヤマハ発動機がこのほど、開発中の「ロボットライダー」を披露した。センサー、コンピューター、アクチュエータ

ーを搭載したヒト型ロボットだ。大型バイクにまたがり、周囲の状況を認知、判断して自ら運転する。米国で進め

ている実験ではサーキット上で時速100キロメートル超で走り込むことにも成功した。ロボの開発を通じて二輪

車の制御技術を研究し、製品に落とし込んでいく。 

■人間と同じバイクを運転  15度まで姿勢を傾け旋回も可能 

 

  「未来のライダーを紹介する」。28日、東京モーターショーの報道関係者用の発表会の壇上、柳弘之社長の

言葉にあわせてバイクにまたがったロボットが登場した。名前は「MOTOBOT(モトボット)」という。 

  MOTOBOTはヤマハ発に所属する二輪のトップレーサー、バレンティーノ・ロッシ氏を超えるために生まれて

きたオートライダーという設定を持っている。 

  体重は45キログラム。全身に取り付けられた10個以上のセンサーやカメラで周囲の状況を認知し、背中の

コンピューターで必要な操作を判断する。手や足に取り付けられた6つのアクチュエーターを動かすことで、アク

セルグリップを回して加速したり、ブレーキペダルを踏んでとまったりできる。 

  MOTOBOTが乗るのは同社の大型バイク「YZF―R1」だ。これをMOTOBOT自身が運転している。車両自

体には一切、改造を加えていない。 

  ロボ開発のプロジェクトが始まったのは約1年前にさかのぼる。同社は開発の現場に米カリフォルニア州シリ

コンバレーを選んだ。シリコンバレーは自動運転の研究に関するメッカであり、様々な技術を持つベンチャーも

集まる。この場所が新技術を磨くのに適していると判断した。 

ヤマハ発動機の柳弘之社長は「しっかり形にしたい」と意気込む 

  現在、開発陣はサーキットに集まり、日々走行実験を進めている。「正確に動かすのは難しい」。開発に携わ

っているヤマハ発の米国法人所属の内山俊文さんは、開発は初期段階であると強調する。しかしすでにサーキ

ット上で時速100キロメートル超で走る。姿勢の傾きが15度までであれば旋回することも可能だ。さらに研究

開発を進めていき、2017年には時速200キロメートルでの走行を目指す。 

  いったい何のための開発か。ヤマハ発は今のところ、ソフトバンクグループがヒト型ロボット「ペッパー」を販売

するように、MOTOBOTを売りだそうというわけではないという。 

  「二輪車の複雑な動きをコントロールするには様々な技術が必要だ。ロボの研究開発過程で獲得した技術

を、車両の先進安全システムやライダー支援の仕組みづくりに生かす」。柳社長は発表会の席上でプロジェクト

の意図を説明した。 

  車両自体の開発につながりそうだ。より転倒しにくく、運転しやすいバイクを実験するのに役立つとみられるか

らだ。内山さんは「例えば社内でテストライダーとして使うといった活用方法は考えられる」と話す。 

■安全運転支援に応用  ホンダ、独BMWとコンソーシアム設立へ 

  MOTOBOTの取り組みは、ある意味、二輪車業界の方向性と課題を象徴する。安全や乗りやすさ向上のた

めに人工知能技術やIT(情報技術)を使う。四輪車ほどメディアに華々しく紹介される機会は多くないが、同様

の動きは二輪車でも求められる。 

そうした流れのなか、業界内の連携も進む。ホンダとヤマハ発、独BMWの二輪車部門のBMWモトラッドは二

輪車用の安全運転支援機器を共同開発するコンソーシアムを来年3月に立ち上げる予定で、他社にも参加を

呼びかけ始めた。二輪車どうしが無線で位置などの情報をやり取りし、危険の有無を事前に検知、運転手に警

告して事故を防ぐシステムを共同で開発する枠組みだ。 

ヤマハ発動機は米国でMOTOBOTの走行実験を進めている 

  二輪車特有の動きを検知するため独自のソフトウエアやアルゴリズムを開発するほか、搭載しやすいよう小

型で水やほこりに強い機器を目指すという。四輪車向け機器を共同開発する取り組みはあるが、二輪車に使う

には機能が不十分で、二輪車に特化した機器の開発で安全走行を支援する必要がある。1社ごとのイノベーシ

ョンとともに、業界全体の底上げが不可欠だ。 

  日本では二輪車は危ないというイメージが先行しがちだ。それを払拭できないことが市場縮小を進める結果と

なってしまった。新しい技術が実を結び世の中に登場すれば、乗り手の幅を広げることにもつながるだろう。M

OTOBOTが果たす役割は小さくない。(企業報道部  香月夏子) 

中国の先進ロケット、対抗馬はアマゾンのベゾスー米国が実用化

できなかったエンジンを「長征6」で搭載松浦 晋也2015年10月27日(火)NBO 

松浦 晋也ノンフィクション作家科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論

などの分野で取材・執筆活動を行っている。(前回から読む) 

  中国は現在、現行の「長征2」「3」「4」に代わる次世代ロケット「長征5」「6」「7」、そして「11」を開発中だ(「8」は

欠番で「9」と「10」は検討中の構想)。前回にご紹介している、9月20日に初打ち上げに成功した長征6は、

「次世代長征の第一弾」ということになる。 

  これら次世代長征のエンジンは「酸素リッチ2段燃焼サイクル」という、これまでロシアしか実用化できていな

かった高度技術を採用している。この技術は、まだ米国も実用化できておらず、長征6の打ち上げ成功により、

中国のロケット技術は初めて米国に対して一歩リードすることとなった。 

  もちろん米国でも、酸素リッチ2段燃焼サイクルのエンジンの開発が進んでいる。だがその開発主体は米航

空宇宙局(NASA)でも米国防総省でも、その他のいかなる政府組織でもない。アマゾンCEOのジェフ・ベゾス

が設立した宇宙ベンチャーの「ブルー・オリジン」である。国家と、IT を駆使した超国家的企業が同じ技術を巡っ

て競う――冷戦終結から四半世紀以上を経て、宇宙開発の世界では、国家がその威信を競い合う冷戦期の構

図から、国家対企業という新たな枠組みが出現しつつある。 

打ち上げに成功した長征6の初号機(画像:上海航天)。第1段に、YF-100エンジンを1基、第2

段にYF-115エンジンを1基使用する。第3段は、酸化剤に過酸化水素を、燃料にケロシンを使うYF-85エン

ジンを搭載している。 

  現行の中国のロケット「長征2/3/4」は1960年代の弾道ミサイルに技術的ルーツを持ち、ヒドラジンと四酸化

二窒素という組み合わせの液体推進剤を使用している。この組み合わせは常温だと液体で、長期保存が利く。

だが、ヒドラジン、四酸化二窒素、噴射ガスのすべてが毒性を持つという欠点を持つ。 

  そこで新世代の「長征5/6/7」では、推進剤として毒性の少ない液体酸素・ケロシン(灯油)の組み合わせを採

用した。 

  酸素リッチ2段燃焼サイクルを採用したのは、液酸・ケロシンの組み合わせのエンジンの第1段用「YF-100」

と第2段用「YF-115」である。 

力はあるし燃費もいいが、高温の酸素に耐えるのが大変 

  ロケットエンジンはターボポンプを使って主燃焼室に燃料と酸化剤を押し込み、燃焼させる。2段燃焼サイクル

は、不完全燃焼ガスを使ってターボポンプを駆動するエンジン形式で、その他の形式よりも高性能を出すことが

できる。 

  ここで問題になるのは、どんな不完全燃焼ガスを使うかということ。ケロシンが多い不完全燃焼ガスを使うと、

ガスに含まれる未燃焼のケロシンが高温で分解してススを発生し、配管内に付着して問題を起こす。そこで、液

酸・ケロシンでは、大量の酸素に少量のケロシンを混ぜて燃やし、酸素過剰(酸素リッチ)の不完全燃焼ガスを

作ってターボポンプを駆動する。 

  ところがこのガスには反応性が高い高温の酸素が大量に含まれるため、そのままでは配管内部やターボポン

プのタービンが酸化して壊れてしまう。このため酸化皮膜などの保護コーティングが必要になるが、これが大変

難しいノウハウを必要とする。 

旧ソ連は1950年代から研究と試作を開始し、1987年には世界最高

水準の性能を誇るエンジン「RD-170」を実用化した。現在、米国の主

力ロケット「アトラスV」にはRD-170から派生したロシア製の「RD-180」エンジンが使用されている。そう、米国の宇宙開発は、旧ソ連の

技術で支えられているのだ。 

エンジン名 

推力

(真空

中) 

比推力 

(真空

中) 

推進剤  備考 

YF-100 

335

秒 

1340kN 

(137ト

ンf) 

液体酸

素・ケ

ロシン 

長征6

第1段

に使用 

YF-115 

342

秒 

176.5kN 

(18トン

f) 

液体酸

素・ケ

ロシン 

長征6

第2段

に使用 

RD-180 

338

秒 

4510kN 

(460ト

ンf) 

液体酸

素・ケ

ロシン 

アトラス

V第1

段に使

用 

BE-4  不明 

2400kN 

(245ト

ンf) 

液体酸

素・液

体メタ

ン 

ヴァル

カン第1

段に使

用予定 

  主な酸素リッチ2段燃焼サイクルエンジンの概要。ロケットエンジンにとっての推力は、自動車エンジンにとっ

てのトルク、比推力は燃費に相当する数値だ。 

  推力が大きいほど打ち上げ時の“出足”(加速度)が良くなる。比推力が大きいということは、同じ量の推進剤

でもより多くの荷物をより高速度に到達させられることを意味する。逆の言い方をすると、より軽いロケットで、よ

り重い荷物を打ち上げられるということだ。  

  ロケットエンジンは大推力になると、急速に開発が大規模になり、技術的にも難しくなる。YF-100の137トンf

というサイズは、最初に開発する第1段用酸素リッチ2段燃焼サイクルとしては、まあ妥当なサイズだ。ここで

注目すべきはBE-4の245トンfという推力。これは最初に開発する酸素リッチ2段燃焼サイクルエンジンとし

ては大きすぎる。経験豊かなロシアの技術を導入している、と筆者が推測している理由のひとつだ。  

長期の開発に耐え抜いたロシアと中国 

  中国は、1985年から酸素リッチ2段燃焼サイクルの検討を開始した。1990年代後半から実際のエンジン試

作に入り、2000年には長征5の液体ロケットブースター用エンジンとして、酸素リッチ2段燃焼サイクルの「YF-100」エンジンの開発が始まった。 

  長征5は、当初2008年初打ち上げを予定していたが、スケジュールはずるずると遅延し、現在は8年遅れ

の2016年を予定している。この遅れの少なからぬ部分は、YF-100の開発遅延が原因のようで、開発過程で

は数回の爆発事故を経験しているという。 

  ロケットエンジン開発の世界には「ポケットは札束で一杯になっているか」という言葉がある。それぐらいエンジ

ンの開発にはお金が掛かるという意味だ。旧ソ連はRD-170開発後に力尽きた格好で予算不足に陥り、1991

年のソ連崩壊を迎えてしまった。中国は近年の高度経済成長による資金的余裕をエンジン開発に突っ込み、か

つ20年近い時間をかけてじりじりと技術開発を進めて、ついに酸素リッチ2段燃焼サイクルの技術を手に入れ

たわけである。 

米国、技術資料を買い取るも国産化断念 

  これら中ソの粘り強さは、米国と対照的だ。 

  米国では、1980年代後半から何度となく酸素リッチ2段燃焼サイクルのエンジンの必要性が指摘され、研究

が進められたがその都度主に政治的な理由から挫折を繰り返した。2001年からは次世代打ち上げ機構想「SLI

(Space Launch Initiative)」が動き出し、米国初の酸素リッチ2段燃焼サイクルエンジン「RS-84」の開発が始ま

った。 

  同エンジンは2007年には燃焼試験を開始する予定だったが、2004年ブッシュ米大統領が新たな有人月探査

計画を打ち出すと、SLIそのものが中止になってしまった。有人月探査に必要な機材の開発には莫大な予算が

必要だ。予算を有人月探査に回すため、“ロケットエンジンのポケットにあった札束”は召し上げられたのであ

る。 

  また、米国はアトラスV用のRD-180に使われている技術を得るために、1990年代に経済危機にあったロシ

アから大量の技術資料を買い取った。が、結局自国ではものにすることができず、RD-180の国産化を断念して

いる。 

  この方式のエンジンがなければ宇宙開発は出来ないのかと聞かれれば、そんなことはない。米国、欧州、そし

て日本では固体ロケットが、推力に優れるケロシン系酸素リッチ2段燃焼サイクルエンジンの代替として使われ

ている。米国のスペースシャトル、シャトル後継の有人ロケット「SLS」、欧州のアリアン5、日本のH-IIA/B など

は、打ち上げ時に必要な大推力を横に装備した固体ロケットブースターから得るという設計だ。 

  しかし、米政府の官需打ち上げを支えるアトラスVが、RD-180を使用していることからも分かるように、固体

推進剤で酸素リッチ2段燃焼サイクルエンジンの用途のすべてをカバーできるわけではない。 

その米国で現在、ブルー・オリジンが、酸素リッチ2段燃焼サイクルの大型エンジン「BE-4」の開発を着々と進

めているわけだ。 

ベゾスのBE-4、米政策の失点を救うか 

  BE-4は、アトラスVやデルタ4を運用し、米官需打ち上げをほぼ一手に引き受けているユナイテッド・ローン

チ・アライアンス社の新ロケット「ヴァルカン」の第1段エンジンに採用が決定した(“アマゾン”ベゾスのロケット

エンジン、表舞台に:2015年5月13日参照)。また、ブルー・オリジンは今年9月15日にフロリダ州ケープ・カ

ナヴェラルにある米空軍のロケット発射施設「LC36」を借り、2億ドルを掛けて再整備する計画を発表した。

LC36からは、ブルー・オリジン独自の有人宇宙船「Orbital Transportation System」を打ち上げるが、その打ち

上げ機にもBE-4を使用する模様だ。 

  実はRD-180は、ウクライナを巡る米ロ関係の悪化から継続的な入手が疑問視されていることもあり(ウクラ

イナで“困った”。米ロの宇宙での共依存:2014年5月26日参照)、BE-4は米国ロケットの基幹技術となりそう

な勢いである。 

  1980年代後半から、米政府の酸素リッチ2段燃焼サイクルへの態度は、右往左往で腰が定まらなかったが、

その失点をいまやブルー・オリジンのBE-4が救うという構図になっている。 

  ブルー・オリジンが厳密な秘密主義を貫いているため、BE-4の詳細は明らかになっていない。が、公表された

外観からすると、ロシアが得意とする一軸式ターボポンプを採用するなど、ロシア系の技術がかなり入っている

ものと推察される。おそらくはロシアが旧ソ連時代から積み上げてきた知見を利用することで、開発コストを引き

下げているのだろう。BE-4の燃料はケロシンではなく、同じ炭化水素系だがより分子量の小さい液体メタンを

使用する。ロシアは旧ソ連時代からメタン燃料の研究を行っており、この面でもロシアとのつながりが感じられ

る。 

  開発も着々と進んでいるようで、9月30日には、2段燃焼サイクルによる100回以上もの燃焼試験を実施し

たと発表した。これらの試験で得られたデータに基づいて、今後実際の打ち上げに供するエンジンの設計を確

定するという。 

BE-4エンジン外観(Blue Origin) 

  中国は国を挙げて時間をかけ、ロケットエンジンの基幹技術のひとつである酸素リッチ2段燃焼サイクルを完

成させた。対して、米国では米政府が長らく腰が定まらず迷走する一方で、IT 市場の発達から出発した民間の

ベンチャーがこの方式のエンジンを開発しつつある。納入先も見つかり、ビジネス的な成功も見えつつあるよう

だ。 

ビジョナリスト対全体主義(的)国家 

  21世紀に入ったあたりから、米国の宇宙開発ではニュースペースと呼ばれる、IT 分野での成功で得た資金を

宇宙に投じるベンチャーが次々に立ち上がった。その筆頭がイーロン・マスク率いるスペースX社であり、ジェ

フ・ベゾスのブルー・オリジンだ。 

  この2社に共通しているのは、「普通に考えれば不可能」と思われることに挑み、現実に成果を挙げつつある

こと。そして、ビジョナリーのトップが独裁する企業であることだ。 

  宇宙開発は「独裁」的な組織――国民の声をある意味無視できる全体主義的な国家を含めて――向きなの

では、という見方もできよう。だが筆者には、中国に代表される国勢の伸長著しい新興国に、先進各国はどう対

応すればいいかという課題への回答のように思える。 

  高度経済成長期を過ぎ、福祉や医療などにお金を回さねばならない先進国においても、資金力のあるビジョ

ナリーが自由に振る舞える環境を作れば、国家に代わって、民間が対抗できる可能性があるのだ。  

【コミュニケーション】 

【リーダーシップ・フォローシップ】 

【ブランディング】 

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4.SOCIETY.CULTURE・EDU.・SPORTS・OTHERS 

中国「一人っ子政策」、新制度施行まで当面続ける=計画出産委 

ロイター 11月2日(月) 

  11月2日、中国の国家衛生・計画出産委員会は、全ての夫婦に第2子出産を認める新制度が施

行されるまでの間は「一人っ子政策」を続けると表明した。北京で3月撮影(2015年  ロイター/Kim Kyung-Hoon)  

[北京  2日  ロイター] - 中国の国家衛生・計画出産委員会は、全ての夫婦に第2子出産を認める新制度が

施行されるまでの間は「一人っ子政策」を続けると表明した。 

 

中国共産党は先週の党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、「一人っ子政策」の廃止を決定した。しか

し、制度変更には来年3月に開催される全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での承認が必要。 

 

国家衛生・計画出産委員会のある高官は、声明のなかで「(新制度が批准されるまでの間)当局は現在の人

口・家族計画に関する法律や規制を執行しなければならない。勝手な行動は許されない」と強調した。 

 

一方、湖南日報によると、湖南省で家族計画を担当する高官は先週、第2子を現在妊娠中の夫婦は処罰され

ないとの見方を示している。 

日本人の間で米国留学が下火に、行きたいのは中国―台湾メディア 

Record China 11月2日(月) 

1日、米国国際教育協会(TIE)がまとめた統計によると、米国留学熱は1950年代から現在まで

衰えることがないが、日本人に限っては留学者数がかつての1位から現在は7位に減少した。上海の名門復

旦大学。  

2015年11月1日、米国国際教育協会(TIE)がまとめた統計によると、米国留学熱は1950年代から現在まで

衰えることがないが、日本人に限っては留学者数がかつての1位から現在は7位に減少した。日本の文部科

学省のデータによると、現在、日本人は米国より中国本土に行って勉強したいと考えており、過去2年間は中

国留学者数が米国留学者数を超えたという。参考消息のサイトが台湾メディアの報道として伝えた。 

 

報道によると、日本人の海外留学の全盛期は2004年で約8万7000人が留学したが、その後は減少の一途

をたどり、12年はやや回復して6万人を超えた。 

 

日本の学術関係者によると、こうした傾向から現在の若年層が国際社会に挑戦しようと思わないこと、日本国

内での安定した生活に安住していることがうかがえる。日本人の留学先をみると、04年は米国が4万2000人

で半数を占めたが、11年は35%だった。その一方で、中国本土への留学生は09年から増加を続けている。 

 

文科省の関係者によると、「過去には『留学』といえば『米国留学』のことだったが、今は留学の選択肢が非常に

多様化した。日本の大学の多くは中国本土の大学と交換留学生の協定を結んでいる。かつて日本企業は米国

や欧州に留学した人材を好んで採用したが、今はアジア留学経験者を求める傾向が強くなっている」という。 

 

世界の留学情勢を解析すると、引き続き米国が各国学生の間で人気の留学先だ。13~14年には88万6000

人が留学し、中国本土からの留学生が27万4000人で、過去10年間に4.5倍に増えた。日本からの留学生

は09年に半数を占めてトップだったが、現在は7位で、人数は2位のインド、3位の韓国に大きく引き離され、

ベトナムに急追されつつある。(提供/人民網日本語版) 

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5.ECONOMY・POLITICS・MILITARY AFFAIRES 

南シナ海の米中対立は「出来レース」だ! 

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト] 【第57回】 2015年11月2日 DOL 

  横須賀を母港としている米海軍のイージス対空ミサイル搭載駆逐艦「ラッセン」(9425t)は10月26日夜、南シ

ナ海の南沙諸島で中国が埋め立て、滑走路を造っているスビ礁付近の12海里(22km)以内を航行した。この

行動は米国がこれらの人工島を中国領と認めず、その周囲12海里は中国領海ではないことを示すためだ。 

人工島付近を航行した米海軍の駆逐艦「ラッセン」の演習模様   Photo:U.S.Navy 

  米海軍が今後あまりに頻繁にこうした行動を取り、もし中国側と武力衝突になれば、がんじがらめの相互依存

が成立している米中の経済関係は断絶し、双方の経済は多分麻痺する。昨年の日本の輸出の23.8%は中国

向け(香港を含む)、18.7%は米国向けだから、日本にとって2大市場の混乱は致命的な打撃だ。しかもそれは

欧州、アジア地域、そして全世界に波及するだろう。 

  だが、実際には武力衝突に発展する公算は低い。中国は米国がこのような行動に出ても武力行使をしないこ

とを事前に示唆しており、暗黙の了解があった、と考えられるのだ。 

「領土問題でも武力行使を軽々しく言わない」と中国上将が表明 

  北京西部の紅葉の名所、香山で10月16日から18日にかけて開かれたアジア・太平洋地域の安全保障協

力を目指す討論会「第6回香山フォーラム」には、南沙諸島問題で中国と対立するベトナム、フィリピン、マレー

シア、ブルネイや、インド、インドネシア、シンガポールなど16ヵ国の国防大臣が出席し、米、英、仏、独なども

公式代表を参加させた。 

  昨年招待されたが断った日本も今年は防衛研究所の大西裕文副所長を派遣した。参加国は計49ヵ国と5

国際機関、出席者は約500人に達した。このフォーラムが2006年に始まった当時は「中国軍事科学学会」な

ど、研究機関の主催で、参加者も研究者がほとんどだったが、いまでは中国政府の「軍事科学院」が後援する

半官半民の国際会議になっている。 

  今回基調講演を行った中国の中央軍事委員会副主席(委員会の主席は習近平氏)範長龍・陸軍上将はその

中で「たとえ領土主権に関る問題であっても、中国は決して武力行使を軽言(軽々しく言う)しない」と述べた。こ

うした発言は中国国内のタカ派の反発も招きかねないから、範長龍上将の一存で言えることではなく、習近平

主席の意を受けた発言だろう。 

習主席は9月25日、ワシントンでオバマ米大統領と会談し、南シナ海での埋め立て問題は主要議題の一つだ

った。オバマ大統領は、それまで米海軍やタカ派議員達が主張していた「12海里以内での艦艇、航空機の航

行」に対し、中国との関係の悪化を案じて慎重だったが、この会談後その実施を許可した。おそらく習近平主席

から、間接的表現ではあっても、中国は武力行使はしない、との感触を得たと考えられる。 

  現に「ラッセン」が人工島周辺を航行した際、中国海軍は「中国版イージス艦」とも言われるミサイル駆逐艦

「蘭州」(7112t)と、フリゲート艦「台州」(1729t)を出したが、相当距離を置いて後方から「追跡、警告をした」だけ

で並走はせず「ラッセン」の航行を妨害しなかった。 

  一方米国も「中国敵視」と言われないよう「ベトナム、フィリピンなどが領有を主張している岩礁から12海里以

内を航行した」とも発表して、公平さを示そうとした。また米国務省のカービー報道官は27日の記者会見で米

中関係への影響を問われ「世界のいかなる国との関係にも悪影響を与える理由はない」と答えた。これも事前

に中国と暗黙の了解があったことをうかがわせる。 

  中国が埋め立て、飛行場建設を行っているスビ礁、ミスチーフ礁は満潮時には水面下に没する「干出岩」だか

ら海底の一部とみなされる。その上に構造物を造ったり、周囲を埋め立てても、海底油田の櫓と同様の「人工

物」で領土ではなく、その周囲は領海にはならない。 

  沖ノ鳥島のように満潮時にも一部がなんとか水面上に出ている場合には、それを補強して保存すれば周囲は

領海になりうるが、スビ礁などはそうではない。 

  南沙諸島には島と言えそうなものは12あるが、ベトナム、フィリピンが5島ずつ、マレーシア、台湾が1島ず

つを抑え、それぞれ飛行場一ヵ所を造った。出遅れた中国は他国が目を向けなかった岩礁しか確保できず、飛

行場を造るには大規模な埋め立てをするしかなかったのだ。 

  中国の弾道ミサイル原潜は、かつては対立したソ連に近い黄海の最奥部の遼東湾を基地にしていたが、遼東

湾の水深は25m程度、黄海北部も浅いから、船底から司令塔の上端まで20m余ある大型の原潜は延々と浮

上航走しないと出動できず、丸見えになる。このため中国海軍は深い南シナ海に面した海南島の三亜付近に

潜水艦基地を造り、潜水艦が隠れるトンネルも掘っている。 

  米海軍は中国海軍との交流にも熱心で、中国との戦争が迫っているとは考えていないが、将来の万が一の事

態に備え、原潜や哨戒機で中国潜水艦を追尾し、プロペラ音や原子力機関のタービン音、減速ギア音、ポンプ

類の音など「音紋」を採取して貯え、識別の資料としたり、季節、時間ごとの水温、潮流など、水中の音波伝播

状況のデータを収集して潜水艦探知に役立てようとしている。 

  中国海軍は当然それを嫌がり、哨戒機や海洋調査船の行動を妨害しようとする。2001年4月には米海軍の

電子偵察機EP3が中国海軍のF8IIと海南島沖で空中衝突し、戦闘機が墜落、EP3は海南島の中国軍航空基

地に不時着する事故も起きた。 

米国が唱える「航海の自由」は実は「情報収集の自由」だ 

  米国は今回の「ラッセン」等の行動を「航海の自由の確保」のため、と言うが、領海を外国商船が通過したり、

漁船が操業せずに通る「無害通航」は自由で、中国もそれを妨げようとはしていない。世界最大の貿易国、漁業

国、造船国である中国にとって世界的な「航海の自由」の確保はまさに「中核的利益」だろう。軍艦にも無害通

航権はあるが、沿岸国の防衛、安全を害するような情報収集は許されない。米国などの商船が南シナ海を通る

ことには何の支障もないことを考えれば、米国の言う「航海の自由」はもっぱら「情報収集の自由」を意味する。 

  公海とその上空ならば哨戒・情報活動は自由に行えるが、中国が南沙諸島海域に人工島を築き、それを領土

だと主張して、その周辺での米軍艦や哨戒機の行動を規制すると米海軍の情報収集が妨げられる。国連海洋

法条約でも人工島は領土とは認められないのは明らかだから、米海軍としてはその周辺海域を航行し、情報収

集を行う実績を作っておこうとする。 

  中国も人工島自体を「領土」とし、領海の根拠にするのは難しいことを承知しているから、南シナ海のほぼ全

域を囲む9本の断続的な線、牛の舌のような形の「九段線」を示し、「それが歴史的な中国領海だ」と主張して

いる。だが、その明確な根拠は示していない。 

  中国は宋の時代(960~1279年)に磁石が発明されるなど、造船、航海術が著しく発達して巨大海洋国とな

り、南シナ海を多数の中国の大型帆船が往来し南海貿易が盛えたが、中国がその海域を「領海」として支配し

ていた訳ではない。仮にその当時南シナ海で支配的地位にあったとしても、故に今日も中国の領海だ、との論

は「ローマ帝国が地中海を支配していたから、今日も地中海はイタリアの領海だ」と主張するような無理な説だ

ろう。 

  ただ、「九段線」は中華人民共和国が唱え出したのではなく、蒋介石の中華民国政府が1947年に南シナ海に

11本の線を引いた地図を発行し、それが中国の権威が及ぶ範囲、としたのが始まり、とされる。1953年に中国

はそのうち2本を削除した地図を発行し「九段線」となった。 

  蒋介石が残した負の遺産とも言える「九段線」を中国が撤回すれば良いのだが、一度「自国領だ」と主張する

と、その根拠が不明確であり、主張を続けるのは対外政策上不得策であっても、それを取り下げるのはどの国

でも国内で非難の的になるから、難しい。 

  南沙諸島の岩礁の大規模な埋め立て、飛行場建設は相当な準備期間を要するから、おそらく習近平氏が

2013年3月に国家主席に就任する以前に計画が決定していたと考えられる。前任の胡錦濤主席といえども、

軍が「自国領の防衛を固めるため」と言えば、それを抑えにくかったのではないだろうか。 

  中国としてはこの問題で米国との関係を悪化させたくはない一方、中国が主張してきた領有権を否定する米

国の行動を座視していれば国内の“愛国者”達が騒ぎ立て、それに乗じて習氏の失脚を狙う者が出かねない。

だから一応米国に抗議し、軍艦2隻で「ラッセン」を追尾させ「追跡、警告を行った」と発表し、実際には妨害は

しない、という手緩い対応を取るしかなかったのだろう。 

また中国は「建造中の飛行場に軍用機は常駐させない。海難救助の拠点にもなる」と表明して米国、近隣諸国

の非難をかわそうと努めている。幸い、中国では今回の米艦の行動に対して反米感情が高まった様子はなく、

デモなども起きていない。 

経済的に依存しあう米中は衝突をなんとか避けたい 

  尖閣諸島については2014年11月、日中首脳会談を前に、双方が「異なる見解を有している」ことを認め「不

測の事態の発生を回避する」ことで合意した。両者は従来どおりの主張は続けるが、現状は変えず、衝突は避

ける、という事実上の棚上げで当面はおさまった。南沙の岩礁問題でもこれに似た玉虫色の状況になる可能性

が高いのではないか。 

  以前にも本欄で述べたが、米国にとり中国は、 

(1)米国債1兆2000億円ドル余を保有し、危機にある米国財政を支えている。 

(2)3兆7000億ドル(ドイツのGDPに匹敵)の外貨準備の大半をウォール街で運用し、米国の金融、証券の最

大の海外顧客 

(3)米国製旅客機を毎年約150機輸入し、米国の航空・軍需産業の最大の海外顧客(今後20年間の中国の

旅客機需要は6300機以上) 

(4)GMの車が年間約200万台(中国全体では2300万台)売れ、中産階層が爆発的に増加する巨大市場で米

企業2万社が進出 

  などの要素から、中国への依存は決定的に大きい。 

  中国にとっても米国は最大の輸出市場であり、最大の融資・投資先だから、米国との友好関係と米国経済の

成功を願わざるをえない。 

  中国海軍の増強、海洋進出が喧伝されるが、中国の空母は1隻、その搭載戦闘機は約20機であるのに対

し、米海軍は戦闘・攻撃機55機を搭載可能な原子力空母10隻(近く11隻に戻る)を保有し、搭載戦闘機数は

550対20だし、技術の差は極めて大きい。 

  実用になる中国の原潜は5隻、米原潜は71隻で、中国の対潜水艦能力(探知技術など)は無きに等しい、な

どを考えれば、中国海軍が米海軍に対抗して、全世界に伸びた長大な海上通商路を守ることは将来も不可能

に近い。 

  中国は海外市場、輸入資源への依存度が高まれば高まる程、世界的制海権を握る米国との対立を避けざる

をえない立場にある。 

  また中国は今日の世界秩序、経済システムの第一の受益者であり、それを覆すことは経団連が体制転覆を

はかるに等しく、世界の体制護持のために大局的には米国と協調せざるをない。 

  もちろん日本にとっても、米中の武力衝突による経済関係の断絶、両国経済の破綻は致命的だ。反中国感情

を抱く日本人の中には、米中が岩礁埋め立て問題で対立することを喜ぶ気配も感じられるが、それは大津波の

襲来を期待する程の浅慮と言うしかない。 

習近平が英国に“西側最大の支持者”を求める3つの理由 

加藤嘉一 【第63回】 2015年10月27日 DOL 

米国訪問から時を置かずして英国を公式訪問した習近平の思惑 

先日、習近平国家主席が英国を公式訪問した。今回の訪英からは、習近平時代の中国共産党を

占う3つのインプリケーションが見えてくる 

  2015年10月20日~23日(英国時間)、習近平国家主席が英国を公式訪問した。中国国家主席の英国公式

訪問は、前任者の胡錦濤の訪問(2005年11月)以来、約10年ぶりである。 

 「米国への公式訪問から1ヵ月経たないというインターバルで実行された。しかも、ついでに他の国を回るので

はなく、英国一国だけをピンポイントで訪問した。習主席がそれだけ英国との関係を重視している証拠である」 

  習近平訪英直前、共産党中央で対西欧外交を担当する幹部が、私にこうプレビューした。 

  私は広東省で動向を追っていたが、中国国内世論はまさに“中英関係”“習近平訪英”一色だった。中国共産

党広東省委員会の傘下にある機関紙《南方日報》は、10月19日(習近平が英国訪問に向けて北京を発った

日)から10月24日の全ての表紙・ヘッドラインを、この話題に割いた。「中央宣伝部から習主席訪英中は大々

的にそれを宣伝し、再優先で扱うようにという指示が出ていた」(南方日報スタッフ)。 

  ヘッドラインのタイトルを書き下してみよう(時間はいずれも北京時間)。 

 「習近平はロイター社の取材を受けた際に強調した:中英関係の“黄金時代”を開拓する」(10月19日) 

 「習近平が英国に到着し公式訪問を開始した。習近平夫人彭麗媛らが同行」(10月20日) 

 「習近平がロンドンに到着し英国公式訪問を開始。中英協力の壮大なロードマップを共に企画することを強調:

英国王室が高規格で習近平を歓迎」(10月21日) 

 「習近平が英国首相キャメロンと会談を実施:中英関係の“黄金時代”を開拓」(10月22日) 

 「習近平がロンドン金融街シティーで重要演説を発表:中国は国が強くなったら必然的に覇権に走るというロジ

ックを受け入れない」(10月23日) 

 「習近平がキャメロンと再び会談:共に中英友好を象徴する樹を植える。現地の小さな町でビールを飲み、フラ

イドフィッシュ&ポテトを堪能」(10月24日) 

習近平自身の紹介によれば、現在EU諸国内において、英国は中国第二の貿易パートナー&投資目的地であ

り(トップはドイツ)、また香港以外で最大の人民元域外交易センターである。また、中国は英国のEU諸国以外

における第二の貿易パートナー(トップは米国)&アジアにおける最大の投資目的地である。 

  そんな英中両国が習近平訪英期間中に合意・締結した協定は、計59に及んだ(新華社発表参照)。うち、政

府間協定が13、商業協定が28、その他が18であり、相互協定によって発生する金額は約400億ポンド(約

4000億元)に達するという。 

  内容的には金融とエネルギーが突出している。なかでも、習近平訪英に関わった複数の政府関係者や企業

家が“最大の収穫”と認識しているのが、フランス最大の電力会社であるElectricite De Franceが手がける英

国の原子力発電所プロジェクト・Hinkley Pointに中国が参画するという決定である(担当は中国広核電力株式

有限公司)。英国で過去30年来新たに建設する原発としては初となるプロジェクトであり、投資総額は180億

ポンドに及ぶ。フランス側が66.5%、中国側が33.5%の株式を所有する。2025年完成予定とされる。 

  金融の分野では、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、中国交通銀行、その他保険会社などが英

国側のカウンターパートとイニシアティブやメモランダムを締結している。 

英国を“一帯一路”の最終到達地に位置づける習近平の野望 

  私がとりわけ注目したのが、習近平が掲げる“一帯一路”やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を促進することを1

つのミッションとする国家開発銀行の動きである。今回、英国貿易投資署と《英国のインフラ、エネルギーに関

するプロジェクトに関する協力メモランダム》を締結した同行は、英国代表処開設の批准を得ると同時に、習近

平英国滞在中の10月22日に開設式典まで挙行した。これから同行が英国で10億米ドル&5億ユーロの債

権を発行していく旨も決定された。 

  10月21日、ロンドン金融街シティーにてキャメロン首相と共に出席した英中工商サミットにて、習近平は2013

年に自ら“一帯一路”を提唱した事実に言及した上で、「2000年以上前、まさにシルクロードが中国とはるか遠

い欧州を連結させた。2000年以上の月日が経った今日、“一帯一路”は中国と沿線国家の共同発展に巨大な

チャンスをもたらしている」と主張した。 

このセンテンスを眺めながら、私は「中華民族の偉大なる復興」と定義される“中国夢”を掲げる習近平が、中華

文明という歴史の延長線上に現在と自己を位置づける“癖”を持った国家指導者である真実を、再認識させら

れた。習近平は、欧州の最西端に位置する英国を、上記演説で「開放的、多元的で、ウィンウィンの産物」と修

飾した“一帯一路”の最終到達地の1つ、と捉えているのかもしれない。 

習近平時代の中国共産党を占う3つのインプリケーション 

  本稿では以下、習近平訪英をケーススタディとして、習近平時代の中国共産党政治を占う上で私が重要だと

考えるインプリケーションを3つ抽出し、分析を加えてみたい。 

  1つ目に、前述の“黄金時代”とも重なるが、習近平が英国との関係を最大限に重視し、(言葉は悪いが)“親

中国家”として英国を取り込み、米国が主導する“西側先進国”を切り崩そうとしている点である。   

  その意図が如実に体現されている習近平のコメントを、2つ見てみよう。 

 「今日の世界において、如何なる国家も国の門を閉じた国家運営を行うことはできない。英国は、中国に対して

最も開放的な西側国家になりたいという意思を示した。これは、英国自身の長期的な利益に符合する、叡智あ

る戦略的選択である」(ロイター社取材に対する書面回答) 

 「30年以上前、中国の指導者・鄧小平と英国首相・サッチャー夫人はその非凡な戦略的見地から中英両国が

香港問題を創造的に解決するプロセスを促進した。平和的な方法で歴史が遺した問題を解決する模範を築い

たのである。30年以上の月日が経った今日、英国は西側大国の中で率先してアジアインフラ投資銀行への加

入を申請した。私は、英国が引き続きあらゆる対中協力分野において潮流を引率し、開放的・包容的な模範を

示し、西側諸国と中国間の協力のフロントランナーになること、そして実質的な行動で“西側世界における中国

への最大の支持者”としての役割を実践することを期待する」(ロンドン金融街シティーでの演説) 

  赤裸々な表現だと私は感じた。“中国の対西側政策は英国から攻める”と言っているのに等しい。他の西側諸

国が、習近平自らが発したこれらの発言をどう捉えたのかが興味深い。日本は“西側世界”の範疇に入ってい

るのだろうか。 

  特に重要だと思われるのが、習近平の米国に対する警戒心であり不信感であろう。前々回コラム「米国公式

訪問で引き出された習近平政治の意外な素顔」で扱った習近平米国公式訪問でもレビューしたが、習近平は米

国との関係構築に悪戦苦闘しているだけでなく、超大国・米国との関係を安定させることを通じて、西側世界に

入り込み、切り崩していくことに相当程度の困難性を見出しているのではないかと思われる。 

そこで、米国にとって最大の盟友の1つであり、そんな米国からの“反対”を押し切ってまでAIIBへの加入を表

明した英国に眼を付け、米国公式訪問を終えて1ヵ月も経たないうちに、あたかも米国に見せつけるかのよう

に、“英国に西側世界における最大の中国支持者になってほしい”と訴えたのである。 

  ワン・オブ・ゼムではなく、ユー・アー・ザ・モーストである。 

  これまでの対外関係に関する公式声明や発言を見る限り、慎重に慎重を期す中国の指導者はワン・オブ・ゼ

ムで攻める傾向が強かった。たとえば、今年9月25日(米国東部時間)、ホワイトハウスでオバマ大統領と会

談した習近平は、「中米関係は世界で最も重要な二ヵ国間関係の1つである」と発言している。 

AIIB加入を最初に宣言した英国に接近、米国主導の西側世界を切り崩す 

  以上から、中国はこれからの対外戦略・関係において、“一帯一路”を政治的スローガンに掲げ、経済力を武

器に、西側先進国で最初にAIIB への加入を宣言した英国を筆頭に、同じくAIIBへの加入を決定している国家

の中では、ヨーロッパの大国であるドイツやフランス、米国の同盟国であるオーストラリアや韓国などに接近しな

がら、米国主導の“西側世界”を切り崩そうとしていくに違いない。この意味で、今回の習近平英国公式訪問

は、中国の対米攻略における“一手”と解釈すべきだと私は考える。 

  2つ目に、西側発の政治制度が構築される過程で歴史的役割を果たしてきた英国という地で、習近平が“中

国がどのような道を進むのか?”という政治の進路について、稀に見るボリューム感で語った点である。 

  ロンドン金融街シティーでの演説で、習近平は次のように主張している。 

 「歴史は現実の源である。近代以降、中国は戦況や動乱に見舞われ、1世紀以上続く苦境に陥った。100年以

上前、中国人は本腰を入れて世界を見始め、国を救い、民を救う道を真剣に模索した。中国民主革命の先行

者である孫中山氏は過去に英国に学びに来ている。立憲君主制、議会制、大統領制などを試したが失敗に終

わった後、中国は最終的に社会主義の道を選んだ。これは歴史の選択であり、人民の選択でもある」 

  中国政治をウォッチしてきた1人の人間として、このセンテンスを読みながら、私は鳥肌が立った。習近平とい

う指導者は、中国は過去において西側発の“民主主義”を試した経緯があり、それが失敗に終わったが故に社

会主義という政治体制を選択したという認識を持っているということであろう。単純な論理的帰結で中国の現状

や展望を語るのは軽率だと考えるが、このセンテンスから、中国共産党がこれから“過去にトライして失敗した

民主主義”の道へ向かって進んでいくというシナリオは希薄であると推察できる。この点は、本連載の核心的テ

ーマである中国民主化研究という意味では“クリティカル”である。 

人権問題については、公式訪問終了に際してブリーフィングをした王毅外交部長が次のように語っている。 

 「人権問題に関して、習近平主席は有力な回答をし、一国の人権状況についてはその国の人間だけが最大の

発言権を持つことを強調した。中国は終始人権の普遍的原則と中国自身の国情とを結合させるやり方を堅持

し、中国独自の人権発展の道を歩み、目覚ましい成功を収めてきた。中国は引き続き平等と相互尊重の基礎

に立ち、英国側と人権分野における交流と協力を強化していきたいと考えている」 

  このセンテンスから浮かび上がるのは、中国が引き続き独自のやり方で人権問題と向き合っていくこと、そし

て英国がそんなやり方を“尊重”することを求めていくことであろう。“尊重”が如実に体現されているケースがチ

ベット問題である。2012年5月、ダライ・ラマ14世と会談をしたキャメロン首相と中国共産党の指導者との往来

は“切断”され、同首相の訪中も実質棚上げされた。その後、「首相在任中二度とダライ・ラマとは会わない」とい

う“立場の変更”を中国側に伝えた同首相は2013年12月に訪中を果たし、今回の習近平英国公式訪問に至

っている。 

香港の政治情勢を安定化させるという戦略的意図も 

  3つ目に、英国との“黄金時代”の演出は、米国に対する牽制という意味合いだけではなく、香港の政治情勢

を安定化させるという戦略的意図も含まれているという点である。 

  今年6月、昨年8月に中国全人代が採択した香港普通選挙改革法案が香港立法会(議会)で否決された。こ

れによって、香港の首長である行政長官を巡る普通選挙は早くても2022年に持ち越されることとなった。法案

採決後、「占中」(Occupy Central)と称される大規模な抗議デモが香港の中心地を覆ったことは記憶に新しい

が、1997年に“祖国返還”されるまで香港の地を統治していた英国は、民主主義や人権保護といった観点から

中国中央政府を批判・牽制することもなく、終始“香港問題は中国の内政”という立場を堅持し、香港問題が引

き金となって英中関係が悪化することを意図的に回避してきた。 

  今回の習近平英国公式訪問によって、その傾向はさらに深まるに違いない。現段階、および近未来におい

て、香港問題が英中関係における“懸案”として、その政治アジェンダにビルトインされる可能性は低いと言え

る。そしてそれが意味することは、香港における中国共産党による支配力の一層の強化と浸透に他ならない。 

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6.MARKETING 

  勃興する中国のサービス業にベンチャーキャピタルも殺到 

陳言 [在北京ジャーナリスト] 2015年10月30日 DOL 

  中国は現在、産業構造を大きく転換する最中にある。製造業、とくに沿海部の製造業は、労働力不足、労賃

の高騰、電力水道費用の上昇などによって、多くの企業が困難に直面している。 

  一方、淘宝(タオバオ)などのeコマース、宅配便などの物流は、中国の津々浦々までネットワークを張り、サ

ービス業は新しい形で速く、大きく成長している。 

配車アプリ、微信が普及eコマースへの投資が急増 

  日本と違ってJRや地下鉄などの公共交通機関がまだ十分普及していない中国では、タクシーがよく使われ

ている。ここ一、二年で海外のアプリを含めて、配車アプリは、都会で会社勤めのほぼすべての人が使うように

なっている。 

  中国既存のタクシーサービスはけっして褒められるものではない。搭乗拒否、タクシードライバーが自分の好

きなラジオ番組を聞き、無線でほかのドライバーと談笑することは、ごく当たり前のことである。しかし、新規に参

入してきた配車アプリによって提供されたサービスは、少なくとも既存のタクシーサービスとは違い、少しは近代

都市のサービスとなってきた。 

  このほど、中国消費者報など消費者権利擁護を掲げている31団体が共同で「配車アプリのサービスと消費

者権利の保護」に関するアンケート調査を実施した。その結果、配車アプリは消費者に歓迎されており、65.5%

以上の回答者が利用経験を持ち、8割近い回答者が利用したいと答えた。7割を超える回答者が配車アプリサ

ービスに「満足」、「非常に満足」と答えた。 

  配車アプリのほかにも、騰訊(テンセント)傘下の「微信」(WeChat、日本のLineに相当)は、中国で大流行し

ている。昨年年末の公式統計ではユーザーはすでに7億人を超え、そこからいろいろなサービスも生まれてい

る。配信アプリはもちろん、友人へのお金の振り込み、公共料金の支払いなども微信を使って行える。 

  微信も非常に収益が高い。市場研究公司Activateがこのほど発表したデータによると、微信はユーザー1人

から7ドル(約845円)の収入を得ており、これは世界のSNSの中で前例のない高水準だ。韓国のカカオトー

クは4.24ドル(約512円)、日本のLineは3.16ドル(約381円)だという。 

今の中国ではこうした新しいサービスが投資を引き付けている。10月20日には、中国最大の検索エンジンで

ある百度(バイドゥ)が2億ドルで「波羅蜜グローバルショッピング」という名のベンチャー企業を買収した。 

  波羅蜜は2015年3月に設立され、主に日本や韓国にバイヤーを派遣・駐在させて、製品を直接買い付け中

国国内でアプリを通じて通販する。商品の種類は中国人が海外でよく買う美容・スキンケア品、乳幼児用品、ス

ナック類で、販売価格は買付時の「店頭価格」であると称している。中国の消費者を安心させるために、海外に

駐在するバイヤーが買い付ける過程の実況中継動画を加えることまでしている。 

  百度はそこから新しい収益を獲得しようとしている。もちろん、波羅蜜のほかに同様のネット通販は、淘宝や天

猫(TMALL)、そして京東などがあり、波羅蜜以上に、先行するそれらのeコマースは成功している。 

「蜂の巣式変革」で驚きの販売成績、ベンチャーキャピタルの寵児に 

  微信、eコマースの発展は、小売業界に巨大な変化をもたらしている。最近注目される事例としては、30年の

歴史をもつ家電小売り企業である国美集団が内部コード「蜂の巣式変革」と呼ばれる改革を始めたことである。 

  蜂の巣式変革の最も典型的なモデルは、国美「ミクロ店」計画で、国美の従業員が微信で店を開き、微信の

「友達グループ」の顧客群の需要を正確に把握し、そうした需要情報を国美集団のIT プラットフォームからビッ

グデータ分析部門に伝え、分析結果はサプライチェーンのプラットフォームで共有され、「(1日の勤務時間であ

る)8時間外の小売ネットワーク」を構築するものである。 

  今年の9月17日、国美はかつての大量の広告宣伝という手法を捨て、ファン顧客をひきつける手法をとり、

10万の「働き蜂(ミクロ店)」を立ち上げ、さらに30万の全従業員を動員し、「9・17ファン感謝デー」イベントを行

った。この9月17日には、国美の全国の1714のオフライン小売店の販売総額が42億元という史上最高額を

記録し、オンラインの販売額も前年同期比468%増となり、モバイル端末での販売も前年同期比680%増で、モ

バイル端末のオンライン売上全体に対する割合はすでに52%になっている。 

  サービスの可能性は投資家の注目を集めている。一財ネットの10月20日の報道によると、10月19日に

KPMGコンサルティング株式会社が発表した世界ベンチャーキャピタルファンド投資報告書によれば、中国の牽

引で2015年1月から9月にかけて、ベンチャーキャピタルの出資を獲得した会社の総額は984億ドルとなり、

史上最高を更新したことが明らかになった。 

このKPMGインターナショナルと、ベンチャーキャピタルデータベースのCB Insightsが共同発表した世界ベン

チャーキャピタルファンド情勢の四半期報告によれば、第3四半期だけで、世界中の投融資額は前年同期を

82%上回り、376億ドルに達している。なかでもアジア、特に中国が増加を推進する主な原動力となっている。

今年の7月から9月の間、中国の会社はベンチャーキャピタルから96億ドルの投資を得ており、これは前年

同期比315%増加となる。 

  その中で、中国版ウーバーの「滴滴快的」、中国のフードデリバリー最大手Ele.me(餓了麼)などを代表とする

インターネット企業が今年獲得した融資額は、次々に記録を更新している。「滴滴快的」は7月に20億ドルの

融資達成を発表し、インターネット企業の32年来の最大の単独融資を記録した。続いて、9月初めには、その

「滴滴快的」が、新たに約30億ドルの融資を獲得したと発表した。旅行・観光予約サイトの「同程」も7月末に、

万達グループからの融資した60億元を獲得した。 

消費嗜好の大きな変化で浮かぶ産業、沈む産業 

  10月に入ってから、中国のネット上では『想像をはるかに超える中国の10年後』という記事が人気を博してい

る。 

  10年後の中国の消費は「収入と引き換えに休暇を手に入れる」段階に入ると予想されている。2015年から

2025年までに45歳から49歳の消費人口がピークを迎える。すでに民衆の消費支出において医療や金融サ

ービス、保険が占める割合は絶えず高まってきているが、休暇に関連したサービス、レジャー、体験型の消費

は今始まったばかりだ。 

  今後10年間で、もし中国で平均約7%のインフレ率が続くとするならば、2015年の100元は2025年には48

元ほどの価値しかないことになる。それゆえ、今多額の現金を所有することはとても危険だ。今後10年間で不

動産企業全体の90%がなくなると見られ、収入対比の価格で言えば、10年後の中国で最も安い物は住宅にな

るかもしれない。 

  鋼鉄や石炭もみな過剰生産能力の解消という過酷な問題に直面し、鋼鉄を扱う企業は新たな閉鎖と操業停

止の波に飲まれることだろう。そして、スマート化された機器やその他のハイテク製品が、より広い分野およびよ

り高いレベルで人力による労働に取って代わられるにつれて、人材の評価基準はいっそう厳しくなり、人材過多

となる業界や分野が現れる一方で、人材不足は減少していくと思われる。 

  イノベーションによって、中国のサービス業は今後も大きく変化し、産業自体も変貌していくであろう。 

日本製品をアプリで爆買いできる中国EC企業の急成長が止ま

らない莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] 【第264回】 2015年10月29日 DOL 

  数ヵ月前に、浅草のあるマンションの一室のドアを叩いた。そこにオフィスを構えているネットショッピング会社

を訪問するためだ。 

  室内に入ると、普通の3LDKの住宅をオフィスにしていることがすぐにわかった。がらんとした室内の窓際に

数人が座って作業している。壁の一角に中国系のネットで売れ筋と言われる商品が無造作に置いてある。応接

室も安物の机と椅子とホワイトボードだけが置いてある。1995年、私が事務所を立ち上げたときの光景を彷彿

させた。 

  その会社の名はbolomeだ。中国語では波羅蜜となる。明らかにその発音を念頭にして考案した中国語社名

だ。代表者の陳少春氏は在日中国人社会で知られていた「小春論壇」というサイトを作った創設者で、Ctrip(携

程網)ホテル事業部の日本法人元代表も務めていた。社員数は20名ほど。 

動画配信アプリを使って化粧品が日本と同じ値段で買える 

  波羅蜜とはパラミツのことを言う。「ジャックフルーツ(Jackfruit)」とも呼ばれる。インド原産の常緑高木で、果

実は40kgにもなる巨大なものだ。熱帯地域でよく栽培されている。東南アジア諸国を訪れると、仏教寺院に植

えられているパラミツの巨大な果実が幹からぶら下がっている光景を目にする機会がよくある。この会社はこの

熱帯フルーツの名前を社名にした。 

  食べ物を社名やサイト名にすることは中国ネットビジネス分野ではよく見られる現象の一つだ。その一例は動

画専門の「土豆網」(ジャガイモ・ネット)だ。 

  実はその少し前に、bolomeの上海拠点も訪問した。私の母校である上海外国語大学の近くにある同拠点の

オフィスはジムなどが集まる一角にある。間口が狭く、サインなども質素なオフィスだが、室内は奥行きが深い。 

日本の薬局にいるような臨場感で購入できる 

  大学生が起こしたベンチャー企業を思わせるその粗削りなところに、私は興味を覚えた。そこで働いている社

員は70名ほどだという。 

  bolomeは中国にいながら日本製品を爆買いできる越境ECアプリとして、2015年2月に立ち上げられ、7月

にサービスを開始。動画配信サービスを提供しながら、越境B2Cを手掛けている。 

  その売りの一つは主に日本の化粧品や健康食品などの商品を日本の店頭価格と同じ価格で販売しているこ

とだ。動画配信サービスを提供する形で、消費者に買い物現場の臨場感を与えている。それはbolomeのEC

アプリの大きな特徴の一つとなっている。 

  同社副社長が中国のメディアに明らかにしたことによれば、一日の注文数は今年の10月にはすでに1万を

超え、客平均単価は500元以上、という。 

会社設立からわずかで巨額の出資が集まっている 

  しかし、日本的に見れば、まだよちよちと歩き出したばかりの幼児のようなこの会社に、すでに数回も外部から

大きな資金が流れ込んでいる。 

  今年6月に、bolomeは韓国LGグループ系のLB Investment社、中国のChengwei Capital(成為創業資

本)、シンガポールのVickers Capital(偉高達創投)から総額1000万ドルの資金調達に成功している。 

この10月26日、bolomeはさらに3000万米ドルの調達を発表した。Baidu(百度)、広東省深?に拠点を置く

Share Capital Partners、韓国のNeopluxとKB Investment、名称非開示の中国企業1社などはすでに同社の

株主となっている。 

  会社設立からの8ヵ月で総額4300万ドルを調達しており、短期間での調達額の大きさという観点で見ると、

2010年に会社設立から8ヵ月で総額4100万ドルを調達した携帯電話製造会社のXiaomi(小米)を上回ってい

る。 

  今回の資金調達の実現前に、すでにいろいろな噂が流れ出ていた。 

  中国国内最大のeコマースサイトであるアリババコム(阿里巴巴)がおよそ1億3140米ドルを出そうとした

が、検索エンジンの百度(バイドゥ)も買収に大きな関心をもっており、アリババを遥かに上回る2億米ドル出

す、といったのだ。 

  百度もすでに数年前からeコマースの分野でずっと領土拡大を狙っていたが、楽天との提携をはじめ、連戦

連敗してきた。それでも、eコマース分野のすさまじい成長に魅力を覚え、このほど、騰訊(テンセント)や万達と

提携しアリババに対抗する「騰百万」というO2Oのプラットフォームも発表した。大金をbolomeに注ぎこむこと

も、eコマースに再度挑戦する百度の意志を表していると思う。 

  Bolomeの創立者の一人である張振棟氏は以前、モバイル広告プラットフォーム・プロバイダ UUCUN(悠々

村)を立ち上げた実績がある。 

  その悠々村は2013年、百度に5000万米ドルで買収された。2年後の2015年に、張振棟氏が百度を去り、

次なるビジネスとしてBolomeの創立に加わった。こうしたいきさつもあったから、百度はbolomeへの出資につ

ながったのである。 

  伝統的な販売ルートとして知られているデパート、スーパー、ショッピングモール、商店街のいずれもいまや非

常に苦しい状態にある。モバイルライフになれた若い消費者はますますネットショッピングへと走っていく。 

  こうしたビジネス環境の変化も中国のネット会社をeコマースの方へ走らせている。しかし、生き残れるのはい

ったいどのような会社なのか、まだ回答が出ていない。 

ゼンショー、独自ポイント  すき家などグループ3000店  

2015/11/3 日本経済新聞  電子版 

  外食最大手のゼンショーホールディングス(HD)は2016年1月、グループ共通のポイントサービスを導入す

る。傘下の牛丼、回転ずしなど3千店で前払い式の電子マネー機能付きカードを使うと、利用額に応じてポイン

トを付与する。将来はグループの食品スーパーでも使えるようにする。外食各社は食材費や人件費の上昇で単

純な値下げが難しい。ポイントサービスなど集客策の模索が続いている。 

 

  ポイントサービス「ゼンショー・クーカ」を、11月4日から関東の一部店舗で試験的に始める。来店客は専用カ

ードに千円から上限10万円までくりかえし入金する。同社の店だけで使える電子マネーとして支払い、200円

ごとに1ポイントを取得できる。100ポイントためると、次回の来店時に100円分の支払いに充てることができ

る。ポイント利用時には専用サイトで個人情報を登録して会員になる必要がある。 

  年明けから牛丼店「すき家」、回転ずし「はま寿司」、ファミリーレストラン「ココス」、焼肉店「宝島」の計約3千店

に導入する。すき家は学生や会社員の利用が多く、ココスやはま寿司は家族客が中心だ。チェーンごとに異な

る客層を、共通ポイントによってグループの他店舗にも誘導する考えだ。 

  来年4月以降は和食のファストフード店「なか卯」などに広げ、最終的に約4800店あるグループ全体への導

入を目指す。同社は食品スーパーも関東に約60店を展開している。ポイントは家族で共有できる仕組みで、将

来はスーパーでためたポイントをグループの飲食店で使うといった利用方法で顧客を囲い込む。 

  同社傘下の飲食店には毎月のべ5千万人程度が訪れており、独自の電子マネーカードやポイントサービスで

詳しい顧客データの取得や市場分析ができると判断した。カード情報を分析する専門子会社も立ち上げた。 

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7.MESSAGE 

イスラム過激派に拉致された女性の感動手記―望的な状況の中

で「天空の家」を打ち建てた秋元 由紀 :HONZ 2015年10月31日  TK 

460日間にわたった壮絶な体験でどう生き延びたのか(写真 :AndreyKr / PIXTA) 

2008年8月、カナダ人女性がソマリアでイスラム過激派に拉致された。身代金目的で監禁され、繰り返し拷問

や暴行を受ける悪夢のような日々を過ごしたのち、2009年11月に解放される。460日間にわたった壮絶な体

験を本書『人質460日』で語るのはアマンダ・リンドハウト。拉致されたときは27歳だった。 

アマンダはなぜソマリアに行ったのか 

上の画像をクリックするとHONZのサイトへジャンプします 

アマンダは「使命感を持って戦場に行ったジャーナリスト」ではない。旅慣れているほかはごく普通の女性で、危

険を承知でソマリアに行ったのも何か高尚な考えがあってではなく、単に自分のしたいことをするために行った

のである。ソマリアの状況をろくに知らず、安易に渡航を決めるくだりは読んでいるこちらがはらはらする。 

しかし背負うものがなかったからこそなのか、監禁されて自由に動けなくなり、精神的にも追い詰められてから

のアマンダの語りは澄みきり、力を増していく。特に原書のタイトルでもある<天空の家>を建てる場面は圧巻

だ。自分の弱さを取り繕わず、ありのままを語るアマンダの声はまっすぐ心に響いてくる。 

カナダの田舎の小さな町で育ったアマンダはいわゆる複雑な家庭環境の出身で、幼いころ母親が同棲相手か

らたびたび暴力を振るわれていたことや、そんな家庭に漂っていた重苦しさを鮮明に記憶している。家も貧しく、

アマンダは近所のゴミ収集箱から瓶や缶を集めて回収所に持って行き、小銭と交換してもらっていた。少し貯ま

ると町のリサイクルショップで『ナショナル・ジオグラフィック』誌のバックナンバーを買う。美しい異国の写真は、

いつか自分が行く別世界への入り口だった。自分のほんとうの居場所はこの家ではない、どこか別にあるの

だ。 

19歳で親元を離れ、カルガリーでウェイトレスとして働き始めた。初めてまとまった額のカネを手にすると、迷う

ことなく『ナショナル・ジオグラフィック』の世界を見に行こうと決める。それからは、カルガリーで働いてカネを貯

めてはバックパッカーとして数カ月間の旅に出ることを繰り返し、7年間で50カ国ほどを回った。 

→次ページつらい状況下に置かれた時、アマンダはどうしたのか 

1 2 →  

あくまで自分の好奇心を満たすために旅をしていたアマンダだが、アフリカでちょっとした転機が訪れる。エチオ

ピアで会った駆け出しのオーストラリア人カメラマンに触発され、自分も珍しい土地の写真を撮れば売れるので

はないかと思いついたのだ。このときは、職業としてフォトジャーナリストを選んだというよりは、次の旅の資金を

得る手段として写真を売ろうと考えたのだった。 

そんな軽い動機が、のちの人質事件につながっていく。なにしろ、写真はそう簡単に売れないのだ。買い手を探

すうちに見えてきたのが、需要があるのは戦場の写真であること。それなら戦場に行ってこようと思い立ったア

マンダは、まずイラク、それからアフガニスタンに滞在し、次にソマリアに着目した。 

内戦が続くソマリアでは、とくに欧米人が武装組織に身代金目的で拉致される危険が非常に高かった。国際援

助団体も多くが撤退し、外国の記者もほとんど入っていない。この時点で故郷の小さな町の新聞(発行部数1

万3000部)にコラムを週一で連載するのが唯一の仕事だったアマンダにとって、競争相手がいないのは魅力

だった。短期で滞在し、何か大きな記事を大手メディアに売って仕事を軌道に乗せよう、そんなふうに考えたの

である。 

しかしソマリアに入って3日目、国内避難民キャンプに行く途中でイスラム過激派に拉致され、苦難の日々が始

まった。食事は日に2度、少しだけで、外にはめったに出られない。待遇の改善を期待してイスラムに改宗した

がたいした効果はなく、やがて監視役の少年にレイプされるようになる。 

2009年1月に脱走を試みてから状況はいっそう悪化した。足枷をはめられ、レイプに加えて拷問も始まった。

与えられる水や食べ物の質もさらに落ち、身体はぼろぼろ、窓も閉め切られて陽の光を見ることもなく、まさに

暗黒の毎日。そんなとき、アマンダは心の中に階段を作る。 

苦しいのは体だけ、それ以外の自分は大丈夫 

 

“階段の先にはいくつもの部屋が見える。天井が高く、大きな窓がついた風通しのいい部屋で、涼しいそよ風が

入ってくる。部屋を抜けると、光とともに別の部屋があらわれ、そうするうちに、いくつもの廊下と階段を備えた一

軒の家ができあがった。(中略)心のなかの広々とした空に、わたしが暮らす場所ができあがった。(中略)<天

空の家>では、わたしは安全で守られていた” 

幼いころ『ナショナル・ジオグラフィック』を見て現実のつらさから自分自身を切り離したのと同じように、くじけそ

うになると<天空の家>に行き、苦しいのは体だけ、それ以外の自分は大丈夫、と言い聞かせたのである。そ

うして生きる意思をなんとかつなぎ、とうとう解放の日を迎える。 

自由の身になったのを実感できるまでには時間がかかった。本書執筆中もアマンダはさまざまなトラウマに苦し

んでいたという。しかし早くも2010年にはソマリアやケニアの女性の教育支援などを行なう非政府団体を設立

し、翌11年にはソマリアを再訪問してもいる。人質としてひどい目に遭った女性では終わるまい、そんな思いが

伝わってくる。 

本書は人質の体験記であると同時に、ひとりの人間が絶望的な状況のなかで、自分を人間たらしめている力を

見い出していくストーリーでもある。静かな力に満ちた、おすすめの一冊だ。  

【上海凱阿の呟き】


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