上海漢院顧問のつぶやき

目次 

1.特集   

【中国関連】 

【日本関連】 

【アジア関連】 

【米国・北米関連】 

【欧州・その他地域関連】 

【世界経済・政治・文化・社会展望】 

2.トレンド 

3.イノベーション・モチベーション 

4.社会・文化・教育・スポーツ・その他  

5.経済・政治・軍事 

6.マーケティング 

7.メッセージ 

  【上海凱阿の呟き】 

記事 

1.今週の特集 

【CHINA関連】 

中国の貿易額5カ月連続減  7月8.2%、輸入不振続く 

2015/8/8 日経Net 

  【北京=大越匡洋】中国の貿易額の縮小が続いている。中国税関総署が8日発表した7月の貿易統計による

と、米ドルベースの輸出と輸入を合わせた貿易額は前年同月比8.2%減り、5カ月連続で前年水準を下回った。

国内景気の減速で輸入の減少に歯止めがかからないうえ、輸出も勢いを欠く。中国の需要の鈍化は原油など

国際商品価格を下押ししている。 

  7月の輸出額は8.3%減と2カ月ぶりに前年水準を下回った。輸入額も8.1%減り、9カ月連続で前年より落ち

込んだ。国内外の需要は鈍く、中国景気の下振れ圧力は依然として大きい。7月の輸出額から輸入額を差し引

いた貿易収支は430億ドル(約5兆3400億円)の黒字だった。 

  1~7月累計の輸出は前年同期比0.8%減だった。輸入は14.6%減と2桁のマイナス幅となっている。輸出入

を合わせた貿易額は7.2%減となり、中国政府が今年の貿易額の伸びの目標としている「6%前後」の実現は

ほぼ絶望的だ。 

  主な貿易相手別にみると、1~7月の日本との貿易額は11.0%減と2桁の減少幅だった。欧州連合(EU)も

7.5%減と振るわない。一方、米国とは2.8%増、東南アジア諸国連合(ASEAN)とは1.4%増と、わずかにプラ

スだ。 

減少続く中国の外貨準備、資本流出を巡る論争に火 

強気派vs弱気派、流出の規模と原因と経済へのリスクは? 

2015.8.7(金)    Financial Times   JBPress  (2015年8月3日付  英フィナンシャル・タイムズ紙)

中国の外貨準備高が4半期連続で減少し、ピーク時から3000億ドル近く減った  

  中国の外貨準備高が4四半期連続で減少し、資本流出に対する警鐘が新たに鳴り響いてい

る。  

  中国経済ウオッチャーにとって、資本移動の解釈は長年、人気のゲームだった。 

  「ホットマネー」流出に対するあるアナリストの見解は、多くの場合、世界最大の経済に対するより

大局的な立場を示す。 

資本逃避か資本規制緩和の兆候か 

  中国の景気減速が悪化しており、膨れ上がる債務と無駄の多い投資から来るリスクが中国を金

融危機に向かわせていると見るアナリストにとっては、すべての新データの背後に資本逃避の懸念

が潜んでいる。 

  彼らは資本流出のことを中国に対する信頼感低下の兆候と見なし、資本流出が国内経済から流

動性を奪い、企業や地方政府による資金調達を難しくすると警告している。 

  一方、比較的強気なアナリストにとっては、緩やかな資本流出は中国が資本規制を緩和し、外貨

準備の積み増しに対する重商主義的な執着を捨てつつあることを示す兆候だ。 

  こうしたアナリストは、国内の流動性に対する懸念には正当な理由がないと考えている。中国人民

銀行(中央銀行)は、かつて外国からの資本流入が生み出していた流動性に取って代わり、マネー

サプライを拡大させる新たなメカニズムをたくさん持っているからだ。 

  ここへ来て、米連邦準備理事会(FRB)が利上げの準備を進め、中国株式市場が急落に見舞わ

れていることから、資本移動のトレンドがますますその重要性を増している。 

  米国の利上げによって中国や他の新興国市場から資本が流出する可能性が高く、それが中国

の株価に一段と大きな下落圧力をかける恐れがある。  

  「資本流出の増加傾向は、対外投資を促進する政策措置と、安定した国内投資機会の欠如を

反映しており、これに加えて、株価のボラティリティー(変動)と成長見通しに関する懸念に起因する

短期的な流出増加がある」。国際通貨基金(IMF)でかつて中国部門のトップを務めたエスワー・  プ

ラサド氏は強気派、弱気派双方の見方を認め、こう語る。  

  中国の外貨準備高は2014年6月末に3兆9900億ドルの過去最高額を記録してから、2990

億ドル減少した。 

  アナリストらは、中国が未曾有の規模の資本流出を経験したとの見方では、概ね一致している。 

  しかし、その規模と原因、中国経済に対するリスクに関しては意見が割れている。 

第2四半期だけで2000億ドルの純流出? 

  チーフ為替ストラテジストのロビン・ブルックス氏(ニューヨーク在勤)が率いるゴールドマン・サックス

のアナリストチームは、中国の純資本流出が今年第2四半期だけで約2000億ドルに達したとの

試算をまとめ、警鐘を鳴らした。 

  「資本流出はかなりの規模になり、今や、近年見られたどんな流出をも大きく上回っている」とブル

ックス氏は書いた。 

6月のピークから急落した中国株式市場の動きも、資本流出への懸念を強めている  JPモルガン

も中国の資本流出のデータに顔をしかめている。 

  ロンドン在勤のニコラオス・パニガーゾグロー氏が率いるストラテジストたちは、中国の資本流出が

過去5四半期の合計で5200億ドルに達したと試算している。 

  「中国における現在の資本流出のエピソードは、過去の例と比較して、より持続的で深刻なエピソ

ードだ」と彼らはリポートに書いた。  

  しかし、中国に拠点を構える複数のエコノミストは、ゴールドマン・サックスとJPモルガンは、微妙

な要素を説明し切れない試算を利用していると警告している。  

  パニガーゾグロー氏のリポートの数日後に公表されたリポートで、同じJPモルガンの中国担当チ

ーフエコノミストの朱海斌氏は、試算がかさ上げされていると確信するに至ったいくつかの理由を挙

げ、遠回しに同僚の試算を否定した。 

  理由の1つは、中央銀行と民間部門の間における中国の外貨保有の変化だ。最近まで、中国

人民銀行は中国国内のほぼ全ての外貨を公的な準備金として保有しており、銀行、企業、家計は

外貨をほとんど持っていなかった。 

  これは外国為替市場での中央銀行の介入によるところが大きかった。ピーク時には、中国人民銀

行は人民元上昇を抑えるために月間数億ドルの買い入れを行っていた。 

  一方で中国の銀行や企業は、保有するドルを喜んで中国人民銀行につかませた。企業や銀行

は、2005~13年の緩やかだが着実な人民元上昇から恩恵を受ける立場にあったからだ。 

外貨保有が中央銀行から民間にシフト 

北京の中国人民銀行〔AFPBB News〕 

  この状況が昨年一変した。人民元が通年ベースで二十数年ぶりの大幅下落に見舞われたから

だ。 

  今では、支払いをドルで受け取る多くの中国輸出企業は、人民元を買わずに、そのままドルを保

有している。 

  これらのドル資金はもう、中央銀行の国庫を膨らませることはないが、中国国内にとどまっている

ため、「流出」と見なされるべきではないとエコノミストらは話している。ランキング一覧  

  朱氏は「企業のバランスシート調整」が、過去4四半期の資本流出とされる金額のうち2050億ド

ル分を説明すると試算している。「中央銀行は外貨資産の保有高を非政府部門に移すことを目指

している。その意味では、企業のバランスシート調整は政策立案者にとって望ましい結果だ」と同氏

はリポートに記している。  

  エコノミストらは中国からの穏やかな資本流出が続くと考えているが、ほとんどのアナリストは警戒

する理由はないと見ている。 

  アナリストらは、中国の外貨準備高は今も断トツの世界一であり、資本流出の大部分は、パニック

に陥った投資家が資金を引き揚げようとする動きではなく、中国政府による意図的な政策選択によ

るものだと指摘する。 

  最後に、中国は資本移動を大幅に緩和したものの、残っている規制はまだ、投資家が外国へ多

額の資金を送金する能力を厳しく制限していると彼らは指摘する。 

  「流出に対する懸念は誇張されている。悪化するどころか安定した第2四半期の流出について

は、特にそうだ」と、UBSの中国担当エコノミスト、王濤氏は述べている。  

見直される「満鉄調査部」=農村報告100巻出版へ―抗日70年記

念も背景・中国時事通信 8月8日(土) 

  【北京時事】戦前日本の国策会社「南満州鉄道株式会社(満鉄)」の「頭脳」として調査・研究活動を行い、優れ

た中国情報を集めた「満鉄調査部」が中国に残した膨大な農村報告を中国語に翻訳し、出版する事業が本格

化していることが分かった。 

  事業を展開する華中師範大学(湖北省武漢市)の複数の関係者は取材に「10年以内に100巻を出版する計

画で、全部で1億字に上る」と明かした。中国国内では「旧日本軍の侵略過程で行われた」と批判の強かった

満鉄調査部の「成果」が見直される動きが強まっている。 

  満鉄調査部は、旧日本軍の中国進出の参考資料として、中国各地の農村でフィールドワークを行い、村民ら

からの聞き取りをまとめた大量の報告書を作成した。同大中国農村研究院は「20世紀前半の中国農村社会を

理解・研究するための貴重な資料」として、中国各地の档案館(史料館)に眠る満鉄調査部の農村調査報告の

翻訳・出版を決めた。黒竜江省档案館と共同で編さんした「満鉄調査」の第1巻は今年1月、中国社会科学出

版社から発行された。華中師範大では約50人が翻訳作業を進めており、年内にさらに5巻程度を出版する計

画。 

  同研究院院長の徐勇教授は取材に対して「満鉄調査部の農村調査はかなり大規模なもので、われわれは当

時の事情を理解した上で、現在農村にどんな変化が生じているか把握できる」と指摘。現在の共産党・政府にと

って最重要課題の一つである三農(農村・農民・農業)問題の把握のため、満鉄資料を政策・研究両面で活用し

たり、調査方法を参考にしたりする狙いもある。 

  一方、「満鉄調査」第1巻では「満鉄調査は、日本軍国主義が侵略戦争発動のため準備したもので、われわ

れは断固としてそれに賛同できない」とした上で、「読者に日本軍国主義の中国侵略の本来の姿をはっきりさせ

る」とも記述している。 

  満鉄調査部の農村調査に詳しい宇都宮大学国際学部の内山雅生名誉教授は「満鉄の調査報告は現在の中

国農村政策・研究にとって価値のある資料だが、(今年が)抗日戦争勝利70年という中で、出版が可能になっ

たとも言える」と解説した。   

中国で汚職捜査受けた公務員らの自殺続出、当局が対策発表  担当

者の責任追及FOCUS-ASIA.COM 8月10日(月) 

 

中国の最高人民検察院は6日、汚職の疑いで当局が捜査中の公務員などが自殺した場合、捜査に当たった担

当者の責任を追及するといった8項目の対策を発表した。ここ2年間で汚職などで捜査を受けた公務員らが自

殺するケースが相次いだことを受けての対応とされる。シンガポール・聯合早報網が9日伝えた。 

 

米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」の報道によると、8項目の対策の中には「違法な捜査や無責任な対

応で容疑者を脱走、負傷、自殺などさせた担当者は停職の上、法に基づいて処分する」との内容が含まれる。 

 

中国では今月3日、重電大手の国有企業、中国第一重型機械の呉生富董事長がオフィスで自殺した。同社は

汚職がらみの捜査を受けており、これが自殺の原因との報道も出ている。 

 

仏AFPは「習近平国家主席の主導で腐敗撲滅キャンペーンが進む中、多数の汚職が指摘されているが、一部

には自殺という形で刑事的追求から逃れ、違法な所得を没収されることを避けようとする人もいる」と報じた。 

 

中国メディア・財新網は先頃、2012年以降、今年1月までに同国の党や政府の関係者ら少なくとも50人が「正

常でない形」で死亡したと報道。こうした「正常でない死」が増えていることを受け、当局は今年初め、「党員や幹

部層が自殺した際には検察などが家族や関係者らに対して調査を行ったかどうかを調べる必要がある」と求め

ていた。 

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【JAPAN関連】 

日本を思う70回目の夏  憲法とは、安保とは2015/8/10日本経済新聞電子版 

 

  まもなく戦後70年を迎えます。第2次世界大戦後、日本は憲法9条で「戦争放棄」を掲げて国際社会に復帰

し、今日の繁栄を築き上げました。国会では今、政府がこれまで認めてこなかった「集団的自衛権」を使えるよう

にする新たな法案が議論されています。そこで今回は、憲法が果たす役割と、東西冷戦終結から四半世紀を経

て、新冷戦時代に入ったともいわれる戦後世界の歩みを考えます。 

■安保法制の議論、国民の理解深まっていない 

  まず、憲法の役割について整理してみましょう。憲法とは国家の最高法規のこと。様々な法律の一番上に位

置する規範のような存在です。世界で民主主義の精神が育まれる過程で、権力者の力を制限し、国民の権利

を保障するルールとして発展してきました。 

  権力者は、憲法の規定に従って国家を統治しなければなりません。たとえば立法、行政、司法の三権分立で

すね。国民は憲法に基づき教育、納税、勤労の義務を果たし、憲法の下で定められた法律を守る責任がありま

す。 

  このように、憲法の下で国家を運営する考え方を「立憲主義」といいます。ただし、憲法の上に党が存在してい

る国もあります。代表例は中国と北朝鮮です。党は憲法に縛られないのです。 

  日本の憲法が世界から注目されるのは、自衛のための手段を除いて戦争の放棄を表明してきたからです。 

  今、争点になっている安保関連法案のポイントは「自衛権」です。自衛権には「個別的」と「集団的」の2つの考

え方があります。わかりやすく言うと、個別的とは自国が攻撃された際、防衛のために反撃できる権利。集団的

とは自国が攻撃されていなくても、仲のよい国が攻撃されたり、危機に陥ったりした場合に共同で反撃できる権

利です。 

  集団的自衛権は国連憲章でも加盟国に認められていて、北大西洋条約機構(NATO)軍などがその代表的な

ケースです。ただし、日本の歴代内閣は、権利はあるけれども、「現憲法の下では行使はできない」という1972

年の政府見解を基準にしてきたのです。 

安保法制を巡る参院審議で答弁する安倍首相(4日)=共同 

  政府がこうした見解を方向転換したのは、2014年7月のこと。安倍晋三政権が憲法解釈を変え、集団的自衛

権を容認する閣議決定をしたのです。安保環境の変化に伴い「必要最小限度の自衛のための措置として憲法

上許容される」と結論づけました。 

  さらに、59年の最高裁判所による「砂川事件判決」を補強材料にしています。裁判では米軍基地に入り込ん

だ日本のデモ隊の刑事責任を巡り、旧安保条約に基づく米軍基地の合憲性が争点になっていました。最高裁

は当時、「憲法は自らの存立を全うするために必要な固有の自衛権を否定していない」と判断していた、という

理由です。 

  衆院で安保関連法案を審議する過程で、多くの憲法学者が「砂川判決は集団的自衛権まで争点になってい

ない。安保法案は憲法違反」と批判しています。これに対し、与党は「憲法の番人は最高裁」と反論。審議は参

院へと移ったのです。 

  これまでの議論を見る限り、残念ながら多くの国民が結論を出せるほど理解が深まっているとはいえません。

「政府が強調する危機とは何か」という疑問や、「日本が戦争に巻き込まれるのではないか」という不安が解消

されていないのです。 

■紛争ない土壌づくりへ外交や協力の積み重ね大切 

ウクライナ問題を巡って、米国とロシアの対立は深まっている(6月、モスクワ近郊で演説するプー

チン大統領)=ロイター 

  では、なぜ安倍内閣は安保政策の見直しを急ぐのでしょうか。日本を取り巻く安保環境が大きく変わり始めた

ことに加えて、同盟国・米国に協力するために、自衛隊の機動力を高め、活動範囲を広げる狙いがあります。 

  ここで現代史を振り返ってみましょう。米国とソ連の首脳が東西冷戦の終結を確認してから四半世紀がたちま

した。米国はその後も、テロとの戦いに膨大な軍事費を投じて財政危機に陥り、おびただしい犠牲者を出しまし

た。オバマ大統領は、米国が「世界の警察官」として国際情勢の安定に貢献する役割を手放そうとしています。 

  たとえば中東です。91年の湾岸戦争を経て、国際テロ組織「アルカイダ」のような米国を攻撃するイスラム過

激派が台頭。イラクの崩壊や、内戦状態に陥ったシリアの間隙を突いて、新たな過激派組織「イスラム国」(IS)

が出現しました。 

  欧州は、ウクライナを巡って深刻な事態に陥っています。ロシアが去年、クリミア半島を編入。親ロシア派とウ

クライナ政府軍との衝突は終わっていません。米国とロシアが軍備拡大に言及し、対峙する緊張状態は“新冷

戦”とも指摘されるようになりました。 

いけがみ・あきら  ジャーナリスト。東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年(昭25年)

生まれ。73年にNHKに記者として入局。94年から11年間「週刊こどもニュース」担当。2005年に独立。主な

著書に「池上彰のやさしい教養講座」「池上彰のやさしい経済学」(日本経済新聞出版社)。新著「いま、君たち

に一番伝えたいこと」(同)。長野県出身。65歳。 

  アジアも決して無風ではありません。尖閣諸島や南沙(スプラトリー)諸島を巡って、日本や東南アジア諸国

と、中国との間でにわかに緊張が高まっています。今や日本もイスラム過激派のテロ活動の対象となってしま

いました。地球規模で第2次大戦後の世界の枠組みが変わろうとしているのです。 

  日本は戦後、米国の強大な軍事力の傘の下で経済大国の地位を築いた面があることも事実です。これまで

自衛隊は湾岸戦争をきっかけに、海外での復旧、補給など、人道的な支援活動の分野で実績を上げてきまし

た。 

  私は、こうした取り組みに加えて、外交や経済協力を通じ、地域紛争や民族対立を生まないような土壌づくり

の努力を積み重ねていくことも大切ではないかと考えます。 

  国民が国際情勢の大きな変化を理解した上で、安保政策を転換すべきかどうか議論の中身をしっかり理解で

きるように、政治家もマスコミも一層の知恵を絞る必要があるのではないかと考えています。日本の戦後を築い

た「憲法9条」の重みを改めて知り、日本のこれからの進路と役割を考える時が訪れているのです。 

首相の応援団、足引っ張り放題2015/8/7 日本経済新聞  電子版 

  またか――。首相の安倍晋三の胸中には、こんな言葉が去来したのではないか。当選2回の自民党衆院議

員、武藤貴也が安全保障関連法案に反対する学生らのデモを「『戦争に行きたくない』という利己的考え」と自

身のツイッターで非難し、波紋を広げた。 

参院平和安全法制特別委で首をかしげる安倍首相(4日午後) 

  7月下旬には安倍の側近である首相補佐官、礒崎陽輔が安保法案をめぐり「法的安定性は関係ない」と発言

し、安倍自身が国会審議で釈明に追われたばかり。6月下旬には、首相の応援団でもある自民党若手議員の

勉強会で、政府に批判的な報道への圧力発言も出た。今回の「舌禍」を起こした武藤がその若手議員の勉強会

のメンバーであることも注目を浴びた。 

■口つぐむ派閥領袖 

  なぜ安倍の側近や応援団からの問題発言がやまないのか。「以前であれば、派閥の領袖や先輩が一喝して

終わりだった」。自民党関係者はこう嘆く。武藤は財務相の麻生太郎が率いる麻生派に所属する。だが、ツイッ

ター発言が浮上した後、麻生や派閥の先輩が早期の事態収拾に動いた様子はない。武藤は今も「発言を撤回

するつもりはない」と公言する。 

  自民党の派閥はかつては若手議員の教育機関としての役割を果たした。しかし、高支持率を背景に政策決

定や人事を「官邸主導」で推し進めた小泉純一郎政権のころから派閥は徐々に力をそがれ、自民党が単独過

半数を握る「安倍1強」のもとでそれは決定的になった。ポスト獲得の思いがちらつくのか、派閥の領袖や中堅

議員が政権の顔色をうかがって口をつぐんでいるようにみえる。首相に近い若手の言動は、問題があったとし

ても抑え込む迫力はもはやない。 

  一方、安倍は当選1、2回の若手議員を自身の応援団として持ち上げる。抑えを失った若手たちは、より過激

な発言で目立とうとしているかのようだ。 

  若手勉強会の報道圧力発言で党から厳重注意処分を受けた議員の一人、大西英男は処分の直後、安保関

連法案で徴兵制の恐れを指摘する報道について記者団に「そう報道をしている一部マスコミは懲らしめなけれ

ばいけない」と再び発言した。勉強会についても「問題があったとは思えない」と語った。2度目の厳重注意処分

を受けたが、党執行部の指導力に疑問符がつく結果となった。 

  こうしてみると、安保法案の審議にのぞむ安倍を背後から鉄砲で撃っているのは、実は安倍自身が作り出し

た党内構図の産物なのかもしれない。 

■「自民党、感じ悪いよね」 

  とはいえ、最近ではそうした構図にも変化の兆しがみえつつある。支持率の急落で安倍の足元がぐらつき始

めた隙をつき、今まで沈黙を続けていた幹部らが少しずつ安倍体制の批判を始めている。 

  7月15日、衆院平和安全法制特別委員会での安保関連法案の採決時。民主党議員らに囲まれ騒然とした

委員長席の周囲では「自民党、感じ悪いよね」と書かれた大量のカードが揺れた。地方創生担当相の石破茂が

若手勉強会の報道への圧力発言に苦言を呈したフレーズだ。その特別委の終了後には、委員長である浜田靖

一が法案が10本一括だったことについて「いかがなものか」と疑問を呈した。安倍1強体制は決して盤石とは

言えない。=敬称略 

安倍首相が内閣支持率挽回に打つ「秘策」,8月11日以降にやっ

て来る「3つの試練」 かんべえ(吉崎 達彦) 双日総合研究所副所長 2015年08月07日  TK 

前回の自民党総裁選は2012年9月14日告示、26日投開票。この時は5人も立候補。安倍首

相は当時右端に。自民党はこの時、野党だった(日刊スポーツ/アフロ) 

「百里の道を行かんとするものは、九十九里をもってその半ばとすべし」。 

柄にもなくこんな言葉が脳裏に浮かびましたな。ハワイ・マウイ島でのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)閣

僚会議(7月28日~8月1日)が、実質合意抜きに終了した時のことである。 

TPP実質合意ならず、オバマ大統領は激怒した?交渉から戻った甘利明TPP担当相は、すぐに官邸を訪れて

報告している。このところ逆風続きの安倍首相としては、「これが合意していれば、わが内閣の成果だと喧伝で

きたのに…」と内心悔やみつつも、甘利さんを頭ごなしに叱責したりはしなかっただろう。 

それに引き換え、おそらくオバマ大統領はフロマン通商代表に雷を落としたのではないだろうか。オバマさんは

滅多に声を荒げない紳士であるけれども、仮に筆者が大統領であれば、きっとこんな風にどやしつけている。 

「お前が大丈夫だと言ったから、閣僚会議をハワイでやらせたんだぞ!」 

「地元でこんな醜態をさらしてしまって、俺の面目は丸つぶれだ」 

「国際会議を主催すると、カネもかかるんだぞ」 

「このままでは合意ができたとしても、俺の任期中にTPP法案の議会批准が間に合わなくなるじゃないかあ

っ!」 

思えば6月24日に米国議会でTPA(貿易促進権限)法案が通ったら、途端に交渉妥結への楽観ムードが流

れ始めた。「日米が合意すれば、後は皆ついてきてくれる」とタカをくくったのであろう。日本もまったく同様だが、

それまでの駆け引きでヘトヘトになって、日米以外の10カ国の事情をよく考えていなかったのではないか。 

ところが他の交渉参加国にも意地があり、国内事情があった。カナダは秋に総選挙を抱えていて、マレーシアも

政情が不安定。そしてFTA先進国たるニュージーランドには、「このままでは理想と程遠いものができてしまう」

という焦りがあった。 

そうでなくとも小国の側は、知的財産権や投資ルールなどでTPPによる不利益がどうしても多くなる。その分、

市場アクセスなどのメリットがなければ、何をやっているのか分からなくなる。せめて乳製品の輸出拡大くらいな

いと、「最初にTPPを始めた国」であるニュージーランドとしては格好がつかないのである。 

かくして最終局面になって、通商交渉の大ベテラン、ティム・グローサー貿易相が動いた。この世界の鉄則は、”

Nothing is agreed until everything is agreed.”(すべてが合意しない限り、何も合意できない)。かくして乳製品の

拡大がなければ、医薬品データの保護期間延長も認めないぞ!という反撃が飛び出したのである。 

かくしてTPP交渉は仕切り直しとなった。日米の政権が、ともに政治的得点の機会を逃したことになる。終わっ

てみれば、「負けに不思議の負けなし」といったところか。 

「内閣支持率40%割れ=1年以内に退陣」の嫌なデータ 

問題はこれから先だ。安倍内閣にとっては、国会運営や外交日程で綱渡りの日々が続くことになる。新安保法

制の不人気や新国立競技場建設をめぐる不手際などにより、安倍内閣の支持率は6月から7月にかけて大き

く下落した。以下のデータはほとんど衝撃的だ。 

○最近の内閣支持率データ 

共同通信37.7%(7/17-18)←47.4%(6/20-21) ▲9.7p 

時事通信40.1%(7/10-13)←45.8%(6/5-8) ▲5.7p 

朝日新聞39%(7/11-12)←39%(6/20-21) ― 

読売新聞43%(7/24-26)←49%(7/3-5) ▲6p 

毎日新聞35%(7/17-18)←42%(7/4-5) ▲7p 

日経新聞38%(7/24-26)←47%(6/26-28) ▲9p 

NHK  41.0%(7/10-13)←48.0%(6/5-7) ▲7p 

産経FNN39.3%(7/18-19)←46.1%(6/27-28) ▲6.8p 

安倍内閣はこれまで2年半にわたって、一貫して4割以上の高い支持率を維持してきた。だからこそ政治の安

定がもたらされてきたわけだが、ここへきて支持率と不支持率がクロス(逆転)している。「内閣支持率が4割を

切ると、1年以内に退陣に追い込まれる」というのが過去の永田町パターンだ。 

この常識を覆したのは、田中真紀子外相を更迭して支持率が急落し、翌年の日朝首脳会談で復活を遂げた

2002年の小泉首相くらいである。 

  しかもこの後、安倍政権にとって「トリプルデメリット」とも言うべき3つのイベントが控えている。「エネルギー

政策」「歴史認識」「景気の現状」という3連発だ。 

もしお盆の時期に支持率がさらに下がったら? 

1. 九州電力の川内原発が再稼働(8月11日頃) 

原子力規制庁の新規制基準における初めての再稼働となる。4年ぶりの起動であるから、トラブルが生じる可

能性も否定できない。 

2. 戦後70年の安倍談話(8月15日) 

 どんな内容になっても、「右」と「左」の両方に不満が残り、それ以外の人は関心がない。結果として内閣支持率

にとってはほぼ確実にマイナスとなる。 

3. 内閣府が4-6月期GDP成長率を発表(8月17日) 

 個人消費の不振や鉱工業生産の低調さから考えると、どうやら年率2%前後のマイナス成長が予想される。

足元の7-9月期は改善しているようなのだが…。 

お盆の時期に政権支持率が下がることは、議員にとって重要な意味を持つ。地元で「あいさつ回り」をする際

に、世間の逆風が身に沁みるのである。 

ある保守王国選出の自民党議員が言っていた。「地元の盆踊り大会で挨拶をさせてもらえなかった。それくらい

雰囲気が悪くなっている」。「俺でさえこうなんだから、浮動層の多い都市部の選挙区は大変だぞ」。 

もっとも、差し迫った危険を感じているといったほどでもなかった。世論調査の内閣支持率は軒並み低下してい

るが、自民党の支持率は意外と底堅い。逆に民主党など野党の数字は伸び悩んでいる。そして国政選挙はい

ちばん近くても来年の参院選だ。 

逆に党内のムードは微妙である。9月の自民党総裁選では、未だに安倍首相への対抗馬が出てこない。このま

ま無投票当選になりそうだが、「こんなときに候補者も立てられない自民党はいかがなものか」との批判が、こ

れから党の内外で湧き上がるのではないか。 

○当面の政治外交日程  

8月11日 九州電力・川内原発が再稼働 

  8月15日 戦後70年(*安倍談話はその1~2日前に発表か?) 

  8月17日 内閣府が4-6月期GDP速報値を公表 

  8月下旬 安倍首相が中央アジアを歴訪? 

  9月3日 中国が抗日戦争勝利70周年記念式典 

  9月4日 安倍首相が訪中、日中首脳会談? 

  9月3-5日 東方経済フォーラム(ウラジオストック)*プーチン大統領出席 

  9月6日 岩手県知事選挙(達増知事vs.平野達男参議院議員) 

  9月8日 自民党総裁選公示? 

  9月14日 新安保法制で「60日ルール」が使用可能に 

  9月15日~ 国連総会、習近平国家主席が訪米 

  9月16-17 日米FOMC→利上げ? 

  9月20日 自民党総裁選投開票? 

  9月26日頃 安倍首相が訪米、国連総会で演説? 

  9月27日 通常国会会期末 

  9月30日 自民党役員人事の任期切れ 

問題はこの後の政治日程だ。安倍首相は支持率挽回に向けて、おそらく外交カードを使ってくるだろう。 

では具体的には、どんな手を打って来るだろうか。ひとつは訪中、日中首脳会談だ。訪米を控えた習近平国家

主席としても、「とりあえず日中関係を良くしておく」ことは悪い相談ではないはず。国連総会での演説にも力が

入るところだ。あるいは北朝鮮との拉致問題の進展、といったサプライズを仕掛けていることも考えられる。 

問題の自民党総裁選はいつになるのか? 

そんな中で、自民党総裁選の日程をどうするかが悩ましい。総裁公選規程によれば、「任期切れ前の10日間

で投票」「選挙期間は12日以上」となっている。9月30日が任期切れなので、普通に考えれば「8日(火)公示

→20日(日)投開票」となる。 

ただし、参院で新安保法制を通せなかった場合が問題で、9月14日以降にいわゆる「60日ルール」による衆

院再可決が可能になる。まさか自民党総裁選の最中に、衆院再可決ができるだろうか。総裁選後に再可決を

目指すとしたら、今度は外交日程も絡んでくるし、27日の会期末を睨んで瀬戸際の国会運営となってしまう。 

もっとも8月に4週間もの審議時間をかけて、新安保法制に答えを出せないとしたら、それこそ「参院無用論」

を加速することになってしまいそうだが…。 

この問題をクリアするためには、衆院再可決を先に済ませた後で、「9月18日(金)公示→9月30日(水)投開

票」という日程も考えられる。ただしこれでは、国会会期の最後10日分が無駄になるし、せっかくのシルバーウ

ィーク(今年は19日から23日が5連休だ!)に、盛り上がらない自民党総裁選を戦うことになってしまう。 

さてどうするのか。ひとつだけ間違いないのは、永田町は久々に、「政局の夏、緊張の夏」を迎える、ということ

である。 

安保法制 「徴兵制」は本当に将来導入されることはないのか? 

THE PAGE 8月8日(土) 

  安全保障関連法案の審議が、参議院でも始まりました。「集団的自衛権」が憲法解釈の変更によって可能とさ

れることから、徴兵制についても同じように可能になるのではないかという議論が、衆議院から引き続いて行わ

れています。7月5日にも、民主党が安全保障関連法案への反対を説明するパンフレットで、「いつかは徴兵

制?募る不安」といった見出しをつけ、直後に修正したことも話題となりました。安倍首相は、答弁の中で「徴兵

制の導入はまったくあり得ない」と明言していますが、将来的に、憲法解釈の変更によって徴兵制が導入される

可能性はないのでしょうか。 

[写真]憲法18条を根拠に「徴兵制」は明確な憲法違反であり、解釈変更の余地はないとい

う安倍晋三首相。写真は安保法案の閣議決定後の記者会見(ロイター/アフロ)  

徴兵制は「意に反する苦役」が政府見解 

  政府の公式見解によると、徴兵制とは「国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度」で

あるとされています。つまり、戦時だけでなく、平時においても軍隊を常設して、これに必要となる兵を国民から

強制的に集めるということです。 

 

  安倍首相は、7月13日に放送された自民党の動画チャンネル「Cafe Sta」でも、「憲法18条には『意に反する

苦役』、これはダメですよということが書いてあります。そして徴兵制度の本質は、意思に反して強制的に兵士

の義務を負うことです。ですから、徴兵制は明確に憲法違反なんです。これは憲法解釈で変える余地は全くあり

ません。これははっきりと申し上げておきたいと思います」と発言しています。 

 

  確かに、1980年の政府答弁書において、「徴兵制は平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条、第

18条などの規定の趣旨からみて許容されるものではない」との見解が述べられています。安倍首相の発言も、

これを根拠としたものと考えられるでしょう。 

米最高裁は「意に反する苦役ではない」 

  しかし、実際には、徴兵制が憲法18条に違反すると政府が考えているかは微妙なところです。1970年に行

われた答弁では、当時の内閣法制局長官は、『(憲法)18条に当たるか当たらないかというのは、私どもから言

いますと確かに疑問なんです』と明確に述べています。どういうことなのでしょうか。憲法問題に詳しい伊藤建

(たける)弁護士は、次のように話します。 

 

「内閣法制局が、安倍総理のように『徴兵制は憲法18条に明確に違反する』と言わない理由は、とあるアメリカ

連邦最高裁の判決にあります。アメリカ合衆国憲法修正13条は、日本国憲法18条とほぼ同じ文言なのです

が、アメリカ連邦最高裁は、徴兵制は『意に反する苦役』にあたらない、と判断しているのです。修正13条は、

南北戦争直後である1865年に奴隷制を廃止する目的で追加されたのだから、『意に反する苦役』とは奴隷制

度に類似するものを意味し、徴兵制度はこれに当たらないというロジックです」 

 

  このアメリカの解釈を参考にすると、憲法18条だけでは徴兵制が憲法に違反するという確信を持てないから

こそ、1980年の政府答弁書では「個人の尊重」などを規定した憲法13条もあえて挙げていると考えられます。

安倍首相は、この点について明確な説明はしていません。 

 

「1980年の政府答弁書は、徴兵制は憲法13条や18条などの規定の『趣旨』に反すると述べるにすぎず、どこ

にも『憲法18条に明確に違反する』とは書いていません。つまり、明確に憲法違反であるとは言えないけれど

も、憲法13条や18条などの条文を一緒に読んで、その背後原理を推理すると、ようやく『徴兵制は憲法違反

だ』といえるというわけです。そのため、『徴兵制は憲法上許されない』という政府見解は、砂上の楼閣にすぎ

ず、いつかは解釈改憲により変更されてしまうという危険をはらんでいます」(伊藤弁護士) 

 

  安倍内閣の一員である石破茂内閣府特命担当大臣も、「政府見解に従うことは当然」としつつも、「『兵役は苦

役』のような発想が国際的には異様だ」という持論を今回の国会でも展開しています。民主党のパンフレットで

懸念されていた通り、やはり法解釈の可能性という観点からは、徴兵制も「集団的自衛権」の場合と同じ問題が

あり得るのです。 

[写真]ドイツでは2011年に徴兵制が廃止され、志願兵制度がスタートした(ロイター/ア

フロ)  

現代の戦争で徴兵制に合理性はあるのか 

  しかし、現実として、日本において徴兵制が必要とされることはあるのでしょうか。現代の戦争においては、ハ

イテク兵器を駆使して戦う必要があるため、徴兵制で集めた経験の浅い兵士では役に立たないから、徴兵制に

は軍事的合理性がないという意見があります。これはその通りで、現に世界各国では徴兵制は廃止される傾向

にあります。長年、徴兵制を維持してきたドイツも、2011年に廃止に踏み切りました。 

 

  ところが、現代の戦争はこうしたハイテクの兵器を用いる戦争に限られるわけではありません。「正規の軍や

情報機関、義勇兵、民兵その他を組み合わせることで、平時とも有事ともつかない状況下で軍事作戦を遂行す

る『ハイブリッド戦争』では、徴兵制が必要になる場合もあり得る」と軍事アナリストの小泉悠氏は指摘します。

公式の宣戦布告もなく、突然に国内に戦闘地域が出現し、延々とゲリラ的な消耗戦を強いられる「ハイブリッド

戦争」では、少数の職業軍人よりも大量の徴兵を動員せざるを得ないというのです。 

 

「軍事的に弱体な小国は、大量の国民を動員した武装抵抗によって、侵略のコストを仮想敵に認識させること

が、安全保障上重要となります。 実際、ウクライナやリトアニアなどでは、最近になって徴兵制が復活しました」

(小泉氏) 

 

  しかし、地理的な要因、軍事的な装備などを考えても、こうした東欧諸国と日本の状況は大きく異なります。日

本は島国であり、海上自衛隊及び航空自衛隊によって海上防衛や対空防衛の戦略が確立しているため、容易

に敵が侵入することができません。つまり、可能性としても、ハイテク兵器を用いた現代型の戦争以外は起こり

にくい状況なのです。小泉氏も、次のように指摘します。 

 

「中国が南沙諸島への実行支配を強めているのは事実ですし、いずれは尖閣、沖縄も視野に入れていることは

確かですから、遠い将来そういった場所でいわゆる『ハイブリッド戦争』が起きるかもしれません。しかし、そのよ

うな局所的な紛争に対して、日本国全体で一般の国民を総動員するような徴兵制が必要かは極めて疑問で

す。本土まで侵略されてゲリラ戦で対抗しなければならない事態も論理的には想定できますが、日本の国防能

力を考えると、その可能性は将来的に見ても極めて低いでしょう」 

  確かに、現実として古典的な徴兵制が日本で導入される可能性は低いようです。ただ、法令の解釈は、今回

の「集団的自衛権」と憲法9条の関係を見ても分かる通り、そもそも絶対的なものではありません。安倍首相

が、憲法18条の『意に反する苦役』の解釈が1つに決まっているかのような説明をすることには、少し違和感

を感じます。また、若者の貧困や自衛隊員の応募減少などの側面から、将来的には徴兵制に近い状態が生ま

れることを懸念する声もあります。今後は、「古典的な意味での徴兵制の導入」というテーマから一歩踏み込ん

で、実質的な問題点について議論していく必要があるかもしれません。 (ライター・関田真也) 

日立建機、中国「新常態」を切り抜ける貯金2015/8/7 日経Net 

  「(中国政府は)新常態というが、われわれからすれば異常という状態だ」。日立建機の桂山哲夫最高財務責

任者(CFO)が嘆くのも無理はない。不動産バブルがはじけ、銀行からの融資も停滞。新たな開発工事にはお

金がつかず、地方政府の汚職摘発が強まるなかで次々と開発プロジェクトが延期されている。 

中国では地方政府からの工事発注が落ちている(日立建機の油圧ショベル) 

  不安定さを増す中国景気が逆風となり、日立建機が7月28日に発表した2015年4~6月期の連結営業利益 

(国際会計基準 =IFRS)は前年同期比63%減の49億円だった。株式市場では「16年3月期通期見通しを下

方修正するのではないか」との見方が多かったが、意外にも結果は据え置きだった。決算後は売り方の買い戻

しが入ったものの、反発力は弱い。昨年末よりも株価は2割安く、米キャタピラー(16%安)、コマツ(14%安)より

も出遅れている。 

  中国需要の好転が期待できず、一段の悪化さえ懸念される状況で日立建機がとった手段は、生産調整だ。中

国にある工場が稼働するのは、6~7月が9日ずつ、8月も2週間程度と短い。 

  こんな厳しい状況にもかかわらず、16年3月期通期の業績予想は連結売上高が前期比1%減の8100億円、

営業利益は14%減の540億円と据え置いた。地域別の予想売上高は期初に比べて中国、アジア、オセアニア

を引き下げる一方、日本と欧州を引き上げた。中国は前期比25%減収、オセアニアが8%減収となる分を日本

と欧州の増収で取り戻す計画だ。 

  切り抜けるための「貯金」は2つ。まずは円安だ。期初時点では1ドル=115円、1ユーロ=125円、1中国元

=18.5円に設定していた想定為替レートをそれぞれ120円、130円、19円に見直した。期初は為替による利益

押し上げ分は17億円と見込んでいたが、今回の予想では71億円に増える。 

  もう一つは、コスト削減効果の上積み。外注している業務の内製化や在庫を減らして稼働日も減らし、間接費

を減らす。この計画値は「これまで11億円で見積もっていたが、77億円出ると洗い直した」(桂山CFO)。日立

建機の連結売上高に占める販売費および一般管理費比率は15年3月期に19.2%とコマツ(約17%)を上回

る。SMBC日興証券の大内卓シニアアナリストは「間接費削減の伸びしろがあるので、鉱山機械分野で会社計

画に対して大幅な需要減少が無ければ、540億円の通期営業利益は達成できる」と語る。 

  日立建機にはトラウマがある。約1年前、14年4~6月期の連結決算 発表で、15年3月期通期の連結純利

益予想を450億円から300億円に下方修正した翌日、株価が急落した。同じ轍(てつ)を踏むまいと同社は16

年3月期の利益計画を慎重に練ってきた。 

  だが中国の需要減少は想定以上に進んでいる可能性がある。油圧ショベルの推定需要は1万8000台と11

年3月期の6分の1に縮み、中国売上高の減少に伴う16年3月期通期ベースでの営業利益減少の影響は93

億円に及ぶ。今年は例年盛り上がる春節商戦すら起きなかったという。 

  資源をがぶ飲みしてきた中国需要の低迷が長引けば、鉄鉱石や銅など資源価格の下落は止まらず、オース

トラリアや東南アジア、南米などの鉱山機械の需要も回復を見込めないだろう。需要のパイが縮み続ければ、

まだ価格競争が起きていない米国など他の市場で建機の値下げ競争が起きる可能性もある。 

  需要回復に相応の時間がかかる「新常態」が為替の円安とコスト削減という「貯金」で切り抜けられるかどう

か。なお予断を許さない状況が続きそうだ。(関口慶太) 

いつの間にか「空き寺」だらけになっていた日本、お盆の前に読

んでおきたい宗教の本3冊2015.8.8(土)    栗澤  順一    JBPress 

 

  日本全国各地で梅雨明けし、暑い日が続く中、みなさんいかがお過ごしでしょうか。そろそろ、夏

季休暇に入られる方も多いかと思います。来週のお盆の入りを前に、ぜひとも読んでいただきたい

宗教に関する本を3冊ご紹介します。  

深刻化する「空き寺」問題 

  1冊目は『寺院消滅』(鵜飼秀徳著、日経BP)。 

  地方自治体の存続の危機を提示した「地方消滅」という書籍が、ベストセラーになり、様々な論争

を巻き起こしたことは、記憶に新しいところです。ちなみに、地方に住む私としては、データ至上主義

の点が気になりました。あまりにも現在と未来を点と点で捉えすぎ、線で考えていないのでは・・・。 

  とはいえ、このまま日本の人口が減少していくことは明白です。と同時に、人口が減っていくと、逆

に増えていくものもあります。 

『寺院消滅』(鵜飼秀徳著、日経BP、1728円、税込)  

  その1つが、「空き寺」。私たちにとって身近な存在のお寺は、現在、全国に約7万7000寺あり

ます。そのうち、住職がいない、いわゆる「空き寺」は2万カ所にも上ると推定され、今後、ますます

増えて行くことが予想されます。そうした現状を踏まえ、宗教を巡る様々な問題点を問い直したのが

本書です。 

  世界遺産の賑わいの陰で、空き寺が目立つ島根県石見や、東日本大震災からの復興を目指す

岩手県陸前高田市、仏像の盗難に悩まされる福島県会津坂下・・・。 

  地方の寺院の置かれた状況を伝えながら、葬儀でのお布施に代表される寺院の経済活動や、国

家に翻弄されてきた日本仏教の歴史を分かりやすく織り交ぜることで、より深みを持たせています。

僧侶の資格を持つ著者ならではの視点でしょう。 

  檀家の高齢化や地域の過疎化による減少、仏教の都市化など地方の寺院の抱える問題は、一

朝一夕で解決できるものではありません。ただ一方で、リタイアした企業人が僧侶を目指すケースが

増えてきていることや、縁も所縁もない離島に住職として赴任する若者の姿を通して、後継者不足

問題に一筋の光が見えるのが救いです。 

  読み終えると、「空き寺」問題は、単なる宗教上の問題だけでないことが分かります。建物の崩壊

の危険性という物理的な面はもちろん、檀家制度の崩壊を通して地域のつながりが失われてしまう

のです。 

  夏季休暇には、帰省してお墓参りをされる方も多いかと思います。その際には、他人事とは思わ

ず、あなたの菩提寺についても考えてみませんか。1人でも多くの方が、「空き寺」問題に関心を抱く

ことが、解決への第一歩なはずですから。 

 神社がもっと身近になる本 

  ところで、この『寺院消滅』では、日本仏教の歴史を振り返る際に、「神道」にも触れています。 

  仏教と神道。正月には、神社に初詣に行き、お盆にはお寺に墓参りに行く。宗教として成り立ちが

違うのに、併存させている日本は、考えてみれば不思議な社会です。  

  お寺同様に、神社も身近な存在です。しかし神道は、仏教以上に、実はあまり詳しく知らない方が

多いのではないでしょうか。そのような方にお勧めなのが、『日本の神さまと上手に暮らす法』(中村

真著、ダイヤモンド社)。 

『日本の神さまと上手に暮らす方法』(中村真著、ダイヤモンド社、1400円、税別)  

  現在、尾道自由大学校長の傍ら、授業で「神社学」の教鞭をとっている著者。若い頃から、海外

に魅せられ世界中を旅して歩き、帰国後は、自然と暮らしの関わりについて研究することに没頭。

そして身近な山や川にも宿る、日本の八百万の神さまの存在こそが、心豊かに生活するための鍵

になるはずだ、という結論にたどり着きます。 

  「本書の見解は、あくまで神社を愛する者としての著者個人のものです。」と断っているだけあっ

て、教義など凝り固まった内容ではありません。 

  神社に関するちょっとした豆知識や、お参りする際のマナーといった、読みやすい話題を交えなが

ら、いかに神さまとうまくお付き合いするか、を分かりやすく教えてくれます。 

  例えば、プロ野球でファンのチームを応援するとき、何かの試験で提出した答案の手応えがイマイ

チなとき、宝くじを買ったとき、等々。日常生活の中で、神頼みをする場面は意外と多いもの。しか

し、心の中で神さまに手を合わせても、普段から神社に足を運んで参拝する習慣をお持ちの方は少

ないのではないでしょうか。 

  現在、神社本庁に登録されている神社は、8万社以上。本当に小さな祠まで含めると、15万社

以上、20万社弱ほどあるといわれています。この数は、全国で7万店舗弱あるといわれているコン

ビニエンスストアを遥かに凌駕します。 

  これだけ身近な存在のはずの神社ですが、忙しい日常の中では、どこか近くて遠い存在になりが

ちです。神社に行くのに理由はいらなく、ぼんやりしたい時にふらりと行ける場所であることを著者は

教えてくれ、行きつけの神社を作ることをお勧めしています。 

  このように、本書を通して著者は、もっと日常生活の中で神社に参拝し、神さまをより身近な存在

に感じるために、そっと背中を押してくれるのです。 

  神社に参拝することは、実は自分自身と向き合うことにも繋がります。 

本書を片手に、まずは近所の神社調べから始めてみませんか。  

人間の「光と闇」に切り込む 

  最後に紹介するのは、新興宗教の教祖が登場する小説『教団X』(中村文則著・集英社刊)。 

『教団X』(中村文則著、集英社、1800円、税別)  

  第4回大江健三郎賞を受賞した「掏摸(スリ)」など、人の内部に蠢く悪を描かせたら右に出るも

のがない著者。最新刊であり、最長作でもある本書も、期待を裏切らない読み応えのある作品に仕

上がっています。 

  主人公の楢崎透の元から、恋人と思っていた立花涼子が姿を消す。やがて彼女を探す楢崎は、

ある宗教団体にたどり着く。しかし、涼子は、別の宗教団体に再び消え・・・。 

  教祖同士の因縁のある2つの宗教団体を、主人公が行き来する形でストーリーが進みます。1つ

は、来る者拒まずの家族的な雰囲気で世界平和を願う教団。もう1つは、セックスに重きを置いた

秘教的で、なおかつ国家転覆を図る教団X。 

  2つの教団は、いわば善悪の合わせ鏡。その舞台で、心の闇を抱えた登場人物たちを丁寧に躍

らせることで、物語がより複雑になっていきます。 

  神とは何か。誰が正しいのか、正しくないのか――読み進めて行くうちに分からなくなり、人間とい

う存在について、いろいろな視点から深く考えさせられます。そんな中、自分の足で歩き始めた楢崎

のラストは少しでも救いになるでしょう。 

  「悪」とは何かという重いテーマを描きつつ、著者の本書に込めたメッセージが人間賛歌であったこ

とに、胸が熱くなります。 

  総ページ567ページ、圧巻の本書。長い夏季休暇の読書に、ぴったりの1冊ではないでしょうか。  

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【ASIA関連】 

【ミャンマー】豪雨による洪水被害、総選挙をにらみ各政党党首も被災

地を慰問Global News Asia 8月8日(土) 

洪水により水没したバゴーの村(竹永ケイシロ 撮影)  

  2015年8月8日、雨季に入っているミャンマーでは先月半ばより続く豪雨により、広い地域で洪水被害、土砂

災害が発生しており、これまでに少なくとも69人が死亡し、被災者は26万人を超えた。 

  これを受けてミャンマー政府は7月31日に被害の甚大なチン州、ラカイン州、ザガイン地域を自然災害地域

に指定した。 

  2008年に発生した巨大サイクロン「ナルギス」にも匹敵すると言われる今回の災害だが、ミャンマー最大都市

ヤンゴン市では若者を中心に募金活動が行われ、お揃いのTシャツを着た若者のグループや学生たちが、降

り続く雨の中、傘をさすこともなく、交差点に止まっている車や道行く人に募金を呼びかけ、被災地に米、水、イ

ンスタントラーメン、油などの支援物資を積極的に届けている。民間のボランティア活動が広がる一方で、各政

党の政治家も被災地慰問に力を入れている。 

  ミャンマーの民主化や経済発展の試金石となる民政移管後初の総選挙が今年の11月に予定されているだ

けに、最大野党「国民民主連盟(NLD)」党首のアウン・サン?スー?チー氏を始め、与党「連邦団結発展党

(USDP)」のテイン・セイン大統領などが支援物資を持って被災地を訪れる様子は連日の様に新聞やフェイスブ

ックを通じて伝えられ、国民の大きな関心を集めている。【執筆:竹永ケイシロ】Global News Asia 

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【USA・北米関連】 

エノラ・ゲイ元航空士が遺した、原爆の「過ち」と誓い,広島に原爆

投下のB29に搭乗 2015/8/6 日経Net 

  70年前の1945年8月6日、人類初の原爆が広島市上空でさく裂した。投下した米爆撃機B29「エノラ・ゲイ」

の搭乗員12人のうち、最後の生存者だったセオドア・バンカーク氏が昨年、93歳で死去。上空から惨状を目撃

した証人はいなくなった。当時24歳で原爆投下機の航空士を務めた同氏は戦後、原爆と戦争について何を考

え、どう生きたのか。生前のインタビューに遺(のこ)した言葉をもとに振り返った。 

■原爆使用を正当化 

修復され、スミソニアン航空宇宙博物館新館に展示されているB29「エノラ・ゲイ」の機体(2009年撮

影、米ワシントン郊外、バージニア州) 

  同氏には2007年から13年にかけて毎年、米ジョージア州アトランタ郊外の自宅で話を聞く機会を得た。最初

のインタビューで、広島への原爆投下は必要だったのかと尋ねると、「原爆は戦争の終結を早め、多くの人の命

を救った。投下せずに、本土上陸作戦を実施していたら凄惨な戦いになっていただろう」と投下の正当性を強調

した。原爆の衝撃が日本に降伏を促し、戦争が続いていれば、焼夷(しょうい)弾による都市空襲や45年11月

に計画されていた本土上陸作戦などで生じたであろう膨大な犠牲を未然に防いだという論法だ。 

以降の取材で「ソ連の参戦のみで日本は降伏していたとする主張もある」「天皇制の存続を保障すれば、日本

はもっと早く降伏し、原爆も本土上陸も必要なかったという見解もある」などと尋ねると、「そういった議論はよく

耳にするが、日本が降伏したかどうかは分からない。今となってはすべて臆測にすぎない」と退けた。 

  「奪った命より多くの命を救った」として原爆の投下を正当化する同氏の論理は、トルーマン大統領はじめ当

時の米政府幹部が示した公式見解と同様で、その後の取材でも一貫してぶれることはなかった。 

  原爆による死者数ははっきりしないが、広島市の推計によると、45年末までに約14万人に上った。爆風や熱

線などに加え、急性放射線障害による死者数が膨らんだためだ。 

  原爆被害を拡大させた放射線の影響について、同氏は「当時はほとんど知らなかった」という。「当初、科学者

たちは放射線による被害をきわめて過小に見積もっていた。それが分かってきたのは数週間後だった」と振り

返った。ただ、放射線の影響が判明した後でも「原爆の使用は、戦争を終わらせ殺し合いを止めたという点で、

正しかったと思っている」と語っていた。 

■気の毒「sorry」と  謝罪「apology」の違い 

  広島で被爆した個々人に対しては、最初の取材時から「気の毒(sorry)なことをした」と語っていた。ただし、

「日本の国に起きたこと全体としては、気の毒とは思わない」とも付け加えた。批判の矛先を当時の日本の指導

者に向け、「日本は少なくとも6カ月前には降伏しているべきだった。空軍力も海軍力も失い、勝つ見込みが全く

なかったことは、軍も分かっていたはずだ。日本の指導者がなぜかたくなに降伏を拒んで戦争を続け、国民をこ

んなひどい目に遭わせたのか理解できない」と憤慨していた。 

  「気の毒(sorry)」という言葉の意味合いを確かめるため、「個人に謝罪(apology)しなければいけないという意

味か」と尋ねた。同氏は「謝罪とは違う」と答え、「もし謝罪すれば、(勝算がない戦争を続けた)日本の指導者が

果たした役割についてまで責任を負うことになる」と説明した。 

米軍時代のセオドア・バンカーク氏。原爆投下時は24歳だった。(同氏提供) 

セオドア・バンカーク氏(2013年8月、米ジョージア州アトランタ郊外の自宅で) 

■「同じ過ち」を繰り返さないために 

  2010年、生存していたもう一人のエノラ・ゲイ搭乗員が死去し、同氏は「最後の生存者」になった。90歳を前に

しても近隣の学校へ出向いて若者に戦争の話をしているという同氏に「最後の一人になって、戦争について伝

える責務は前より重くなったと感じるか」と聞いたところ、答えは「同じ」。「学生に話をするのは、彼らが同じ過ち

(the same mistake)を繰り返さないために、戦争で何が起こったのかを伝えるためだ。彼らが将来、原爆を落と

さないように」と、淡々と語った。 

  「同じ過ち」という言葉が気になって、2013年に改めて原爆について学校で語る理由を尋ねたところ、やはり

「我々が(原爆を使用するという)『同じ過ち』を繰り返さないようにするためだ」と強調した。 

  その際、「1945年8月に広島に原爆を投下したことを『過ち』とは呼ばないでしょう?」と尋ねると、同氏は「具

体的なケースではなくて……」と少し言葉に詰まった後、「原爆は当時、戦争を早く終わらせる手段だった(ので

「過ち」とは呼ばない)。今は原爆がどれほど致命的かよく知っている。だから絶対に使ってはならない」と続け

た。 

  広島への原爆投下を正当化しながらも、同氏の頭の中のどこかで「原爆投下」と「過ち」という2つの言葉がつ

ながっていたのだろう。同氏は「戦争の終結という同じ結果を得るために、原爆を落とさなくても済んでいればよ

かったのに」と漏らしたことがある。 

  原爆と本土上陸作戦を比べて、原爆を「2つの害悪のうち小さい方(lesser of the two evils)」と表現したことも

あった。どちらも多くの命が失われる害悪だが、硫黄島や沖縄での日本兵の戦いぶりと米兵の死傷者の多さな

どを考えると、本土上陸作戦より原爆の方が悪の度合いが小さいという考え方だ。同氏は「もし君が広島に住

んでいたら、受け入れるのは非常に難しいだろうが……」と付け加えた。 

■戦争責任と裁判 

  同氏は「もし米国が負けていたら、自分は戦犯として裁かれていただろう」と話していた。日本の指導者が裁か

れた東京裁判について聞くと、「公正かって? 米国にとってはそうだろう。戦争に勝ったから。だが、もし米国が

負けて自分が裁かれていたら、ここで君に『絶対公正じゃない』と訴えていただろう」と語った。「当時はドイツも

日本もどの国も、自分の国と国民のために最善だと考えたことを行っていた。私たちが原爆を落としたのも、そ

れが米国と国民にとってベストと考えたからだ」と話し、戦争裁判は相対的なものだという考えを示した。 

  プロテスタントのキリスト教徒だという同氏に「神はあなたを天国に行かせてくれると思いますか」と尋ねたこと

がある。2011年のことだ。同氏は一瞬険しい表情になり、「全く見当がつかない」と2回口にした。そして落ち着

いた口調に戻り、「やるべきことをやって、その結果を受け止めるしかない。いずれ分かる。君よりは先にね」と

語った。 

■長崎で感じた家族を失う痛み 

  同氏は、原爆のみで自分の人生を語られることを嫌った。「原爆によって自分の人生は何も変わっていない」

と繰り返し、「原爆投下への批判も称賛も、どちらも人生には影響しない」と語っていた。 

バンカーク氏の自宅の本棚には、原爆や戦争に関する本がびっしりと並んでいた(2011年撮影、

米ジョージア州アトランタ郊外の自宅で) 

 

1941年に陸軍入隊。欧州戦線などで、エノラ・ゲイ機長となるティベッツ氏と同じ爆撃機に搭乗後、原爆投下部

隊に加わった。広島への原爆投下後、46年に軍を退役。大学院を卒業すると大手化学メーカーのデュポンに

就職、マーケティング部門の管理職になり、30数年務めて退職した。この間、4人の子供を育てた。同社は軍需

産業にも関わっていたが、同氏は「軍事関係の仕事には一切関わっていない」と強調していた。 

  2012年、米国のライターが彼の自伝を出版した。「自伝の大半は原爆の話で占められますね」と声をかける

と、同氏は「そうだ。だが、原爆よりも大事なことをしたよ。それはいい家族を育てたことだ」と真剣な表情で答え

た。 

  会うたびに同氏が自ら話題にした出来事があった。原爆投下の翌月、科学者と一緒に訪れたもう一つの被爆

地・長崎で、破壊しつくされた街を一人ぼうぜんとした様子で歩いている日本の復員兵を見たという話だ。「戦場

では兵士が命を狙われる。どの兵士にも家族や親類がいて、古里で彼の無事を願っているものだ。それが一転

して家族の命が狙われ、奪われる。自分が逆の立場だったら、身を切り裂かれるような気持ちだろう」と語って

いた。終戦当時、妻と1歳の息子がいた同氏は戦後、この長崎で見た日本人兵士の姿がずっと忘れられなかっ

たという。 

  原爆投下当時、同氏は24歳。任務を遂行した部隊の一員にすぎず、原爆の開発計画や威力についてはほと

んど知らされていなかった。「当時考えていたことは、戦争を終わらせ、軍を退役し、家族の元へ戻り、大学へ行

きたかっただけだ」と率直な思いを語っていた。原爆投下が正しかったのか経緯を調べ、考え始めたのは、戦後

になってからだ。「原爆について書かれた本はほとんどすべて読んだ」という同氏の自宅本棚には、原爆と戦争

関係の本がびっしりと並んでいた。 

■武力の限界と、核戦争の不安 

  同氏は戦争や武力による解決という手法そのものに疑問を抱き、米ブッシュ政権時代からのイラクやアフガニ

スタンへの軍事介入に否定的な見方をしていた。 

  2011年7月に会った時は、国際テロ組織アルカイダの指導者、ビンラディン容疑者を米特殊部隊が殺害した

余韻が米国内に残っていた。同氏は「武力で人の信念を変えることはできない。リーダーを殺害しても、気分が

良くなるだけで問題解決にはならない。リーダーの代わりはすぐに現れる」と冷めた口調で語った。 

  一方、核兵器の廃絶へ向けてオバマ大統領が提唱する「核兵器なき世界」は強く支持していた。ロシアなどの

大国は核兵器を使用する心配はないとする一方、北朝鮮やイランの核開発の行方を懸念していた。「テロリスト

が核兵器を持たないよう願う」とも語っていた。 

広島平和記念公園内の原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」

と刻まれている。「過ち」の英訳は「evil」だ。(2013年撮影) 

  過去の戦争と原爆の経験から学ぶべき教訓は何かと尋ねたとき、同氏は「これは覚えておいた方がいい」と

前置きし、「一人の指導者が『これから核兵器を使用する』と宣言すれば、すべてが解き放たれる。たった一人

がそうするだけで! 戦争を始めるのはそれほど簡単だ」と、核エネルギーが拡散する現状に懸念を口にした。 

  広島平和記念公園内の原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」と刻ま

れている。そばに設置されている英文の説明板によると、「LET ALL THE SOULS HERE REST IN PEACE. FOR 

WE SHALL NOT REPEAT THE EVIL」となる。「過ち」の英訳は「evil」、主語は「すべての人々」を代表して戦争と

いう過ちを繰り返さないと誓う「We」だ。 

  ついに再び広島を訪れることなく、この世を去った同氏。被爆者との交流もほとんどなく、主張がすれ違うこと

もあったようだ。立場は違っても、「過ちを繰り返さないために」という強い願いの根底には、戦争を否定し平和

を希求する「ヒロシマ」の思いに通ずるものがあったのではないだろうか。(電子編集部  中前博之) 

「変なこと口にすべき」米政治風刺番組16年に幕、クリントン氏も惜別 

産経新聞 8月8日(土) 

  【ニューヨーク=黒沢潤】米人気コメディアンのジョン・スチュワート氏(52)が司会を務める政治風刺テレビ番

組「デイリー・ショー」が6日、最終回を迎え、約16年間の放送に終止符を打った。 

 

  この日の視聴者数は約350万人。2008年大統領選の直前にオバマ大統領に焦点を当てた番組に次ぐ記録

となった。また、コメディアンが司会を務めた番組としてはクレイグ・ファーガソン氏によるCBSテレビのトーク番

組(14年終了)、コナン・オブライエン氏によるNBCテレビのトーク番組(09年終了)の最終回の記録を上回っ

た。 

 

  きまじめな表情で政界がらみのジョークを飛ばすスチュワート氏の盟友、スティーブン・コルベア氏はスタジオ

で「あなたは、こちらが腹立たしくなるほど素晴らしい仕事をした」と称賛。来年の大統領選に出馬表明している

クリントン前国務長官も、番組でたびたび風刺されたのを踏まえ、「選挙の最中なのに本当に困ったわ」と冗談

を交えつつ惜別の言葉を贈った。 

 

  スチュワート氏は、テレビやジャーナリズム、米国民の生活に番組が与えた影響などを総括。「世の中にはナ

ンセンスが至るところにある。何か変なことに気付いたら、それを口にすべきだ」と米国民に訴えた。 

<米大統領選挙>共和党は16年3月まで討論会毎日新聞 8月8日(土) 

  【クリーブランド西田進一郎】米大統領選挙は、1年以上にわたる戦いとなる。共和党は2016年3月まで10

回以上の討論会を全米各地で開催する。一方の民主党は今年10月13日のネバダ州を皮切りに16年3月ま

で計6回の討論会を予定している。 

 

  16年2月からは党員集会や党予備選が始まる。幕開けとなるアイオワ州の党員集会の後、ニューハンプシャ

ー州、サウスカロライナ州の予備選へと続く。序盤戦が行われる州での勝敗は、候補の勢いや資金集めに直結

するため、各候補は重点的に足を運んでいる。予備選に勝ち抜けば、両党がそれぞれ同年7月に開く党大会で

候補者指名を受けることになる。 

 

  民主、共和両党の候補が決まれば、事実上の一騎打ちに入る。テレビ討論などを経て、11月8日の本選挙で

次期大統領が決まる。大統領に就任するのは17年1月になる。 

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【EUROPE・その他地域関連】 

エマニュエル・トッド氏「強大なドイツに欧州揺らぐ」 (これからの世

界) フランス国立人口学研究所研究員 2015/8/10 日本経済新聞  電子版 

  ――2002年の著書「帝国以後」で米国の衰退を予測しました。 

  「米国とソ連の両陣営による冷戦が終わった後、米国は唯一の超大国だった。だが、それは崩れつつある。ポ

イントは欧州への影響力低下だ。私の予測は、米国がドイツへの統制を失ったという意味で確認された。いま

米国は、過去と同じようにドイツの過度な反ロシア主義に追随したり、人種問題に苦しんだりしている」 

■ギリシャ問題はEU崩壊の第一歩にみえる 

Emmanuel Todd  フランス国立人口学研究所の研究員で、フランスの左派を代表する知識人。パ

リ政治学院を卒業後、英ケンブリッジ大で歴史人口学の博士号を得た。ソ連の崩壊を予言した「最後の転落」

(1976年)や、米国が衰退期に入ったと指摘した「帝国以後」(2002年)はいずれも世界的なベストセラーになっ

た。64歳。 

  「自らの失策もある。かつて米国は世界の解決役だったが、(息子の)ブッシュ政権時には世界の問題児とな

った。この政権が過激派組織『イスラム国(IS=Islamic  State)』を生んだ。現在の米国は、解決役であると同時

に問題児でもある。ただし、オバマ政権の外交はかつてのブッシュ政権ほど破壊的ではない。ロシアへの態度

がもっと思慮分別のあるものになれば、米国はドイツにとって代わる勢力になれる」 

  ――欧州ではドイツの存在感が突出しています。 

  「現在の欧州では、2度の世界大戦の前にみられたような文化の分裂が再び起きている。1871年に成立した

強大なドイツ帝国は周囲の小国を支配した。フランスはドイツの補佐的な役割を担ったが、実際は服従してい

た。周辺の国々は、強国の出現に動揺し、地域情勢は不安定になった。いまは当時の状況と同じ構図だ。加え

てカトリックとプロテスタントの国家の分断が際立っている」 

  「北欧やポーランドは今、ドイツに追随する姿勢を示している。ポーランドなどの北大西洋条約機構(NATO)

への加盟は、本来ならばロシアへのけん制と米国の影響力強化が目的だったが、結果的にはドイツの経済圏

を広げた。これらにフランスを加えた人口2億人を超す地域への支配は、ドイツを世界の産業大国に押し上げ

た。ドイツは武器を持たずにエリート主義の過去に戻ったのだ。ドイツ経済の強さは当面続くだろう。だが、この

国が外交で成功した例はほとんどない」 

  「いま欧州は、均質化ではなく階級化に向かっている。ドイツがトップに立ち、民主主義が終わりに近づいてい

る。欧州大陸は歴史的にファシズムやナチズムと民主主義が戦ってきたが、いまは民主主義の方が倒れつつ

ある。欧州がギリシャに課そうとしている官僚による支配は、ファシズムの台頭のようだ。(当面の離脱は回避で

きたものの)ギリシャ問題は欧州連合(EU)の崩壊の第一歩にみえる」 

  ――世界はテロという新たな敵との戦いを強いられています。 

  「人口学者は死者数に注目するが、欧州のテロによる死者数はなお最少の水準であり、取り乱す理由はな

い。欧州は統合が行き詰まり、あるいは経済悪化から目をそらすため、テロやイスラム、ロシアの脅威といった

強迫観念を広げているにすぎない。敵を求めるという欧州の姿は、イラク戦争時の米国と似ている」 

  「イラク戦争は『国家対国家』の、いわゆる普通の戦争だった。欧州は反イスラムという点で米国に加担した。

攻撃された側から見れば、米欧は襲撃者だ。我々がフランスなどで見ているのは、この反イスラムに起因する

反動的なテロだ」 

  「1月の仏週刊紙銃撃テロで確認されたように、移民系の若者の喪失感は大きい。様々な場所で差別され、未

来に希望を持てないでいる。これが自発的なテロを呼び起こす。政府は社会を再建しなければならない。欧州

社会は安定しているが、リスクは上昇している」 

■日本は世界の価値観を創ることができる国のひとつ 

トッド氏は「国連安保理は中国やロシアとの対話を可能にする唯一の場となる」と指摘する。 

  ――世界では中国の存在感が増しています。 

  「中国が急速な経済成長により、無視できない存在になったのは事実だ。だが、中国の未来について楽観的

な人口学者はいない。男子の出生が多いため人口構造がいびつで、出生率の低下も速い。中国が国際社会に

影響を及ぼすのは、人口の多さゆえのマイナスのものになるだろう。17世紀以降に米国のイングランド系社会

が定めた現代的な価値観とはそぐわないのも、中国は世界のリーダーにはなれない理由だ」 

  ――国連の機能不全が指摘されています。 

  「国連安全保障理事会は不合理な議論の空間だ。成長が著しいインドと、経済大国の日本はそこにいなけれ

ばならない。フランスは(対米追従とは一線を画す)ドゴール主義を継承していたシラク大統領の時代まではそ

の場にふさわしかったが、それ以降の政権には座席を維持する権利はない」 

  「世界が米国の一極体制から再分極化にあるならば、国連の役割は明快だ。もし中国とロシアが歩み寄る必

要があれば、安保理はこれらの国の対話を可能にする唯一の場となる。世界の政治がかつてのように多極化

すれば安保理は有益だ」 

  ――日本の存在と役割をどう評価しますか。 

  「日本は第2次世界大戦に敗れたものの(米国に次ぐ)世界2位の経済大国にまでのし上がった。今は(中国

に抜かれて)経済規模が3位に落ちたが、技術革新力ではなお2番目の位置を保つ。世界の価値観を創ること

ができる国の一つだ。日本は中国に対峙する安全保障、そして人口の減少という2つの大きな問題に直面して

いる」 

  「日本の再軍備を懸念する人がいるが、私には今のままでは十分でないとさえ思える。中国との関係が緊張

している中で、米国との同盟関係は不可欠だ。ただし米国は本当に守護者なのだろうか。もし私が安倍晋三首

相だったら、日本の過去の軍事行為を厳しく自己批判する演説を行ったうえで、防衛力は強化していく。1つ言

えるのは、どのような場合でも、日本はロシアとの良好な関係を保つべきだ」 

  ――日本は人口が減り続けており、移民を受け入れるかどうかという議論があります。 

  「移民の受け入れは不可欠だろうが、複雑だ。確かに出生率の低さは大きな問題だが、移民受け入れの困難

さはその比ではない。数世代前の朝鮮半島の出身者が、日本社会に溶け込む難しさは誰もが知っているだろ

う。多くの人種が混在するフランスでは理解できないことだ。(自動化により人手不足を補うための)ロボットの開

発は移民受け入れ問題に取り組むための時間稼ぎにはなるが、それでは不十分だ。2度目の明治維新のよう

に、国民意識の大転換が必要になるだろう」  (聞き手はパリ=竹内康雄) 

スイス山中から邦人2遺体=45年前に不明の登山家時事通信 8月7日(金) 

  【パリ時事】スイス南部アルプス山脈のマッターホルンで、1970年に行方不明となった日本人の登山家2人の

遺骨が見つかっていたことが6日、分かった。 

  遺骨は昨年発見され、地元のバレー州警察がDNA鑑定で身元を確認した。 

  在ジュネーブ領事事務所によると、遺骨は行方不明当時、千葉市に住んでいた及川三千雄さん=当時(22)

=と、東京都墨田区在住だった小林正幸さん=同(21)=。標高約2800メートルにある氷河で登山者が見つけ

た。 

  領事事務所は遺骨発見の事実を既に遺族に伝えた。マッターホルンでは温暖化の影響で雪解けが進み、過

去に遭難したとみられる登山家の遺体がたびたび見つかっている。   

道端ジェシカさん夫妻が盗難被害=催眠ガスで意識不明中―仏 

時事通信 8月7日(金) 

  【パリ時事】AFP通信は7日、英F1ドライバーのジェンソン・バトンさん(35)と妻でモデルの道端ジェシカさん

(30)が仏南部サントロペの貸別荘に滞在中、何者かに侵入され、宝石などを盗まれる被害に遭ったと報じた。 

  2人にけがはなかった。 

  事件は3日夜発生。バトンさんと道端さんは当時、友人らと海辺の邸宅を借りて休暇を楽しんでいた。バトン

さんの広報担当者は、2人の男がエアコンを通じて催眠ガスを室内に流し、全員が意識不明になった隙に犯行

に及んだと説明しており、仏警察当局が確認を急いでいる。 

  奪われた品物にはバトンさんがジェシカさんに贈った婚約指輪も含まれていた。英紙サンは、被害総額は30

万ポンド(5800万円)に上ると伝えている。   

地中海渡る難民が過去最多=22万人超、さらに増加へ―国連 

時事通信 8月7日(金) 

  【ベルリン時事】国連難民高等弁務官事務所の報道官は6日、中東やアフリカから地中海を渡って欧州に到

着した難民や移民希望者が年初から7月末までに22万4000人に達し、過去最多だった昨年の総数21万

9000人を上回ったことを明らかにした。 

   

  ギリシャに12万4000人、イタリアには9万8000人が押し寄せた。報道官は「8月も多くの渡航が予想されて

おり、総数は大幅に増加するだろう」と語った。死者はこれまでに2000人を超えている。   

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【WORLD経済・政治・文化・社会展望】 

露、原爆投下を糾弾  日米分断狙い  ソ連参戦正当化も 

産経新聞 8月8日(土) 

  【モスクワ=遠藤良介】ロシアが、米国による広島、長崎への原子爆弾投下を「犯罪」として糾弾する動きを強

めている。米国を唯一の「非人道的な核使用国」と宣伝することで自国の核保有を正当化し、さらに日米分断を

図る思惑が垣間見える。「米国の原爆でなく、ソ連の対日参戦こそが第二次大戦を終結させた」と主張し、日ソ

中立条約を破った事実をかき消そうとする論調も目立つ。 

  プーチン露大統領に近いナルイシキン下院議長は最近、専門家を集めて原爆問題を討議する円卓会議を主

催。原爆投下には「当時の連合国だったソ連を威嚇する目的があった」などと批判し、「人道に対する罪に時効

はない」と述べた。 

 

  ナルイシキン氏はまた、「米ソの戦略核バランスのおかげで第三次世界大戦は起きなかった」とし、ロシアの

核戦力は平和目的であるとの主張すらにじませた。円卓会議の出席者からは、「国際法廷」を設けて「米国の

犯罪」を裁くべきだとする声が相次いだ。 

 

  主要メディアも「原爆投下から70年」を手厚く取り上げている。有力大衆紙コムソモリスク・プラウダは、原爆が

日本の降伏をもたらしたというのは「作り話だ」とする専門家のインタビューを掲載。「ソ連の参戦こそが、もはや

勝利の望みがないことを日本に確信させた」と伝えた。 

 

  政府系NTVは6日の特番で、米国には1945年10月、ソ連の主要都市を核攻撃する計画が存在した-との

内容を放送し、視聴者の恐怖心をあおった。 

 

  ただ、プーチン露大統領は昨年3月のウクライナ南部クリミア半島併合に際し、核戦力を臨戦態勢に置く用意

があったと公言している。露国防省はクリミアに核搭載可能な戦略爆撃機の大隊を配備する計画であるほか、

鉄道発射型の核ミサイル開発も急いでいる。 

 

  ロシアは核軍縮の流れに逆行しているのが現実で、一連のキャンペーンには原爆投下にかこつけて対米批

判を展開する目的がありそうだ。一方で、主要メディアは、ソ連による国際法違反である日本人強制抑留問題

には触れていない。 

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2.Trend 

(動画)NASAのケプラー望遠鏡、地球のいとこを発見 

2015.7.31 視聴時間 03:00 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44440 

(動画)冥王星に窒素の「氷河」か、探査機から新たな画像 

2015.7.29 視聴時間 01:46 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44425 

 

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3.Innovation/Motivation 

ノートPCサイズの電気自動車がお目見え、日本のココアモーター

ズが開発Reuters 2015年08月08日  TK 

日本の会社がカバンに入れて携帯できる世界最小の電気自動車を発表した。このスマートなデザインの小型1

人乗り移動機器は、SF映画の中でも通用しそうだ。 

近いうちに、この「WalkCar (ウォーカー) 」を東京の通りで目にできるようになるかもしれない。 

 

軽量アルミ製のこの世界最小の電気自動車は、最高時速10km、フル充電時での走行距離は12km。ポケット

サイズの乗り物を開発した会社はCocoa Motors (ココアモーターズ) だ。小さなカバンにも納まるようにデザイ

ンされた。 

ココアモーターズの佐藤国亮CEOは次のように言う。 

「『カバンに入れて持ち運べたら、いつでも携帯できて使うことができるな』と考えました。そういう乗り物を作るよ

うに友達から頼まれました」 

携帯できるということは駐車場の心配をする必要はないということだ。運転操作も簡単で、体重移動によって進

行方向を変更できる。 

その特徴により、セグウェイやトヨタのWingletのような大きいサイズの競合製品に勝てる、とココアモーターズ

は考えている。「WalkCarは私が一から作り上げたまったく新しい製品です。日本にもイノベーションを起こす力

があるところを世界に示したいと思っています」(佐藤CEO)。 

WalkCarは単なる楽しい移動手段というだけではなく、車椅子の人を簡単に押して回るだけのパワーもある。こ

の画期的な自動車は、クラウドファンディングサイトのKickstarterで今年末までにローンチされる予定。開発者

によれば資金集めに成功した場合は、およそ800ドルの価格で来年には製品を出荷する予定だという。 

【コミュニケーション】 

【リーダーシップ・フォローシップ】 

【ブランディング】 

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4.SOCIETY.CULTURE・EDU.・SPORTS・OTHERS 

日本をよく知らない他学部の学生に、「日本人のどこが好きです

か?」と聞いてみたら…―中国人学生 

Record China 8月8日(土) 

まもなく発表される安倍首相の戦後70年談話の内容と、それが日中関係にどのような影響を

及ぼすのかにも注目が集まるところだ。上海交通大学の周燿琳さんは、「政冷経熱」とも言われる微妙

な日中関係を「夫婦」に例えている。  

まもなく発表される安倍首相の戦後70年談話の内容と、それが日中関係にどのような影響を及ぼすのかにも

注目が集まるところだ。上海交通大学の周燿琳さんは、「政冷経熱」とも言われる微妙な日中関係を「夫婦」に

例えている。 

 

「一衣帯水の隣国」。日中関係を言う時、一番よく使われてきた言葉かもしれない。人間関係に例えると、真っ先

に思い浮かぶのは「お隣さん」だ。しかし単なる「お隣さん」だけでは、何か物足りない。ただ隣に住んでいる人

同士なら、その人が何をしているとか、自分のことをどう思っているかについて無関心のままでいても平気だし、

仲が悪くなっても最悪の場合引越しさえすれば済む。しかし日本と中国は、そうするわけにはいかない。物理的

な意味だけではなく、経済などさまざまな面において、離れようとしてもなかなか離れられない2人。それは「夫

婦関係」とは言えないだろうか。 

 

知り合って2000年以上、ずっと関わり合ってきて、ずっとそばにいる2人だ。中国語には「100年の縁あれば同

じ船に乗れる。1000年の縁あれば同じ枕で眠ることができる」ということわざがあり、日本語では「袖すり合うも

他生の縁」と言われる。人と人の絆をこんなに大切に思う2人であるのに、国家の立場を持ったとたん、関係が

冷え込んでしまう。 

 

大学に入ったころは、日中の間で何かトラブルがあると、自分の居心地が悪くなるなんて微塵も考えていなかっ

た。日本語専攻一本狙いだったから、合格できて好きなものに熱中できることを単純に喜んでいた。日本語を勉

強している学生なら誰でも同じような経験をしたことがあると思うが、学部で何か日本語に関するイベントの準

備を始めると、日本を良く思っていない別学部の学生から悪く言われるのではないかというプレッシャーをどうし

ても感じてしまう。中国文化に惹かれて、中国のことが大好きと誇らしげに宣言している外国人はたくさんいる

のに、日本のことが好きだとは、いつの間にか言いづらいことになっていた。 

 

歴史認識、中国脅威論、反日感情。2人の間に障害が溜まり、断片的に流れる情報に煽られる。「こっちの気持

ち、なんで分かってくれないんだよ!」。夫婦げんかでよく聞こえてくる叫び声が、中国からも日本からも聞こえ

てきそうだ。政治的な関係が冷え込む一方、そうした困難を乗り越えていこうとする民間交流の動きは相変わら

ず力強く進行している。民間協会は文化交流促進に力を尽くし、多くの人が黙々と自分の努力で日中間の障害

を取り除こうとしている。互いに国内にさまざまな問題を抱えた状況ではあっても、最も大切なのは相手の国を

よく理解する者の存在だ。「デリケートな問題だから」などとためらわず、堂々と胸を張って、日本のこと、日本人

のことをもっと知りたいと思って初めて友好が始まる。 

 

日本語学部以外の人に「日本人のどこが好きですか?」と聞いてみた。「いつもスマイルで礼儀正しい」「ルール

を大切にする」「女の子がすごくキュート!男の子もお洒落でかっこいい!」「効率よく仕事をする」。一方、中国

語も中国文化もよく知らない日本人に「中国人のどこが好きですか?」と聞いてみた。「大らかで細かいことを気

にせず、明るく素直で率直、好きなものに対してまっすぐに愛情を注ぐ中国の人々。私は本当に好きだ」。こんな

「好きだよ」の数々。いつかあなたにも聞いてもらいたい。いつかあなたにも言ってもらいたい。いつも私が聞い

ていたい。いつも私が言っていたい。(編集/北田) 

 

※本文は、第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「壁を取り除きたい」(段躍中編、日本僑報社、

2006年)より、周燿琳さん(上海交通大学)の作品「私から見た日中友好」を編集したものです。文中の表現は

基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。 

日本と中国の教育の違い=「息子の飲み物にだけバニラアイスが付

いていた」―在日中国人Record China 8月9日(日) 

7日、私は家族とともに日本に住む中国人の母親である。仕事の関係で、私たち一家は上海に

も3年近く暮らした。写真は日本の公園。  

2015年8月7日、羊城晩報は、ある在日中国人女性について紹介した。 

 

私は家族とともに日本に住む中国人の母親である。仕事の関係で、私たち一家は上海でも3年近く暮らした。

息子が日本で3、4年のサッカークラスを受けていたので、上海滞在中も、日本人が上海で設立したサッカーク

ラブで引き続き練習させることにした。このサッカークラブの指導方針は日本とほぼ同じだった。中国人の生徒

向けのグラウンドもあり、家から近かったため、私たちも毎週1回このグラウンドに通い、中国人の子どもたちと

一緒に練習することとなった。 

 

このサッカークラブはあくまで趣味を育てるためのクラブだったが、日本の同じようなクラブと比べると、練習内

容がずっと簡単なのが気になった。私はコーチに、「もう1年以上通っている子どもがなぜまだ簡単なドリブル

の練習をしているのか」と聞いた。日本人のコーチは私に、「中国の子どもは言うことを聞かない。日本の子ども

はコーチが言うことを1から10まで聞くが、中国の子どもの多くは3まで聞くともう我慢できなくなってしまう。そ

のため複雑な技術指導はなかなかできない」と答えた。 

 

私はこの話を上海の小学校の校長に話し、どうしてなのか尋ねてみた。この校長は、日本の基礎教育にとても

興味を持ち、日本人学校の授業の視察にもよく出かける人である。校長によると、日本は「忍耐」が一番大事な

社会であり、どの大人も忍耐力が強く、子どもも我慢強いのだという。 

 

これを聞いて、息子が3、4歳のころ、休暇を過ごしに上海に連れて行ったときのことを思い出した。ある時、何

人かの友人と集まって食事をした。みんな子どもを連れていた。大人は料理を頼み、子どもには自分で飲み物

を注文させた。息子はほかの子どもよりずっと小さかったが、ウエイターのメニューの説明を最後まで聞いてか

ら頼んだのは息子だけだった。ほかの子どもは聞き終わる前に頼むか、聞きもせずに頼んでいた。飲み物がや

ってくると、息子の飲み物にだけバニラアイスが付いていた。ほかの子どもたちが騒ぎ始めて、やっと大人たち

も息子がどれだけ真剣に注文していたかに思い当たった。 

 

日本人は、小さいころから選ぶ権利を子ども自身に与え、選んだ結果の責任を子ども自身に負わせる。選択が

間違っていたら後悔することになるから、選ぶということは簡単にできることではない。そのため日本の子どもは

小さいころから、限りある資源を利用して最大の利益を得ることを知っている。サッカーの練習も同じだ。日本人

の子どもはコーチの話を聞いてから練習した方が、自分で勝手にボールを蹴るよりもおもしろいと知っているの

である。 

 

日本の小学校でも、授業で話を聞かない子どもは少なくない。だがグラウンドでコーチの話を聞かない子どもは

ほとんどいない。理由は簡単である。学校の勉強は義務だが、サッカーの練習は自分で選んだことだからだ。 

 

日本の育児書もそのように保護者に教えている。子どもを連れておもちゃを買うとすれば、保護者は2つか3

つの候補を選んでもいいが、最後は子どもに選ばせる。小さい頃から自分で選ぶ習慣を身につけさせるためで

ある。 

 

息子が最初に自分で「選択」をしたのは3カ月のときだった。息子を連れて日本の病院に予防注射を打ちに行

った時のことだった。注射を終えた医師は、大声で泣く息子のために、キャラクターの絵の入った2枚の絆創膏

を取り出した。両手で2枚とも取ろうとする息子に、医師は辛抱強く、1枚だけだと言って聞かせた。息子はそれ

を理解したようで、少し迷ってから1枚を選んだ。この小児科医師がこうしたのは、実際には保護者の私に見

せ、保護者を教育するためだったと考えられる。 

 

日本人がこうしたしつけをするのは、小さいころから選択の余地を子どもに与えなければ、子どもが自分は本当

は何が必要で、何をしたくて、何に興味があるのかがわからなくなってしまうからなのである。(提供/人民網日

本語版) 

奇跡?劇的に清潔になる中国「トイレ事情」、あの悲惨なトイレが

ついに変わる?中島 恵 :ジャーナリスト 2015年08月08日  TK 

上海にある公衆トイレの外観。見違えるようにきれいになった(筆者撮影) 

「あぁ、日本を旅行したときに買ってきた例の温水洗浄便座ね。帰国後、すぐに工事会社に電話して設置し、ち

ゃんと使っていますよ。日本で使ってみて気持ちよかったので、どうしても家に取りつけたかったから。家族も喜

んでいます」 

こう答えてくれたのは北京在住の主婦。この主婦とは、以前銀座で街頭インタビューをしたときに偶然知り合

い、今回、北京で「購入後」の感想を聞くことができた。 

本当に「日本製の便座」を使っているのか? 

別の日、上海の友人たちに「家庭で温水洗浄便座を使用しているか?」と聞いてみたところ、ある人は「友人が

日本で買ってきたのだけど、規格が合わなかったと聞きました。でも、どうしても使用したかったので、土台の便

座自体、わざわざ取り替える工事をしたそうですよ」と教えてくれた。 

なぜこんな質問をしたのかというと、拙著『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』を出版した際、本を読

んだ日本人数人から「中国人は日本で便座を爆買いしているようだが、日本の家電製品を買っていって、中国

でちゃんと使えているのか?」という質問が複数寄せられたからだ。 

確かに今春以降、中国人の「爆買い」ニュースで便座や炊飯器が大きく取り上げられたが、「爆買い後」の情報

はほとんど日本に伝わってこない。「あんなに大量に買って帰って、それをどうしているの?  ちゃんと使えてい

るの?  説明書を読めるの?」という素朴な疑問を日本人が抱くのは当然だろう。 

今春、中国人が日本で買って帰った商品の第3位が温水洗浄便座であることは、こちらの記事でも述べた通り

だ。それほどまでに中国人は日本に来て温水洗浄便座を欲しがり、そのことに逆に新鮮な驚きを覚えた日本人

は多かった。 

一方で、中国のトイレといえば、いまだに「汚い」と連想する日本人が多いのも事実。私の日本の友人の中には

「中国はトイレが汚いから、絶対行きたくない」と断言する女性までいる。 

それほどまでに中国のトイレには「汚い」「臭い」「不潔」といった悪印象を持つ日本人が多いが、先日、北京や

上海を訪れて驚いたのは、公共施設や百貨店、オフィスビルなど、どこへ行っても、以前に比べてトイレが格段

に「きれいになっていた」ことだった。 

この1年で劇的にきれいになった? 

「きれいになった」というのはあくまでも私の主観的な感覚であり、自分の中での過去との比較なので、誰が見

てもそう思うとはいえないが、少なくともちょうど1年前、北京と上海のトイレを定点観測したときに比べ、トイレ

を取り巻く環境は明らかに変わった。 

ショッピングモールのトイレの洗面所もこんなに清潔になっている 

具体的にいうと、公共施設のトイレに関して「洗浄の水がちゃんと流れる」、「(公衆トイレを除き)トイレットペーパ

ーが8割以上の確率で設置されている」、「トイレのカギがかかる」、「洗面台の水に手をかざすと水が出る」、

「便座が以前ほど汚れていない」などの現象が目に見えて起こったのだ。今年2月に上海を訪れたときにも同

様の変化を感じたが、今回、その感覚は“確信”に変わった。 

これらは日本ではすべて当たり前のことなので、逆に日本人は驚くだろう。「これまでカギがかからなかったトイ

レもあったの?」と。その通りだ。カギがかからない、トイレの水が流れない、汚物が散乱……といったことは、

中国では日常茶飯事だった。 

3、4年前まで、上海の公共施設では、たとえばトイレが6つあったら、2つくらいはカギが壊れていることが“普

通”だった。農村出身者などはもともとトイレにカギをかける習慣がないので、トイレを開けっぱなしで使う人もい

た。誰もいないと思ってドアを開けると中で人が用を足していてびっくり、ということも(開けられた側は別に驚か

ないのだが……)。 

水洗トイレなのに、バーが機能せず、洗浄されていないこともあった。そのせいもあるのだが、便器内に汚物が

残っていて汚かったり、便座の上に靴の足跡があり、泥や土がついていて、そのままではとても便座に座れな

いということもよくあった。 

それほどまでに、中国のトイレは悲惨な場所だったのだ。中国に慣れている私でさえ、中国ではあまりトイレに

行きたくないので、水分を控えるくらいだった。 

だから今、まさに中国のトイレが激変し、日本人の目から見ても「かなりきれいになった」と思えるようになったこ

とは大変な変化だ。中国社会に何か地殻変動が起きているのではないかとさえ感じた。 

それはなぜなのか。むろん、経済成長の恩恵が背景にあるだろう。昨年の中国のGDP成長率は約7・4%。高

度経済成長の時代は終わり、「新常態」(ニューノーマル)という安定成長期に入っているが、高度成長は止まっ

ても、ソフト面はむしろ逆で、じわじわとよくなってきている。 

日々の生活にゆとりが生まれ、人々は単にモノを買うだけでなく、より品質のよいものを求めるようになった。ま

た、生活の質が向上し、家庭内をきれいにしたり、快適な生活を求めたりするようになった。豊かな生活の象徴

こそ、トイレという日陰の存在に集約されているのではないか、と思った。 

だからこそ、経済力がついた彼らはあんなにも日本に行って高品質な商品や便座を求めたのであり、ようやく中

国人が「汚くて当たり前」だったトイレに気を配り、改善しようとする余裕が生まれた、といえるかもしれない。 

急速に売り上げを伸ばすTOTO製 

その証拠は随所に現れている。TOTOの中国法人、東陶(中国)董事・総経理の深澤徹氏に話を聞いてみる

と、やはり、同社の温水洗浄便座「ウォシュレット」も、この1~2年、急速に売り上げを伸ばしているという。とく

に今年1~3月は前年同期比で3割増しというほど顕著に伸びている。 

「以前から中国市場で当社の『ウォシュレット』への関心は高かったのですが、今年の日本での爆買いでさらに

中国人の間の認知度が上がった気がします。中国人は友人の紹介やクチコミを重視しますので。認知度アップ

とクチコミが相乗効果となり、一気に臨界点を超えたことが、今の売上増につながっているのではないかと思い

ます」(深澤氏) 

TOTOのネオレストアクティライト。金のラインが富裕層に人気 

昨年の中国の高級温水洗浄便座市場は約40万~50万台と推定されるが、その中で同社は約30~40%のシ

ェアを占めているようだ。同社の売れ筋商品は、低価格品だと2000~2500元(約4万~5万円)だが、約5万

元、日本円にして100万円程度する最高級品である「ネオレスト アクティライト」も月に2~3台売れているとい

う。これは、便座の一部に金色や銀色のラインが入っていて「高級感漂うところが富裕層に人気」だという。 

また、今年7月、同社は日本国内の一部の免税店でも中国仕様の220ボルトの温水洗浄便座を販売し始め

た。 

以前、同社は日本の免税店で中国仕様の便座を扱っていなかったが、「日本で買って中国で設置するといった

サポートを受けたい」という日本旅行する中国人顧客の要望に応えた形で販売を決めた。便座に限らないが、

中国人の中には、中国でもまったく同じ商品が売られているにも関わらず「中国より日本で売っている商品のほ

うがよいものに違いない」という思い込みにも近い“日本信仰”が根強くあり、それが日本での便座爆買いに結

びついているからだ。 

オフィスのトイレも変わり始めた 

同社の販売代理店を経営する張松泉氏によると、個人(一般家庭)への営業活動を積極的に行っているという

が、オフィスビルなど業務用でも温水洗浄便座の導入は広がりつつある。 

浦東地区にある超高層ビルなどでは、一部のトイレに女性が着替えをしやすいフィッティングボードや、個人用

ボックス(女性社員がハブラシなど私物を入れるためのもの)も導入し始めるという。外資系企業などでは、オフ

ィス内のトイレ設備も、女性社員への福利厚生の一環だと捉えており、「企業側がトイレを、ただ用をたす場所で

はなく、リラックスできる場所だというふうに受け止め始めた」(深澤氏)ことは画期的なことだ。今に中国の一流

企業のオフィスも、日本のオフィス並みに「きれいなトイレ」が当たり前になるかもしれない。 

中国で展開する日系企業でも、温水洗浄便座までは設置されていないものの、トイレに対する意識改革が進ん

でいる。現在使っているトイレの掃除することで、社員の意識を変えていこうという試みもある。 

以前取材したことがある上海市郊外の日系企業の総経理は中国人だったが、日本的経営を学び、日系企業で

数十年間働いてきた人物。同氏の指導により、社員が率先してトイレ掃除をするようになったと話していた。 

トイレ掃除をする広東省の日系刺繍メーカーの社員  

その企業では「取引先がくると、真っ先にトイレを貸してください、というんです。うちのトイレは他の中国系企業

よりもずっときれいだからだそうで、お客さんがそう話してくれたときには、とてもうれしかったですね。松下幸之

助じゃないですけど、トイレ掃除をすると会社の運もよくなると思い、社員一丸となってトイレ掃除に励んでいま

す」と話していた。 

広東省にある日系の刺繍メーカーでも、3カ月前から社員全員がトイレ掃除を熱心に行うようになった。同社の

社長によるときっかけはこんな出来事からだった。 

「ある取引先の日系企業の方々とうちの社員とで懇談していたとき、『ぜひ当社について悪いところを教えてくだ

さい』と意見を求めたのです。すると、『トイレが汚い』という率直な声が挙がりました。正直に悪いところをいわ

れてうちの社員はびっくりしたみたいで……。でも、それが彼らのプライドを刺激し、翌日には5S委員会を立ち

上げてトイレ掃除を開始。今では見違えるようにきれいになったんですよ」 

  企業が目先の売上高だけでなく、社員の意識を変え、より快適な環境で仕事をするという部分に目を向けるよ

うになったことは中国社会の大きな変化だ。その一端が、急速に改善しつつある「きれいなトイレ」に象徴されて

いるような気がしてならない。  

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5.ECONOMY・POLITICS・MILITARY AFFAIRES 

王岐山イチオシの日本人歴史学者、「世界史の始まりはモンゴル

帝国」の真意福島 香織  2015年8月5日(水)  NBO 

福島 香織ジャーナリスト大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を

経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退

社後フリーに。 

  先週の日曜、東洋史学の大家の岡田英弘・宮脇淳子夫妻のお宅でランチをごちそうになった。そこで話題

に上ったのが「王岐山氏が岡田英弘先生の本を中国で絶賛したのはどういう意図だろうか」ということだった。

王岐山はいわずと知れた中国共産党中央政法委書記で反腐敗闘争の陣頭指揮をとっている習近平の右

腕。4月に中南海で米政治経済学者のフランシス・フクヤマ、在米の比較経済学者の青木昌彦、中信証券国

際董事長の徳地立人の三氏との座談会で、王岐山は岡田英弘をいきなり絶賛しはじめた。王岐山は中国社

会科学院近代史研究所に在籍経験もある歴史好きの本好きであることは有名で、気に入った本をやたら人

に勧める性格である。が、中国の一流の政治家が公式の場で何の(政治的)意味もなく日本の史学家の名を

あげて推奨するだろうか。 

  この催しは外国専家局が主催する改革建言座談会と題され、2015年4月23日に政治の中枢である中南海

で行われた。こうした催しにはいくつかランクがあるが、人民大会堂ではなく釣魚台迎賓館でもなく、中南海に招

待されるのは国賓待遇といっていい。この会談の内容は「共識網」という中国の思想サイトと中国系香港紙「大

公報」に発表され、まもなく削除されたので、発言のどこの部分がまずかったのか、習近平政権として否定して

いる普遍的価値観を認めているととれる発言箇所があったからではないか、といろいろと憶測を呼んだ。 

日本の伝統史学に懐疑を示す“蔑視派” 

  座談会が始まってすぐに王岐山はこう語りはじめた。 

  「…去年、岡田英弘の歴史書を読みました。そのあとで、私はこの人物の傾向と立ち位置を理解しました。彼

は日本の伝統的な史学に対し懐疑を示し、日本史学界から“蔑視派”と呼ばれています。彼は第三世代(白鳥

庫吉、和田清につぐ?)の“掌門人(学派のトップ)”です。モンゴル史、ヨーロッパと中国の間の地域に対するミ

クロ的な調査が素晴らしく、民族言語学に対しても非常に深い技術と知識をもっており、とくに語根学に長けて

います。彼は1931年生まれで、91年に発表した本で、史学界で名を成しました。これは彼が初めてマクロな視

点で書いた本で、それまではミクロ視点の研究をやっていたのです。私はまずミクロ視点で研究してこそ、ミクロ

からマクロ視点に昇華できるのだと思います。大量のミクロ研究が基礎にあってまさにマクロ的にできるので

す」… 

  岡田は1957年26歳のとき、「満老文檔」(清朝初期の満州語記録)共同研究で史上最年少で日本学士院賞

を受賞するも、既存の中国正史に追従する中国史学に異を唱えたことで、日本の史学界では異端児扱いされ

続けた。それを今、中国一の歴史通の政治家が高い関心を持っているのは面白い。 

原稿の中では、書名は出ていないが、岡田の著書の中で華字翻訳されているのは今のところ台湾で出版され

ている『世界史の誕生』(ちくま文庫)だけであり、また実際、この対談のあとに十数社の中国の出版社から同書

の中国出版オファーが殺到したらしいので、王岐山が読んだのが同書であることは間違いない。“蔑視派”とい

うのは王岐山の造語だろう。日本でそんな呼ばれ方はされていない。意味は推測するしかないのだが、この座

談会後にネットに書き込まれた解説では、おそらくは、日本の伝統的史観、神話色彩の強い古代史を実証主義

的な手法で批判した研究をさすようだ。日本では使われることのない言葉をわざわざ使って、岡田を論評してい

るのも不思議だ。 

「優秀なDNAが中国文化の中にある」 

  さらに王岐山は、フランシス・フクヤマに対してはこんな発言をしている。 

  「あなたの言う、国家、法治、政府の説明責任、全部の中国の歴史の中にそのDNAがあります。中国文化の

中にそのDNAがあるのです」 

「政治は西側ではどのような解釈ですか? 中国では“大衆を管理する”ことが政治です」 

  「米国の友人は、米国はたかだか200年の歴史しかない、と言っていますが、私は違うと思いますね。米国は

欧州地中海文化を伝承しているのです。岡田英弘は言ってますよ。文明があるということは必ずしも歴史があ

ると言うことではない。歴史と文明がともにあるのは世界上、地中海のギリシャとローマ、そして中国だけだと。

彼はこうも言っています。中国の歴史は一般に司馬遷から語られているが、孔子から語られるべきだ。史記にも

孔子は記載されている、と。中国の現代化のプロセスはまだまだ長い道のりがあります。我々がまずはっきりさ

せておかなければならないのは自己の歴史と文明、優秀なDNAが現代化の実践の中で発揮されなければな

らない、ということです。優秀なDNAは中国文化の中にあるのです。中国は多民族の遺伝の中で変異している

のです。中華民族はさらに西側文化のよいものを吸収し、世界上各民族の優秀なものを吸収しなければなりま

せん」 

  「(中国の憲法は法治を実現できますか、というフクヤマの質問に対して)不可能です。司法は必ず党の指導

のもとに進行されねばなりません。これは中国の特色です」 

これは、習近平政権の従来の立ち位置を踏襲している。欧米の民主主義や法治を中国は受け入れられない、

政治も法も共産党が大衆を管理するためにある。中国には中華文明にはぐくまれた秩序、手法がある、外国に

手伝ってもらわなくて結構、と米国学者に主張するために、岡田著作中の都合のいい文言を捻じ曲げて引用し

ている、と読めなくもない。 

  だが、王岐山も岡田の「傾向と立ち位置」を理解しているとわざわざ言及している。 

本来の岡田史観は「中華復興」と対立 

  岡田中国史観は習近平政権の「中華民族の偉大なる復興」路線と、むしろまっこうから対立する考え方であ

る。その特徴は漢字で書かれた中国正史資料だけではなく中央ユーラシアの遊牧民族史料からのアプローチ

で、漢字の中国正史が描く「正統な皇帝を中心とする中国世界」」という中国4000年の歴史観の実態とかけ離

れていて、その主役というのは常に入れ替わり激しく変化し、いわゆる「中国人」はむしろ被支配層であった時

間の方が長かったという見方だ。 

  『世界史の誕生』は歴史の新しいとらえ方を考察、提示することがテーマだが、元も清も中国を支配した王朝

であって、中国の王朝ではないと書いているし、支配階層で文化も高い「夷狄」を野蛮人とさげすむ中華思想

は、被支配層の中国人の病的劣等意識の産物ともいう。また「共産党中国のチベット統治の正統性を元清朝時

代の関係を引き合いに出すならば、現在のモンゴル国こそ中国領有の権利を主張できる立場にある」などとも

言っている。中華民族の優秀なDNA論を補強するためならば、もっと引用しやすい中国史家が日本にも海外

にも山ほどいるはずだ。 

  ではなぜ岡田英弘を持ち上げたのだろうか。背景には、この2年ほど盛り上がっている「新清史」論争がある

かもしれない。「新清史」とは1990年代の米国で台頭した清朝研究の一学派で、「満州、モンゴルなど少数民

族史料を重視した反“漢族中心論”清朝史学」(百度百科)という。岡田史学にアイデンティティ研究を足したも

の、という表現もある。新清史の中心研究者の一人、マーク・エリオットは岡田の弟子である。 

聞くところによると、中国では江沢民政権時代、現代中国の領土と民族的基礎となる清朝の歴史を国家の正史

と位置付けるため、大予算を投じた「大清史」編纂プロジェクトが立ち上がった。この頃、北米で台頭した新清史

学派が話題となり、英語のできる院生たちが夢中になり、新清史の成果を参照して論文を書くこともかなり多か

ったという。 

  一方、これを敵視する教授たちも多く、論争になった。こうした論争は今にいたるまで史学界で続いており、特

に去年の秋ぐらいから、「清朝は中国王朝ではないのか」「清朝の雍正帝は華夷一家と言っており、このころは

民族と言う言葉はまだなかったのではないか」「新清史は満州族の漢化の事実を否定しているのではないか」と

いった論争や反論が登場している。最近も7月7日の中国社会科学報では「“新清史”背後の学風問題」と題し

た徹底反論が掲載されている。 

研究業績と研究スタイルに感銘か 

  岡田に師事した清朝史研究者・楠木賢道が現在、吉林師範大学に招聘されているのも、こうした新清史論争

をめぐる研究者たちの関心の高まりがあるかもしれない。楠木は同学で「江戸時代の清朝研究」という講義を受

け持っているが、「江戸時代の知識人は国民国家史観と無縁であり、清朝の持つ権力分散的で多元的、多文

化的、多民族的な体制がうまく機能していたことを理解していた、この理解は岡田先生やその影響を受けたマ

ーク・エリオットの“新清史”に近い」という。院生向けだが修士から副教授までが集まる人気講義だという。 

  楠木に王岐山発言をどう理解するかと尋ねるとこう答えた。 

  「『大清史』編纂がそろそろ最終局面にきています。ですが中国の史学界は一次史料読解の訓練、史料に基

づく微視的研究が充実しているとはいえず、微視的な研究に基づく着実な巨視的構想も少なく成果も玉石混

淆。(近代史研究所にいた)王岐山は歴史研究とは何かを理解している人でしょう。また、それらの報告書に目

を通す立場にあり、感じるところがあったのではないでしょうか。そして最近華字翻訳が出た『世界史の誕生』を

読んで、説得力のある壮大な構想に驚愕した。さらに岡田先生について調査し、長い時間をかけた地道な史料

研究と、結構現代中国に対して批判的な発言をしてきたことを知った。中国について批判的な態度はとっている

けど、研究業績と研究スタイルに感銘を受け、中国の研究者も見習ってほしいと、思わず話題に出してしまった

のでは? 王岐山がチベット問題、ウイグル問題について、現状とは違う解決方法を模索していて、岡田先生の

名前を出したと考えるのはうがちすぎでしょう」 

私も自分なりに憶測をめぐらしてみよう。王岐山は『世界史の誕生』については、本の副題でもある「世界史は

モンゴル帝国から始まった」というフレーズに惹かれたのではないだろうか。現在の世界の大部分が西洋の秩

序に支配されているなかで、世界史の起源は西洋ではなくてモンゴルであり、元の文明は清へと受け継がれて

現代中国に至るという風に考えれば、中華秩序が世界の半分ぐらいを占めてもいい、と言う根拠になると考え

たとか。問題は清朝の国家アイデンティティだが、その部分は「新清史」を論破して、間もなく完成する「大清史」

で、現代中国が大清国の正統な継承者と結論づければいい。中国で出版される歴史本は厳しいセンサーシッ

プがあるので、岡田著作を翻訳出版することになっても、都合の悪い部分は削り、むしろ中国の公式の歴史観

を補強することに使えるかもしれない。 

「歴史を持つ強さ」その本気度は? 

  「歴史と文明をともにもつのは地中海国家と中国だけ」「世界史の始まりはモンゴル帝国」と言いたくて、岡田

英弘の名前を「民主主義と自由主義経済の最終的勝利で歴史終焉」と書いたフクヤマにぶつけてみたのだが、

そのあとネットで「王岐山が言った岡田英弘って誰?」という反応が広がって、実はかなり中国にとって都合の

悪いことも言っていると知られてしまい、そういう人物を持ち上げてしまった王岐山が、後になってバツが悪くな

って、座談会原稿を削除した?とか。 

  あるいは、王岐山は本気で清朝末期と様相が似てきたという指摘を内外で受ける現代中国の直面する問題

の打開策のヒントとするために、あらゆるタブーを破ってでも清朝研究を発展させたいと思って、こんな発言をし

たと考えるのはどうだろうか。そうだとすると、王岐山は、根は習近平と考え方を異にする「改革派」ということに

なるが。 

  岡田著作でもたびたび言及されているが、歴史を持つ国は歴史を持たない国よりも強いのだ。中国が本気で

強くなるために、いままで史料や情報や思想上制限してきた箍(たが)をはずし、本気で岡田史学・新清史学を

含めた多様な歴史研究の方向性を模索しているとしたら、これはこれで侮れない。 

新刊! 画期的中国人論『本当は日本が大好きな中国人』 

『本当は日本が大好きな中国人』 

反日デモ、抗日ドラマ……。連日のメディアの情報は「中国人はみんな反日だ」というイメージを私たちに植えつ

ける。 

しかし実際は、今や東京の町中は中国人の観光客だらけ。なぜ彼らはいがみ合う日本に夢中になるのか。 

そこには共産党政権を背景とした複雑な歴史、文化、社会状況が大きく関係していた。両国の知られざる関係

を浮き彫りにした画期的文化論。朝日新書/2015年5月13日発売。  

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6.MARKETING 

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7.MESSAGE 

【書評】オールド・テロリスト  村上龍著AERA編集部 2015年8月8日 DOL 

老人たちが義憤に駆られて暴走する 

オールド・テロリスト  村上龍著  定価:1,944円(税込)  

  村上龍の最新長篇小説『オールド・テロリスト』のカバーには、11人の老爺が描かれている。彼らはみんな機

関銃や日本刀を手にしているが、その表情は、まるで修学旅行の記念撮影に興じる少年たちのように明るい。 

 

  しかし、彼らはタイトルどおりのテロリストである。財をなし、社会的な地位や名誉もありながら、〈腐りきった日

本をいったんリセットする〉ために柔軟なネットワークを組織し、生きる力を失った若者たちを犯人に仕立ててテ

ロを実行していく。場所はNHKの西玄関、池上商店街、新宿ミラノ……。フリージャーナリストの関口は巧妙に

それらの目撃者とされ、取材を進めるうちに彼らの背景に旧満州人脈があり、旧ドイツ軍から譲り受けたとんで

もない武器まで用意されていることを知る。そして、権力も権威も知力も駆使した老人たちの緻密な暴走は、目

的を達成するためにふさわしい標的に向かっていく。 

 

  日本をリセットするには、日本を焼け野原にするしかない。そう信じる老人たちの計画と手続きが、この作品に

は詳細に記されている。起きてしまったテロの現場の惨たらしさは、村上らしい徹底した描写でこちらに迫り、関

口とともに激しい恐怖すら覚える。だから、一連の危機に巻きこまれてしまった彼の精神がボロボロになっていく

過程に同調してしまい、そこでもまた強烈なリアリティーを感じて動揺してしまう。 

〈年寄りは、静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ〉 

  私生活に何の問題も抱えていない老人たちが義憤に駆られ、粛々とテロを実践する物語。デビューから39

年、村上作品には初期から日本社会への怒りがこめられてきたが、今回の『オールド・テロリスト』にいたっては

それがそのまま、老人たちの言動を通して表出していた。納得できる言説があまりに多くて私はちょっと戸惑

い、なぜか何度となく、楯の会の制服姿の三島由紀夫を思いだした。※週刊朝日 2015年8月7日号 

絶望の中で「希望」を見出す。理想論と現実論を持ち合わせた若

者たちへの期待竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソー

シャルプランニング代表] 【第73回】 2012年7月31日 DOL 

  今回は、「日本の若者が希望を持っているのかどうか」について考える。 

  この国には希望がない。そんなメッセージが世の中に溢れ出してから、少なくとも10年は経っている。村上龍

が『希望の国のエクソダス』(文芸春秋刊)を上梓したのがちょうど2000年のこと。この小説の中で主人公は「こ

の国には何でもあります。しかし、希望だけがない」と語る。村上龍らしいエッジの効いたこのフレーズは日本社

会に大きなインパクトを与え、これ以降、日本は絶望の国で、若者には希望がないことになってしまった。つま

り、日本の若者はみんな不幸、ということになってしまったのだ。 

内閣府の調査データが裏付ける日本の若者の幸せ度 

  ところが最近、ちょっと事情が違うのではないか、と考える人間も出てきた。筆者もそのひとりで、若者が絶望

していて希望を持てないとすれば、近年の社会貢献熱の高まりは説明がつかない。 

  ある意味、日本が絶望的な状況であることは確かだとしても、そもそも希望とは絶望の中から生まれるものだ

し、実際に日本でも世界でも、絶望の中から希望のメッセージを発信している若者は数多い。仮に、村上龍が

「希望の国のエクソダス」を書いた当時の日本の若者のほとんどが希望を失っていたとしても、実感としては希

望を取り戻しつつあるのではないか、と思っていた。ただし、データがなかった。 

  いまの若者は実は幸福なのだ、ということについては、昨年リリースされた古市憲寿の著書『絶望の国の幸福

な若者たち』(講談社刊)によって明らかにされ、大きな話題を呼んだ。なにしろ、「日本の若者は絶対に不幸だ」

と思っていた大人たち(そして多くのマスコミ)の常識を覆したわけだから。 

  実は、この本が話題になったとき、この社会学専攻の大学院生が独自の調査によってこのことを明らかにした

のかと思ったのだが、実はそうではなかった。日本の若者が幸福であることの基本的な根拠は内閣府の「国民

生活に関する世論調査」である。つまり、誰でも入手できるデータが根拠になっている。逆に言えば、データは

開示されているのに、誰もそのことに気がつかなかったということだ。筆者も見逃していた事実で、不明を恥じ

た。 

  内閣府の調査によれば、2010年の時点で20代の若者の70.5%が現在の生活に「満足」している。他の世代

の満足度は、30代が65.2%。40代が58.3%。50代では55.3%である。いまの若者が絶望しているという「思い

込み」は、大人世代が現在の生活にあまり満足していないことによるものかもしれない。特にアラフィフのバブル

世代は、あの黄金期と今を常に比べてしまう習性があるから、その視点で若者をジャッジしていただけかとも思

う。 

  ちなみに、若者の生活満足度は年々上昇しており、1960年代後半では約60%、70年代に50%まで下がる

が、90年代後半からは70%前後を示すようになったという。90年代後半といえば、山一証券や拓銀が破綻し

たりして、「いい大学を出ればいい会社に入れ、いい生活ができる」という日本型学歴神話が崩壊した時期で、

大人たちは価値観の崩壊と日本経済の崩壊のダブルパンチでまさに絶望的な気持ちになっていた。当の若者

たちも就職氷河期に突入していた時代だが、その頃に生活の満足度がピークに達していたというのは興味深

い。なぜそうなったのかについてはもう少しデータを集め、論考する必要があるが、これは事実である。 

  というわけで、いまの日本の若者はおおむね、生活に満足しているわけだ。最近、「幸せの国・ブータン」が人

気となり、ブータン的生活に憧れる人も増えてきたようだが、若者の7割が生活に満足している日本も、十分に

「幸せの国」なのではないかと思う。そう言うと、「生活に満足していることと、幸せであることはイコールではない

のではないか?」と言う人もいるが、たしかにそれは一理ある。 

  しかし筆者は、生活に満足していても、希望がなければ人間は幸せとは言えないと思う。では、日本の若者た

ちには、村上龍が描いたように、本当に希望がないのだろうか。実は、日本の若者には「希望がある」のだ。 

日本の未来を絶望しながら、自分の将来には希望を感じる 

  未成年を対象に、すべての選挙において「模擬選挙」を行なっている「模擬選挙推進ネットワーク」では、10代

の若者(中学、高校、大学生)を対象にアンケートを行なった。実施時期は、今年の5月16日~6月13日。有

効回答数は1999名。調査方法は、これまで未成年模擬選挙に協力してきた学校において、在籍している生

徒・学生に対する質問紙方法(マークシート+自由記述)で実施した。 

  この調査によれば、いまの生活に満足している10代は約60%。(少し満足28.6%。満足29.2%)。前述の内

閣府調査による20代の満足度より少し低いが、過半数が満足している。 

  注目は、「あなたは、自分の将来に希望があると感じていますか?」という質問に対する回答で、過半数が「希

望がある」と回答している(少しある30.2%。ある23.3%)。ちなみに、「どちらとも言えない27.8%」「あまり希望

がない13.8%」。「希望がない」は、わずか4.8%である。 

  ただし、「全体的に見て、いまの日本は良い方向に向かっていると思いますか?」という質問に対しては、実に

73.5%が「思わない」と回答している(思わない33.5%、あまり思わない40%)。良い方向に向かっていると思っ

ているのはわずかに5.1%である(少しそう思う3.7%、思わない1.4%)。 

  圧倒的多数が、日本は良い方向に向かっていると思っていない。にもかかわらず、50%以上の10代が「自分

の将来に希望を持っている」。このことをどう解釈すればいいのか、残念ながら同調査のデータから導き出すこ

とは難しい(同調査ではこの点について突っ込んだ質問をしていないので)。 

  ただ、希望的な推論を述べれば、日本が絶望に向かっているからこそ、若者が希望を持ち始めているのでは

ないか、ということ。昨年の東日本大震災において、壊滅的な被害を受けた被災地の子どもたちの9割が「自

分の街のために、何かをしたい」(2011年5月。セーブ・ザ・チルドレン調べ)と考えたように、だ。 

  もう一点。同調査の中で興味を引いたのは原発に関する回答である。「将来、国内の原子力発電所をどうす

べきだと思うか?」という質問に対して、51.1%が「ゆっくりと減らすべき」と回答している。ちなみに、「すぐに減ら

して全廃すべき」は13.3%。「再稼働して現状を維持すべき」が18.2%。「増やすべき」は3.2%である。 

  10代というのはとかく過激になりがちな世代で、いまの反原発運動の盛り上がりをみていると、即刻全廃すべ

きという意見が多いかと思っていたが、意外と現実的だ。社会貢献は理想論と現実論、どちらも無視しては成り

立たない。それがソーシャル・ビジネスに必要な視点だと思うが、いまの10代はすでに、この要件が備わって

いる。筆者が、彼ら彼女らに期待する所以である。 

【第7回】電気が足りているのに、なぜ原発を動かす必要がある

のか?  2015年8月8日 広瀬  隆 [ノンフィクション作家] DOL 

『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。 

このたび、壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシ

マと日本の運命』が発売以来大反響となり、第3刷が決定した。 

8月末に予定されている大手書店講演会も即満員御礼になったという。 

なぜ、この本が、今、話題を呼んでいるのか? 

新著で「タイムリミットはあと1年しかない」と、身の毛もよだつ予言をした著者が、原発の歴史と青森県六ヶ所

村でひそかに進むおそるべき危険性を緊急警告する! 

「原発」の本来の目的とは何か? 

広瀬  隆(Takashi Hirose)1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館

データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書

の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツ

の暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの

経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主

義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。 

   

改めて言っておきたい。 

  原発とは、「原子力発電」の略語である。 

  つまり日本では、「発電する」ことに、原発本来の目的がある。 

  電気が足りているのに、なぜ原発を動かす必要があるのか? 

  廃絶すればいいではないか。 

  寺島実郎などは、 

 「原発を持っている以上、原発の技術を維持しなければならない。そのためには、再稼働をしてゆく必要があ

る」 

  などと、ド素人の無責任な暴言を吐いている。 

  冗談ではない。放射能の危険性を知らない人間は、黙っていろ。 

  原発を廃絶する、つまり廃炉のために必要なのは、寺島実郎が言うような現在の原発を運転する高度な技術

ではない。廃炉作業とは、原子力発電所の内部設計を知っていればできる、鉄工技術である。 

  その解体作業のときに被曝しないように、放射能の危険性を知ることが、廃炉作業の基本の第一である。そ

の第一のことさえ、電力会社の社員がよく知らないことが問題なのだ。 

  一方で、原子力発電所をかかえる自治体の首長たちは、「原発がなくなれば、地元経済が崩壊するので、再

稼働は必要だ」と考える人間が多い。 

  もっともらしく聞こえるが、これもまったく道理に合わない話だ。そう主張する鹿児島県知事・伊藤祐一郎たち

自治体の首長たちは、よく聞くがよい。 

  原発の地元に、日本政府と電力会社から大金が落ちるようになった、この歴史的な経過は、こうである。 

  1974年2月に3法案(電源開発促進税法案、発電用施設周辺地域整備法案、電源開発促進対策特別会計

法案)──が閣議決定され、6月3日にこの通称“電源三法”が成立し、発電所の建設促進のため、予定地周

辺の市町村に発電所から得た税収を配分する財源捻出手段として、この法が10月1日に施行された。 

  これが、悪名高い「電源三法交付金」制度のスタートとなった。 

  しかし発電所と言いながら、それは実質すべて、原子力発電所のことであった。 

  各地で嫌われている危険なプラントだから、地元に金を与えて黙らせよう、という意図で始まった制度だ。 

再稼働に浪費してきた額はなんと2兆4000億円! 

  時の総理大臣・田中角栄、大蔵大臣・福田赳夫、通産大臣・中曽根康弘がこの電源三法を成立させ、これが

原子力発電所のための事実上の消費税導入となり、田中角栄の地元・新潟県の柏崎刈羽《かりわ》原子力発

電所の建設向けに、補助金としてばらまかれた。 

  法ができた時代は1974年である。つまり全世界にオイルショック(石油危機)が起こった翌年の出来事であ

る。 

  それは、アメリカのゼネラル・エレクトリックとウェスティングハウスが、日本に大量に原発を売りこむチャンスと

なった時期であった。 

  そのアメリカの罠にかかって、ほとんどの原発がこのあとに運転を開始したのが、日本だったのである。 

  こうして「電源三法交付金」の“麻薬づけ”になった地元では、原発に経済を依存するようになって、泥沼から

抜け出せなくなった。そして大量に原子力発電所が建てられてきた。こうして原子力発電所が建設された13の

道県は、被害者なのである。 

  前回まで述べてきたように、原子炉から至近の距離で放射能に命をさらしているのは、そこに住む地元住民で

ある。 

  一方、電力会社はみな、原子炉からかなり離れた大都会に本店を構えている。その意味では、私のような東

京の人間も、罪が重いので、その都会人の立場から言っておくと、フクシマ原発事故による大量被曝を体験した

日本では、地元だけでなく、ややはなれた大都会も、共に生き残る手段を考えなければならない。 

  もはや「大都会に住んでいれば安全だ」などと考えるほどバカな人間はいない。つまり、“金”が動機で原発の

再稼働を強行することは、本来が「電気を生み出すため」の目的とは、まったくかけ離れた、道理に合わないこ

とである。 

  もし原発がなくなると地元の経済に悪影響があるなら、「電源三法交付金」は、原発経済から脱却するための

資金として、今後もしばらく交付を続けるべきである。 

  13の道県の住民に危険性を押しつけて、原発のほとんどの電気を使ってきた大都会人に責任があるのだか

ら、国税を投入して、立地13道県を救済するべきである。ただし年限を10年ぐらいに区切って、原発に代る別

の地場産業を生み出すまでの地域再生基金として使わなければならない。 

  安倍晋三らがおこなってきた東京オリンピックに向けた放漫支出や、再稼働に熱中して浪費してきた大金2

兆4000億円に比べれば、その交付金は、見えないほど小さなものだ。それぐらいのことは、簡単にできること

である。原発立地市町村の経済など、日本全土に比べれば、実に小さなものだ。地元経済には、なんの問題も

ない。 

  むしろ、この13の道県の住民に迫っている深刻で、重大な危険性は、別のところにある。原発を運転したあと

に出てくる高レベル放射性廃棄物が、日本全土で行き場を失っていることだ。 

  この放射性廃棄物とは、フクシマ原発事故で日本人全員が頭からかぶったセシウムやストロンチウムと同じ

危険物のことである。 

六ヶ所村のプール容量はすでに満杯!もう行き場がない! 

  これまで電力会社と国が、青森県の人間をだまして六ヶ所再処理工場を建設し、そこに13の道県の原発から

出る使用済み核燃料と呼ばれる放射性廃棄物のかたまりを持ち込んできた。 

  

  だが、この再処理工場の巨大な3000トンの貯蔵プールは、左のグラフのように満杯でパンクしている。したが

って、これから再稼働する原発から出る危険物は、もう六ヶ所村に持ってゆけないのである。 

  このグラフを説明しておくと、六ヶ所村のプールは、ウラン換算で3000トンの容量を持っていたが、そこに昨

年2014年3月までに、全国の原発から合計3376トンの使用済み核燃料を持ち込んできた。 

  2006~2008年のあいだ、そのうちわずか425トンだけを、アクティブ試験の“Step1~Step5”と称して強引に

試験的に再処理したので、3000トン-(3376トン-425トン)=49トンの残り容量しかない。つまり、ほぼ満杯な

のだ。 

  どうしてこうなったのだろうか?   

  再処理とは、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、これとは別にセシウムやストロンチウムな

どの危険な放射性廃棄物を取り出し、化学的に分離する作業である。 

  その分離された放射性廃棄物は、溶液に溶けた「沸騰しやすい液体」として発生する。そこで、すぐにこれをガ

ラス固化体という固形物にしないと、青森県が超危険な状態になる。 

  ところが、この再処理工場を運転する日本原燃は、技術的に無能力なまま、強引に再処理に踏み切ったた

め、このガラス固化に失敗して、先の見通しがまったく立たない。つまり再処理不能なのである。 

  それどころか、すでに六ヶ所再処理工場でかかえている高レベル放射性「廃液」の放射能の量は、気が遠くな

る数字だが、520,000,000,000,000,000ベクレルである。 

  これは福島第一原発事故で放出されたセシウム137の、原子力安全・保安院が推定した量の35倍に相当す

るのだ。停電でも起これば水素を発生して、フクシマ原発と同じように爆発する不安定な液体が、フクシマ原発

事故35回分である。 

  日本全土の原発から使用済み核燃料を受け入れるどころか、厳重な管理を必要とする液体なので、いつ大事

故が起こってもおかしくない状態にある。 

  茨城県の東海再処理工場も、かつて再処理をしたので、同様の、超危険な高レベル放射性「廃液」が貯蔵さ

れている。こちらのほうが六ヶ所村より多く、福島第一原発事故で放出されたセシウム137を、原子力安全・保

安院が推定した量の80倍かかえているのだ。 

  不安定な液体が、フクシマ原発事故80回分──上野から常磐線の特急スーパーひたちに乗って、ほんの1

時間ちょっとで到着する距離、東海村にあるのだ。 

  東日本大震災後の今日まで4年間、ずっと、茨城県を震源とする地震が数えきれないほど起こってきた。首

都圏の人間であれば、たびたびの激震を覚えているはずだ。私が二年前に東海村で講演した当日も、大きな揺

れの地震があって、地元の人は、震え上がっていた。 

  東京オリンピックなどを開催している時なのか? 

なぜ、『東京が壊滅する日』を緊急出版したのか 

  このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。 

  現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。2011年3~6月の放射性セシウムの月

間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の

100倍超」(文科省2011年11月25日公表値)という驚くべき数値になっている。 

  東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。 

  映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(1951~57年で計97回)や、チェルノブイリ事

故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日―

―フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。 

  1951~57年に計97回行われた米ネバダの大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョー

ジで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同

じ距離だ。 

  核実験と原発事故は違うのでは?  と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原

発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウム以上にタチが

悪い。 

  3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。 

  不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。 

  子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。 

  最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つ

が、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10

都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる

今、オリンピックは本当に開けるのか? 

  同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエ

ル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。 

  51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。 

 「世界中の地下人脈」「驚くべき史実と科学的データ」がおしみないタッチで迫ってくる戦後70年の不都合な真

実! 

  よろしければご一読いただけると幸いです。 

<著者プロフィール> 

広瀬  隆(Takashi Hirose) 

1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈

を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家

に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを

殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍

需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩

壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。 

  

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『東京が壊滅する日』広瀬  隆:著 価格(本体):¥1600 発行年月: 2015年7月  

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2011年3~6月のセシウム総量は「新宿が盛岡の6倍」!  甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素は「新宿が盛岡

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ルモット”にされるのか?はじめて明かされる原爆&原発【双子の悪魔】の正体!そうだったのか!「戦後70年

の謎」が今、明らかになる。 

 

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【目次】 

◆はじめに 

冷静に予測しておかなければならないことがある 

◆第1章 

日本人の体内でおそるべきことが進行している! 

◆第2章 

なぜ、本当の事実が、次々闇に葬り去られるのか? 

◆第3章 

自然界の地形がどのように被害をもたらすか 

◆第4章 

世界的なウラン産業の誕生 

◆第5章 

原爆で巨大な富を独占した地下人脈 

◆第6章 

産業界のおぞましい人体実験 

◆第7章 

国連がソ連を取りこみはじめた 

◆第8章 

巨悪の本丸「IAEA」の正体 

◆第9章 

日本の原発からどうやって全世界へ原爆材料が流れ出ているのか? 

<俳優・宝田明氏が明かす戦争の真実(上)>悲惨な目にあうのは

無辜の民、脳裏から離れない衝撃的体験とは?―「平和憲法」死守

は我々の世代の責務!Record China 8月9日(日) 

旧満州で育ち、引き揚げ経験がある俳優の宝田明氏が、満州での衝撃的な体験や戦後の歩

みなどについて語った。「平和憲法は日本人が作り上げてきた世界の宝だ」と指摘した上で、歴史の真

実を伝え、9条を守り抜くことが、戦争を知る世代の責務であると強調した。  

2015年8月6日、旧満州(現中国東北部)で育ち、引き揚げ経験がある俳優の宝田明氏が、「戦後70年」をテ

ーマに日本記者クラブで講演し、満州での衝撃的な体験や戦後の歩みなどについて語った。「平和憲法は日本

人が作り上げてきた世界の宝だ」と指摘した上で、歴史の真実を伝え、9条を守り抜くことが、戦争を知る世代

の責務であると強調した。発言要旨は次の通り。 

 

戦時中、父が満鉄の技師だったため、家族とともに旧満州のハルビン市で生活し、小学校5年生(11歳)の時

に終戦を迎えた。終戦の直前に旧ソ連軍が侵攻し、満州の防衛に当たっていた関東軍(旧陸軍)は南方に退

散、街は無政府状態に陥った。 

 

夕食時、略奪した多くの時計を腕に巻き付けたソ連兵が土足で入って来た。銃をほおに突きつけられ、歯がガ

タガタと音をたてて鳴った。ある時は、近所の奥さんが買い物帰りに2人のソ連兵に捕まり、崖下に連れて行か

れ辱めを受けるのを目撃した。ソ連の憲兵隊に助けを求めたが、この時のショックは忘れられない。 

 

ソ連軍の強制使役で石炭を貨車に積み込む作業をしていた際に、見回りのソ連兵に腹を撃たれたこともある。

なんとか家にたどり着いたが、傷口が腫れ黄色い膿(うみ)が出てきた。母が呼んだ元軍医が家にあった裁ちば

さみで切開し、弾丸を除去してくれたが、麻酔なしだったため、あまりの痛さに失神した。 

 

旧満州から引き揚げる際、可愛がっていた犬を連れていけないので、エサや水と一緒に大きな石炭箱に入れ、

置き去りにした。家を離れ、ハルビン駅での検査や手続きを終えて汽車に乗りこみ、外を見ると、プラットホーム

に愛犬がいた。私たちを見つけると、窓に飛びついてきた。汽車が動き出しても必死で追いかけてきたが、やが

て、窓から姿は見えなくなった…。この悲しい光景は、今も私の脳裏から離れることはない。 

 

いつの時代も、戦争で最も苦労するのは無辜(むこ)の民だ。戦闘員だけが戦うのではない。これがまさに戦争

である。 

 

安保法案が国会で審議されているが、平和憲法は日本人が作り上げてきた世界の宝だと思う。ウイスキーのよ

うに大事に寝かせて芳じゅんな香りを醸し出さなければならないのに、だんだんたがが外れて樽の上からにじ

み出ている。国会が終わったら大地に埋もれてしまう、風前のともし火の運命にあるのではないか。「二度と愚

かな戦争を繰り返してはならない」という、多くの日本人の反省の思いが刻まれている憲法9条は、時代を超え

て引き継がなければならない。 

 

歴史の真実を伝え、9条を守り抜くことが、戦争を知る世代の責務だと思う。日本が無謀な戦争に突き進んでい

った歴史を教育現場できちんと教える必要がある。若い世代に歴史の真実を知ってもらえれば、平和を希求す

る9条の普遍的な価値を理解してもらえると思う。(八牧浩行) 

<俳優・宝田明氏が明かす戦争の真実(下)>寒々とした気分になる

最近のメディア事情、自ら体験した2つの出来事とは?―次の世代

へ語り継ぎたい!Record China 8月9日(日) 

旧満州で育ち、引き揚げ経験がある俳優の宝田明さんが、「戦後70年」をテーマに講演し、満

州での衝撃的な体験や戦後の歩みなどについて語った。最近メディアで気になっていることがあるとし、NHK出

演で体験した2つの出来事を挙げた。  

2015年8月6日、旧満州(現中国東北部)で育ち、引き揚げ経験がある俳優の宝田明さんが、「戦後70年」を

テーマに日本記者クラブで講演し、満州での衝撃的な体験や戦後の歩みなどについて語った。最近メディアで

気になっていることがあるとし、NHK出演で体験した2つの出来事を挙げた。その上で、「最近安倍首相を取り

巻く集団から、(意に沿わないメディアに)経団連に広告を出さないように圧力をかけろとか、検閲しろとか要求

が出ている。国会議員がこのような発言をすること自体が悪代官を思わせ、寒々とした気持ちになる」と批判し

た。発言要旨は次の通り。 

 

私は森繁久弥さんや三船敏郎さん(いずれも故人)ら旧満州出身の大先輩の教えも得て、映画、ミュージカルな

どで仕事をしてきた。最近メディアで気になっていることがある。 

 

以前NHKテレビで「サラリーマンNEO」という世相を風刺する番組があり、時々出演していた。ある時、国会で

の麻生太郎首相に扮して、渡されたコントシナリオ通りに演じたが、プロデューサーがあわてて来て、(NHKの)

予算編成時期だから「違ったキャラクターでやってくれ」といわれ、修正された。やっぱりお上ににらまれたら大

変なんだなあと思った。 

 

もう一つは、NHKの夕方の情報番組への生出演時。幼少期を過ごした旧満州(現中国東北部)でソ連軍の侵攻

を受け命からがら日本に引き揚げた体験などを話した。そして、「無辜(むこ)の民が無残に殺されるようなこと

があってはいけません。だから間違った選択をしないよう、国民は選挙を通じて、戦争をする人しない人を見極

めて選ぶべきです…」と語った。すると司会者が突然制止し、そのやりとりは打ち切りとなった。そのあと、多くの

方々から励ましのメールなどをいただき、意を強くした。 

 

最近安倍首相を取り巻く集団から、(意に沿わないメディアに)経団連に広告を出さないように圧力をかけろと

か、検閲しろとか要求が出ている。国会議員がこのような発言をすること自体が悪代官を思わせ、寒々とした気

持ちになる。 

 

先日、テレビ局の終戦番組の取材で中国ハルビンに行った。通った学校や住んでいたところ、ソ連兵に撃たれ

たところ、靴磨きをしていたところ、兵隊に殴られたりしながらタバコを売っていたところ―などにも行った。辛い

思い出だ。 

 

私はこれまで俳優という多くのファンに支えられている仕事柄、政治的な発言を控えてきたが、最近は若い世代

にしっかり語り継ぐべきだと考えるようになった。過去の戦争の過ちをしっかりと伝えていくことが、日本が戦争

をどう捉え、次の世代にバトンタッチしようとしているかを諸外国に示すことになり、信頼にもつながると思う。

(八牧浩行) 

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