中国、大都市に迫るバブルの足音  「首付貸」に火種

李克強首相による成長率目標の引き下げ宣言で5日に開幕した中国の第12期全国人民代表大会(全人代、

国会に相当)。景気の先行きが見えないなかでの開催だけに市場には緊張感が漂う。株式相場の値動きも足

元は行きつ戻りつと神経質だ。そんななか、突き抜けた活況に躍る市場がひとつ。世界を揺さぶる中国のバブ

ル生成と崩壊の悪夢が脳裏をよぎる。 

■「爆騰」する大都市の不動産 

  現地紙ではほぼ毎日のように報じられる光景だ。 

▼上海市で約400万元(約7000万円)の物件を買おうとした男性。不動産会社に赴くと、唐突に420万元への

値上げを通告された。一晩考えて翌日に契約に向かうと今度は430万元になっていた。 

▼広東省広州市の新築マンションのショールーム。入場希望者殺到に伴い、くじ引きが導入された。ある女性

は幸運にもショールームに入れたが、許された滞在時間はわずか3分。全124戸の平均価格は約200万元だ

が、30分で完売した。 

中国では一部都市で不動産の急騰が深刻になってきた(上海市の高層マンション)=ロイター 

  中国に再び価格急騰の旋風が吹き荒れている。こんどの舞台は株式市場ではなく、「一線都市」と呼ばれる

大都市の住宅市場だ。なかでも値上がりの著しいのが広東省の深圳市。この1年間で53%値上がりした。バブ

ル期の東京もかくやという急騰ぶりだ。上海市も21%、北京市は11%上がっている。 

  不動産購入はもはやパニック的な色合いも帯びている。深圳市では住宅の間取りや日当たりなどは二の次

で、新築住宅の9割が売り出しと同時に完売する状態が続いているという。深圳市の中間層の平均月収は

8000元(約14万円)だが、住宅ローンの返済額平均は月9000元に達した。 

  上海市でも市民が住宅購入に列をなす。市内各所の「房産交易中心(不動産取引センター)」には税制の問

い合わせなどで早朝から市民が並ぶのも珍しくない。多数の警備員を動員し、数百メートルに及ぶ市民の列に

沿って混乱防止用の鉄柵を設置した交易中心もある。 

  株価の反応も素直だ。上海と深圳の株式市場の総合指数はそれぞれ足元で昨年6月の高値から半分の水

準に下落しているのに対し、代表的な不動産関連株で構成する「CSI300不動産指数」は6月とほぼ同じ水準を

維持。一貫して市場全体のパフォーマンスを上回っている。 

■金融緩和マネー、大都市を「選別物色」 

  ただ、当局は気が気ではない。上海市の韓正・党委書記は6日に「不動産市場の過熱ぶりは理性を失ってい

る」と危機感をあらわにした。深圳市の馬興瑞・党委書記は住宅供給を増やすなどして価格を抑制する考えを

表明している。 

  不動産は2012~13年にも急騰し、当局による課税強化策などで押さえ込まれた経緯がある。ただ、中国経

済は不動産関連への依存度が高く、こんどは景気全体を冷やす恐れが強まった。中国人民銀行(中央銀行)は

14年秋以降、金融緩和を繰り返し、あふれ出た資金は昨年、上海株をわずか1年間で2倍以上に押し上げた。

そして足元では大都市の不動産になだれ込んでいるわけだ。 

 

  中国全体で見ると不動産市場は低迷が続く。中国国家統計局によると、かつて2ケタ増の勢いをみせた不動

産開発投資は急減速している。大都市以外で在庫があり余っており、それをさばくのに精いっぱいなためだ。不

動産在庫は2月末で約740平方キロメートルと、琵琶湖(約670平方キロメートル)を上回る規模まで積み上が

っている。全人代に出席した不動産大手、華南城の梁満林董事長は「在庫圧縮に伴い、多くの地方都市で不動

産は過去最安値圏まで下落する」と警鐘を鳴らした。 

  人民銀は5つの都市(北京、上海、深圳、広州、海南省の三亜)以外で住宅ローンを組むときの頭金の最低比

率を、従来の30%から現在は20%まで段階的に緩めた。遼寧省瀋陽市では大学卒業後5年以内に購入する

場合は頭金ゼロを容認。1平方メートル当たり200元の補助金を条件付きで提供するなどして需要喚起を急い

でいる。 

  一方、5都市の最低頭金比率は30%のまま。だが、人口の流入でそもそも一定の需要がある。さらに値上が

りしそうだとみれば、マネーがそちらに向かうのは道理だ。 

■「首付貸」のきな臭さ 

  相場急騰にはきな臭さもつきまとう。大都市の不動産ももちろんその例に漏れない。発火点となりそうなのは

「首付貸」だ。 

 

  意味するところは「頭金向けローン」。頭金は金融機関と借り手の双方のリスクを抑える安全装置のようなもの

だ。それすら融資で賄うとは危うい話だが、中国ではやすやすとそうした資金を手に入れることができる。 

  提供するのは不動産仲介や不動産開発会社、ピア・ツー・ピア(P2P)業者などだ。全体の規模は不明だが、

1兆元(17兆円)にのぼるともいわれる。融資の金利は10%を超える高さだが、現地メディアによると利用者は

全体の3割に達するという。 

  見方を変えれば「首付貸」は一段とレバレッジを高めた不動産投機に等しい。昨年の上海株バブルの背景に

もレバレッジ投資があった。当局の監督下にある信用取引のレバレッジは2倍までとそれほど高くない。問題に

なったのは「場外配資」という監督外のレバレッジ。融資会社などがオンラインで融資する仕組みで、手元資金

を5~10倍まで膨らませることが可能で、融資残高はピーク時に2兆元(35兆円)といわれた代物だ。 

  首付貸を利用したレバレッジ投資は「楼市場外配資(不動産市場の場外配資)」の異名さえ持つ。大都市の不

動産は「いつか来た道」をほぼ正確にたどっているわけだ。 

■「いつか来た道」も打てる手乏しく 

  ここにきて当局もバブルの危険を察知し、遅ればせながら対応に乗り出した。人民銀の潘功勝・副総裁は「ラ

イセンスを持っていない不動産仲介や不動産開発会社による融資を禁じる」と発言。深圳市と上海市はこうした

高レバレッジの仕組みを使った住宅購入の実態調査に乗り出した。首付貸大手の「鏈家地産」や「我愛我家(5i

5j)」はすでに融資業務の停止に追い込まれている。 

人民銀も「首付貸」に警戒感を強めているが…(12日、北京で会見する周小川総裁) 

  ただ、抜本解決は困難との見方は多い。人民銀の周小川総裁は首付貸に警戒感を強めるひとりだが、一方

で「住宅ローンの銀行貸し出しに占める割合は依然として低い」と、まだローンには伸びしろがあるとの認識を

示している。国泰君安国際(深圳)の劉斐凡アナリストは「政府は景気テコ入れへ緩和的な金融政策を続けざる

を得ず、住宅バブルも簡単にははじけない」と指摘する。 

  市場では「中国本土の株式相場がさえないのは、不動産に資金が向かっているため」(上海の証券会社)との

見方がある。長期の投資家が育っていない中国で猛威を振るうのはおもに個人の投機マネー。要は値上がり

するか否かに尽きる。値上がりすると思えば違法資金も巻き込んでバブル化し、当局の介入で派手に崩壊する

いたちごっこを繰り返してきた。この先にも、同じ光景が待つか。(NQN香港=大谷篤、桜田一美) 

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