中国版「債務の株式化」は急場しのぎの危険なゲーム

経営不振企業の借金を株式に転換して返済に代える。この施策は中国の企業や金融機関にどん

な影響を与えるだろうか 

  李克強首相は、第12期全国人民代表大会第4回会議閉幕後の3月16日の記者会見で、市場化による債

務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、DES)を通じて、企業のレバレッジ(負債比率)を低下させることができ

る、と初めて提起した。 

  1週間後の3月24日、ボアオ・アジアフォーラム2016年年次総会の開幕式でも、李首相は再び、市場化の

手法で債務株式化を推進し、企業の負債比率を引き下げることが可能だと表明した。 

  そして4月4日、多くのメディアが次のように報じた。最初の債務株式化の規模はおよそ1兆元に確定し、3

年以内に達成する。国家開発銀行、中国銀行、工商銀行、招商銀行等が債務株式化のテスト銀行となる。 

  中国で債務株式化が実施されるのは、これが初めてではない。例えば1999年に国有企業は経営が苦しくな

り、信達、華融、長城と東方の資産管理会社が設立され、国営企業に融資した国有銀行の1.4兆元の不良債

務のうち、4000億元を株式化した。さらに今年3月8日にも、江蘇熔盛重工有限公司が中国銀行に対して

27.5億元の株式を発行し、同額の債務を帳消しにした。しかし、ここまでの規模での債務株式化はまだ執行さ

れていなかった。 

  その意味では17年ぶりに、中国は再び債務株式化時代を迎えようとしている。しかし、17年前とは違って今

回は、関連政策に対する社会的な論議が格段に激しい。 

  短期的に見れば、債務株式化は債務を負っている企業にとっても、債権者である銀行にとってもメリットはあ

るだろう。 

  まず巨額の債務を抹消された企業は、破産に至らず、周囲への連鎖的な債務ショックも引き起こさずに済む。

また債権者も窮地から脱却できる。債権者の銀行は不良貸付をバランスシートから抹消し、利益に影響を与え

ないようにできるからだ。 

  そのため1兆元の債務の株式化は、A株市場で次のようなメッセージとして受け止められている。「国は企業

の融資返済の困難性と銀行の焦げ付きを座視できなくなり、市場救済、信頼性回復の意図を明確にした」。こ

れが4月5日のA株の大幅高騰の理由である。 

  しかし、本当にみんなが大喜びできる局面なのだろうか? 経済学者や証券会社の分析では、この政策は深

刻な「毒酒を飲んで渇きを癒す」に等しい急場しのぎの色彩が濃い、という見方が大勢だ。 

短期的には蜜の味、長期的には毒の味 

  債務株式化は、短期的には一部企業の流動性危機を緩和し、銀行の利益への影響を低下させるため、特に

企業の破産・倒産件数の増加や、銀行への金融引き締め、高失業率、社会不安などの一連の問題がもたらす

政治的な圧力の回避には役立つだろう。 

  しかし、経済の視点から言えば、銀行借款は債権であり、普通株は株主権であり、両者の性格は全く異なる。

また異なった収益期待、収益形式、リスクと流動性を備えている。銀行は借款を提供し、期日に応じて利子と元

金を回収し、事前に契約した収益率と期日内の流動性を入手する。一方、株式投資には高いリスクと不確定性

が備わっており、投資家の収益率、収益を得られるまでの時間は予測困難だ。 

  銀行は株式投資会社ではない。本来、固定的な収益を希望している銀行からすれば、債権を株式に転換する

ことは本来的な投資目的、期待に全く合致しないし、なにより銀行は十分な株式投資、管理能力も持ち合わせ

ていない。不良債権の抹消は銀行経営層の短期的な業績向上には有利だろうが、結局のところ、債務株式化

は短期的な帳簿上のゲームに過ぎない。 

  そもそも銀行経営が直面している主要なリスクの一つは短期借入、長期貸出がもたらす満期ミスマッチのリス

クである。それに対し、融資を株式に転換するというのは、返済期限の再延長(無期限延長もあり得る)を意味

し、銀行の資金回収が遅れ、銀行の流動性リスクが大幅に増大し、自己資本率が引き下げられたことになる。

もし真の民間銀行であれば、債務株式化には何のメリットもない。 

  債務株式化以降も、不良資産は依然として銀行の手元に残る。それを「融資」とは呼ばず「株式」と呼ぶだけ

のことに変わっただけのことだ。もし融資先の企業の経営が好転しない──極端なケースではさらに悪化し破

産する(債務株式化に追い込まれた企業にはその公算が大きい)──と、銀行の手元の株券は紙くずになって

しまう。銀行というのは仮に融資先企業の破産・清算を選択した場合でも、回収できるのがほんの小額の資金

であったとしても資産を換金させるように望むものである。対して、債務を株式化するというのは、破産したらま

ったくの御破算となるということで、多くの場合、銀行はそれを望まないだろう。 

  いずれにしても、一旦、債務株式化した企業には、なにがあっても復活してもらわなければならず、仮に破綻

すれば、これらの「不良投資」による損失が暴露され、銀行のシステムそのものが巨大なリスクに見舞われる。

銀行システムの安定が中国経済にとって大変重要であることは明白だ。大量の債務株式化株は中国経済にと

って、巨大な地雷が埋め込まれるのと同じである。 

今も7割の問題株式を保有する17年前の不良資産管理会社 

  もし債務株式化の対象企業が全て上場企業であれば、銀行は市場で売却するという容易  な撤退方法を持

てる。しかし、中国における上場企業はごく少数であり、上場していない大中型企業が非常に多い。銀行は手

元にある株をいかにして処理するのか? 

  1999年当時、4大国有商業銀行の不良債権を処理するために、4つの資産管理会社(AMC=Asset 

Management Companies)が不良債権を引き受け、問題企業への融資を株式に転換したが、AMCはその後も

売却することができないまま、今でも当時の株式を大量に所有している。4AMCのひとつである中国華融資産

管理公司を例にとると、1999年に引き受けた債務株式化企業は281社に達し、17年も経過した2015年6月

末時点でも、その70%近い196社もの株を所持しているのだ。 

  しかも、AMCが売却した僅かな株式については、その売却額は入手したときの額と比べて1~3倍程度という

のが一般的だ。この17年間の中国のインフレ率を考慮すると、収益の面ではもはや沙汰の外であり、半数以

上がまだ処理されずに放置されているというのはなおさら深刻な事態といえる。 

1兆元の行き先を決める人が利益配分の権力を持つ 

  さらに、債務株式化の最大のリスクは、巨大なレントシーキング(民間企業が政府などに働きかけて政策など

を変更させて利益を得る行為)の余地を作り出すことである。 

  最近、あるメディアが政府関係者の話として、次のように報じた。債務株式化の対象は、潜在価値のある、一

時的に困難に陥っている国営企業を中心とする企業に絞られる。こうした企業は、銀行の帳簿上、「注目」また

は「正常」に分類されている融資であり、「不良」融資ではない。従って、今回の債務株式化で、過剰生産の「ゾ

ンビ企業」が対象になることはない──。 

  問題は誰が、潜在価値のある、一時的に困難に陥っている企業だと判断し、どこを「ゾンビ企業」と決めるか

だ。それは銀行なのか、それとも監督・管理機関なのか?  実際、どちらもその判断能力を持ち合わせてはいな

いだろう。ただその両者の違いといえば、能力がないからやりたがらない銀行と、能力がなくても「1兆元」という

ハードな目標を打ち出した監督・管理機関という点であろう。 

 「1兆元」という数字が債務株式化のパラドックスを象徴的に表現している。もし不良債権に株式化の価値があ

れば、銀行が自らそうするにしろ、他の主体が銀行側から購入するにしろ、自ずと市場で株式化を希望する人

が現れるはずだ。市場参加者は利益を追い求め、お金があれば誰しも儲けようとするのに、なぜ「1兆元」など

という融通のきかない目標を掲げたのだろうか? 

  もし不良債権に株式化の価値がなければ、強制的に「1兆元」の目標を達成させることで損なわれるのは、一

体、誰の利益か?  忘れてはならないのは、中国の国民が銀行株を買わなくても、銀行の大株主は国である以

上、損をするのは中国国民一人一人であるということだ。 

  債務株式化が、ある人には利益をもたらし、ある人は損失を被る可能性のある取引であるならば、この1兆

元の行き先を決める人が、利益配分の権力を持つようになる。そこに、大きなレントシーキングの余地が生まれ

るに違いない。 

  極端な話をすれば、真剣に企業を作ろうと思っているわけではない輩が、銀行から何らかの方法である程度

のお金を借り、その後、そのお金を移し替えるか、或いは浪費してしまってから、最後に、あっけらかんと銀行に

「さあ借金を株式化しようぜ」と伝える。名目上、企業に負債はなく、銀行にも不良債権はない。これこそ「濡れ

手で粟」の手口ではないのか? 

  こうした連中に大なり小なり銀行の政策決定に影響力を行使する権力があれば、このような不道徳な方法で

不労所得を得ることもできる。損するのは銀行の株主──つまり、中国という国なのであろう。

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